アンサラー 幻葬   作:月導

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二十四章~どーも~

「あのさルグラ姉、このゴミ山は何なの?」

「漂着場。ここらは特に重力が強くて他の世界と繋がりやすい。主任や夢雨も初めてこの世界に来たときは此処に着いたみたい。」

「主任、主任かぁ。」

「なにかあったの?」

「うーん、間違いなくナカマだし悪くはないしいろいろなことを知っているけどさぁ、うん。」

「あー、うん。」

「実際ルグラ姉がいないときにもいろいろ教えてくれたの。」

「具体的には?」

「私たちは金属性非金属っていうものを作れるとか。で、ナカマにはそれで目を守るのもいるとか。あと、ナカマは目と体が殆どだけど殻やウデを持つのもいるって知った。私は全部持ってるって。」

「殻とかウデって初対面で人間らを始末したあのアレ?」

「うん、でも主任が言うにはあんな風に召喚じゃなくて手足みたいに生えてるみたい。この写真みたいに。」

「ちょっと今度ネビュラの研究資料でも探してみるか。ま、それはそれとしてだ。宝探しをしよう。」

「したい!」

「地図も無い、当てもない、利益もそれほど見込めない、さぁ始めよう。」

「お宝は?」

「あんたがお宝と思ったもの。」

「じゃぁ行ってくる!」

「あ、是持っていって!何かあったらこれで連絡して!」

「はーい!」

「さて、どこから探すか。まずは安牌の空間結合強度の弱まりやすい深層階層に行くか。」

 

地にある巨大な裂けめに落ちて何分か経ち着地する。これまで流れ着いた残骸たちが作り上げた峡谷である。

「ふう、さすがにニ十キロを落ちるのは足にクる。若干重力も強いし。」

「煉獄はこの何倍も落ちないととたどり着かないとなればそりゃ弾丸も高くなるもんだね。」

「もうこれは老朽化していて危ないね。安全を確認したらごっそり放り込むか。」

「他にも人がいたのか。あれは…どこかの工房か。」

「しばらくたった肉塊、後人骨。飛ばされた人が事切れていくらか経ったみたいだな。臭。」

「同時期に流れ着いたように見える廃墟。…二十年ほど経過している。主任のいた組織の施設みたいだね、探索してみよう。」

「何かがあったみたいだけど、回収されてるね、これ。」

「これは…報告書か。ん?…。……、…。」

「これ、テクスチャを探すのに使えるね。これは、夕夢に似合ってるか。しかし何故回収されてなかったのか。」

「隠さないともろもろ込々ぶっ壊れる。」

「ヨブカからだ。面倒?今行くッと。さぁて、跳ぶか。」

 

「ヨブカ!」

「ルグラ姉!この人どうにかして!」

「おお!新たなヒロインが!ツンもいいが姉属性もいいねぇ。」

「うーわぁ。(ヨブカ、何があった?)」

「(ん、こう。

「え!?人が中にいる!あの、大丈夫ですか?」

そうしてこの男の人を倒壊した一軒家から引っ張り出して様子見をしつつ鯨を始末していたの。ああ、鯨を見たときはなんだか肌がざわめく感覚がして気味が悪かった。

「ココはどこだ?俺はさっきまで寝ていたのにどうして外なんかに?ん、君は誰だ?その角は?ココはどこだ?地球じゃないのか?」

「地球…主任がいた星だったね。そういった意味の場所ならここはゴクガク。私はヨブカ、人間ではないから。貴方の名前は?」

「俺は生須涼太。十七歳の引きこもり高校生だ。あれ、つまり俺は異世界転生したってことか!?」

「ん-生きたままこっちに来たようだし夢雨の言葉を借りるなら異世界転移の方が正しいのかな。」

「いよっしゃー!これはあれだろ、こんな俺を見かねた女神さまが温情でこうしてここに送り最強のスキルも一緒なんだろ?そして君が俺のヒロイン!さぁスキルオープン!」

頭が可哀想だった。

「(どうしよう、地球の一般人はかなり脆いから下手に放っておいたら即死するよね。)」

「どうして出ないんだ?ステータスオープン!これもだめか。」

そんな夢のある力、一介の凡人にポンと渡される一品ではない。

「なるほど、敵を倒してレべルアップしないといけないのか。きっと手をかざせば敵が見るも無残に倒れるのだろうな。」

そんな武器は高いよ。)」

「で、どこにも行かないように足止めしていたと。こっちで何とかしてみるから。ありがとうね。」

 

「あの、涼太さんですね?私の妹分がお世話になりました。」

「いえいえ、君も俺と共に冒険をしないか?」

「悪いけど私にはもう椅子があります。彼女にもです。」

「なら僕もそこに置いてくれないか?」

「悪いけど何もない一般人を在籍させることは無理ね。既に秘匿情報の保護で面倒になっているから安易な人員の募集はしていないの。」

「何もないって、俺は異世界から来たんだぞ!力がなくてもきっと俺がいた世界の知識があればきっとたくさんの国から引っ張りだこに…」

「こんなことを言うのは私のキャラじゃないけど、思いあがるな。ここにいる人類は地球どころか他の星系から来た者どもだ。無論だが君を凌ぐ知もある奴らがいた。君の代えはいくらでもある。」

「そんな…?」

「君を効率よく使うなら生体燃料だね。人一人でかなりの電力を得れる。」

「…。」

「今なら人の尊厳を残して逝けるがどうする?」

「し、死にたくない!」

「あっそう。ルグラ、パィムンを呼んで構えて。厄ネタが来る。」

「厄ネタ?」

「セルヒスだね。現実濃度が狭い範囲でかなり高く引き上げられているから面倒になる。」

冥鏡止酔に弾丸を装填し空に目を向ける。

「Dnfaueftamfbu?」

目の前にいるのは標識を持った鉄屑。

「あー、道路標児戯か。不味い。対処法は召喚物を破壊。」

「bgfafefa」

鉄屑が標識を突き立てるとマークが変わる。進入禁止のマークになった瞬間その場にいた三名が吹き飛ばされる。

「これも報告書にあったな。標識は破壊に耐性があったが殴れば壊れるかあな?」

「ルグラ姉!進入禁止のマークだったけど他のマークになったらまた別の効果が発揮されるの?」

「そうだよ!確認されているのはこれに書かれているから把握したら加勢して!」

セルヒスの報告書を放り道路標児戯に斬りかかる。

「っとと、これね。」

 

【セルヒス『道路標児戯』】

変異元:辺区 梨禰 (わたく りね)七歳 女

推定要因:両親の交通事故による死亡とその光景によるトラウマ

被害クラス:Ⅲ

説明:対象は以下の特徴を有しています。

・三歳程度の知能、会話能力

・所有する道路標識に酷似した物体のマークに応じた事象の発生

 以下はマークとそれに伴う現象の抜粋

 

マーク:車両進入禁止

現象:対象の周囲五メートル以内のアンサラーが不明な斥力により弾かれる。銃弾、魔法の反射。

補足:最初に観測された現象。更なる情報を求める。

 

マーク:落石注意

現象:一~三mほどの隕石群の落下

補足:標識の示す意味と明確に異なる現象が確認された最初の現象。

 

マーク:スリップ注意

現象:対象の周囲三十メートルの地表の凍結

 

マーク:道路工事中

現象:付近のアンサラー七人の地面の隆起、爆発

 

マーク:自動車専用

現象:由来不明の自動車三台が出現しアンサラー五人を轢殺。その後消滅。

 

マーク:重量制限(五t)

現象:対象が敵対する存在の重量が五tに変化

補足:確認された中で最も即死性が高いが影響範囲は対象の周囲二メートルに限られている。

 

マーク:速度制限(三十km/h)

現象:範囲内の対象を含む生命、弾丸などの発射物の最大速度が三十km/hに固定。

補足:この速度固定は規定時間をもとに決められており時流加速技術による主観的な速度においては加速倍率に反比例することが証明されています。

 

マーク:高さ制限および最大幅(それぞれ十メートル、八メートル)

現象:範囲で起こされる現象の有効範囲の拡大。

補足:一度に複数の標識を現した最初の現象。同時に重量制限(六t)の標識も出現したことにより部隊の七割が終了。

 

現在、所在は不明となっており警戒が続いています。

 

「大まか把握。パィムン、行くよ。」

瀉思の先端をハンマーにする。

「ちょっと!なんで自害しようとしてるの!?」

「ルグラに加勢しに行く。あんたには関係ない。」

「待って!置いて行かないでくれよ!」

「悪いけど死んだら自己責任でなかったことにするからこっち来るな!」

 

「把握したよ!」

「ならヨブカはあいつから標識を手放せて!有効かはわからないけど可能性は片っ端から潰す!私は本体の破壊を軸に動く!」

「ならこの形は適しているね!任された!」

二人はそれぞれバラバラに動くが連携は崩れていない。標識が振られるならハンマーで弾き隙に灼熱で斬り付ける。

「あまり強くない?」

降る流星を相殺しつつヨブカが疑問を口にする。

「可笑しいね。いくら何でもⅢが付けられる強さじゃない。報告書にある部隊はBが八、Aが四のエリート部隊。向き不向きがあってもⅢが付けられるなら鎮圧できているはず。編集された隠蔽要素があるとみておいて。最近は色を使いすぎているから想定している最悪な場面でも使い渋るかもしれない。」

「その最悪な状況っていうのは?」

「あのマークが…出されて…その…上で…」

道路標児戯のマークがロゴになる。抽象化された人の頭か何かを切り落とす図。上の処刑者のマークだ。

「いや、まだそうとは…」

三体の黒地に怪しく黄色に光る包帯を全身と竹笠に巻きカランビットとマチェットを握る処刑者。それも昔、ルグラを殺しに来て千牢が退けた生物殲滅特化モデル、その中でも高価な最新型の施術を使用したタイプだった。

「笑うしかないね。ニヘルから一度奪い一度傷を付けた君らから再び爪を向けられて。思い出したくもないし思い出せない。必死こいて目を向けて、紙にぶちまけて、都合が悪くなれば隠し通して忘れて。でもさ、いくら密室に葬っても私は見つけるの。まだチケットは渡されてない。それを使えるのはこの私でもないかもしれない。でも私は持っている。それは私であり皮も私そのものになりうる。チケットはなくとも汲み出し呑み込まない。」

謎の注射がルグラに刺さり中身が入る。同時に彼女のケテルが小さな快音を立てる。

「見ずとも知る。聞かぬとも口に出す。ああ、うんざりだ。いつか、何時か君の内に手を伸ばさせてくれ、枝葉の先の縁まで。」

その手に千牢の武器が現れる。

「異変はまだ遠く、異常は足元に。偶像に何も任せていなく煙が立ち上る。セプテット、わからないそなた、パラノイア。」

武器の柄がルグラの手を呑み込む。

「あんときは世話になったなぁ、何故此処かは知らんし今かも知らん。だが一つは正しい。わてはこいつらが気に入っている。年はとったが腕は上がっておるぞ?」

その声は処刑者の背後から聞こえる。振り返った時には遅く一体の首から上にあるべきそれは砕け散っていた。

「ああ、弱い弱い、名も無い、いや、括りのみの名があるからか?名がつけられることは明確な存在となるが同時にそれになってしまうことだ。わてもそうだが括りから外れればどうなるか知れたか?」

残りの二体からの攻撃が交差する時にはルグラの横にいた。

「ルグラ姉じゃないね、貴方は何?」

「わてか?今はソルセドフに居る千牢というもんや。なんでこの体かは知らんしいろいろぶっとんでいるがあ、戻りそう。」

「今何が?」

ルグラが起きる。

「さっきままずはこいつらどうにかしねえとダメじゃん!」

先程まで処刑者らの注意を引いていたヨブカが叫ぶ。

「それはそう!上は何をしてるんだよ!高級品ぶっ壊すぞ!」

「一人壊れてるしもういいでしょ!」

「借金は少ねえほうがいいでしょ!」

「これ請求されるかな!」

「するんじゃないぞマジで!」

「するはず無いだろ?金と時間と資源は有るんだ。」

先程まで抑え付けられていた処刑者は青色に光る糸で巻かれて拘束されており道路標児戯の腕は無く胴体には一本の壞夢が突き刺さって一切動かずにいる。

「子琉。」

「おじさん!」

「遅れてすまない、興味と理性が溶け切ったボンクラの制止が激しくてな。奴らは無傷かと思っていたがあの一体は何故頭がない?」

「さっきルグラ姉が千牢って名乗って薙刀みたいのでブッ飛ばしたの。」

「千牢か。あの変人を名乗るとは、君もかなり錯乱していたようだね。」

「いや、あれは(プルル)…失礼、電話に出る。もしもし、ルグラです。」

『あ、ルグラか?わてやわて。』

「千牢?いったい」

『いやーさっきさ、急にあんたの体で昔のように暴れ散らかしていたんだが何か知らんか?』

「詳しくは分からないけどどうやらそれは事実みたい。」

『あ?ソルフ殿どうしたんや?な!?,D@;QTO出たって?すまんが電話切るわ!』

「あ、切れた。」

「こちらまで聞こえていたが何があったんだ?」

「原理は分からないけど一時的に彼女の自我が私に入り込んだとみてよさそう。」

「原因はあの黒いやつかな?」

ヨブカの声の先には,D@;QTO。生須涼太、あの高校生はすでに手遅れだった。

「うわーー雑に死んだ!」

「何あれ!」

「お前はここで殺す!即刻処刑対象だ!」

子琉が触手をワイヤーフックのように使い距離を詰める。

「刻獣馬脚。」

人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んでしまえと稀に言われるがここの馬に当たる生物は死ぬだけ優しいのかもしれない。基本的に蹴られた奴はまるで砲弾のように周囲を壊したうえで破裂する。これが建築物に対して放たれれば当然のように原子単位で分解される。

「ん?」

しかし,D@;QTOに対して効果がない。

「…。」

まるで興味を無くしたかのように,D@;QTOは次元の裂けめに消える。

「また取り逃したか。」

しかしまだ終わっていない。拘束を解いたやつらが再び刃を振るう。

「はい、おいたは終わり。」

あまり見せ場も無く空中で止まる。

「一応様子見して正解だったね。」

先程からあった空間の穴が縦に裂け白絹が顔を出す。

「貴女は確か白絹だったっけ?」

「そーだよ。」

「なんでちょっとツヤツヤしてるの?」

「さっきまで葛霧ちゃんとアイア君の惚気を聴いていたからね。だけどニヘルさんとアイア君は出かけちゃったからそっちの方を辿ったら危なそうだったもんでとりあえず縫い留めた。」

「出かけ先は知ってる?」

「そこまでは知らない。でも、頭を冷やしに火山に行くとは知っている。」

「葛霧は?」

「まだいる。暫く居座るみたい。」

「もう少し建設的な話をしようと思う。」

「それは彼女に言って。」

「ヨブカ、事務所に戻るよ。」

「はーい。おじさん、バイバーイ。」

「ああ。(二度会うことは本来無いのだがな。)」

二人の少女がいなくなり、そこに新たな客が現れる。

「…。」

「…。」

「あ、どーも処刑者さん。ルナライトと申します。」

「…。処刑者だ。」

「名乗りに名を出さぬとは不届き千犯!」

「この場で始末しても文句は言えぬだろう。だが感じるな、その狂いが。…子琉だ。」

「よろしくです。」

「何の用でこのような場へ?」

「ここらで,D@;QTOの気配があったから狩りに来た。」

「奴に通常の攻撃は効かぬぞ?私もそうして何度も逃した。」

「知ってる。奴は現実がイカレレベルで高い。だからどのような手段でも危害を加えられない。」

「ならだどうやって狩るつもりなんだ?」

「結果。」

ルナライトはそうして消える。

「結果か。」

子琉は道路標児戯を抱え回想をする。

「久しく聞いたな。」

未だに固定されている処刑者の頭を潰す。

「厄介な式で呼びやがって。再使用などできないじゃないか。」

 

「あのさ葛霧、さっきは話にならなくてごめん。」

「いや、よく考えればある意味考え過ぎなのかもしれなかったな。」

「え?」

「なかなかの数を喰われたがそれ以上の手をこちらは持っている。」

「その手って?」

「羅炎の中で起きたとある事件そのもの。あの中で放てば外にいる同胞は皆死ぬ。」

「…はい?」

「無間地獄が一度起きてな。初めは小さな縺れだったのが最後、殺した者を殺した者を殺し続ける。今はこの結晶に固めてある。」

捲られた左腕にはアメジスト色の石片が三片張り付いていた。

「それは砕けたりはしないの?」

「これは概念、事象そのものだ。物理で砕けはしないだろう。…多分。」

「…。」

「何を言えばいいか迷っているようだな。」

「うん。」

「アイツが返ってきてから再び話をしよう。わっちは寝る。」

葛霧はアイアの部屋へ消えた。

カーン

「何の音?」

「私が見てくるね。ヨブカは座っていていいよ。」

玄関先に矢が落ちていた。

「手紙が付いてるね。」

「今回こそは!認めてもらいますので覚悟してください!」

「何これ?筆文字だから羅炎の方の人から?」

「でもルグラ姉、羅炎ってかなり遠くない?」

「そこらはあまり関係ない。重力に関わる技もあるし。」

「後で葛霧さんに聞いてみる?」

「そうしよっか。」

「(私、ハブられてる。)」

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