アンサラー 幻葬   作:月導

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ニ十章~業務~

「デクショ協会一課、書庫管理のトーリトと申します。」

白いカソックを身に包み古めかしい皮製の本を抱えた水色の髪の男性は事務所内を興味深そうに見ている。

「なにか、興味の惹かれるものがあったのか?」

「ええ、ニヘルさん。」

「茶を淹れたからお飲み。」

「ありがとうございます。」

丁寧な所作で一口飲んだトーリトは話を切り出す。

「さて、貴女から聞いたことを実証したいが、なぜ貴方はその恰好で?」

ニヘルは女性顔でメイド服のままだった。

「気にするな。」

「気にしますよ。先日も私たち、面食らいましたからね。」

「なら少し時間をとるぞ。」

「ええ、お構いなく。」

ニヘルは体を変えるために戻る。

「あなたがデクショ協会からいらっしゃった方ですね。」

入れ替わるようにニヘルの工房からルグラが上がってくる。

「君は、ルグラさんですね?」

「そうです、御足労、感謝します。」

「君にもいくつか、お話を聞きたいですね。」

「ですがそれは主題を終わらせてからにしてください。それと、そちらの集める類の情報は私より夢雨の方が多いかと。」

「私は、エゴイストである君に話があるんだ。」

「トーリトさんでしたっけ、君達は好きになれません。」

冷たい目線を注ぎ始めるルグラ。

「何か地雷を踏んだかい?」

「知恵もどきなんか好きになれる文学の一つでも暗礁させてみろ。」

ルグラは外に出る。

「?」

顔が疑問符のトーリト。

「理解など出来るか。千景の工房に行こ。」

そして消えるルグラ。

「直したぞ、話をしようか。…ルグラはどこへ行った?」

「あのエゴイストは外へ行ったよ?」

「…そうか。」

物憂げな表情をするニヘル。

「なんかあったのか?」

「いいや。」

「なら早速話をしようか。話にあったネビュラはどこだい?」

「ヨブカは白に…居なくなってるじゃないか。(いや、繋がっているか。近頃は色を使用していないから問題もないだろう。)待っててくれ、連れてくる。」

「ええよ~。」

「…。」

そうして霧の中

「ヨブカ、いるか?」

霧の中にいたヨブカの服は大元のデザインは変わってないが汚れがなく黒鉄のアクセントが鈍く光っている。

「ニヘル、お姉ちゃん知らない?」

「ルグラは今外に出かけている。」

「そっか。」

「初対面より喋りが滑らかだな。」

「いろいろおしゃべりしたらね。」

「(人間よりも学習、成長スピードが著しい。ネビュラの成長をしない点が反転したのか?)それは嬉しいね。」

「なんか話をするんだって?」

「ルグラから聞いたのか?」

「そ。」

「なら話は早い。気を悪くするだろうが耐えてくれ。」

「何、気味の悪い変態が現れた?」

「その言葉使いはどこから?」

「ナカマが知ってた。」

「そうなのか。」

「お姉ちゃんからだったらどうするか、考えたでしょ?」

「いいや。」

「そっか。」

「待たせて済まない。」

「初めまして。」

「おお、君がか!どれどれ早速」

両手を開閉させながらこちらに近づくトーリト。

「待ちな、何をしようというんだ?」

それを阻むニヘル。

「もちろん身体を調べるんだよ。」

「どうやってだ?」

「まずはその布を剥がないとね。だって邪魔じゃん?」

「やはり君らを呼んだことそのものを過ちと気づけぬ己が一番嫌いだよ。」

「何がいけないんだい?知りたいことを知ることこそ、我々のいる理由さ。それとも、貴方は我々の知識探求を邪魔するのかい?」

「ねえ、おっさん。この服を布と言ったの?」

「私には探究の枷になる布でしかないさ。」

「この服、お姉ちゃんに直してもらったのに。貴方に似合うというだけで直してくれた。それを、お前は邪魔と言ったんだ。」

突然トーリトに掴みかかるヨブカ。

「そっちが邪魔という理由で大切なものを壊すなら、こっちは不快という理由一つで君をこちら側にするよ?」

「こちら側?」

「私の同族にするんだ。でも、私みたいにはなれないだろうね。異端なんかになれるという哀れな幻想も持てない一般になれるんだ。特別な知識を得たい君らにはこれ以上ない屈辱だろうね。」

「君ぃ、このまま手を下せばこの事務所のみんなが路頭に迷うだろうねぇ?」

「そのひょうひょうとした態度、へし折ってやる!」

「済まないがヨブカ、抑えてくれ。仲間を巻き込みたくなどない。」

「それはヤダ。巻き込みたくない。でもこいつは殺したい。」

「わかってくれたようで何より。ならば早/速」

彼の首が血も零さず上に跳び誰かの手に乗る。

「先日も仕事したはずなのに。デクショは度重なる禁忌に狂っている変人しかいないのだな。こいつはそれなりに生き残った奴だったか。」

「子琉。」

「首がきれいに。どうやったの、お姉さん?」

「お前さん、男だ。」

「お兄さん?」

「後こう見えて五十路だ。」

「おじさん?」

「因みに何歳に見えるんだ?」

「ニ十歳ちょい?」

「両親に感謝だな。(チュー)」

「汚さず片付いたのは助かるが君はそれほど安い男だったか?後それは?」

「自力で起爆出来て一発アウトの火薬庫のご機嫌取りと導火線の鎮火という大仕事は安くないよ。君の娘と同価値までは言わぬが主席はそれと同等に捉えているよ。後これは出店で買ったザクロジュースだ。」

「仕事着はどうしたんだ?あの長ったらしい寓話を書き切ろうと残る布の包帯はどこにあるんだ?」

「刻呪が落ちたもので羅炎に預けている。」

「それほど安価な墨だったのか?」

「消耗するのさ。その呪いで体の老化が止まっている。」

「その顔、何か良くないのか?」

「停滞しているんだ。この腕を見てくれ。」

そう言った子琉は袖をまくる。傷と言えるものはないが。

「その仕事は一方的なことが殆どだが抵抗もある。その末、傷はできない。生きる感覚がしない。道具にそのようなものは必要ないが、同型は皆壊れた。旧式施術の対価は人間のままなのさ。」

「…。」

「お前さん、君をどうするか決まった。」

「壊すの?」

「原則不干渉だと。」

「どういうこと?」

「私の偉い人が君を人間として扱うと決めた。」

「それはナカマはどうなの?」

「そちらは人間とは認めていない。」

「(上が新たに人間と認めた?生半可なごまかしでは奴も申請できない重要議題なんだぞ?)」

「そうだ、こいつの修理をしてくれ。急ぎかつ秘密裏に。」

「処刑者専用支給武装のフルコースか。」

何処から出したのかと思える豊富な武器や触手。

「さすがに複製は困るが修理中に技術や機構を知る分には構わない。」

「その間は無手だろう?どうするんだ?」

「何のための変換施術なんだ?今の私は男なのさ。施術も重ねているからそこらは心配してない。策に弄され嵌められてはどうにもできないだろうが。」

「猪なのか?」

「猪は突進中でも跳べたり向きを変えられるのだぞ?」

「ニヘル、そのおじさんとどういった関係?」

「ルグラのことを助けてくれた恩人の一人だ。」

「こいつは権力者は好いていないが一部の者らには小豆程度の信頼をかけているのさ。」

「めんどくさい男?」

「そういった認識で相違ないさ。これらを修理する、主任は…機材を回収しに行っていたな。」

「私は霧の中でもいいよ?読みかけの本があるし。」

「子琉はどうするんだ?」

「ひとまず処理の報告をしたらまた戻る。君の娘にも構ってやりなさい。」

子琉は事務所の外に出る。

「それなりに構えていたつもりだったのがな。」

「アイツにバレているくらい構い不足だよ。」

「それは悪かったな、メメンス。」

背後からてこてこ歩いて来るメメンス、いつぞやのあの人形です。

「かわいい!あなたの名前はメメンスというの?」

ヨブカはメメンスをひょいと持ち上げ目を輝かせながら名を問う。

「そうだよ。メメンス、クロス・メメンスというの。よろしく。」

「ニヘル、この子とお話ししたい!」

「大切にしてくれよ?」

「もちろん!」

「主任が返ってきたら迎えておいてくれ。こいつらの機構を隅々まで知りたいから集中する。」

「わかった。」

「がんばってー。」

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