SAN値ゼロから始める異世界召喚士ライフ 狂喜と混沌を呼ぶ召喚士   作:猫カイト

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オートマタの心臓は鼓動する

魔法人形

自動人形

あるいは「オートマタ」とも言われるそれは許されぬ代物だ。

人形とはいえ人間が新たな生命を産み出すなど

思い上がりも甚だしい。

しかもそれを研究していたのが神を信仰する教会なのだからまったくもって皮肉だ。

 

教会が求めたのは神を呼び出し、肉体を維持できる器

そんなものを作れるのは神だけだと分かっていながらも時を待てず教会は研究に乗り出した。

人間とは罪深くそして───待てぬ生き物だ。

いや、それも仕方ないのかもしれない。

神の姿を現す器が亡くなり数世紀が過ぎた。

もはや神の力の凄さも恐ろしさを知らぬ人間の方が多くなったと20代法王は嘆いていた。

このままでは人は神を捨てるのではないか?

そういった恐怖もあったのだろう

だから法王は罪を知りながらも禁忌の研究を命じた。

それが私達オートマタの誕生の歴史だ。

 

人間が神の領域に踏み込み、生命を作り出す。

それにはそれ相応の素材が必要だった。

初期はそれを見つけられず自我もなにもない魔力で動かす人形ばかりであった。

それはオールドと呼ばれた。

初期に造り出したオールドは器と呼ぶには程遠い物であった。

自分で魔力も供給できず、魔力を他所から供給してもその身体は魔力に耐えきれず壊れてしまう。

そんなものが神を受け入れられる筈もなく、オールドは研究用の一体を残し全て廃棄になった。

その結果を踏まえて教会はまずは魔力を自分で生み出す器官を作ろうと着手した。

だがそれは魔力もよく分かっていないその時代

それに魔力を扱う専門家の召喚士や魔法使いではないただの信徒が新たに造り出すなど不可能なのは明白だった。

だから彼等は禁忌に手を出した。

それは───彼等が忌み嫌うものの核

魔物の心臓だった。

魔物の心臓を生きたまま取り除き、器に移し替える。

魔物を友とした召喚士には思い付かぬ発想であった。

そもそも人間ならそんな考えは普通は思い付かない。

この時代の教会の狂気を感じられる。

いや、彼等はずっと狂っていたか

そんな狂気の研究をましてや、生きたままの心臓を取り除くなど

特殊な技術も何もない教会がやるには何体もの魔物の犠牲があったのだろう。

記録されているだけでも100はゆうに越えている。

その狂気の研究もあって召喚士との関係が悪化の一途を辿ったのは言うまでもない。

だが教会からすればそんなものは些事に過ぎなかった。

彼等はそれほどまでに神という存在に依存していたのだから

 

何百も越える失敗の末やっとの思いで取り出した心臓

だが心臓だけでは生命は生きていけぬ

彼等は速くその心臓を容れておく器が必要であった。

新たに専用の器を作る時間も技術もない

だから教会は廃棄されていたオールドに目を付けた。

自壊する人形だが動くかどうかの確認には十分だ。

このままでは心臓も死ぬ。 

そう考えた教会は心臓を移植した。

教会はすぐ自壊してしまうと考えていた。

だがそれは間違った考えであった。

 

その人形は何故か自壊しなかった。

魔物の魔力と人間から供給する魔力の違いなのか

それとも他に特別な何かなのか

それは分からぬが教会の連中は喜んだ

これは───神からの祝福なのだと

だが彼等は忘れていたその祝福の元は魔物

神とはまったく違うものだ。

 

自分で造り出せる魔力

そしてそれに耐えれる身体

その人形は器として成功に思えたが、

それは余計なものまで持っていた。

自我 意識 思想 魂

様々な言い方があるが分かりやすくいうのなら命をもったのだ。

だがそれは教会からしてみれば望まぬものであった。

何故ならそれを与えたのは自分達が忌み嫌う魔物なのだから

教会の信仰によると意思といったものは人間の力の源とされてきた。

それを物言わぬ人形に持たせたのは彼等が忌み嫌う魔物

彼等の敵なのだから

敵だと思ってきたものが教会の根源

そんなものを認められるほど人間は完璧ではない。

だがそれを捨てられもしない

何故なら長い金と時間がかかっているのだから

人間はなんと中途半端な生き物なのだろう

だがその中途半端なおかげで人形は

私は生きている

 

 

私は何なのか?

人形か?

魔物か?

ゴミか?

それはわからない

ただ自分は望まれて産まれてきたものではないのは確かだ

そんな私を大切にして全てを捨てるなんてナンセンスだ。

サラはそんな馬鹿ではないと思っていた。

人間とはわからない

 

「何故攻撃を仕掛けてくる!?俺はおまえのことなんて知らないのに!!」

 

確かに何故だろう

サラは彼に会えとしか言っていなかったのに

私は彼に攻撃を仕掛けた何故だ?

彼の事をみた瞬間に敵意が私の心に宿った。

こんなこといままでなかったのに

何故今回に限って……

彼が私を人形と言ったから?

いや、そんなこと何度も言われてきたし

実際その通りだ。

彼が教会が求める器だから……?

それではまるで───嫉妬ではないか

人形の私が嫉妬?

あり得ない。

なら何故だ。

分からないが自分の心臓が強く鼓動したのをかんじていた。

心臓の鼓動を感じるのも強く脈打っていると思うのも初めてだ。

なんなのだこの鼓動は

この感覚は不快──では、なかった。

むしろ……

いやありえない

私は人形だ。

呪われた存在

産まれるべきではなかった失敗作

そんな私が────喜んでいる?

これではまるで……まるで……

 

「その顔……ごめん君は」

 

言うな!!

私は!!

オートマタ!!

オールド!!

人形だ!!

それとは違う!!

それにはなれないんだ!!

 

「人間だ」

 

 

 

 

 

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