アンサラー 幻葬   作:月導

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二十三章~火に用心~

アイアからの一つ目のメールが届く少し前。ニヘルは届いたメールをみて気絶していた。

「おごごごご……。」

ついでのように夢雨も止まっていた。

「似合ってるね。」

「クールだ。」

メメンスとヨブカは仲良く見ていた。因みに主任は今白絹のとこである。

カツン

ふとそんな音が鳴る。

「なんだ?」

フリーなアイアが外に出るとドアに手紙と巾着付きの矢が刺さっていた。

「…。」

中身は葛霧から。「アイア以外を事務所から出してわっちを呼べ。ハ」

「ハが書かれてている。よほどの急ぎか。お前ら、悪いが今すぐ事務所から出てくれ。不味いことが起こったらしい。」

「じゃあみんな一旦夕夢のオルテトに入るか。彼女から入り口は教えてもらったし。」

ヨブカはパィムンも使ってみんなを引きずって行く。

「いったい何があったんだってだよホントによ。」

以前やっていたように煙を焚く儀式をし葛霧を呼ぶ。

「何があったんだ?」

「不、封、解。」

「何が出た?原因は?」

「黒炎。先の地震。他の壺の中身が食われている。」

「被害はあるか?」

「不明。」

カーン

「お前、二つ目の矢を放っていたのか?」

「いいや?」

「一体何だってんだよ。」

ロゥーフェがルグラに見せた写真が入っていた。

「何処の誰かは知らんが被害情報の写真が入っていた。確かに黒炎の痕跡だ。」

「ここらで被害は?」

「聞いてはいない。この写真は此処のものそうだが。」

「奴は何を求めている?」

「ひとまずルグラにこちらに来るなと伝えよう。どの程度の時間にする?」

「明日の夜明けまでは入れるな。」

「わかった。」

「それとなるべく多くの皿に水を入れておけ。」

「ああ。」

「奴はきっと、わっちに恨みを持っているはず。それを使って呼び出そう。」

「俺も手伝う。どれを読めばいい?」

「これだ。」

「なるほど。」

竹簡に書かれた筆文字。長さはそれほどでもないがそれは何度も繰り返すものかつ声に出した者の精神を凄まじく削る。

「奴は何を求めているんだ?」

「わっちへの憂さ晴らしでは?」

「にしては行動が妙だ。既に他の封印物を喰らっている以上あの霧の祟り神に引けはとらないだろう。すぐさま君に挑んでもよいはずだ。」

「慎重な奴なのかもな。」

「ひとまず水を用意した。後は何が必要だ?」

「覚悟だ。」

「手順は?」

「呼び込み水に閉じ込めたらこの壺に入れて封をする。」

「どのくらい持つ?」

「三年程度だ。」

「まぁまぁだな。」

「その間に手を考えよう。」

 

「…。」

「来なかったな。」

「何処に行った。」

「ひとまずルグラには何があったかを伝えよう。」

「…無理だ。」

葛霧は寝落ちした。

「俺も寝るか。」

眠い体を引きずり自室へ葛霧を持って行った。

「そう言う顛末ね。黒炎。ん?」

ゆっくりと壺に目をやる。黒炎は冥鏡志酔のシリンダーに入っていた。大層ご機嫌である。

「ひとまずアイアにメールをして。あのさ、君ってどこから来た?」

「。」

「返事はできないか。言葉がわかるなら跳ねてくれる?」

黒炎は飛び上がる。

「そうか。なら君は復讐をしたいの?」

何もない。

「したいわけじゃない?」

跳ねる。

「どうして外に出た?」

黒炎はシリンダーから外に出ると近くにあったティッシュを少しずつ焼き文字を書く。

「ひ、ま。暇?」

跳ねる。

「それで人は何人喰った?」

再び焼かれる。

「六。,D@;QT、私の部屋に来た時に一緒にいたアレとはどういった関係だ?操った?どうしてここに来た?血?私の?もしかしてこれ?」

掌に冥血を垂らすと飛びついてきた。

「わわっ。」

冥血を飲み切ると再びシリンダーに収まる。

「私の冥血をあげれば君はおとなしくしてくれる?」

跳ねる。

「アイアにちょっと相談してみるか。」

 

「葛霧!ちょっとこれ見てくれ!」

「何だ喧しい。」

「黒炎がルグラと一緒にいる!」

「な!?」

「ルグラからの連絡で今は夜街にいる!ただ今は,D@;QTが出たとかで出入りが禁止されてて手が出せない。」

「今彼女は?」

「黒炎と仲良くやっていると。」

「はぁ?」

「世話をするから一緒にいてもいいかとボケたことを言ってやがる。」

「捨て猫であるまいし。」

「そして黒炎が契約を持ちかけている。」

「契約だと?」

このような要封印の存在が持ちかける契約は契約者被契約者互いに破ると大きな代償を負う。それほどのリスクをもってしてもその言葉をあちらが出したというなら口先三寸ではないらしい。

「ひとまず禁止令が解ける三日後まではここにいた方がいい。」

「ここは厄介ごとだらけだ。」

 

「大変お世話になりました。」

漸く外出禁止が解けルグラは帰る支度を済ませロゥーフェに挨拶をしていた。

「いやいやこっちも暇を潰せてよかったよ。またどこかで会ったら話をよろしくな。」

フロントから一足早く出たロゥーフェを追うように外に出るとアレソミとアルクタがいた。

「貴方たち。やってくれたね。」

「「ホントにごめんなさい。」」

「私は帰る。そっちも仕事が溜まっているでしょう?」

「はい。」

「こうしていい縁を結ばせてもらってありがとうございました。そちらもますますの繁栄を切に願っています。」

そうして離れようとしたら手に何かを持たされる。

「これは?」

「誰も見ていないときに見てくれ。私の志を君にもな。」

「そうなのか。わかった。それじゃ。」

跳躍で街の外に出ると急に明るくなる。

「本当に一日中夜だったんだね。」

渡された紙には以下の文字が刻まれていた。

「薪は燃えよ、材は建てよという言葉を知っているか?私の国もそうだ。君も気づいているだろうがあの列車も止めることなどできない。止めるなら代替を置かねばならない。どうか君が瓦解させてくれることを祈るよ。」

「はぁ、食えない奴だ。バレてたよ。」

紙を揉み消し草の生える海を歩く。周りから鯨が集まってくる。

「引きこもったからか?身体が鈍ってるんだよね。翻訳も鏡作成もリスク的にできなかったしフラストレーションが溜まっているんだよね。突撃!お前がキャッチャー!」

数日前見つけた手投げタンクローリーを掴み最も大きい鯨に放り投げる。

「追撃じゃぁ!」

冥鏡止酔で五二マグナム弾を一つ燃やしさらなる爆発を起こす。

「ちょっとガスが多かったな。」

煤けた残骸を突き再び歩を進めようとしたとき足を掴まれる。

「うわぁーー!」

懐から五二マグナム弾をばら撒き点火する。地面が硝子のようになるが手は離れず全身を表す。

「俺だよ、俺。」

「ウロ?何か月ぶり?」

「シーラネ。さっさと行くぞ。あの夫婦がやきもきしているからな。」

影の中に二人が消える。

 

「ただいま。心配かけてごめんなさい。」

「とんでもない心労がかけられたよ。」

「ああ。」

羅炎出身二名のじっとりとした目。

「まずは黒炎を出せ。」

「こちらです。」

冥鏡止酔の短剣部のシリンダーを開けると黒い炎がこぼれ出る。

「っ!!」

「話に偽りはなかったか。」

「…貴方たちには毒なの?」

「野放しだったころは妖喰らいと呼ばれていた。火に対する水のように多くの同郷の者が呑み込まれた。」

「相性が悪いんだよ。」

「そ、そう。」

「さてどうするか。壺漬けではまともに封じることはできぬだろうし。黒炎は契約といったのか?」

黒炎は跳ねる。

「そうだよ。契約はどんな意味があるの?」

「そうだな、あんたが作るあの契約書と同等の強制力がある。違反時の対価も同じくらいの危険度か?」

「そんな簡単に出していい言葉じゃないんだ。」

「そんなわけで色々と不味いから契約は無しとさせてもらおうか、と。」

アイアはふと後ろを振り向く。恐ろしいほど白い人物がいた。

「誰?」

「どーも、白絹です。ここの人とは夕夢とデルシネアとだけ顔を合わせています。」

「貴様は神か?」

「狐耳の君、正解。」

「こ、言、お、不、知。」

「初対面だ。」

「ん?何この火は。」

いつの間にか白絹は両手で黒炎を掬いあげて眼前に持ってきていた。

「待てそれに触れるな!」

「…概ねな管理方法は一週間に一度は関わること、その際に少なくとも四名以上の血液をそれぞれコップ一杯分は用意すること、人数または量が多いほど安定度は増す。逆に人数もしくは一人当たりの量が少ないなら不安定に。機嫌を損ねたら脱走。好みなのは抑圧的な人間か。へぇ、お似合いじゃん。」

「何を言ってる?」

白絹はルグラの頭をポンポンしながら

「封をするよりもこの少女と一緒に居させた方が丸く収まるって話。」

と言う。

「何、誰、不知、い、黙。」

「別にこのくらいの子、主任の前職だとかなりいたよ。更にまずい奴もいたみたいだし。実際に仕舞われたりしているところも見たこともある。」

「どんな奴だ?」

「見たら死ぬ奴、常識を書き換える奴、風邪並みの軽さで増殖する肉片、絶滅を予言する台本、見たら死ぬ奴、すでに滅んだ文明の破壊兵器、知ったら終わりな奴、頭の残念なだけの全知全能、見たら殺されるやつ。他にもあるよ?」

「妄言もたいがいにしろ。そんなものをどうやって管理下に置くんだ?」

「抗異常ミーム薬、状況固定杭、あまたの犠牲と実験の末に一部は管理できてる。」

「何だその物品は。」

「抗異常ミーム薬は夕夢の雀猊のような連中を直に認識してもその影響を効いている間は抑えてくれる薬品。原料はアクチレの樹皮とルクレの外骨格をすり潰した粉を七対三で混ぜたペレットとハルサの蜜。状況固定杭は現実濃度を通常にすることで反物理、非現実的な現象を抑制する。銅と鉛、アルミと炭素、ウェルメ虫から出来る外装と精密陽子回路から出来てる。」

「そういった話はニヘルの方がいいだろう。」

「呼んだか?」

「呼んだ。」

「貴方がニヘルさんですか。初めまして、白絹と申します。」

「話は徹頭徹尾聞いている。その話も気になるが今はその炎をどうするかだ。」

「手元に置いてもいい?世話はちゃんとするよ。」

「火薬庫にこれ以上ガソリンを加えるな。」

「断固拒否だ。」

「ええ~。」

いつの間にか手元に戻っていた黒炎を撫でるルグラ。

「あ、ルグラ姉帰ってきてる。」

「お前は誰だ?」

「あの主任が入ってきた後に来た奴の同族、ヨブカだ。」

「初めまして。」

「わっちは葛霧という。これからもよしなに。」

「あの、何があったんですか?」

「わっちらの天敵をそこのルグラが飼おうとしていてな。それを止めさせようとしている。」

「ルグラ、外に行くよ。」

「え、ちょっと待って!話は?」

「私は頭を冷やした方がいい。残骸漁りに行こう。ああ、みんなはこれを見ておいて。意外と簡単に滅びが見つかったから。」

「みんなごめん私も行くよ!」

少女二人がいなくなる。ルグラはカセットテープとタブレットを置いていく。

「滅びが見つかるってなんだよ?」

「言葉はいい、見てみようじゃないか。」

 

「こんなことになるのか?」

「地上の三割が黒焦げになる。それほど力を付けるのか?」

「まずこれのサンプルが少なすぎて正しいのかも分からん。」

「これを見るのは二種目だな」

「いつ見たことあるんだよ。」

「まだ奴が引きこもっていた時だ。」

 

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