アンサラー 幻葬   作:月導

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幕間~夜街~

「空気が悪い。」

ルグラが千影の眷属、アレソミ・エッワーテを訪ねてやってきたプレトンは多くの煙を吹く煙突が生えた工場が各所に並んでいる。心なしか視界も曇っている。

「どうせここに来たなら答え合わせもしておきたいな。」

紹介状に書かれた座標へ向かう。ここの住民の表情は暗い。希望を捨てて虚無になっていた。だが頭上のシルクハットだけは堂々とあった。

「ココの身分証明だったけ。」

大通りから少しそれた三階建ての建物、その二階に探偵事務所【オレンジクロック】があった。

「こんばんわ。」

ドアを開けると質素な調度品が各所に並べられていた。正直言って歩きづらい。

「いらっしゃい。どのような依頼かい?」

部屋の奥にアレソミが座っていた。

「あなたの母から様子を見て欲しいと頼まれた。アイアの妹のルグラだ。」

「ニヘルさんの縁者でしたか。」

「紹介状では体調や営業を聞いて欲しいとありますね。」

「問題はないね。」

「ちょっと依頼してもいい?ここの上級職の人に伝手がないか聞きたいの。」

「伝手ならあるよ。ちょっと待ってね。」

作業机に置いてある電話を取り話し始める。

「あ、突然ごめんね。実はさ、私の母の友人の妹が此処の職員に会いたいってさ。…うん、うん。本当?そっか。うんうん。はいはーい。それじゃぁ。今から来るって。」

「そうなの?ありがたい。」

コンコン

「あ、来た。まったく、贅沢な奴だね。」

アレソミがドアを開けると平均的な身長の青年が立っていた。

「また私用で加速したね。」

「君に会えるならね。」

「アレソミさん、この方は?」

「おやあ、貴方が私と会いたいという方でしたか。どうも、ここプレトンを取りまとめるアルクタ・スーテです。」

「取りまとめるってまさかの?」

「君らの住むアリゴの王に当たる方だよ。」

「えぇっ!?」

「ささ、何を聞きたいんだい?」

「(まずい、こいつ勘が鋭い奴だ。馬鹿正直に湾曲鉄道の秘密をなんて言えないし、日常的な話からコードを生成しないと。)なら、普段どのような業務をしているかを聞かせて欲しい。」

「普段か。毎秒のように入れ替わる決算処理、問題解消の人員編成、徴収時間の管理、時流貸与承認かな。」

「徴収時間と時流貸与とは?」

「ここは一日の時間を金で変えられるのさ。二十四時間が基本だが三十や四十に伸ばす金持ちや十二にして金を作る貧乏人とか。寿命日数によっても金額は大きく変わるよ。あ、ただ客観的な寿命を延ばしたり減らしたりもできるよ。そっちは日数で金額が決まってるよ。時流貸与は一時的に主観的な時間を加速するプロトコルだよ。低級職員は一日で使用可能な時間が少ないが上級職員は上限が増えたり無制限になったりするよ。以前は時間屈折怪盗なんて盗人がいたがすでに殺されたらしい。損害時間は二十三万三千二百三十時間毎立方メートルだよ。」

「時間毎立方メートル?」

「一立方メートルで一時間に流れる時間の量を表したここ独自の単位だよ。」

「つまりまぁごっそり時間が奪われたと。」

「忌々しい。どこに行ったのか。」

ルグラは主任が処したことをまだ知らない。

「まだ何か質問はあるかい?」

「いえ、貴重な時間を割いていただき感謝します。」

「そうかそうか。お役に立てたようで何より。」

「それで、対価ですがアレソミさん、いくらでしょうか?」

「お金は正直不要なんですよね。税金を納めたら後はソルセドフから届く薔薇の運賃を払うくらいなので。」

「あの、それじゃぁ何で返したら?」

「今日は何日でしたっけ?」

「パーティへ行く日じゃないか!」

「パーティ?」

「そうじゃん!よし、そうしよう。ルグラさん、私たちと一緒にナイトシティへ行きますよ。予定などは有りますか?」

「無いですね。日雇いで仕事をしているので。」

「君に私たちの護衛をしてもらう、それを持って対価を払うとしてもらおう。」

「あんたはむしろ金を払う側でしょ。」

「代金は此方が持つ、それでいいかい?」

「私は大丈夫です。」

「奢り決定。そうと決まったら着替えないと。」

「ココから最寄りの鉄道に集合だ。」

アルクタはドアの向こうに消える。

「ナイトシティに行くとなればあなたの服は些かミスマッチですね。ちょっと来てください。何着か見繕うので。」

「わわっ。」

 

三十分して着替えが終わる。

「ねえ。これ、肌面積多くない?」

着替えさせられたルグラの恰好としては黒のノースリーブとミニスカート、、ニーハイソックス、灰色のパーカーを腰に巻き両腕にチェーンとタトゥーシールが付けられていた。いつもの服よりもはるかに目に悪い格好。

「むしろナイトシティでは普通の恰好ですよ。ひとまずこのジャケットを着ていきましょうか。」

身体をすっぽり覆うジャケットを着せるアレソミの恰好はアロハシャツに丈の短いジーンズ生地のショートパンツ。

「こういった服を持っているということは、貴方たちは度々そのナイトシティに?」

「そうだよ。それじゃぁ行くよ。」

手を引っ張られここに来るために乗った駅まで来る。

「こっちだよ~。」

入り口にアルクタが立っていた。髪を染め一瞥で彼とは思えなかった。

「チケットはこれね。」

「どうも。」

「これで三回目かぁ。」

「おや、何度か乗ったことが?」

「今日が初めてです。本日で路線は三本目です。」

「これは贅沢な。」

「なし崩しですよ。ありがたいです。」

「それじゃ行くか、ナイトシティ。」

ファーストクラスの一室に案内される。

「私が大海に行ったのより豪華だね。」

「VIPルームにした。A級アンサラーの月収並みの値段だよ。」

「ヴぇ!?」

「相変わらずココのトップなんて肩書に恥じない散財っぷりだね。」

「金が有り余って税金がきついのさ。」

「かなり切実な理由でやることが派手ですね。」

「部外者はいないしジャケット脱いじゃうか。」

アルクタの恰好は偶然かアレソミの色違いだった。

「そういえばお二方はどういった接点があって親しくなったのですか?」

「始まりは十一年くらい前かな。ブリキのキノピオというセルヒスが各所で被害を生み出した。接触した者を自身の胸部の空間にねじ込む。挙動はいたって簡素だが厄介だったのは多数の眷属というダミーを作り出したことだ。そのせいで本体を殺したはずなのに二日後にまた発見されるなんてことがざらだった。それを解決したのが彼女、アレソミなんだ。」

「厄介だったよ。破壊したサンプルの座標、破壊部位、次の本体の出現場所、材質、被害人数、現実強度あらゆる条件を探したのにさっぱり。まさか装甲の厚い鯨にファクトリーを作っていたなんてわかった時は頭を抱えたよ。そんな初歩的な方法だったなんて。そこで彼に目を付けられて度々依頼を融通してもらって今に至るまでって感じだね。」

「やっぱりそこは運って感じなんだ。」

「そうだね。」

「彼女のおかげで厄介ごとが縺れる前に解決して仕事が楽になったよ。そういえば君は何か発明をしたことは有るかい?」

「ありはします。」

「本当か!?是非見せてくれ!」

「(あれは見せたらいけない。何かみょうちきりんなものは…散弾ミニガン、手投げタンクローリー、三角定規の脳みそ、禿のポスター、瓶詰めの叢雲、携行ミサイルコンテナ…碌なのない。)今は持ってなかったです。」

「ならどういった類のかだけでも!」

「あーえっと、瞬時に五億年を知覚させるボタンです。(もういいや誤魔化そ。)」

「ほうほう、どういった目的で作ったんだい?」

「時間に関した実験時に出来たので特に目的はないです。」

「自分だったら執行ついでに時間を回収するかな。一人分では五億年でも少ないが…まぁおまけと考えたら多いが。」

「五億年が…少ない?」

「各所で消耗するからね、しょうがない。」

列車は苦しみを乗せてまだ走る。

 

「さあ着いたぞここがナイトシティ。」

目に悪い赤と青のネオンの光、天高く建つ十何本のビル、喧しいがや騒ぎ、コンテナを利用した多くの得体のしれない店。秩序泣きのナイトシティは夜が明けない。

「こんな場所、わざわざ来る価値があるの?」

ノースリーブ姿のルグラは怪訝そうな顔をしている。

「裏世界の情報も把握しなくては容易にまるめ込まれてしまうからね。」

「人を使った方が安全でしょ。」

「一人挟んだだけで大きく歪む。それではいかん。自分ですら正しく認識できていないのに。」

「そうか、そんなものか。」

「まずは酒場に行くよ。酔った人間は口が軽くなったりもするから。正しさは七割減だけど。」

「駄目じゃん。」

「三割に利益があるの。はぐれないでよ?」

「あんな殴り合いに近づきたくないよ。」

路上で半サイボーグの男どもが殴り合いの殺し合いをしている。

「替えの体って粗末に使われるね。頭を潰されたりしないのかな?」

「ここの規則には頭は狙うなってある。だから意外と死なない。」

「なら〆るなら首から下を消せばいいんだ。簡単だね。」

「はい、ここが酒場、【ロックテク】だよ。」

蛍光灯で縁取られた看板が目を引くカウンター型の酒場。慣れた様子で二人は注文を済ませる。ルグラもそれに倣いおすすめを頼む。

「ここは椅子がないんだね。」

「さっと寄ってさっと酔う。それがここなの。」

そうして混ぜられるカクテルを眺めていると中身が並べられる。

「これがおすすめのクイックレッドかぁ。唐辛子の香りがする。」

一口飲むと焼ける痛みが一瞬しその後にほのかな酒の香りがする。

「これは確かにおすすめと言われてもおかしくないね。量を飲むのではなくて味や香りを愉しむものか。」

「それがいける口ならこっちもどうだ?」

「風邪をひくかもしれないけど。」

アイスブルーというドリンクを勧める二人。

「なら貰うね。」

アイスブルーはとても冷たかった。飲み切った後も体の芯から冷える感覚がする。

「酔い覚まし?」

「気づくのが早いね。そうだよ。」

「あっははは、RTA一位だよ。」

「阿保くさ。」

大分打ち解けたとき、不味い奴らがやってきた。

「店主、ビールを最大ジョッキで頼むよ。」

「ルグラ、目を合わせないで。彼、怨恨衆だ。それも長兄。」

「裏の巨大勢力の一角だっけ?」

「そう。だから因縁「店主、私はクイックレェッドを。」…何も喋らないで。」

もう一人やってきたのはニヘルが以前話題に出したことのある階級に煩い裏勢力、【級人階】。その最高幹部。彼らは自分よりも格の低い相手から話始めることを許さない。そんなでも続いているあたり、組織運営の腕は確かであるようだ。

「何ゆえに斯(ここ)に呼び寄せ給うぞや。何等の憂慮が生じたのか。」

級人階の男は難解な古語で怨恨衆の長兄、ロゥーフェに何があったのかを聞いた。

「奇妙な噂を知った。呪いだとよ。」

「聞くべくに値すとも思わじ。いかにして、いずこにてまかせを得たるや。」

「写真もある。場所は決まっていないが仲間からの情報である以上、出まかせである可能性はないだろう。」

「肉は裂かれ、骨は砕かれておる。獣に啖呵を切られしような、身躯の切断部は漆黒に腐り果てている。此の症状は羅炎という国に於て発見されし変死者に酷似しておる。呪いと申す言葉、その的を射るものならんや。」

「これはどうするべき案件かな?」

「先ほどより、彼方を見つめられておるが、何かを気にされるものや者か?」

「あの白髪の少女な、知り合いに似ていてな。」

「何と申さん。」

「ニヘルだ。」

「え、ニヘルの知り合い?」

ぽつりと言葉を漏らす。

「ルグラ!?」

「ルグラ君!?」

「やっぱり君はニヘルの血縁者か?」

「あの、はい、そうです。ルグラ、クロス・ルグラと言います。」

「俺はロゥーフェという。こっちの古風な話し方をする男はクーロという。」

「吾が名は先に子奴が言ふ通りにて候。級人階の中に於いては二番目に尊き者の一柱なり。」

「してもルグラといったか、奴よりもかなり派手な格好だがそれは普段からか?」

「いいえ、普段はもっとしっかり来ています。今は此処に馴染むためにこのような服になっています。」

「確かに一理ある。ん?クーロ、なぜだんまりを決め込んでいるのだ?」

「…。」

「もしかして私のせい?」

アルクタが何かに気付いたようだ。

「あーそうか、国の実質トップにあんたから話しかけるのは無礼なのか。」

「(バレてる。)あー私たちはお暇しますのでそれではこれで。」

「(ペコリ)」

プレトンの二人が離れたのでルグラも離れようとするが肩を掴まれ引き止められる。

「ちょっと待ってくれよ~。せっかくあんたと初めて会ったのにつれない奴だね~。」

「汝の兄の言質を、其れにして聞きし。是に、自由に口を啓くことを許さば、語らん。我らの評は、社会に漂いし評に異り、彼を危うきを認むる。故に、汝からの評をも聴きたし。」

「あのー、私のお供の二人は?」

「そそくさといなくなったよ?」

「(頭を抱える)」

「身の程知らずに語りかける者には憂慮するに及ばず。此処にても名高き面持ちならば、難題は彼方より去りし事であらん。」

「そういった問題ではないんですよ。(ピコン)連絡?失礼。」

ニヘルから曰く「ヨブカがルグラの写真を欲しがっているから何かしら撮って送ってくれ。」と。

「誰からだい?」

「ニヘルから今の状況を写真で送ってくれって。」

「なら俺も一緒に写り込んでもいいか?」

「我も共に写し給うることを望む。」

「わかりました。」

「俺が一番身長が高いからカメラ借りるよ。」

「はい、どうぞ。」

「ええと、こうだな。何かしらポーズ取って~。」

結果、クーロは腕組み、残りの二人はピースになった。

「それって通話できる?」

「出来ないですね。計量モデルなので文字や写真のやり取り位が精々です。」

写真を送信し端末を懐に仕舞うと小脇に抱えられる。

「え?」

「さーて、どこから行くか。」

「やはり此処はサイバァブレェドショップに御案内すべきなるぞ。其の手の装備も一つも無き様相を視たる。」

「そうだな。」

「あの、逃げないので離してくれませんか?」

「なんか収まりいいからこのまま行くか。」

「無視しないで欲しいなぁ。」

「連れていかれちゃった…。」

「無事を祈ろう。」

薄情者二人は物陰から三人の動向を見守ることにした。

 

「至りし。此処が件の店なり。斯くの町の居民は必ず此の店にて武具を購むと称せらるるほどの割合なり。」

薄赤色のネオンサインでサイバーブレードショップと描かれた錆の香りがするコンテナを利用した店。

「店主~、この嬢ちゃんにおすすめをいくつか持ってきてくれ~。」

「え、ええ。」

引き攣った笑顔で店主と思わしき男はいくつかのサンプルをケースから取り出す。

「やっぱおすすめは振ることで装填されるこいつなんだな。」

「ええ、再装填が非常に簡素な手順なため多くの方から好評です。」

「クーロさん、級人階のルールとして目上の方より先に話さず目下が先に話せば顎を砕くというのがあるのは知っていますがそれは他の方にも適用されるのですか?」

「然り、故に我らは諸者の階位を把握し、節度を守るべし。加ふ、目の上の方の心を疑ふることなど、言葉に非ず。何か御気に入りの武具を得たや否やや。」

「このマジカル☆ブレイクっていうふざけた名前の球体。」

陶器のような表面を持つ白色の二つの球体。

「マジカル☆ブレイクとは、主に追従する補助武器にて候。多量のナイフを内に持ち、又は爆弾を仕舞い、補給のたびに用いることを旨とす。浮遊砲台としての使用も可能なれば。」

「聞く限り良さそうだけど安いね。何か訳ありなのかな。」

「目的が補給の為なら次元カバンで済み、隙の大きい此の物を用いる利点は少なし。砲台として用いんとすれば、同じ機能ながら安価に整備せらるべき品あり。故に需要もなく、価格下落す。」

「そういうことね。ならこの仕込み杖にしようかな。」

「その者は単なる仕込み杖ではない。持ち手を捻ることで鋸刃が鞭状に広がる技巧が試みられん。持ち手には、かの刃物と同じ装填機構が施されておる。衝撃の相殺や切れ味の増加に助けとなるであろう。」

「装填機構って何か知っていますか?」

「筒状の衝撃変化の器械と、ある異常な性質を持つ球体より成り立っておりぬ。物体は衝突する折、通常、初めに保有するエネルギィを失ふことは、自然なるかな。然るに斯る球体は、衝突せし時、保有するエネルギィが一割増加すると申し候。このように増するエネルギィを取りもどし変へんぜんしたものを用ひつわるのが、かの兵器なり。」

「気に入った。やっぱりこの武器を買おう。」

「了解致し候。ロウフェ、是武具よしと。」

「はいよ。これ、いくらだ?」

「二十三万呈です。」

「じゃカードで。」

「あの、悪いですよ、こんな大金支払ってもらうなんて。」

「いいよいいよ、あいつに世話になってんだ。そのくせこっちからの礼は全く受け取らないから借金返させてくれ。」

「借金っていうのは?」

「まぁ今は仲間を助けてもらったとだけ言っておこう。」

「…わかった。お言葉に甘えて、お願いします。」

「素直でいい子だ。」

「ロゥーフェ、今後、宿にて一休みせん。四時の頃寝たら我は離るる。」

「そっちも予定があったな。悪かったな、ここに呼び出して。」

「直に語りし故に捉へたるものあり。気に煩いる必要あらず。」

クーロはここで離脱した。

「アイツもいなくなっちまったし飯でも食いに行くか。」

再び抱え上げられ交差点に出る。

「何処に行く?ここらは味も保証できるぜ?なにせF区の一角があるからな。」

「肉が食べたい。」

「ならミートパイでも食べに行くか。あ、気を付けな、あの変の奴らたまに客を食材にするから。」

「???え、体が歯車でも?」

「さすがに肉じゃないなら食材にはならないと思うぞ?もしかして肉でできた歯車で体を作ってるのか?」

「金属?だから多分大丈夫だと思う。」

「最悪ぶっ潰せばいいからまぁ行くか。」

ブシャァ!

「襲撃?」

「離れるなよ、処刑者だ。」

球体の槌を持った一般処刑者がルグラたちからほんの五メートルくらい離れた場所にいる男女のドタマを潰していた。絶命を確認すると何処かに跳び去る。

「何が理由で?」

「えーとな、ああ。こいつら、脳みその多くを義体化しているな。」

「デバイスを埋め込んでいる人もいるって聞いたけどそれは?」

「それはあくまで追加しているだけだ。切り取ってその分を義体化するのもグレーだが割合が基準を超過してその間に戻さないと二十時間後にこうして跳んでくる。あちこちで少しずつ義体化するといつの間にかアウトになることがある。こんな風に。」

「へぇ~。頭を狙うなってルールあったよね?」

「禁忌を破るとタブーハンターという連中が来て抹殺するんだがその前にここから脱すればそこまで追ってくることはない。仕事終えたらササッと去る奴らにはあまり関係ないことだ。それに、捕らえたところで返り討ちか再生産されて終わりだろうな。」

「なんかこの血、工業的な臭いがする。これも義体化のせい?」

「そうだな。飯にするから行くぞ。」

「はーい。」

歩みを進めると次第に食欲を誘う匂いが漂ってくる。

「ここだよ。」

【クーレルのミートフード】、ロゥーフェがおすすめするミートパイが食べられる店。

「ミートパイ二つ頼む。一つは大でお願いな。」

「ちょうどいいタイミングだね。今焼きあがったばかりだ。」

店主と思わしき女性が鉄板に乗せたたくさんの焼きたてミートパイを店頭に並べる。

「合わせて三千百呈だ。」

「ほいじゃこれで。」

カードで決済をするロゥーフェ。

「ここのパイは美味いが火傷するなよ?」

「まさかの丸かじりスタイル。」

受け取ったパイを一口齧る。

「ん、ずっしりとした挽肉と齧るまで溢れない大量の肉汁、肉の臭みを消すスパイスが美味しい。パイ生地もサクサクしていていい刺激になる。これ一つで腹が膨れる。」

「やっぱりここに来たらこれを食べないとな。」

暫くして完食する。

「時刻も遅いし泊まるか。あんたはどうする?」

「帰ろうと思って…アイアからメールだ。ニヘルが倒れて明日の朝日が昇るまで事務所に入るなと。…泊まります。」

「それじゃ付いて来な。」

ロゥーフェを追って着いたのはかなり高いビル。五十階層はある。

「流石に部屋代は払うよ。ここからは私の都合だから。」

「そうか、ならそうするといい。おれはあんたの一つとなりに泊まるから何かあったら駆け込め。」

結果、比較的安価な五階に泊まることにした。

 

「で、何があったん?」

部屋に入り一時間後、ルグラはロゥーフェの部屋にいた。彼女の腕の中では黒い炎のようなものが揺れていた。

「さっき部屋の窓から奇妙な四つ足兵器が見えていなくなったの。」

どうやら炎に関しては隠蔽しているようだ。その証拠に彼から炎に関して言及はない。

「四つ足の兵器?」

「先端が注射針のような有機的なパーツを持ったやつ。,D@;QTOっていうんだけど。」

「!ブァナッシャー!」

奇声を上げたロゥーフェはガラスを突き破りそのままフロントに事の顛末を話す。

結果、ナイトシティで五日間の外出禁止令が発布された。

 

「はぁ、暇。」

外出禁止の解禁にはまだ三日ある。

「(どうせカメラとかあるだろうから可能性翻訳も出来ないし。この謎の炎に関しては認識を弄っているからバレてはないはず。)」

黒煙は今焼き物の壺に収めている。大層気に入っているようだ。

「(通信も制限されているしなにか本はあったっけ。…メールが届いてる。)」

アイアから何があったかが届いた。

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