SAN値ゼロから始める異世界召喚士ライフ 狂喜と混沌を呼ぶ召喚士 作:猫カイト
人は、神という存在を信じてきた。
雷鳴、地震、病、そして死。理不尽で理解不能な現象を、かつて人は「神」の仕業とした。
未知とは、恐怖そのもの。だからこそ、名前を与え、象徴を生み、畏れを超えようとしたのだ。
だが人は成長した。科学を得、知識を積み、未知に立ち向かう手段を覚えた。
信じ、疑い、嘲笑い、崇める。
未知を「オカルト」や「伝承」へと昇華する者。
それを「非現実」と切り捨てる者。
未知の真実を追い求め、狂気の淵に至る者――。
人は変わった。
けれど、変わらぬものもある。
神官――神に仕える者。
かつて彼らは神の言葉を聞き、代弁する者として存在した。
だが今、その姿は歴史の狭間に消えた。
なぜか?
人が神を捨てたのか。
神が人に絶望したのか。
……それはどうでもいい。
重要なのは、今なお「神の声を聞ける者」が存在するということだ。
もしその神が、人智の外にある存在だったとしたら?
善悪も論理も通じぬ、混沌の理をもって世界に干渉するならば?
何が起きる?
世界の終焉か、再構築か。
破滅か、新たなる進化か。
答えは一つじゃない。だから私は賽を投げる。
人類が選ぶのはどの神か――
混沌か。
炎か。
深海の夢か。
黄色い衣か。
外なる意志か。
旧き神々か。
さあ、賽は投げられた。
出た目がどれでも、結末はきっと“最高”さ。
狂気も破滅も進化も、等しく“望まれた未来”だ。
人類よ、君たちは本当は気づいているはずだ。
混沌を。破滅を。暴力を。堕落を。狂気を――
おまえたちは、それが大好きだろう?
あぁ……隠しても、無駄だ。
ほら、笑みがこぼれてる。
人間って、ほんとうに――最高!
ああ、もう退場の時間か。
楽しかったよ。また会おう。
次は盛大なパーティだ。
ワインは君たちの血で、ツマミは絶望でいいかい?
最高のツマミがなきゃ、どんなワインもまずくなるんだからさ
変な夢を見た。
舞台の上で踊りながら、なにかを喋り続ける少女。
言葉は速すぎて、俺には聞き取れない。
でも確かに、それは言語だった。
理解できたのは、彼女がとびきり楽しそうだったことだけ。
その笑顔があまりに可憐で、ずっと見ていられそうだった。
けれど舞台の光が消え、夢は終わる。
――サイコロが振られる音だけが、静かに響いていた。
意味なんて、わからない。
それが正直な感想だ。
初めて見た“悪夢じゃない夢”がこれって、俺は疲れてるのか、狂いかけてるのか。
……前者であってほしい。
夢か?
いつの間に寝た?
俺は目覚めようと、いつものように扉を探す。
すると――その前に、ひとりの少女が立っていた。
見覚えのある、最悪な美少女。
「……あーあ、負けちゃった。まさかアイツがあんなモノを持ってるなんてね。あの気色悪い蝿も、案外悪知恵が回るじゃん。……っと、おかえり?」
虚空を殴っていた彼女が、俺に気づいて振り向く。
「長かったね。……でも、ここで一時お別れ。姉様たちによろしくね?
私との同居、悪くなかっただろ?
ただ……ひとつ言わせてもらうなら――もっと私を出してほしかったな。いろんな意味で」
「よく言うよ」と俺は呟いた。
お前と別れられるだけで、どれだけ嬉しいか。
出せなかったのは、自業自得だろうが。
「厳しいね~。たまには馬鳥みたいに優しくしてくれたっていいじゃん」
「お前らに可愛げがない」
「何言ってんの、美少女だぞ?……上姉様を除いて」
「外見だけな。中身はマイナス150点だ」
「えぇ……。じゃあ次はもっと猫かぶるか、優しくするか、考えとくよ」
「考えるだけじゃダメだ。実行しろ」
「は~い、じゃあね、ラブ。強く生きてよ」
チュ。
唇から音がして、彼女は軽くキスをして消えていった。
……最後の最後に、可愛い真似しやがって。
それをもっと前からしてりゃ、少しは好感……いや、ないな。絶対ない。
――さよなら、スクルド。
俺も、行くか。
扉が開き、眩しい光が差し込む。
その中へ、迷わず歩いていく。
もう慣れたものだ。
「あいつ、行っちまったな。……母様の仕事押し付けられて、俺の担当三人分になったじゃねぇか……」
「失礼。私がいるから、1.5人分です」
本を抱えた姉様が、しれっと現れる。
「いやいやいや、その本まず置けよ姉様。記憶の書庫からまた勝手に取ってきたのか? 叱られてもしらねぇぞ?」
「叱ってくる相手……もういないよ?」
「……そうだった。ってことは、姉様を叱るのも俺の仕事かよ!」
全く、ジャンケンに負けたのが悔やまれる……俺が行けばよかった。
「まぁまぁ。怒るとまたラブが不調に……」
「誰のせいで怒ってんだよ!」
「スクルドが、弱いから?」
姉様はきょとんとした顔で、とんでもないことを言う。
「……姉様辛辣すぎて、スクルドが聞いたら泣くぞ……」
いないのが救いだ。普段は“いてくれ”って思うのに。
……ま、頑張るしかないか。
「……あ、ミスった」
「ちょ、何やってんだよ姉様!? また“めんどくさい奴ら”の気配が……!」
――またファンブルの尻拭いか。
恨むぞエルフ。
それに、母様――!
序章 【試験と最強のエルフ】 完
「あいつ、行っちまったな。……母様の仕事押し付けられて、俺の担当三人分になったじゃねぇか……」
「失礼。私がいるから、1.5人分です」
本を抱えた姉様が、しれっと現れる。
「いやいやいや、その本まず置けよ姉様。記憶の書庫からまた勝手に取ってきたのか? 叱られてもしらねぇぞ?」
「叱ってくる相手……もういないよ?」
「……そうだった。ってことは、姉様を叱るのも俺の仕事かよ!」
全く、ジャンケンに負けたのが悔やまれる……俺が行けばよかった。
「まぁまぁ。怒るとまたラブが不調に……」
「誰のせいで怒ってんだよ!」
「スクルドが、弱いから?」
姉様はきょとんとした顔で、とんでもないことを言う。
「……姉様辛辣すぎて、スクルドが聞いたら泣くぞ……」
いないのが救いだ。普段は“いてくれ”って思うのに。
……ま、頑張るしかないか。
「……あ、ミスった」
「ちょ、何やってんだよ姉様!? また“めんどくさい奴ら”の気配が……!」
――またファンブルの尻拭いか。
恨むぞエルフ。
それに、母様――!