ゼンレスゾーンゼロ 虚ろいを行く者達   作:清少納言

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第十五話  荒野の死闘

一面に広がる荒野の中、俺とバーニスは共にバイクを走らせていた。

 

「すごいね彦斎くん!昨日始めて乗ったとは思えないくらい乗りこなせてるよ!」

 

「それはどうも」

 

昨日は夜通しバイクに乗る練習をしたかいがあったということだ。

 

「ならそいつはよかったな」

 

と、ライトとその背中にしがみつくテレジアがバイクを並走させながら話しかけてきた。

 

「だが目的地は近い。バーニス、彦斎、気を抜かずに進め」

 

「了解!」

 

「分かってんだよ、そんなこと」

 

そう言いながら徐々に大きくなる拠点に向けてバイクを走らせる。

 

その時、どこからともなくこちらに向かって走ってくる数台のジープと、そこに溢れんばかりに乗った武装集団が視界に映る。

 

「マズいッ......!」

 

退避行動を取った俺達を嘲笑うように、奴らは車体に備え付けた機銃やガトリング砲でこちらを狙い撃ってきた。

 

「こっちが来る事を読んで......やっぱり情報は漏れてたのね」

 

テレジアが呟くのを尻目に、ライトは舌打ちをしながら右手につけた黄金のグローブを吹かす。

 

「お前らは先に拠点に向かえ‼ここは俺達で食い止める‼」

 

そう言いながら俺とバーニスはジープに向かってバイクを走らせた。

 

雨あられと降り注ぐ銃弾の中バイクを走らせ、刀を抜くと同時にバイクから飛び降り、車に固定された機銃を両断して、更に後ろのタイヤに切れ込みを入れる。

 

タイヤがパンクしたジープはそのまま一回転し、荒野から顔を出す岩に激突し大破した。

 

再びバイクに乗ると、もう一台のジープからの機銃掃射が俺を襲った。刀で銃弾を斬り、何とか防げているがこのままでは埒が明かない、と思っていたその時、バーニスが火炎放射器をジープに向けて構え、炎を乗っている奴らに向けて放った。

 

炎の中にモロに突っ込んだ彼らは激しく取り乱し、そのままジープは横転した。

 

「助かったぜ」

 

「余裕余裕、このままやっちゃお!」

 

大破したジープから構成員が武器を携え、ぞろぞろと姿を表しているのが見えた。俺は刀を抜き、そのまま奴らに向かって走り出す。

 

四方八方から飛ぶ銃弾を躱し、鉈を持って襲い来る構成員達の顔や腹に峰打ちを入れながら地面や奴らの体を蹴り、背後から射撃を続ける構成員達に斬りかかる。

 

そのまま奴らに飛びかかり、その場にいた三人に峰打ちを入れそのまま背後から襲い来る敵を一気に吹き飛ばす。

 

そうして残った奴らを片付けようとしたその時、俺の視界に一筋の鋭い光が差した。

 

銀色の一閃を撥ね退け、後方に宙返りして着地する。

 

「流石は『蝮の彦斎』。いい反射神経だ」

 

そこには三日月刀を片手に握りしめた知能構造体がおり、不敵な笑みを浮かべていた。

 

「......誰だお前は」

 

「私の名前はサンソン。お前と同じく賞金稼ぎをしていたものだ」

 

「聞いたことない名前だな。死にたくねぇならとっとと消えろ」

 

俺は低い姿勢のまま刀を構える。

 

「そうか。だが消えるのは貴様の命の灯よ‼」

 

俺は奴目掛けて突きを見舞う。だが奴はそれを華麗に躱し、俺の横腹目掛けて斬撃を放った。

 

咄嗟に刀で受け、三日月刀を撥ね退けるとその隙に連撃を叩き込む。

 

「息もつかせぬ連撃!伊達に恐れられた訳ではあるまい!」

 

サンソンは俺の斬撃を躱し、受け流しながらも僅かな隙に攻撃を差し込んでくる。奴が放った大振りな横薙ぎを屈んで躱し、懐に潜り込んだ俺はその体を蹴り飛ばした。

 

俺は刀を構えて跳躍し、吹き飛ばされた奴目掛けて刀を振り下ろす。だがサンソンはそれを転がって躱し、そのまま二連撃をこちらに見舞ってきた。

 

俺はそれを撥ね退け、刀を打ち合わせる形で鍔迫り合いの格好となる。

 

「急に姿を消したからどうしたかと思ったら...まさか名も無き万事屋に与していたとはな」

 

サンソンは嘲りを含んだ口調でそう言ってきた。

 

「そっちこそギャングの走狗になって天下でも獲ったつもりか?ガラクタが」

 

「心外だな。同じく裏の世界に生きる者としては私の方が成功していると思うがな」

 

そう言って奴はこちらを突き放し、その隙に攻撃を絶えず浴びせてきた。

 

肉を裂こうと迫る刃を躱し、跳ね除けてその金属製の無機質な体目掛けて刀を振り下ろす。

 

「鋭い一撃、仮に当たるようであれば私とて死に至る」

 

「当たる気ないだろお前。遺言か?」

 

俺は体を旋回させ、旋風のように連撃を繰り出す。流石の奴も怒涛の連撃を捌ききれず徐々に後方に流されていく。

 

たなびくエーテルを放つ俺の刀が奴の鍔を弾き、その両腕ごと上に弾く。がら空きになった胴体目掛け下から居合切りを繰り出そうとした時、サンソンはその体ごと屈め一閃を振り下ろして来た。

 

俺はそれを横に逸れる形で躱し、振り下ろされた奴の刀の峰目掛けて刀を振り下ろした。三日月刀は地面にめり込み、奴はひどく驚いた表情で固まった。

 

その隙に刀を滑らせ、その機体を切り裂こうとしたその時、

 

「甘いな」

 

と、サンソンは呟く。その刹那、奴の両腕は二の腕から二つに別れ、その間を繋ぐ鎖が姿を現した。

 

その鎖は俺を絡めとり、そのまま遠方に投げ飛ばした。投げ出された俺を嘲笑うように、伸びた腕とその手に握られた三日月刀による追撃が俺を襲う。

 

その刃を躱し、駆ける中でもサンソンは並走しながら腕を伸ばして攻撃を続ける。

 

「この不意討ちにすらすぐさま適応し、打ち返してくるとは流石だ!──だが解せぬ‼」

 

飛んでくる腕と斬撃の速さが勢いを増していく。

 

「なぜそれ程の腕があるにもかかわらず誰一人殺さない‼ホロウの中で人死など日常茶飯事、そして我々の仕事は殺しありき‼エーテリアスをゴミのように斬り捨てる強さがあると言うのに‼」

 

サンソンはその左手で俺の左腕を掴み、右手を戻して剣を構える。

 

「ならば一度にして最後‼この私が貴様に『死』を刻み込む‼」

 

そう言ってサンソンは俺ごと左手のチェーンを戻す。向けられた切っ先が途轍もない速度でこちらに迫る中、俺は左脚を軸に体を捻り、背負い投げの要領でサンソンを投げ飛ばした。

 

奴はそのまま弧を描いて地面に叩き付けられ、その隙に刀を握り直した俺はサンソンに斬りかかる。

 

「舐めるな‼」

 

サンソンは再び両腕を放つ。だが俺は地に転がって躱し、鎖を両足に絡みつけたまま体ごと脚を旋回させて鎖を巻き取る。

 

「......こいつ‼」

 

サンソンは地面を旋回し続ける俺に巻き取られ、地面に引きずられながら叫ぶ。

 

そして刀が届く距離までサンソンの姿が近づくと同時に、鋭い一閃をその機体に叩き込んだ。

 

金属片と油が飛び散り、奴が動かなくなったのを確認した俺は脚に絡みついた鎖を斬って脱する。

 

「どうした......何故止めを刺さない」

 

サンソンは地面に横たわりながら呟く。

 

「お前に構ってる暇はない。それに今のお前は刀すら握れないガラクタだ」

 

「言うではないか。私は貴様の剣の腕、そして信念を折ることすら叶うことなく文字通り負けた。だがその不殺はいつか貴様の枷となり、より強大で邪悪な者への付け入る隙となる。いつまでそれを続けられるか見物だな」

 

サンソンの戯言を聞き流し、バーニスの方に向かうとそこには倒れた戦闘員とところどころ燃えた大地が広がっていた。

 

「......無事で何よりだよ」

 

「平気平気、こいつらよりも前に戦ったギャングの方が強かったまであるよ~」

 

にこやかにバーニスは答えた。決して奴らも弱い訳ではなく、武装も潤沢であることを鑑みれば有象無象のホロウレイダーなど相手にならない程の実力者だろう。というかむしろこんな死闘があったにもかかわらず狂気が仄かに感じられる笑みを崩さない彼女の方が一番怖い。

 

「とにかく敵を片付けた以上、早く行こう。ホロウに行く前に報告と連絡もしておこう」

 

「そうだね......」

 

彼女が駆け出そうとした瞬間、後ろの戦闘員が急に立ち上がりナイフを掲げるとバーニスを抱きかかえ叫ぶ。

 

「ふざけんな!せめてこの女を道連れに」

 

──思考するよりも早く体が動く。いつの間にか俺は地を蹴り、刀を抜き払って男の右腕を一刀両断していた。

 

やがて男の苦悶に満ちた声とその図体が地に転がる音が響く。

 

「大丈夫か?血とかで汚れたりしてないか?」

 

俺は尻を痛そうにさするバーニスに尋ねる。

 

「......うん大丈夫!へっちゃらだよこんなの」

 

一瞬の戸惑いを見せた後、彼女はいつもと変わらない調子で答えた。

 

 

 

第十五話  完

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