ベトナム戦争終戦から約10年。アラン・ダッチ・シェイファー少佐と彼の率いるエリートチームは、バル・ベルデ共和国のゲリラに捕らわれたという閣僚の救助作戦に赴いていた。
鬱蒼とした密林。国境を越えた先は危険地帯だというのに、何故閣僚がそんな所に?
ダッチの抱いていた疑問は、この作戦の指揮を任されたCIA所属のディロンに向けられた。彼は「ルートを間違えたらしい」とだけ答えた。
閣僚を乗せたヘリはバル・ベルデで音信途絶。ゲリラキャンプで捕虜となっている閣僚を救助する、というのが作戦の概要だった。
しかし、バル・ベルデに足を踏み入れた途端に空気は一変した。墜落したヘリには操縦士の死体。ジャングルを進んで見つけたのは、木に吊るされ生皮を剥がれた人間の死体。その死体の人物の物と思われるドッグタグに、ダッチは聞き覚えがあった。
「ジム・ホッパー。……彼らを知ってる。グリーンベレーが、何故ここに?」
ディロンは「ゲリラの仕業だ」と言うが、人間のするような所業には思えない。疑念の渦巻く中、ゲリラキャンプまであと少しという所まで進んだ頃だ。
ゲリラキャンプでは既に戦闘が始まっていた。ゲリラ達は闇雲に銃を撃ちまくり、時折キャンプ内で爆発が起きる。
「どうなってる……!?」
「ディロン……何か知ってるんじゃないのか!?」
ディロンはそれには答えず、戦闘を凝視している。そして、インディアンで鋭い第六感を持つビリー・ソールが「少佐」と小さく呼んだ。ディロンを問い詰めようとしていたダッチは、ビリーの指差す先を追う。
ビリーの指先は次々と指す位置を変える。それは常に木の上を指していた。
「何かが居る。ゲリラと戦闘中です」
「何が居るんだ!?」
「分かりません。でも、何かが居る……。ここに来てからずっと、違和感を感じていました。でも、似ているけれどそれは違和感の正体じゃない」
「クソ……作戦変更だ。この期に乗じて捕虜を救出する」
ダッチ率いるエリートチームは手際良く、必要な局面でのみゲリラを排除していく。運の良いことに、ゲリラと戦っている何かは捕虜が囚われているという小屋には寄り付かなかった。
そして、気付けば銃声が止んでいた。ゲリラの死体は皆、頭が爆ぜたように無くなっていたり、腹に大穴が空いているものばかりだった。
そして、囚われていたのは閣僚などではなく……1人の女だった。ディロンはといえば、「予想以上の収穫だ」などと言いながら文書をかき集めている。
「何を知っているか詳しく話せ。ディロン、隠し事は無しだ」
「信じやしないだろう? 相手の正体は分からない。だが、行動の傾向は以前出現した個体と類似している。姿を自在に消して、武装した人間を虐殺する悪魔なんて、誰が信じる?」
CIA所属のディロンは、ベトナム戦争時に撮影された写真の全てを知っていて、たった今ゲリラを虐殺したのもその悪魔だと語る。
「少佐。他の人質は全員殺されてます。こいつら、中米の人間じゃありませんよ。閣僚じゃなくCIAです」
マック・エリオットが報告する。次いでブレイン・クーパーが「ソ連製の銃ばかりですが……クレートを引き摺ったような痕があります。それも、まだ新しい」と報告した。
「ソ連製の銃を戦利品の代わりに持って行った。ベトナム戦争の時と同じだ」
「ベトナムに現れた悪魔が、中米のここに来たと?」
「間違いない。ここで虐殺を繰り広げたのはそいつだ」
「少佐。まだ違和感が拭えません。その悪魔……他にも居るんじゃないですか?」
「どうなんだ、ディロン」
ディロンは数秒思案した後、口を開いた。
「その可能性は、ある。ベトナム戦争に来たのが一体だったとしても、ここに居るのが一体だけとは限らない。それに、ジム……奴は俺の部下だったんだ。殺し方が、ベトナムの時とは明らかに違う」
「……各員、警戒を怠るな。ベトナム戦争の悪魔とやらは他にも居る」
「推測に過ぎないが、奴らは共闘……というより、協力しない。現にゲリラ襲撃に来たのは一体だけだった」
「何故そう言い切れる?」
「ビリーが感じた気配は指先で追える数。一体だ。だが、気配自体は複数。そうだろ、ビリー?」
「そうです。今も、何処かから観察している。そんな気がする」
「……長居は無用だ。移動するぞ」