PREDATOR the LOAD   作:犀宮寺東

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 宇宙船へと戻ったレーヴェン。彼はゲリラキャンプから追加で掠奪してきたクレートを作業台の隣に置き、マスクを外した。以前までは真っ赤だった視界が、色彩や距離感、細かな特徴まで鮮明に捉える。

 

 シンビオートとの同化が更に進んだ結果、ヤウージャの弱点である視覚が強化されているのだ。

 

 非常食を兼ねたトロフィーを船内の貯蔵タンクに放り込む。彼にとってはゲリラなど、本来ならトロフィーにはならない相手だ。それ故に非常食と割り切って保管している。

 

 それよりも。レーヴェンは狩猟とは別種の高揚感を抱きながら、作業台にクレートを載せる。丁寧に金具をひとつひとつ、ゆっくりと外していく。中身はゲリラが愛用する、AK-47が幾つかとそのマガジン。弾薬箱も拝借して来た。

 

 弾が装填されていない事を確認して、AKを弄り回す。素材、質感、アクション、それらをコレクションを愛でるように楽しむ。プラズマキャノンに比べたら遥かに劣る、火薬式の原始的な武器。

 

 だが、レーヴェンにとってはアンティークを蒐集するのと同じような感覚なのだ。長旅をしていれば消費してしまう、本来トロフィーとすべき頭蓋よりも、彼は銃や剣に価値を見出していた。

 

 数十分、数時間か。AKで遊ぶ事に飽きは来なかったが、突然ガントレットコンピュータが警告音を発し始めた。付近で自爆コードが作動したという通告だ。

 

 ああ、奴は負けたのだな。

 

 マスクを装着し、クラシックプレデターのマスクが捉えた映像を確認する。

 

『醜い顔だ』

 

 そう吐き捨てたダッチの目の前で、ゆっくりと自爆コードを入力するクラシックプレデター。最期は「自分を殺しておけば良かったのにな」とでも言うようにくぐもった笑い声を漏らしながら、自爆した。

 

 狩りの失敗は不名誉だが、その結果として自爆するのは狩りの成功に次ぐ栄誉だ。レーヴェンはクラシックプレデターに敬意を表し、数秒間の黙祷を捧げた。

 

 次いで、今度は宇宙船の警告音が鳴る。操縦席へ移動し、確認する。

 

 数十隻の宇宙船が、ニューヨークに向かっているとの連絡だった。ニューヨークは暑く、ギャングの抗争も頻繁に起きている事から獲物には困らない。ヤウージャにとっては格好の狩場である。

 

 しかし、レーヴェンはこの土地を今離れるつもりは無かった。この日だけで数百人は殺した。同族が殺されれば、そして自分がこれからもこの土地に居座り続ければ、ゲリラや精鋭部隊がまた送り込まれるだろう。

 

 先客は死んだ。この土地は既にレーヴェンの狩場である。邪魔する者は他に居ない。任務でも与えられない限りは、この土地に居座る事を決めた。

 

 

 

 バル・ベルデに居座り、半年が過ぎようとしていた頃。危惧していた任務が下った。自らが成人の儀式を為した惑星。彼の地でクイーンの骸に押し潰されて絶命した同族。その死体を載せた宇宙船からの救難信号を受けたと、エルダーから連絡が入った。

 

 レーヴェンの闘争心は身体が震える程に高揚していた。クリーナーを差し置いてプレデリアンの狩猟を命じられたのは、戦士としての評価から来るものだろう。

 

 眉に握り拳を当て、承認を表する。エルダーとの通信が絶えると、レーヴェンは耐酸が施された武器を装備し始める。

 

 スピア、手裏剣、プラズマキャノンは常日頃から装備している。リストブレイドは成人の儀式から変えていない、正しく相棒である。

 

 クイーンの尾を加工して作った長大な槍をとも考えたが、宇宙船内での戦闘では取り回しに不便だ。代わりにプレトリアンの尾で使った鞭と頭蓋で作った盾を取る。

 

 宇宙船を発進させ、暫しの眠りにつく。時折シンビオートが空腹を訴えかけてくるのが煩わしい。

 

 ほんの数日で、目的の宇宙船を発見した。エルダーからは狩猟を命じられている。宇宙船の中にあるオボモーフ、フェイスハガーが惜しいのだろうが……レーヴェンの推測では、それらが無事に容器に残っているとは思えない。

 

 レーヴェンは小型艇で目的の宇宙船へと着艦した。

 

 

 

 潜入した宇宙船の中は既に、ゼノモーフの巣窟と化していた。黒く粘ついた弾力性のある、ゼノモーフ特有の物質が船内を埋め尽くしている。

 

 そして、決して広くは無い宇宙船の中。プレデリアンと遭遇したのは潜入からほんの数秒の事だった。執務クルーをも宿主とし、4体に増えたプレデリアン。その一体が投げつけて来たのはフェイスハガーだった。

 

 斬撃で始末すれば酸にやられる。左拳で殴りつけ、空中で撃退する。メキョメキョと音を立ててフェイスハガーの骨格が砕け、壁に叩き付けられる。

 

『長居は無用だ』

 

 ダッチの使っていた言葉を復唱し、手裏剣を投げる。壁や天井へ飛び退いて回避するのは、流石はプレデリアンだ。しかし最も後ろに居た個体は反応が遅れ、胴体が切断されて崩れ落ちる。ゼノモーフの巣窟となっていたのが幸いで、宇宙船が溶ける事は無かった。

 

 早々に一匹がやられた事に激怒したプレデリアン達は、力任せに攻撃してくる。鉤爪で、拳で、尾で。それら全てをプレトリアンの盾で防ぎ止める。あまりの膂力に、粘着質の床が抉れて押し込まれる。

 

 だが逆にプレトリアンの盾ごと腕を振るい、3匹の体勢を崩す。プレトリアンの盾は既に使い物にならなくなっている。盾を投げ捨て、スピアで1匹の心臓を刺し貫く。それでもまだ動き続けるのは流石プレデリアンだ。他のゼノモーフとは生命力が桁外れに違う。

 

 飛び掛かってくる別の個体を身を屈めて躱すが、尾の先端が目の前まで迫っていた。生まれたばかりにしては頭が回る。

 

 尾を掴み、もう1匹が突き出した尾に刺さるよう振り回す。それから突き刺したままのスピアへ叩き付けると、瀕死だった2匹目諸共3匹目が絶命した。

 

 残る武器は手裏剣がふたつとプラズマキャノン、鞭にリストブレイドだ。プラズマキャノンは成人の儀式で最も威力に秀でた物を選んだ為、宇宙船の中で使う事は出来ない。もし使えば、船体に穴が空いて墜落は不可避となる。

 

 ほんの数秒で仲間が3体もやられた事に憤りはしても臆する事はないプレデリアン。相手にとっては死闘でも、レーヴェンにとってはただの狩猟だ。

 

 スピアを骸から引き抜き、一閃。血振りを済ませた後に軽く突きを繰り出す。反撃に尾が突き出された。狙い通り。

 

 すぐにスピアを引き戻し、尾を掴む。ブラフだったとプレデリアンが気付いた頃には、その身体は宙に浮いていた。

 

 一度壁に叩き付け、今度は床に叩き付ける。脚で獲物の胴体を押さえながら、プラズマキャノンを発射。飛び散った酸が皮膚に当たり、激痛が走る。しかしシンビオートが傷を癒す方が早い。

 

 プレデリアン4体を殆ど動かずに倒したというのに、レーヴェンは平然と宇宙船の先へと進んで行く。道中で飛び掛かって来たフェイスハガーは拳で殴るだけで片付いた。

 

 そして、無惨に食い荒らされた同族の亡骸の元へと辿り着くと、自爆すら出来なかった執務クルーの弱さを蔑み、せめてもの戦利品として武器を回収していく。

 

 そして、この狩猟の機会を与えてくれた、自らが間接的に殺した同族に対しては、敬意を表してそのマスクを撫でる。そしてその左腕に装着されたガントレットコンピュータを操作し、自爆コードを入力する。

 

 それからは手早くプレデリアン4体の頭部を切り落とし、回収して小型艇へと戻った。レーヴェンを乗せた小型艇が離脱して間もなく、生命体の一切居なくなった宇宙船は爆発した。

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