ゼンレスゾーンゼロ 虚ろいを行く者達   作:清少納言

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第十四話  開戦

郊外の一区画、かつては走り屋の拠点だった大きな酒場にローズグループの一味は屯していた。

 

「おい、カリュドーンの子の野郎共は今どうしている?」

 

酒場の中心に座る大柄な男──一味のボスでありローズグループの幹部であるウェルキスは自身の近くの部下にそう尋ねる。

 

「それが、情報収集に行った連中は全員返り討ちに遭っていまして──」

 

「馬鹿野郎‼」

 

ウェルキスは部下の顔を掴み、そのまま壁に向けて放り投げた。部下はそのまま宙を待って壁に激突し、首をあらぬ方向に向けて地に落ちる。

 

「クソが......」

 

ウェルキスは憤怒に顔を歪めながら呟いた。

 

一月前、ローズグループの更なる勢力拡大のためにボスは郊外の制圧を幹部であるウェルキスと彼の派閥に属する者達に命じた。

 

当初は野蛮人とホロウしかない荒野を手にすることなど容易い、誰もがそう思っていた。だが郊外を訪れたローズグループを待ち受けていたのは地元住民の激しい抵抗だった。

 

特に彼らの元締め、覇者と称されるカリュドーンの子の力は凄ましいものだった。一人一人がこちらの構成員数十人と同等、或いはそれを凌ぐ力を持っており、戦局的には今でこそ人数と武装の差でこちらが僅かに優位に立てているがその状況はいつひっくり返ってもおかしくない。

 

「まぁそう焦る必要はない。奴らに動きがないのは恐らくこちらを倒す作戦を練っているからだろう」

 

ウェルキスの後ろから一人の知能機械人、そして部下であるサンソンがそう語りかける。

 

「恐らく奴らは近々こちらに攻め入ってくる。ならば想定されるのは籠城戦、アジトの幾つかは犠牲になるが労力を割くことなく奴らを叩き潰す事ができるだろう」

 

確かに彼らカリュドーンの子を潰してしまえば後の有象無象を倒すのは容易い。シンダーグローレイクも今でこそ謎の白いエーテリアスに阻まれ入手に手間取っているが、それを諦めたとしてもこの広大な荒野を丸ごと領地にしたとなれば大手柄である。

 

「お前ら‼武器の準備をしろ‼」

 

ウェルキスの掛け声と共に部下が一斉に準備を始める。

 

「もう始めるのか?」

 

「ああ、俺の勘がそう言ってる」

 

サンソンからの問いかけにウェルキスは答えた。

 

 

 

 

 

地平線から太陽が頭頂部を覗かせ、空が橙色に染まりゆく中、シーザーとヒストリアはそれを眺めていた。

 

「いつぶりかな、あんたとこうやって荒野の地平線から顔を出す朝日を眺めるのは」

 

ヒストリアは昔を懐かしむような表情でそう言った。

 

「ルーシーとも一緒に見たこともあるよな」

 

「ああ、ここからこうやって朝日を三人で揃って見ることなんてしょっちゅうだった」

 

「夕陽もだよな。昔はここで夕陽をバックにガンマンの真似なんかやったこともあるよな」

 

「よくやったね。でも一番記憶に残ってるのは、ここで初日の出を見ようって約束したのに夜更かししたせいで眠っちまったあんたを起こそうとしてるうちに日が昇って全員初日の出を見損ねたことだよ」

 

「ちょっ......お前っ!」

 

「冗談だって」

 

ヒストリアは微笑みながらそう言った。

 

シーザーはヒストリアの横顔を見つめる。朝日に照らされたどこか物憂げな表情はこちらさえ感傷的な気持ちにさせてしまう程の哀愁が漂っていた。

 

「......本当にここに戻ってくる気はないのか?」

 

シーザーはヒストリアに尋ねた。

 

「そんな気はないさ、だって私は郊外にいちゃいけない人間だからね。特にあんた達とは関わっちゃいけないんだ」

 

「そんなの関係ねぇ!お前の親父がしたことはお前に一切関係ない!」

 

シーザーは叫ぶ。

 

かつて、カリュドーンの子の前身であった走り屋、そこにヒストリアの父親は属しており、幹部として組織を支えていた。

 

だが彼は暴力的で下劣な性格であり、当時のボスであったビックダディからボスの座を奪おうと反旗を翻した。決闘を渋る彼を挑発するように彼の親しい人間を痛めつけ、晒し者にしたり、再起不能になるまで痛めつけたこともあった。

 

最終的に彼の横暴な振る舞いに堪忍袋の緒が切れたビックダディはヒストリアの父親と決闘を行い勝利、彼を郊外から永久に追放した。

 

そしてヒストリアもまた父親と共に郊外を追われることとなった。

 

ビックダディや当時新入りであったビリーらはそれに反対したものの、親類縁者を傷つけられた郊外の人々の怒りは収まらず、13歳にしてヒストリアは郊外を一人で去った。

 

「いいんだ、もう終わった話だからね。もう私はアルゴナウタイの社員なのさ」

 

あの日と全く変わらぬ笑顔を前に、シーザーは言葉に詰まった。喉の奥で出かかった言葉がモヤのように霧散し、心の底に思いが澱のように溜まりわだかまりを成していく。

 

「それより行かなくていいのかい?ぼちぼち他のメンバーも起きてくるよ」

 

「......そうだな」

 

シーザーは心の底に溜まった澱に蓋をし、メンバーのところへ向かった。

 

 

 

 

 

早朝、ブレイズウッドの下層に集められた俺達はシーザーとトーマス、ルーシーの前に集った。

 

「全員朝の早いうちから集ってくれてありがとうな!まぁ鉄は熱いうちに食え、っていうしな!」

 

「打て、ですわお馬鹿」

 

ルーシーはシーザーにツッコミを入れる。

 

「それはそうと今から作戦を解説しますがよろしくて?」

 

ルーシーの問いかけに俺達は頷く。

 

「まず今回の作戦──カリュドーンの子並びにアルゴナウタイによるローズグループ掃討作戦について、我々の作戦としては至ってシンプル、それぞれ二人一組に分かれて三つある奴らの拠点に突撃しそこにいる奴らを全員ぶちのめしてくださいませ」

 

いやこれは作戦と言っていいのかというツッコミを飲み込み、ルーシーの話に再び耳を傾ける。

 

「あなた方なら万が一にも有り得ないとは思いますが、勝てないと思った相手がいた場合は戦わず逃げに徹して味方を呼んで増援を待ってくださいまし。そして今からペアを組んでもらうメンバーを発表しますわ」

 

ルーシーは一呼吸おいて語りだす。

 

「組んでもらうメンバーはライトとテレジアさん、フィンさんとプルクラ、わたくしとシーザー、パイパーとトーマスさん、そしてバーニスと彦斎さん、以上ですわ」

 

「いや待て待て」

 

俺は発表を遮る。

 

「どうかしましたの?」

 

「なんで俺がバーニスと一緒なんだよ」

 

「そんな~彦斎くんは私と組むのそんなに嫌?」

 

バーニスは笑顔を崩すことなく尋ねる。

 

「そういう事じゃない、戦い方的にもっと相性いい奴いるだろってことだ。それでこそプルクラとか」

 

「悪いが他のメンバーでバーニスと組みたいと言う奴がいなくてな、それに新人なんだからこの程度我慢しろ」

 

トーマスはそう吐き捨てた。

 

「あんた......こればっかりは本当に同情するわ」

 

プルクラはこちらに憐れみを含んだ視線を飛ばす。

 

ルーシーは閑話休題とばかりに軽く咳払いをする。

 

「出発したあとは一番近い拠点に向かって行動を開始してくださいまし。この郊外を踏み荒らした罰をその身に刻んでやりましてよ」

 

「終わったぞ。大将であるてめえからも一つ発破をかけてやれ」

 

ルーシーが言い終わったのを見計らい、トーマスはシーザーに話しかける。

 

「ああ、分かった」

 

シーザーが前に出ると同時に、ルーシーとトーマスは一歩後ろに下がる。

 

「まずはカリュドーンの子の皆、協力してくれたアルゴナウタイにも礼を言う。この長く続く郊外を預かる身として、奴らの──ローズグループの横暴を許すことはできねぇ。だからどうか、俺と一緒に戦ってくれねぇか、この郊外の平和のために‼」

 

シーザーが声を上げると同時に全員が頷き、砂埃が混じった熱風の中、俺達はそれぞれの持ち場に向かった。

 

 

 

第十四話  完




キャラクターファイル  05

ヒストリア

陣営  アルゴナウタイ

身長  165㎝

武器  巨大な盾

属性  火  役職  防護

登場人物の過去を深く掘り下げたスピンオフ小説要りますか?

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