成人の儀式を終えた後。戦士は新たな惑星へと赴いていた。
その星は、成人の儀式に失敗した結果……ゼノモーフの闊歩する星となり、知的生命の途絶えた惑星だった。
次なる成人の儀式に使うクイーンを調達する事。それが、この戦士に与えられた「任務」であった。
生捕りにするのは、ただ殺すよりも遥かに難しい。特にヤウージャの中でも圧倒的な強者である、この氏族にとっては。
「クイーンを捕えたら連絡しろ」
「分かっている」
短いやり取りをして、戦士は宇宙船から飛び降りた。着地の衝撃をシンビオートが和らげる。既にこのシンビオートは彼の従属であり、手足も同然だった。
異変を察知したゼノモーフの群れが、四方八方から押し寄せる。成人の儀式で相手にしたのはたったの8体。それとクイーンのみ。だが、この戦士は臆する事なく群れに突撃した。
数を頼みにした雑兵如きでは相手にならない。唯一気を付ける必要があるのは、酸性の体液だ。この戦士は自己評価の高さから、耐酸の加工は武器にしか施していない。
だが、それで充分。それどころか、斥候であるランナー程度では儀式で相手にしたバトルエイリアンよりも遥かに弱い。
胴を蹴りの一撃で圧し折り、別の個体が繰り出したインナーマウスを掴んで引き千切りながら投げ飛ばす。同時に尾を引き抜き、即席の鞭として振るえば群れの大半が骸へと変わった。
圧倒的戦闘能力。群れの残党は敵の力を見定めて撤退を始める。
だが、戦士は付かず離れずの距離を保って群れを追う。行く先がゼノモーフの巣窟だと分かっているからだ。
ランナー達もそれを察したのか、幾つかの集団に別れて逃走を続ける。
戦士は一瞬思案し、ひとつの集団の前に躍り出た。踵を返して逃げるランナー。鞭を振るう。数匹を仕留め、一度全体を俯瞰する。
初めに分かれた集団は既に合流し、一直線に進んでいる。その先に巣があると見た戦士は、シンビオートを纏いながら跳躍する。
着地と同時にランナーの背骨を踏み砕き、僅かに焼け爛れたシンビオートを体内に戻して槍を一閃。一気に個体数が減った集団は、攻撃はせずに一斉に吠えた。
数秒後。集団を片付けた戦士の元へと地面が揺れる程の振動が伝わって来た。斥候がやられた事に気付いた、というよりは死期を悟った斥候が呼び出した巣の護衛隊だった。
ウォーリアーが大半を占める。音の発生源が近場であった事から巣の位置を逆算し、プラズマキャノンを群れの中央目掛けて発射する。
ランナー程の俊敏さは無いが故に数匹が消し飛んだ。自分達の知るそれよりも遥かに強力なプラズマキャノンの威力に、新たな群れは驚愕したようだったが、勢いが止むことはない。
巣が遠くにあれば展開して包囲陣形を取る。自分ならばそうすると考え、戦士はこの群れに対しても対処する事に決めた。
ランナーの尾で出来た即席の鞭は、ウォーリアーに掴まれる。そもそも当たったところで致命傷には至らないと判断し、鞭を手放して手裏剣を両手で投げ飛ばす。
ザザザザザ……と小気味良い音を立てて、ウォーリアーの群れが次々に倒れていく。使い捨ての武器と見做していたが、手裏剣は弧を描いて戻ってくる。槍の先で戻って来た手裏剣を叩き、ゼノモーフの酸性の血を落とす。
シャッシャ、と二振りすれば、手裏剣は携帯時の刃を閉じた状態へと戻った。それを腰に取り付けたポーチに戻すと、今度は一転。槍を主体とした白兵戦に移った。
次々と斬り飛ばされていくゼノモーフの四肢、尾、首、飛び散る体液。
戦士は闘いの高揚感から、いつのまにか嗤っていた。マスクでくぐもった笑い声が、平原に響き渡る。
あまりの戦力差に、逃走を始めたウォーリアーが出た頃。親衛隊であるプレトリアンを数体従えたクイーンがやって来た。
どうやらこのクイーンの従える群れでは、ランナーを斥候として数十匹、ウォーリアーを主戦力に百数十匹という、比較的小さな群れだったらしい。
最終戦力であるクイーンは尾の届くギリギリの位置で止まり、プレトリアンが猪突猛進してくる。
自身よりも大きな体躯。そして恐らくは、力業では敵わない相手。長らく仮死状態にされていた儀式用のクイーンとは違う。
冷静に分析し、戦士はシンビオートの力を全面に発揮する事でハンディキャップを取り去った。
一回りも二回りも巨大化し、尾まで生えた鈍色のヤウージャ。その異変にプレトリアンが警戒した刹那。クイーンの尾が戦士を襲う。
戦士は咆哮と共にその尾を掴み、ジャイアントスイングの要領でプレトリアンを数回に渡って薙いだ。クイーンの甲殻はプレトリアンの比ではない硬さで、十回程度叩き付けるとプレトリアンは身動きすら出来ない程に打ちのめされていた。
振り回されたクイーンも空中へと投げ飛ばされ、網状になったシンビオートに捕縛される。もがいてもへばりつく粘液のように絡まるシンビオートの網はクイーンの体力を急速に奪っていく。部分的に寄生し、体力そのものを吸い上げているのだ。
戦士はガントレットコンピュータを操作し、迎えの宇宙船を寄越すよう連絡する。クイーンが捕縛されたという現状、プレトリアンをも気絶させた戦闘能力、そして自分達が既に少数であるという事から、残ったゼノモーフ達は巣をも放棄して逃亡して行った。