ゼンレスゾーンゼロ 虚ろいを行く者達   作:清少納言

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第三話  全員集合

「元......赤牙組?」

 

確かにそれなら裏社会に精通していることも、優れた交渉術にも説明がつく。

 

「全く、こっちは大変だったんだぜ。かつて赤牙組最強と謳われた幹部「狂爪のトーマス」が抜けてからそれに続いて他の奴らまで一斉にやめちまうんだからよ」

 

「俺が忠誠を誓ったのは弱きを助け、強きを挫く義賊としての赤牙組だ。堅気にも構わず手を出すようなチンピラ共の集まりに成り下がった赤牙組じゃない。それは抜けた奴らも同じはずだ」

 

「それはそれと裏切る理由にはならないだろ。あの金持ちだって誰のおかげでごみ溜めみたいな故郷から出られたか分かってない、だから一度分からせてやったのさ」

 

奴はヘラヘラと言ってのけた。全く、クズという存在はどうして自分の都合のいいことばかりをまるで世の理、善行のように並べ立てられるのだろうか。本当に腹が立つ。

 

俺が鯉口に手をかけると、それを察したのかトーマスは俺の一歩先に出た。

 

「そんなに言うなら見せてやろう。抜けたとは一度は赤牙組の幹部の肩書きを背負った以上、お前達を再教育してやる」

 

そう言いトーマスは携えた双剣を抜いた。

 

「野郎共、ぶち殺せ!」

 

ボスの掛け声と共にチンピラ共が襲い掛かる。

 

──刹那、チンピラ共は一瞬にしてその武装をバラバラに切り裂かれ、その場に倒れ伏した。

 

「やば」

 

逃げ出そうとした一人のチンピラを見逃さず、トーマスは強力な蹴りを見舞い気絶させる。

 

「死ねクソガキ!」

 

俺の後ろから二人のチンピラが不意打ちを仕掛ける。が、俺は冷静に奴らの動きを躱し峰打ちをその胴体に叩き込んだ。

 

「死ね!」

 

チンピラの一人がガトリング砲を取り出し、それを放つがトーマスは放たれた銃弾を全て避け、奴に近づくとその銃身に双剣を突き刺し、チンピラを蹴り飛ばした。

 

爆発するガトリングから双剣を引き抜いたトーマスの背面からボスが切りかかる。

 

トーマスは奴の鉈を双剣で防ぎ、そのまま跳ね飛ばすとボスの鳩尾に蹴りを入れた。

 

ボスはその場に崩れ落ちる。

 

「無駄口叩く割には弱いな。さぁ、依頼者の娘をどこにやったか教えろ」

 

「......そうだな、あの世から探すといいさ」

 

奴が上を向くと、そこには天井近くの通路に潜んでいた伏兵がその姿を現し、ロケットランチャーを放つ。

 

俺は刀を抜き、迫りくるロケットランチャーの弾を全弾切り伏せた。

 

それと同時にトーマスは高く跳躍し、通路に立つ二人の顔面を掴み下に放り投げた。

 

「なっ!」

 

驚いたボスの下に伏兵が降り注ぐ。折り重なった伏兵をトーマスは通路から見下していた。

 

「とりあえずチンピラ共は全員倒したな」

 

トーマスはこちらに降りてくるとそう言った。

 

──直後、背後の壁が勢い良く壊れた。

 

「敵か?」

 

俺は鯉口に手をかける。

 

「私達に隠れて仕事なんてつれねぇな、大将」

 

土煙の中から自分の身長程の盾を担いだ女性が姿を現す。その後ろからあの二人も姿を見せる。

 

「すまないな。それよりもここにくる前に怪しい連中に会わなかったか」

 

「ここに来る途中で怪しい連中を倒したんだが、そいつらの乗る車のトランクに依頼者の娘はいた。今は事務所で保護している」

 

さすまたの男──フィンはトーマスにそう告げた。

 

「それよりこんな人数で敵陣に乗り込むなんてどうかしてるわよ」

 

ボンプを従えた女がまくし立てる。

 

「いつも心配かけて悪いなテレジア。それに今回はこいつの入社試験も兼ねた仕事でな、こいつがどうしても入れてくれとうるさいからな」

 

トーマスは俺の肩に手を置く。

 

「は?そんな話俺は一度も」

 

反論する間もなく三人がこちらに駆け寄る。

 

「噂には聞いていたがお前が新入りとはな」

 

盾の女が俺の肩を叩く。

 

「今日からあんたが一番の下っ端、こき使ってやるから覚悟しなさい」

 

ボンプを従えた女──テレジアはこちらにそう言ってきた。

 

「万が一にも逃げ出そうとするな。その時はお前の命はない」

 

トーマスが耳元で囁く。

 

どうやら俺の受難はまだ始まったばかりらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

アルゴナウタイが去った後、アジトを逃げ出した二人のチンピラはホロウをさまよっていた。

 

「ただの何でも屋があんなに強いなんて聞いてないぞ」

 

片方のチンピラが毒づく。

 

恐らく他の仲間は駆けつけた治安官にその身柄を拘束されているだろう。

 

行く当てなく彷徨う二人の視界に、数人の人影が映り込む。

 

恐らくはその身なりからして新手のホロウレイダーだろう。

 

「その身ぐるみ、頂いた!」

 

チンピラの一人が突撃する。

 

──数秒後、その身体は宙を舞った。地面に着地した身体はあらゆる場所がひしゃげている。

 

「何か用か」

 

数人の中から一際大柄な男がこちらに向かってきた。

 

その肌は赤く、額には二本の角が生えており、服の袖には薔薇の刺繡が施されている。

 

「た、助け──」

 

チンピラの命乞いを聞くことなく、男は持っている金棒をチンピラの頭上に振りかざした。

 

チンピラの叫び声をかき消すように、ホロウ内に肉の潰れる音が響いた。

 

 

 

 

 

 

同時刻、スコット前哨基地の展望台から目前に広がる零号ホロウを一人の男が見つめていた。

 

その男は高級素材で作られた黒いコートを纏った三十過ぎの男で、いかにも政治家という雰囲気を纏っている。

 

男は後ろから響く軍靴の音に気が付き、後ろを振り返った。

 

そこには防衛軍の隊服に身を包み、結い上げた白髪にゴーグルを装着した、所属するオボルス小隊において11号と呼ばれる少女が立っていた。

 

「元気そうで良かったよ11号」

 

「そちらこそご壮健で何よりです。ネロ幹事長」

 

11号は深々と頭を下げる。更に11号の後ろから研究員の一人であるローランドが姿を現した。

 

「この度はスコット前哨基地にお越しいただきありがとうございます」

 

「私に感謝の言葉を言われる筋合いはない。寧ろ感謝されるべきは日夜あの零号ホロウを監視し、前線で戦う君たちだ。こちらこそ視察など言って業務を邪魔して悪かったな」

 

そう言ってネロはその場を去った。

 

その途中、犬のシリオンの研究員が同僚と話しているのをネロは目の当たりにした。

 

「TOPSの幹事長だからっていうからどんな人かと思ってたけどすごいいい人だね」

 

「本当にああいう人がトップに立てば世の中良くなるのにね」

 

スコット前哨基地の出口を出た後、ネロはその口を大きく歪め

 

「分かってるじゃないか。畜生の分際で」

 

と、言った。

 

程なくしてネロは公用車の前に辿り着き、その後部座席に乗り込む。

 

「しかし、ここの奴らもよくあんな畜生と仕事ができるな。エーテル物質に脳でも侵されてるんじゃないか」

 

その時、ネロのスマホが振動する。

 

「誰だ」

 

『私です。幹事長』

 

野太い声がスマホから響く。

 

「茨木か。サンプルは見つかったか」

 

『それが全く、やはり強大な力を持つエーテリアスは発見が難しいものがあります。

後、道中で二人のホロウレイダーを殺害しましたが後始末は必要でしょうか」

 

「ホロウ内での死者など日常茶飯事だ。放っておけ」

 

そう言ってネロは通話を切った。

 

「鬼共は腕は立つが頭を使うことはからっきしだな。ローズグループも最近はまるで役に立たない、誰のおかげでTOPSに潜り込めたかも分からないのか」

 

ネロは頭を抱える。

 

「──いや、これも私がTOPSのトップになるまでの辛抱だ。トップにさえ立てば──」

 

そう言ってネロは車窓の外の景色を眺めた。

 

 

第三話  完




キャラクターファイル  01

柊彦斎   (ひいらぎ げんさい)

陣営  無所属→アルゴナウタイ

身長  174cm

武器  エーテル物質を加工した日本刀(無銘)

(ゲームで当てはめるなら)

役職  強攻    属性  エーテル
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