SAN値ゼロから始める異世界召喚士ライフ 狂喜と混沌を呼ぶ召喚士 作:猫カイト
白い拘束具の彼女と出会った時
おれは彼女を人形と感じた。
何故ならその顔に精気はなく、どこか悲しげ
それはまるで昔みたビスク・ドールのようだと思った。
だがそれは間違いだとすぐに分かった。
彼女の攻撃を受ける度に彼女の熱を感じた。
自分への憎しみと憧れ
相反する二つ、
何故だか分からないが攻撃からそれを感じられた。
その感覚を信じるならば彼女は人形ではない。
それどころか下手な人間よりもよっぽど───
「人間だ」
憎しみや憧れといった感情を持つのは人だけなのだから
その一言を聞いた彼女は何故か静止した。
何故だか分からないが俺はその隙を見逃さずめんどくさい呪文を唱える。
仲直りするために呼びたかったが今はそんなことも言ってられない。
魔方陣が展開される。
……彼女は邪魔してこない
そんなにあの一言が聞いたのだろうか?
悪いことしたかな……
もしかして人間嫌いだった?
それなら人間と同一視されるのが嫌だろう
謝るべきか
でも攻撃してきたのはそっちなわけで……
とか考えていると魔方陣から黒い少女が現れる。
やっぱりその姿はなれないなぁ
「変な所で呼び出しますねー マスター」
「突然ごめんね 前回あんなこと言っちゃったのに呼び出して……」
「気にしてませんよ それにマスターの召喚獣の中で戦えるのは私だけですから」
なんだか嬉しいそうだ。
前までは戦いが嫌いだった彼女が戦いを喜んでいる……
複雑な気分だ。
「それに……彼女からは同類の香りがしますし」
「同類?」
彼女ももしかしてクトゥルフ出身の方?
でもあんな見た目のクトゥルフ神話の生物みたことが……
「一緒にしないでください 貴女からは真逆の感じがします」
そういって彼女は手から鎖を発射し、ショゴちゃんを掴む。
「そう?他者を律する触手と自分を律する鎖とかそっくりじゃない!?」
ショゴちゃんは鎖を引きちぎろうと力が入れるが鎖はより一層肌に食い込む。
女の子の身体に鎖が食い込む姿……うーんH!!
じゃなくて速く助けなきゃ!!
このままじゃショゴちゃんが!!
「馬鹿なんですか?全く違うでしょ」
「馬鹿は心外だな!!」
鎖を何とか切ろうとナイフを出そうとした俺をショゴちゃんは止める。
「本当に馬鹿なんですか?私はオートマタ ふつうの人間と違って重さは……!!」
ショゴちゃんはなんと鎖で繋がっている事を利用してオートマタと名乗る少女を持ち上げて壁に叩きつける。
「100キロはあるボディなんですけど?なんて馬鹿力
馬鹿だからですか?」
100キロ!?あんな可憐な見た目してて!?
それに負けず劣らずの見た目をしているショゴちゃん……
人は見かけによらないというやつか
彼女の言葉が本当なら二人とも人間じゃないけど
オートマタか……
あんな顔をする少女がオートマタ?
だって楽しそうな顔だもん
「あんたドM?」
「何がですか?」
彼女はハテナを浮かべた顔をしている。
「いやその表情どうみても……まぁいいやあんた本当にオートマタ?」
「そうですよ それ以外にこんな装備ありますか?」
「いやぁ、改造人間とかならもってそうじゃない?」
「自分の腕を望んでこんな鎖にするなんてどんな変態ですか。」
「それもそっか……鎖の変態さが分かった上で外してくれない?食い込んで痛いんだけど」
「外すわけないでしょ 貴女の馬鹿力で殴られたら堪ったもんじゃないですから」
「自分の固さに自信ないんだ」
「そんなミエミエの挑発無駄ですよ それに私は戦闘向きの人形じゃありませんから」
嘘つけ
戦闘向けじゃない人形に鎖つけるか!!
「ほらますます似てる 私も戦闘向きの生物じゃないし」
「嘘も休み休み言いなさい。戦闘向きじゃないやつがこうやって触手を地面に這わせたりしますか!」
「チッ」
人形ちゃん(仮)は空に向かって飛ぶ。
その数秒後舌打ちをしたショゴちゃんが地面から触手を出して人形ちゃんを捕らえようとする。
だが人形ちゃんは器用に鎖でそれを止める。
「ますます戦闘向きじゃないって嘘でしょ ウォーウルフですら見抜けなかった触手だよ?」
「ウォーウルフ?何ですかその安直な名前 馬鹿がつけたんですか?」
やめて差し上げろ。
ショゴちゃんは触手の数を増やし彼女を捕まえようとする。
「私も同意見!!私達やっぱり似てるね!!」
「だから違うと!!」
負けじと人形ちゃんも鎖を伸ばして応戦する。
鎖と触手のドッグファイトが始まった。
ショゴちゃんの言う通り彼女たち似てるかも
触手を出すショゴちゃんを呼んで絶妙な場所に鎖を伸ばすし、
他人とは思えない。
「はぁはぁ……しつこい」
「あんたも!!しつこい女の子は嫌われるって知らないの!?」
見事なブーメランである。
返ってきて自分の頭に刺さってるぞ
「……このままやってたら私の負けか さてどうするか……マスター良い案ありますか?」
そういって俺の顔をみる。
今思ったが初対面の人形ちゃんにはフランクに話してるのに俺には敬語なんだなぁと少しもやっとした。
確かにショゴちゃんを呼んでいる間は魔力消費がある以上こちらが不利
さてどうしたものか
まずはあの足についている鎖をなんとかしないと……触手と弾きあっているのをみるとナイフで切れる訳じゃないし……
何とかする方法を考えるためにまずは周りを見渡した時に気付く
突然周りが光り始めたことに
というか俺も光ってね?
俺の身体は光に包まれる。
これは来たときのあれと同じだ。
またワープかぁ
あれ疲れるんだよなぁ
突然身体が光ってどこかに飛んだ後
気付く。
この声
そしてこの臭い
まさかサラ……あれを使ったのか?
「はぁはぁ 流石にきついか……」
大きな鳥を連れた何者かと戦っているのは……魔獣
いや、あの首飾りは……
「サラ……貴女はそこまでして……」
そこまでする価値は私には……
「なにこれ?狩りゲー?」
「ラブ!?後だれだか知らんが離れていろ!!こいつはヤバイ!!」
「嫌です あなたが下がっていてください」
彼女がこうなったのは自分の責任だ。
なら止めるのは自分だ。
鎖を魔獣に伸ばす。
彼女を拘束してその後彼女を戻す手段を考える。
それが合理的な判断。
魔獣の手足に絡み付く筈の鎖が地面にバラバラになり落ちる。
何が起きたのか分からなかった。
いや、分かりたくなかった。
私唯一の武器の鎖が一瞬の間に切り落とされるなんて……
「くっ!ですが私にはまだ!!」
彼女を止めるにはもうあれしかない……
あれを使えば私の命はないだろうが、私は存在を許されない人形だ
それよりは彼女が生きていた方が……
ズルッ
変な音が足元から聞こえた。
そういえば忘れていた。
「あぁー もう見てらんない あんた死ぬ気だったでしょ?」
触手がぬるりと私に這いより身体の自由を奪う。
それだけにとどまらずご丁寧に鎖の発射口にまで覆い被さっている。
ぬるぬるしていて舐められるような感覚が全身に広がる
凄く不快だ。
「離しなさい!!それに死ぬ気なんて!!」
「はいはい嘘乙 私とあんたは似てるって言ったでしょ?何となくわかんのよ あれはあなたの大切な人なんでしょ?」
「くっ 分かってるなら離しなさい!!」
「嫌よ だってあんたの事大嫌いなんだもん 殺してなるもんですか マスターやるわよ」
「やっぱり そういうところは進化しても変わらないんだね 手伝うさ パートナーを助けるのもマスターの勤めだからね」
「無謀は真似は止めなさい!! 私の鎖と同程度の固さのあなたの触手では!!それにあなたの触手はあなたの手足も同然!!それを切られたときの痛みは!!」
「わかってるわ!!うるさい!!」
触手で口を封じられる。
彼女の触手から水が滴るのがわかる。
彼女もそれがどれだけヤバイかわかっている。
わかっていてもなお、私のために戦おうとする二人
止めなければ私のために犠牲は増やせない。
だが触手がほどけない
どうして私の器はこんなに弱いの?
「……しょうがないか ショゴちゃん魔力少し返してね」
「まさか!?アイツを呼ぶ気ですか!?」
アイツ?
「それしかないでしょ 」
「待て まさか!?いやまだ俺もたたかえ……ッ!!」
「嘘は止めてくださいよ リオニス先生もボロボロじゃないですか」
「だがまたおまえを危機に晒すのは教師として……」
「大丈夫よ 強くなった私がいるし前回のようにはならないわよ」
「そうですよ それに俺だって強くなってるんですよ?」
「くっ、自分の弱さがますます嫌になるよ」
「何言ってるんですか 先生は強いですよ!!さぁいくよショゴちゃん」
「任せなさい」
この人たちは何をいっているのか?
あの魔獣を止めれるやつがいるというのか?
それに皆の口ぶりから危険なやつだというのはわかる。
それを見ず知らずの私のために?
わからない
でも何故か目から汗が……
「今我が門の封印を解く 来たれ来たれ来たれ来たれ来たれ来たれ来たれ来たれ来たれ来たれ 繰り返すに10度
全くめんどくさい呪文!!噛みそうだし魔力をめちゃくちゃ使うし!!とっとと出てこい!!そして家賃を払いやがれ!!ヴェルダンディ!!」
そう少年が何かを書きながら怒っていると少年の身体の中から黒い何かが現れる。
「やっと出番か!! 遅いんだよ!! ガキ!!」
そこに現れたのは高身長の紫髪の女性
これが魔獣と戦える存在
とてもそんな風には思えない。
「相手はどいつだよガキ」
「そこにいるでしょ」
そういって少年は魔獣を指差す。
「この犬コロかよ こんなのに俺を呼んだのかよ、まぁ、久々のシャバに出れただけ文句は言わないがもっと歯応えがありそうな」
そういってため息をつくと同時に魔獣は彼女に向かって噛みつきにかかる。
まずい!!あの牙はAランクの魔物ですら屠る牙だ。
「文句言ってるじゃん」
少年はあきれた顔でそういっているがそんな場合じゃ!?
私は驚愕する。
噛まれている彼女はあくびをしている。
普通なら絶命してもおかしくはない
というか絶命する。
「遅すぎて欠伸が出たわ もう終わりかよ犬コロ」
「そんなこと言って噛まれてるじゃん」
「だってよ 噛ませてやんねぇとコイツなんも出来ずに終わっちゃうじゃん」
コイツは何を言っているんだ?
魔獣は教会の禁忌だぞ?
化物なんだよ?
それをわざと?
意味が分からなさすぎて言葉が変になるレベルだ。
「昔から そういうところあるよねヴェルは」
「知ったような口聞くな それにおまえはいつまで」
彼女は首に噛みついた魔獣の毛を掴んだ。
そして
「噛んでやがんだ!!」
投げ飛ばした
そう投げ飛ばした
魔獣をだ。
地域によっては悪夢とも称されている魔獣を片手で
「つまんね もう伸びたのかよ 起きろよ犬コロ ちょっとは犬としてのプライド見せてみろよ!!俺の知ってる犬はもっとしぶとかったぞ」
そういって挑発する彼女
「ウォー!!」
「起き上がったか そうじゃないと面白くない 」
なんで化物が起き上がってそんなに楽しそうなのか
相手は魔獣だよ?
ますます訳がわからない。
「はぁ、ヴェル呼んだの間違いだったかな……でもウルズもウルズでめんどくさいし……」
呼んだ本人は頭を悩ませている。
もう訳がわからない。
人間って何?