アンサラー 幻葬   作:月導

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十五章~破綻~

「そうだニヘルさんよ。ちょっとこっち来てくれる?」

「一体なんだ?」

「この調査隊、私が組んだわけではないから気付くのが遅れちまって。」

「核心から話してくれ。」

「血鬼の連中も来るんだが、花が来る。(小声)」

「花?」

「着かず離れずの距離感の恩人がいるだろ?(小声)」

「もしかして千牢のことか?(小声)(サァーー)」

「ことの大事さが分かったようだね。彼をさりげなく誘導してくれるか?」

「わかった。」

「主席!大変です!」

「いったいどうしたんだ。」

「鯨が来ます!」

「なんの種類だ?(呆れ)」

「隻手型です!」

「数は?」

「五体です!」

「子琉。」

「不要ですね。奴らは動きは緩慢、火に弱くかがり火も焚いてあるここらでは近づくことは有りません。」

「やはり成り上がりのボンボンどもを見ているとイラつく。ニヘル、私は計測に戻る。誘導は頼んだぞ。」

「現実性の計測か?」

「君がいるだけでノイズ交じりだがさらに歪む時が怖いからね。」

「なら呼ばなければよいだろ?」

「私の上からの通達でね。」

「管理層の連中。そういえば先日、クレードルが一機落ちたのはあんたか?」

「警告は前々からしてたけど襲撃を命じたバカがいたからね。見せしめに。」

「遠慮をパージしたのか?」

「なんなら好奇心オーバークロック。」

手を振りながらひときわ頑丈な建物に入る酒崎と子琉。

「アイア、少し話がある。最近読んだ話なんだが」

「今は暇だし付き合うよ。騎士?あードンキホーテか。」

「やっと着いた!」

「エピゥールさんよ、さすがにちっと体がキツいで?」

「湾曲鉄道はここには通っていないからね。あと今のあなたは私が言った通り刃派眷属という設定だから。」

「それならあんたの言うことに服従する義理はない。先に調査に言っとるで?」

「待て、私も行く。これは血鬼としての意地。だからお荷物は置かせて。」

「はいよ。」

「そういえば夕夢も来ているってデルシネアから聞いていたんだけど。」

「お前さんの友人だという?」

「うん。やっぱ、荷物置いたら先に言ってて。後で合流する。だけど、探索者に危害を加えないように。始末書書きたくないから。」

「伝えとくわ。」

「頼むね。」

エピゥールはデルシネアらがいるテントに進み中に入る。

「久しぶってどうしたの!」

「探索の最中で身を考えない行動をしたせいで。」

「いや、夕夢のほうもだけど君の左目!禍々しいよ!」

「これ?目を交換したから。」

「私たちにも目を交換する風習は有るけど、かなりやばい意味だよ?」

「でもそれはそれで、これはこれ。」

「そもそもなんで瞳を交換したの?」

「あっちの世界が見たかったので。」

「それなら私が記録してくる映像媒体を焼き増しして渡すのに。」

「生だからいいものがあるんだよ。」

「それは同意。死なないためにあがく獲物の血はとてもいいんだ。」

「それはなんか違うと思う。」

「私も仲間を待たせているから行くね。」

「何をしに行くの?」

「裏切り者の始末。」

 

「待たせてごめん。」

「いんや、あんまし待ってはおらん。そんで、どこにおるかわかるもんなのか?」

「裏切り者は臭うんだ。それを辿る。」

「ここらで気を付けるべきは竜どもか。」

「そう。黒竜には特に近づかないで。身体が崩れるから。」

「体勢とかではなく肉体が崩れると。」

「そう。あなたも不味いからいたら教えて。ヴァールの作った頭の悪い弾丸を打ち込むから。」

「あーこの前わてが弾いたあの弾丸か。」

「一応これ、人に向けるものじゃないんだけど。」

「だがそんなに威力が必要なのか?」

「どちらかというと実践演習。ほんとにさ、なにが『面白くない武器はその時点で駄作である。』だよ。頭の悪い天才だよ。」

「それじゃそろそろ行くぞ。」

「話を聞いてよ。」

「だが火力特化は場所は選ぶが素晴らしいぞ。弾丸は遠距離から素早く仕留めるのにいいが強者にとっては居場所を知らせるカモだ。」

「それを実演した人がいるからね。」

「だが通常の徹甲弾程度ならB以上のアンサラーも弾けるもんやぞ。」

「とりあえず。あの夕夢がかなりやられたということはそれだけ不味いことが起きたということだ。警戒しつつ走るよ。」

「ペースはどうする?」

「四十。」

「あいよ。」

血鬼の集団は臭いを追って走る。一時間後。

「うっ。何か腐っている?」

「並大抵の質量ではなさそうやね。どないする?見てみるか?」

「そうだね。原因がわからないとどうしようもない。北東方向から流れてくる。」

「なら先に行くで。」

「わかったら通信で。みんなも硬血術をしといて。」

「「「はい。」」」

『見えた!なんや?これが黒竜か?』

「どこにある?」

『わての全力飛びで十六歩。』

「一キロ先か。行くよ。」

「たしかに黒竜だ。」

「やはりそうか。どおりで近くに獣共がいないわけや。」

「けど寿命にしては小さすぎる。まだ幼体?」

「それだけではございません。」

「何かあったの?」

「この死体の頭部から尾部にかけて穴があります。」

「だれかが狩ったってこと?」

「こちらからも一つ。腹部が切り裂かれておりまるで剥ぎ取りされたようです。角や鱗、爪の一部も消失しています。」

「近くに灰があるとは。これ、もしかしなくとも誰か焼いて食ったろ。…エピゥールさんや。子がいるってことはさ。親もいるはずでは?これささっと逃げた方がいいのでは?」

「報告!南西に更に巨大な黒竜の死体が!原形を留めていません!」

「その残骸、あの散弾撃ったのか?」

「この抉れ方、間違いない。何度も見たわ。」

「これは帰ったら聞き込みしないと。」

「こちらはまだ臭いがましや。時間差でやられたみたいやな。」

「子供の方に行こう。裏切りのにおいがする。」

「その骨、どかすことはできる?」

「これくらいの重さなら余裕やで。」

「ねえ。どかすときに指めり込ませた?」

「いや、抱えて放り投げたんやが。」

「この穴さ、明らかに片手で無理やり持ったでしょ。」

「コンクリ柱を振り回した結果に類似しとるの。」

「もういいや。そしてビンゴ。事切れてるけど裏切り者だ。」

「これはひどいな。何かわからん。」

「臭いの源流はここからさらに北西。距離はおおよそ六キロ。」

「悟られぬように行くか。」

「それなら千影から教わったステルス方法で行くよ。」

「どんな操血術なんや?」

「爆速で駆けて行くんだけど。」

「そない無茶通そうとするのは悪い癖やで?」

「あなたの手を出して。」

「なんか渡すんか?」

エピゥール、手を持つと北西の方角へ千牢を放り投げる。

「何すんじゃボケ!」

「歩くよりはさ」

エピゥールは自力で蹴り跳ぶと千牢に追いつき背中に足をのせる。

「こっちのほうが早いの。」

両足で踏み落とす。

「それはま、はい。」

落ちた先は石造りの小さな村。落下音を聞いたのか人影が出てくる。

「お前さん方が裏切り者か。」

裏切りの単語に敏感に反応した彼らは一斉に剣を出す。

「粗製な剣だな。やはりあんたらは没落して裏切り者になった刃派の末端か。」

「だがあんた一人で何ができるんだ?」

「ここで始末すれば。」

「そうだ。戦う前に一つ。この村から何名か外の様子を見に行った奴がいたか?」

「あんたらまさか」

「わてらは手を出してない。既にミンチや。」

『千牢さま、遠方に消し炭もありました。』

「あー消し炭もあったらしいが。」

「もう話さなくていいよ、千牢。ここからはこの私、棘派代表エピゥール・ファンがお相手する。」

「代表ってまさか」

「眷属が血鬼に勝てるわけないでしょ。」

エピゥールは掌に育てた小さな棘を眼前の眷属に埋め込む。

「あの千影のようにおとなしくしていれば粛清は免れたのに。やっぱ依縁生まれはよくないね。」

棘はまるで根を伸ばすように裏切り者の心臓を穿つ。

「その言葉はわてにもか?」

「そうでないと思う?」

「ふぅ。すまん。」

「終わったし帰ろう。」

「これどうする?」

「ほっとこ。他の物撮りつつ帰ろ。」

 

同時刻、ルグラはだだっ広い深夜の海を歩いていた。抱えられているメメンスは上目遣いで口を開く。

「あなたが言っていた可能性ってさ。いくつかあるの?」

「今は私の、夕夢の、夢雨の、ニヘルの、アイアのが。」

「それ見てもいい?」

「落とさないようにね?」

「ありがとう。」

「今入っているのは夕夢の。」

「わかった。」

「見終わったら言って。取り替えるから。」

「はーい。」

「その間にケテルに刻んでおくか。」

ルグラの右手にローマ数字とむき出しの歯車と針だけの歪んだ時計。彼女のコギト『ケテル』を顕現するとⅠのパーツをつつき始める。複雑怪奇な回路に数字やアルファベット、記号の累乗を刻む。メメンスを抱えていながらも所作は素早く丁寧である。

「これは核の部分。mRNAやtRNA、リボソームにアミノ酸に当たるものも登録しないと。いっそのことアミノ酸は何も考えないで片っ端から変換して放り込んでおくか。少しずつ摩耗するテクスチャだから多少過剰気味に入れておこう。」

左手あたりのピクセル状になった空間から次々とモザイクを出すと破片に復元しケテルの中央部に同化させる。

「ルグラ。見終わった。」

「何が見れた?」

「夕夢がスペカを経てデルシネアと旅を始めて一級眷属アベントゥーラになった。」

「血鬼の一級眷属は気になる。けど、私じゃないからテクスチャは分岐的可能性ではなく移植性表面体で不十分。けれどコードは分かっているから恒常性表面体に変換すればいけるね。でも今はそのための設備がないし、戦うことは必要ない。謝る言葉だけだ。」

「感傷に浸っているところごめん。無粋な奴が出てきた。」

「鯨、ではなさそう。」

「近くの遺跡の自立兵器かな?」

,D@;QTOを目の当たりにしても何も知らない二人は立ち尽くしているばかり。

「兵器にしては有機的なパーツだね。ほらあの管。」

「注射針みたい。こっちに伸ばしている?」

その管が左腕に巻き付かれる。

「!(ばっ!)」

「攻撃?ルグラ。触れたらだめなのがあるから警戒は怠らないで。」

反射で振り払うルグラと注意をするメメンス。

「。」

突然,D@;QTOは次元のはざまを開きその中に消えた。

「いったい何だったの?接触したり移動したり。」

「猫みたいな挙動だったけどあれ、相当やばい奴みたい。ほらこの記事見て。」

「いつの間に新聞を採ったの?」

「さっきのわちゃわちゃの時。」

「,D@;QTO、壊滅、逃げろ。ならなんで私は襲われなかったの?」

「エゴイストだからか体が体だからか。」

「どちらともあり得る線だね。」

「そういえば拠点って、どの方角にあるの?」

「羅炎の管轄内、山のふもと。」

「もう今は真夜中だし寝ないの?あと右に四度回って。」

「必要ない。たまに手入れをしたら大丈夫だから。方向ありがとう。」

「ニヘルは過保護だから夜の景色は見たことないんだよ。だからこれはなかなか。」

「今は鯨共も寝ている。静かでいい。」

「透明な気分になれるね。満月の月光も遮りなく届く。」

「一回、空から見てみる?」

「お願い。」

「三キロまでなら自前で行く。」

「三キロで。」

「はーい。」

膝の曲げ伸ばし一度で地上からルグラの姿は消える。

「どう?」

「地よりもいっぱい景色が見れる!あっち、光っている!」

「地上にも星はあるんだね。」

「宇宙は空にあるけど、落ちた星もあるみたい。」

「魔族の昔話だと、落ちた星光は不思議な力を秘めているみたい。吉凶や運命を伝える手紙と信じていたようだね。ニヘルからの話、かなり昔のものだけど。」

「それって何年前?」

「アイアと会う二年前くらいだから大体十二年前だね。」

「私と君たちが出会って六年後か。そんな話をしていたんだ。妬けるなー。」

「そろそろ着地するけど危ないから」

「色は使わないで!私が何とでもするから!」

「でも」

「…。」

メメンスが人差し指を下げると二名は地上に音もなく降り立っていた。

「あなたも色は使える。ニヘルでもあるから。色を使い分ける才能だけならルグラのほうが上なのも知っている。けどとても痛々しくて。なのに幸せそうなのが怖いの。よくわからない偉そうな奴らに目を付けられることはしないで!あの事故のようにニヘルと自分を悲しませることをしないで!」

月光に照らされながら小さな両手でルグラの胸元を掴みながら激昂をするメメンスに返事をすることなくルグラは歩みを進める。

「あなたは色を使うためにはカラバサスを体に差す必要がある。どうしてかわかる?枷なんだよ。でも枷になる鎖は一本を除いて形だけになってるの。でもそれはいつまでもつかわからないの。」

「なんで過去形なの?壊れていたんだよ。初めから。」

「嘘。」

「嘘じゃないよ。」

そこで足を止めるとメメンスを下ろす。眼前にピクセルを出すとそれは円形のコンクリートに形を得る。上に乗ると服のまくれを確認しくるくる回り始める。

「ネジ巻き動きを止め嗤う子出来ないオートマタ。妄想流し続けそしてまた巡る。こんな舞台であなたと踊りたい朽ちてる顔したマッチガール。鎖の牢獄にはイカれた回路のみ(鏡のあなた、私はどぉこ?)壁にも刺さる石柱(わたしはあなたに、どこいるの?)知ってるシナリオ、つまらない。(罪には罰に罪問えぬ。)灰になったの恵のために(書き手を殺すその言葉)見たい身体みたい見たい?看たい観たい痛い異体診たい遺体射たいしたい肢体死体姿態避退期待機体来たい気体希代奇胎着たい痴態地帯似たい二対二体自体辞退義体擬態履帯避退額(出力に開花が花見している)割れたガムに過酸化水素水月の光添えて飾ったらゴリラのマーチが選ばれて素面のスピーカーに寅を歌わせた神様よ。ピアノのメイドに三途の川バタフライ食べさせる知恵盛り付けた才能辛めにに縛ってそのまま酔いましておみくじ引きましょ?知恵も食器も胃に収まっては花束を活けるより気は晴れて体は重いでしょう。睡眠は理想にはほど遠く破綻して沈潜しジャムった指輪は本に等しいでしょうか。いいえ。今すぐストーカー用生産品に夜を加えて里にしましょう。破裂した材料は固定して顕微鏡に回そう。細菌と味の背比べはハムスターの数学教師よりはチープでしょう。」

チョイチョイ「ルグラ。壊れた挙動をしないで歩こう。私を抱えて。」

「そうだね。でも足元に来るのは危ないから言葉で言って。」

「さっきから言ったのに聞こえないからだよ。」

「ごめん。それじゃまた行こう。」

「この調子だと夜明け後三時間後に着くね。」

「覚悟は、出来た。また歩こう。この先が崖だとしても。」

 

「こちらに着いた。」

「体ふわふわな感覚は楽しかったな。」

「それじゃ私は友人のところに行ってくるから君たちはテントに行って休んでて。」

「わかったで。」

「それじゃ。おい二人ども!しっかり何があったか話してもらうぞ!」

「エピゥール!まだ起きるどころか呼吸もしてないんだから静かにして!」

「それ死んでるだろ。」

「心臓は動いている。ほらここ。」

「うわグロテスク。」

「何があったかは私も同時刻で見ているから話せるよ。」

「なら。」

エピゥールはデルシネアの隣に腰掛け問答を始める。

「黒竜はどうやって殺した?」

「子供は増加質量貫通弾、親はハピトリ工房製空中点火式炸裂粉砕弾。」

「裏切りどもを炭にしたのは?」

「あの感じだと広域白熱反応弾だと思う。」

「どうしてあんなことに?」

「夕夢の敵との向き合い方を変えてみると言ってからだんだんと。まるでおもちゃに急に飽きた子供みたいに。」

「少しいい?夕夢の話だといまは精々十七歳、幻葬に入ったのは十六歳。攫われたのは六歳ごろ、十年の空白期があるわけだがあの知識、語彙、人格形成プロセスはどこからだ?」

「確かにそれは気になっていた。」

「最も高い可能性は主任がそれらの知識を教えた。でもそれだと閉じ込めた意味が解らないし主任はなんのためにそれらを教えた?」

「その主任はここにいる。カチコミかけて吐き出させよう。」

「えっと、このスペカは?」

「すぐ戻る。」

「そうだね。すぐ戻ればいいか。」

「おや、姫さん、エピゥール殿こんにちは。」

「ニヘルさん、主任はどこ?」

「主任ならそこの頑丈そうな豆腐ハウスにいるぞ。昔の友人と駄弁っているらしい。」

「ありがとうございますアイアさん。」

「ところでエピゥールさんよ。その匂いは?鼻が曲がりそうだ。」

「裏切りの血鬼どもをヤッたからですね。」

「それはどの派閥だ?」

「刃派です。あの依縁から出てきた救えない枯れた花ですよ。」

「うぇ、オロ、ゲぇ!」

「アイアさん、どうしたんですか!救急班!千牢、人間用の医療キット、持ってるでしょ!持ってきて!」

「ああ、これだろ。久しぶりだな、桜盤。二十一年前はあんたを捨てて悪かったな。」

「!」

「更に顔色が悪くなった!」

「千牢。何故出てきた。」

「何がおかしいんだニヘル。こいつは唯一生きているわての弟や。命の心配するのは当たり前や。」

「あんたの存在が毒なんだ。肉親の心配をしているなら今すぐ離れろ。私の友人を苦しめ蝕むな。」

「毒は自分自身だよ。わては増量された毒なだけ。毒を消したいなら根本から焼かないと。」

「いいさニヘル。一度こいつの顔を殴ろうと思っていたんだ。あんたの英雄譚を聞いた先日から。」

「潰すなり枯らすなり好きにしてくれ。」

「そうだな。殴った後で口から真下に串刺しだ。」

振りかぶった拳を打ち付ける直前の声が拳を止める。

「アイア!」

「ルグラ?」

「私。一度あなたに謝りたくて!」

「ルグラ。なぜメメンスを連れている!」

「ごめんニヘル。でも私の鎖にこれ以上の子はいないよ?」

「私も楽しかったから許してあげて?」

「まずはアイアの方を優先する。大丈夫か、アイア?」

「桜盤、桜、常盤、法務官、姉、身代わり、貴族、悦、傷、派閥、全滅、全滅?巡り続ける、業、軽蔑、螺旋。」

ニヘルの揺さぶりにも動じることなくただ言葉を漏らしたアイアは立ち上がる。

「そうだよ。俺だってこのくそったれた永続の螺旋にいるんだ。朽ちても倒れてもまた芽吹き満開に咲く。逃げられないことに目をそむいて仮面をかぶっても傷は膿まず湿っている。はじめっから諦めて台本道理に従えば苦しまずに済んだんだ!全部俺のせいだルグラ!あんたも桜に見初められなければこんなことにならずに済んだのにさ!」

荒々しく剥いだ仮面の下の素顔。二本の細い傷から鮮血が絶えずにじみ出ており、左目に負った火傷らしき傷は花弁のような形をしていた。左手の解けた包帯の下には外骨格のような関節の強調された赤い腕が威光を放っている。まるで蛇のような細い瞳孔と黄昏色の角膜はチロチロと動いている。

「咲こう。酒の香りと罪の鮮やかさを知るものとして。」

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