ゼンレスゾーンゼロ 虚ろいを行く者達   作:清少納言

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こんな展開もガバガバで文章も拙い作品を読んでくださり誠にありがとうございます。これからも面白いものを皆様にお届けできるように精進してまいります。


第二話  アルゴナウタイ

その後、ホロウから出た俺は三人に連れられてルミナスクエアにある雑居ビルの一階、もといアルゴナウタイ本社へと招かれた。

 

応接間に通された俺は下座の椅子に腰掛ける。

 

「まずはうちの社員を助けてくれた事に礼を言おう」

 

トーマスはそう言い、ボンプが運んできたコーヒーに口をつけた。

 

「礼はいい。それよりも用件はなんだ」

 

「随分とせっかちだな。その前に一つ質問に答えてくれ。

君は我々、アルゴナウタイを知っているか」

 

「いいや全く」

 

俺は間髪入れずに答えた。この回答を見透かしていたかのようにボンプが「ンナナ」と声を上げる。

 

「言わんこっちゃない?客の前でそういう事を言うのはよせアタランテ」

 

トーマスは額に手を当てる。

 

もっとも俺がアルゴナウタイの存在を全く知らない、というのは噓だ。

 

以前邪兎屋に関するインターノットのスレッドで

 

『あんな奴らに依頼するくらいならアルゴナウタイに頼んだ方がマシ』

 

という書き込みを見た事があり、その存在自体は知っていたが比較対象があの邪兎屋な時点でこの組織もまともな企業ではないだろう。

 

「すまない。話が脱線したな」

 

トーマスはこちらに向き直る。

 

「単刀直入に言おう。どうかこのアルゴナウタイに入ってくれないか」

 

彼はその鋭い目をこちらに向け言った。

 

「どういう事だ」

 

俺はトーマスに尋ねる。

 

「今このアルゴナウタイの社員は俺含め四人。ましてや知名度もなくここを頼る者も少ない。我々が企業としてするにはお前の力が必要なんだ」

 

「そうか。お前達が厳しい立場に置かれているのは分かった。だがそんな状況で組織の頭数を増やすのは悪手だろ」

 

「確かに長期的な視点で見ればそうだな。だが今我々は重大な案件を抱えていてな、戦える人材がどうしても必要なんだ」

 

「重大な仕事?」

 

俺は思わずオウム返ししてしまった。

 

「ああ、本来ならば治安局が本腰を入れてやるような案件だ。こんな無名の何でも屋に来る以上、訳ありなのは察しが付くだろう」

 

「確かにそれはそうだがお前達は少人数でホロウに潜れる実力者だろ。何を恐れる必要がある」

 

「随分と冷静だな。てっきり賞金稼ぎだからもっと刹那主義の向こう見ずだと思ってたんだがな」

 

その言葉に俺は固まった。

 

「おい、それはどういう事だ」

 

俺はトーマスに尋ねる。

 

「実は我々も職業柄、裏社会には明るくてね。前々から腕利きの賞金稼ぎ『蝮の彦斎』には会いたいと思っていたんだ」

 

蝮の彦斎──それは俺が賞金稼ぎをしている中でつけられた通り名だ。

 

「ホロウに単身乗り込んではホロウレイダーや犯罪者を刀一本で倒しては治安局に突き出すダーティーな賞金稼ぎ、もし会うなら仕事を手伝うか治安局に突き出そうかと思ってたんだが」

 

トーマスはその鋭い目でこちらを睨みながら

 

「──選べ、治安局に突き出されるか、我々と手を組むか」

 

そう言ってきた。

 

恐らくトーマスは治安官、いや鍛えられた執行官にも匹敵する実力者だろう。更に残りの社員も全員手練れ。

 

万が一逃げおおせたとしても彼らに加えて治安局にも追われる身にもなってしまうだろう。

 

「分かった。そちらと手を組もう。ただ入るかどうかはこの件が終わってからだ」

 

「お前に条件を要求出来る権利はない、と言いたいところだが今は戦力の確保が優先だ。これが案件の詳細だ」

 

そう言ってトーマスは二枚の書類を手渡してきた。

 

 

 

その日の夜、俺はアルゴナウタイの本社から自宅へと帰る道で地下鉄に揺られていた。

 

まさかアルゴナウタイがあんなにヤバい組織だったとは。だがその可能性を考えなかった俺も俺だ。

 

手渡された資料には案件の詳細が事細かに記されていた。

 

どうやらある実業家の娘が誘拐され、その実業家の下に身代金を要求するダイレクトメールが来たのだという。

 

その実業家はカンバス通り出身ながらも実業家として大成した傑物だが、今の地位を確立するまでにギャングと関わりを持っており、娘を誘拐した者はどうやらそのギャングの元組員だった、ということらしい。

 

彼らは現在ホロウに身を隠しており、娘もそこにいるとのことだそうだ。

 

今日彼らがホロウにいたのはアジトを探すためであり、その道中転移現象に見舞われ、身の危険を感じた彼らは俺を連れて引き返した、というのが今日の流れだ。

 

「随分と面倒くさいことに巻き込まれたな」

 

俺は鉄道の天井を見つめる。その時、脳裏にトーマスの顔がちらついた。

 

──そもそもあいつは何者だ。

 

高い戦闘力に優れた交渉術、とても表の世界で生きてきた人間とは思えない。

 

まず治安官、執行官だったという可能性は低い。前者にしては戦闘力が高すぎるし後者では交渉術がうますぎる。

 

元防衛軍ならあり得るかもしれないが彼はまだ辞めるような年齢ではないだろう。

 

邪兎屋やモッキンバードから脱退したメンバーがいたという話も聞いたことがない。

 

そんなことを考えているうちに地下鉄は目的の駅に着いた。

 

 

 

次の日、俺は再びアルゴナウタイと連絡を取り、ホロウ内の指定された場所へ向かった。

 

「思ったよりも早く着いたじゃないか」

 

トーマスはハンチング帽を直しながら言った。

 

「それよりも何でお前一人なんだ。戦力がいるんじゃないか」

 

「あまり大人数で行動すると奴らに勘付かれるからな。今回はお前との少数精鋭だ。行くぞ」

 

そう言ってトーマスは12時の方向へと向かい、俺もそれに続く。

 

トーマスが鍛えられた執行官並の実力者であること、大人数で行動できない現状を考えればこの編成も理にかなっているだろう。

 

「そう言えば依頼者の娘は無事か?」

 

「彼女はエーテル適性が高いらしい。侵蝕症状は気にすることないだろう」

 

「こんな事言いたくないが既に殺している可能性は?」

 

「ないな。貴重な交渉材料を自分で潰すなんて愚の骨頂だからな」

 

そんな会話をしているうちにトーマスは突如としてその歩みを止めた。

 

目前の建物には四人の見張りがいる。

 

「ここが奴らのアジトか」

 

「そうだ。行くぞ」

 

俺とトーマスは入口に突撃する。

 

「お前ら何者」

 

見張り員が銃を向けるよりも早く、トーマスは二人の顔面を鷲掴みにして地面に叩き付けた。

 

俺も残りの二人に峰打ちを叩き込み気絶させる。

 

「見張りは倒した。行くぞ」

 

俺はトーマスと共にアジトに突入した。

 

暗い通路を進み、広間に着くとそこには十人弱のゴロツキがたむろしていた。

 

「誰だ!」

 

ゴロツキの一人が声を荒げる。

 

するとゴロツキ共の中から鉈を持ったガラの悪い男が出てきた。恐らく奴がボスだろう。

 

「おっと......見張りはもう倒したみたいだな。お前達、あの小娘を取り返しに来たんだろう」

 

「ああ、彼女はどこにやった?」

 

「言う訳がないだろ。お前達身代金も持ってきてない癖によくもそんなことを言えるな」

 

「お前達にやる金などない」

 

トーマスはボスに冷たく言い放つ。

 

程なくしてボスは腹を抱えて爆笑し出した。

 

「どの口が言ってんだ、裏切り者の分際で」

 

「どういう事だ」

 

俺はボスに尋ねる。

 

「まさか仲間の癖にそんなことも知らないのか。いやこの恩知らずの小心者に自分を明かす度胸なんかないよなぁ」

 

「いい加減にしろ。ゴミが」

 

トーマスが言う。

 

「噓でも元同僚は貶すもんじゃないぜ。元赤牙組のトーマス・パンサーさんよォ」

 

ボスはトーマスに向かって言った。

 

 

第二話  完

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