パエトーン直属エージェントの日常   作:Kei0503

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chapter05 星流れ、神鳴の奔るが如く

数日後、俺たちはダルマから連絡を貰って、RandomPlayの裏手にいた。

 

「ふぅ…よーやく着いたわ!どうして市内ってどの車もチンたら走ってんのかしら!郊外の半分もスピード出ないじゃない!

 

そう文句を垂れるニコ。

 

「んな事言ったってここは都会で一通りが多いんだから当たり前のことだろ。」

「そんな正論聞きたくないわ!」

 

俺が言うと、そう言い返された。

いや正論って分かってんなら言うなよ。

 

「都市の制限速度は郊外のきっちり半分だからね。ニコ…まさか君、いつも違反しているとか言わないだろうね。」

 

そうアキラが言うと

 

なんですって!?うっかりしてたわ…このところ郊外との行き来ばっかりだったから…。でもま、ナンバープレートは外しといたし罰金の通知が来ることはないわね!」

 

いやもっとやばい犯罪してんじゃねぇかこいつ。

 

「ニコ、それスピード違反より重罪だぞ。交通課の人間がパエトーンの所に来たら、みんな終わりなの分かってる?」

 

そう猫又に言われてニコはしゅんとなった。

 

「うっ…わ、分かってるわよ!安心して!後はつけられてないし、目もつけられてない。ここへ来たのは、あたし一人とこの車だけよ!」

「電話であいつから聞いたでしょ。ヴィジョンのスキャンダルには黒幕がいるって。この話がホントかどうかで、あたしたちの次の一手が決まるわ。」

「そういうことだから、あんたたちを郊外に連れてくためにわざわざあたしがご足労しちゃったわけ!」

 

と、ニコは話した。

 

「そんなの、尚更パールマンを新エリー都に連れてきた方が良かったんじゃない?わざわざ私たちを迎えに来る必要あった?」

 

と、リンが言い出す。

 

「まぁ今は市政選挙真っ只中だからな。ビリーが臨時でカリュドーンの子の運転手やってるのも、規制が厳しいからだろ?」

「そんな中パールマンなんて連れてきた暁には…。」

「治安局にしょっぴかれるの確定ってワケ!分かってるわね空!」

 

そうニコにつつかれる。

 

「うん、やめてね?猫又が爪立てるから。」

 

さっきから実は腕に爪立てられてる。痛い。

 

「おっと、ごめんね猫又。」

「…ニコならいいぞ。でも、あんまりあたしの前でいちゃつかないで。」

 

そう猫又はさらに強く腕を掴んでくる。

うん、めっちゃ痛い。

 

「っと、話を戻すわね。」

「つまりはこっちは敵のことが分かってるけど、向こうにはまだあたしたちのことがバレてない…。経験上、こういう時はこっそりやるに限るわね!」

 

と、ニコは説明…?する。

 

「それはつまり…ホロウを使うと?」

 

アキラがそう聞くと

 

「ふふん、大正解!幹線道路を見張ってる治安局はボンプの耳まで武装してるわ。万が一、ホロウを使う必要が出てきたら信頼出来るプロキシがいる…でしょ!」

 

そうニコが言うと、2人のところに通信があったようだった。

 

「それはその通りだ。邪兎屋に白祇重工、ヴィクトリア家政にカリュドーンの子…最近あったことは全て、元を辿ればヴィジョンのスキャンダルだからな。そうだろう?リン。」

「ぼちぼち決着をつけないとだね…。わかった。でも向かうのは私とニコ、それに銀狐、猫又。お兄ちゃんはうちにいてくれる?H.D.D.システムで遠隔支援をお願い!」

 

と、リンが言い出した。

…まぁ猫又置いてったらまた傷だらけにされかねん。

 

「そうこなくっちゃ!最初っから最後まで、やり遂げてこそ一流よ!あたしは市内から出してくれるツテに連絡するから、あんたはちっこいのをちゃんと連れて来なさいよね!」

「あ、そうそう…あんたたちの車で行ってもいいかしら?もし邪兎屋の車で捕まっちゃったら、免許の申請いよいよ突っぱねられちゃうかもなのよね…。」

 

と、ニコは言い出した。

 

「おい待ててめぇ今まで無免だったのかよ。」

 

俺がそう聞くと

 

「だ、大丈夫よ!ちゃんと安全運転するから!」

 

と言い出した。

…はああああぁぁぁぁぁぁ…。

 

「ニコ、俺と猫又は自分の車で行く。カリュドーンの子はうちのお得意様でもある。出張メンテだと言えば抜けられるだろう。」

「分かったわ。じゃあ、そっちはそっちでよろしく!」

 

そう言って、俺たちは別れ、郊外で集合することになった。

 

自宅

 

…エーテル燃料の補給に、弾の補充。

一応戦闘服に着替えて…っと。

 

「よし、猫又。用意出来たか?」

「もちろんだぞ!空は…戦闘服で行くんだな。」

「まぁあっちで何があるかわからんからな。それこそ、ホロウに入るなんてことになったら、不味いだろ。」

 

俺と猫又はそう話して、車に乗り込む。もちろん、刀やuziを代表とした武器は、メンテ用品に上手い具合に隠した。

 

そして市外へ出るためのゲートに着いた時

 

「…郊外へ、なんの用事でしょう?」

 

と、逆に治安を乱してそうな尻と胸のでかい赤メッシュの入った女性治安官に聞かれた。

 

「ただの武器メンテナンスです。今日予約が入っていましたので。」

「武器メンテナンス…?失礼ですが、どちらの?」

「カリュドーンの子ですね、なんなら、メンテ用品をお見せしましょうか?後ろに載せてあります。」

「いえ、そこまでは…もしかして、貴方は鍛冶屋の?」

 

そう聞かれた。

 

「えぇ、鍛冶屋夜月の店主、夜月 空です。すみません、約束の時間が近づいてきているのですが、まだかかりそうでしょうか?」

 

そう聞くと

 

「いえ、これで終わりです。お仕事頑張ってください。」

 

と言って、通された。

 

「…ふぅ。焦った。」

「ほんとだぞ。なんでわざわざ武器を隠している場所を見せようとしたんだ?」

 

猫又にそう聞かれた。

 

「仮に隠してあるとして、隠してそうな場所を自分から見せれば、白に見えるだろ?ただそれだけだよ。実際に隠してるが。」

「なるほど…じゃ、急ごう!空!」

「はいはい。飛ばすぜ。」

 

そう言って、俺たちはブレイズウッドに急行した。

そして、ブレイズウッドでダルマから真相について丸々聞き、しばらくして…。

 

「と、とにかくだ!私は名義上こそヴィジョンのCEOだったが、実際にはお飾りに過ぎんかったのだ!会社の長期的な事業計画はみな、サラのやつが仕切っとった!例の旧地下鉄改修プロジェクトも含めてな!」

「そして、あの女があれほど危険な橋を渡ることが出来たのは、治安局のブリンガーが後ろ盾になっていたからなのだ!」

「連中、計画のプロセスには一切私を関与させず、最後の最後であれをしろ、これをしろと指示してくるだけだた。挙句に食事すら、お前は社食で済ませろ、だぞ!信じられるか!」

 

うーんガッツリ傀儡だなぁこりゃ。

 

「…まぁ最後のはどうでもいいとしてよ。その証拠はあんのか?それこそ書類とかよ。」

 

と、俺が聞くと

 

「おお、あるとも!奴らの計画がどんどん過激になっていると感じた私は、その動きに目を光らせていた。なにせ名ばかりのCEOとはいえ、対外的な書類のほとんどには、私のサインがいるからな!」

「そうして旧地下鉄改修プロジェクトが始まる前に、サラから送られてきた計画書やメールは全てバックアップの名目で印刷しておいたのだ!社員食堂に追いやられる度、隙を見てはせっせと!」

 

…このダルマ、体に詰まってんのは脂肪だけじゃなかったな。

 

「そのバックアップは?」

「全て他の工事の書類に混ぜておいた!それを探し出せれば、あの女とブリンガーが繋がっている動かぬ証拠…とまでは行かないかもしれんが、金や情報のやり取りに使っていたアカウントは特定出来るかもしれん!」

 

と、ダルマ…いや、パールマンは自慢げに言った。

うん。その態度は気に入らんが、以外に策士だったなこいつ。

 

「ふぅん…本当にそんな証拠があるって言うなら、確かに説得力あるけど…。」

「そうだよ!スキャンダルの後、すぐに工事を落札したところがあるじゃん!クレタ社長率いる、白祇重工!」

 

俺はそのリンの言葉でハッとした。

そうだ。あいつらのところが落札してんだから、引き継ぎ書類に混じってるはずだ!

 

「なんだ?あの人よりクマが、クマより機械が多い会社は、お前らの知り合いなのか?それなら話が早いではないか!

「お前が白祇と知り合いなら、連中に引継ぎ書類を調べろと言えばいい!私が紛れ込ませた証拠が見つかるだろう!」

 

とパールマンが言い出す。

 

「そんな手があったなんて…このおじさん、お腹に詰まってるのは脂肪だけじゃなさそうだね…!ニコ、空、さっそくクレタに連絡してみるよ!」

 

そう言って、リンはその輪から抜けていった。

 

「空、だるまのオッサンがホントのことを言ってるとして…これからどうするの?にゃんとかして、こいつを治安局まで連れていく?あーでも、治安局には悪いやつもいるから…!」

 

「おまけに今は選挙期間中で、新エリー都は治安官だらけ。誰が敵で、どこで敵と繋がってしまうかを判断することは出来ないわ。」

 

そう猫又とアンビーが言ってくる。

 

「…ニコ、お前のツテで何とかならんか?」

「ふふん、まっかせなさい!このだるまのオッサンとは違って、このニコは名実ともに邪兎屋のCEOなのよ!ちゃーんと対策を考えてるっての!」

 

CEOかどうか怪しいぐらい借金が多いけどな?

 

「闘獣棋ってやったことあるかしら?鼠は兎に、兎は狼に、狼は虎に、虎は象に…の順番で食べられるんだけど、一周まわって、鼠は象を食べられるってやつ!」

 

あー、あのゲーム。

「で?それがどうかしたのか?」

「分かってないわね!あたしが言いたいのは、世の中なんにでも天敵がいるってことよ!虎の威を借りて、狼を食らうのが兎の知恵…そんで、虎を懲らしめたかったら、象にお出まし願えばいいんだわ!」

 

と、ニコは言い出した。

…は?

 

「待て待て待て待て、おま、まさか…!?」

 

治安局と張り合えるのなんて、防衛軍に、ホワイトスター学会、そして…!

 

「ふふん、そのまさかよ!あたしが呼んできたのはね、いまの新エリー都でいっちばんフレッシュかつ、いっちばん大きな象さんなんだから!」

 

あー終わった。終わりだよ。

その時、クラクションの音を鳴らしながら、「猪突猛進」のロゴが入ったトラックが数台空き地に入ってきた。

そして、そのうちの一つから、パイパーが顔をのぞかせる。

 

「おうおう、時間ぴったりだなぁ。本日は猪突猛進・特別便をご利用いただき、誠にありがとだぜぃ。ほーら、降りた降りた。」

 

そう言って降りてきたメンツは…

 

「うわあ…ここが郊外なの!?すごいねぇ、お空がくるくる、地面はゆらゆら、空気の匂いでゲーしちゃいそう!」

 

と、言い出す蒼角。

 

「それは車酔いですよ蒼角。しばらく私の手を取って休んでいてください。浅羽隊員、貴方は大丈夫ですね?」

 

「と、飛ばしすぎだってぇ…。信じらんないな、あのドライバー…!あ、やばい…アレどこですか、アレ…おろろろろ!

 

と、声をかける柳に車酔いで吐く悠真。

 

「このような特別な日に、人目を忍んで郊外まで連れ出すとは…我らを謀っているのなら、容赦しないぞ。邪兎屋のニコ。」

 

と、言い出す雅。

あははぁ。おわりだぁ。H.A.N.D全員集合だぁ。

 

「…む?なぜ空がここに?」

「あぁ…俺は単純にカリュドーンの子の武器メンテナンスに呼ばれたんだよ。」

「お得意様なんでな。」

「そうか…では、しばらく待っていてくれ。私達の武器もメンテナンスを頼みたい。」

 

あっ。まずい。

 

「…分かった。」

 

俺、残らないと行けなくなった。

死んだかも。

 

「では、まずは単独でパールマンの尋問をさせてもらう。しばらく時間をもらおう。」

 

そう言って雅はパールマンを連れて少し離れたところでパールマンを囲み尋問を始めた。

 

「あは、あはは、あはははは…。」

「ちょ、空?どうしたのよ…?」

 

俺が絶望していると、ニコがそう聞いてくる。

 

「ニコぉ…俺は一生恨むぞおめぇのこと…。」

なんで、なんでこの期に及んで俺の一番やばいお得意様を連れてきやがった…!?

 

俺はニコを掴んでそう言った。

 

えぇ!?そ、そんなの知らないわよ!?

 

と、ニコは小さく叫んだ。

不味い、不味いぞ…!柳なら絶対に気づいてる。

俺たち、パエトーンが今回の事件にずっと関与していること…!

しかもリンに至っては独立調査員として顔を知られてやがる…!

どんな運ゲーだよクソったれぇ…!!

 

「ほんとにだいじょぶ?だるまのオッサン、さっきから泣いたり笑ったり忙しいぞ…。あ、また地面に突っ伏して泣いてる…。どんなリアクションされたら、あんなリアクションになる訳…?」

 

と猫又はこっちなんてそっちのけで尋問を見ている。

 

「防衛軍の取り調べでも、似たようなものが見られるわ。けど、道具を使わずに言葉だけであんなふうにするなんて…あの執行官たちは天才みたい。」

 

そうアンビーが話していると、雅がこっちに戻ってきた。

 

「いやぁー!!!も、もう取り調べは終わったの?早いわね〜!さすが象だわ!」

 

と、ニコが動揺しながら言い出す。

こいつ演技下手か…!

 

「象?私はキツネだ。」

 

と、雅が言い出す。

どうでもいいがな。

 

「そこはどうでもいいのよ。」

 

あ、同じこと思った。

 

「それで、どうかしら?嘘じゃなかったでしょ?ヴィジョンの背後には黒幕がいて、それが何を隠そう、あのブリンガー次期総監なのよ!」

 

と、ニコが言うと柳が割って入り、

 

「貴方はブリンガー長官が犯罪に関与していると示唆しましたが…あの証人が司法取引を求めて提供した情報は、現時点で他に主犯がいるということのみです。この両者には天と地ほどの差があります。」

 

と言い出した。

そして、それを言っている間に、悠真と蒼角が俺たちを囲うように移動していた。

…やっぱり、気付かれてやがるな。これは。

俺はリンの近くに寄っておいた。

 

「…空…?」

「静かに。」

 

俺は聞いてくるリンにそう言った。

いつでも動けるように、俺は警戒しておく。

 

「あーら、専門的なご高説をどうも、学級委員長さん。でも、あんたの意味不明な説明じゃ、これからどうしたいのかってのが1mmも見えてこないわよ!

 

と、ニコは言い出す。

すると雅が

 

「柳の専門的な語彙は私にもよく分からない。だが、私は彼女の判断を無条件に信じることにしている。ヴィジョン事件の背後には、もっと踏み込んだ調査が要るだろう。」

 

と言い出した。

 

「ふっ…。」

「ちょっと!あんた今こっそり笑ったでしょ!見えたわよ!『勝った…』みたいな顔したの!」

 

そう、ニコと柳は漫才のような茶番を繰り広げる。

 

「眼鏡の位置を直しただけですが、何か?」

 

という柳に猫又が

 

「へん!どうせあんた、学校で1人もトモダチいなかったでしょ?」

 

と煽る。

それに悠真が

 

「ははは、わかるなぁ〜。副課長って絶対、先生に贔屓されてるタイプの委員長だったって。」

「「そこまでだ(よ)。」」

 

俺とアンビーはそう言って、悠真と蒼角の動きを止めた。

 

「おっと…こちらのお嬢さんと、空。君たちは委員長キャラがタイプで?それは気に障ったよね。」

「私はそれ以上前に進むなと言ったの。」

 

悠真の冗談を、アンビーはそう一蹴した。

 

「お前ら、さっきからあからさまなんだよ。12時、9時、6時…さっきから包囲しようと移動してやがんな。どーせバレてんだろ。さっさと話せや。対ホロウ6課。」

 

俺はそう言って刀とuziを抜いて蒼角と雅に向けた。

アンビーはそれに合わせて、悠真に剣を向ける。

 

「へぇ…さすが空だね。そちらのお嬢さんも鋭い。ひょっとして、そこのメカチックな彼がホルスターに手をかけてるのも…偶然じゃない感じかな?」

 

と、悠真が言い出す。

 

「委員長のねーちゃんが、その伸び縮みする柄を離したら…俺も手をおろすさ。」

 

ビリーがそういった時、ニコは

 

「ちょっと、お武家狐!空が言ってることは本当なの!?あんたたち、何企んじゃってる訳!?」

 

と、雅に聞き出した。

すると雅は

 

「先程述べたように、ヴィジョン事件の背後についてはさらに踏み込んだ調査がいる。そして…我らが連行すべき証人は、パールマンだけではない。」

 

そう言って、雅は視線を俺とリンに向けた。

 

「…え、連行するって…私を?」

「はぁ…だろうなと思ったよ。」

 

俺はそう言って柳に向き直った。

 

「ここであなた方に遭遇するのも、我々にとっては想定外でした。独立調査チームの責任者様、いえ…伝説のプロキシ、『パエトーン』様、とお呼びすべきでしょうか?」

「そして…『パエトーン直属エージェント 銀狐様』。」

 

あーあ。やーっぱりバレてやがったか。

 

「ははっ、民間人にしては、大したスキルだと思ってたけど…「副業」で場数を踏んでたんだとしたら、まぁ納得だよね。いや、むしろ零号ホロウの方が副業か。」

「それに、空が課長に勝ったのも、同じ理由なら…まぁ百歩譲って納得できるよね。」

 

そう、柳と悠真が話すと、ニコが

 

「ちょっと!こいつらはヴィジョンの件とは無関係でしょ!?」

 

と庇い出した。しかし

 

「パールマンの供述によると、件の不祥事には全体を通して『あるプロキシ』の関与があったとのことでした。工事を引き継いだ白祇重工に起こったことについても我々の取り調べで、同様にプロキシの介入が判明しています。」

「更には治安局の飛行船護送にまつわる飛行船の件、そして郊外…確か郊外はこのほど、彼らの伝統にまつわる重要な催事を行ったばかりだそうですね。責任者様が再びこの地を訪れたのは、偶然でしょうか?」

 

と、柳は論破した。

 

「ぐぐぐ、偶然に決まって」

「ニコ。もういい。辞めろ。」

「…合図したら、すぐにリンとダルマを連れて逃げろ。いいな。」

 

俺はそう言って、ニコを止め、前に出た。

 

「あぁそうだ。俺は確かに、パエトーン直属エージェントの、銀狐だ。だが、それでお前たちはどうする?」

「…もちろん、この場で捕縛します。」

 

そう言って、全員が俺たちに向けて武器を構えた。

 

「そうか。だがひとつ忘れてるぞ。俺は、お前らの課長に勝った存在だ。そいつに喧嘩売るってことは…どうなるか、分かってんだろうな。」

「こっちは命賭けてんだ。お前らも…。」

 

俺はそう言って胸元にあるエーテル燃料を2本一気飲みする。

一気にエーテル侵蝕が体に走る。

全身に、痛みが来る。

結局、こうなったか。

 

「命、賭けろや。」

 

俺はそう言って、殺気を出した。

それに一瞬たじろぐホロウ6課。

そのタイミングで一気に悠真の後ろに移動して、喉に刀を当て、雅に銃を向ける。

 

「逃げろお前ら。」

 

そう言って、全員を逃がそうとする。

すると柳が動こうとした。

 

「動くな。動いたら…殺すぞ。」

 

そう言って銃を向けると、雅が後ろに回って俺の首に刀を当てようとしてきた。

 

「遅せぇよ雅。」

 

俺はそれを銃で抑え、刀で無尾を弾く。

その瞬間、動き出していた蒼角の足元に向けて、銃を撃つ。

 

「動くなっつってんだろ蒼角。」

「なんで!?空は、味方じゃないの!?」

 

そう言われる。

 

「俺には俺の目的があんだよ。」

 

そして、ニコがリンを乗せ、パールマンを連れて行こうとした時。

 

「!?」

 

上から制圧射撃が撃ち降ろされた。

そのパールマンを狙った弾丸を、雅が斬る。

 

「ちっ、奇襲か!」

 

俺は悠真を蹴飛ばし、刀と銃をしまう。

エーテルを足に溜め活性化。

パールマンを担いで、走り抜けた。

 

「んのわぁあああああー!」

「うるせぇ、パールマン!口閉じてろ!舌噛むぞ!」

「パイパー!出ろ!俺は走る!」

「OK〜!かっ飛ばすぜぃ!!」

 

そう言って、俺とパイパー、ビリーは一気に弾丸の雨を走り抜けた。

すると、後方で大きな爆発音がした。

とりあえず俺は、パイパーのトラックに追いついた。

 

「アンビー、こいつ頼む。」

「分かった。」

「うおおおおぉ、気、気をつけて渡してくれ!」

「分かったから黙ってろ!」

 

そう言って、パールマンを引き継ぐ。

そして、後ろからバイクが複数降りてきた。

それを、パイパーが運転で飛ばそうとする。

するとそれを上手い具合に避け、

 

「気をつけろパイパー!」

 

と文句を垂れる。

 

「文句垂れてる暇あったら、タイヤを防弾仕様にしておくんだったな!」

 

俺はそう言って、バイクのタイヤを潰す。

 

「うわあああああぁぁぁぁ!?」

 

そう言いながら、追いかけてきた奴らは後ろに吹っ飛び、ビリーのところに捕まる。

すっごい揺れてるけど…なんとかなるだろ。

 

「ニコの援軍はまだなの!?」

 

と、リンが言い出すと、目の前から車が飛び込んできた。

そしてそれは、トラックに当たる。

 

「うおっ!?」

 

俺はびっくりしてスピードを落としてしまい、一気に遅れを取る。

そしてその間に2台の車が更にトラックに当たる。

ちぃ、もっかい!

俺はまた足に流して走り始めた。

すると目の前で、パイパーはギアを一気に変えバック、向きを変えて避けた。

そして、目の前で、車たちは衝突した。

パイパーは大丈夫そうだな。

俺はそこにまた止まり、後ろを向いてまた走る。

ビリーのところには大量の敵がわちゃわちゃとしていた。

それを処理して、ビリーのトラックの上に乗っかる。

その時、パイパーの運転するトラックがミサイルで吹き飛んだ。

 

「なっ…!!」

 

そしてそのまま、回転してホロウの中に入っていく。

 

「くっそ、ホロウの中に入っちまった…!すぐに向かわっ!?」

 

俺がトラックから跳んで向こうに向かおうとした時、周りに傭兵集団が大量に出てきて、トラックを止められてしまった。

…あーそうかよクソッタレ共が。

 

「全員命の覚悟は出来てんだろうなぁ…!!」

 

流石にもうキレた。

俺は残ったエーテルの半分を刀に。残りの半分を足に流した。

 

「全員、両腕切り刻んでやる。」

 

俺がそう言うと、呼応するかのように刀の炎が黒くなった。

頭の中に、言葉が思い浮かぶ。

 

 

「…九尾怨火。コトワリ・弱。」

 

 

俺の体はそう言って、一瞬で全員の腕をバラバラにした。

傷口は炎で焼け、止血状態になっている。

しかし、その後もどんどん傭兵が増えていく。

…なんだ?今のは。だが…究明はあとだ。

 

「ちっ…キリがねぇな。」

 

俺はこれでエーテルを使い切った。

現状はただでさえ足に侵蝕症状が起きている。これ以上、エーテルは浴びれない。

俺はそう考え、普通のスピードで戦っていく。

相手が撃ってきた弾を切り、避け、uziを撃ち込み…

そう戦っていたが、限界は来るもので。

 

「ぐはっ…!?」

 

敵の弾が、腕に命中した。

そしてそこからは、強い痛みと侵蝕が始まる。

…この弾、エーテルが中に詰まってんのかよ…!?

 

「ぐっ、じ、銃を…!」

 

俺は動こうとするが、ただでさえ侵蝕症状が起きていた体。

上手く動かず、俺はそこに倒れた。

 

「っはぁ…はぁ…痛い、痛いなぁ…!」

 

俺はそう言いながら、銃に手を伸ばす。

しかしその時

 

うぐっ…!?くっそ、てめぇ…!」

 

傭兵にその手を踏み付けられた。

…あぁくそ。ここで死ぬのかよ。

すると、その手にあった足は外れ、腕を動かせるようになった。

 

「は…?」

 

そして、俺が前を見ると…その俺の手を踏んでいた傭兵は、矢で撃ち抜かれて倒れていた。

 

「おい、まじかよ…!」

 

そう言うと

 

「何が驚きなんだい?空。」

 

と、俺の上に影を作った人物が聞いてきた。

 

「…この状態で、てめぇらと、戦うことが、最悪だって…」

 

俺はそう言いながら銃と刀を掴み無理やり立ち上がろうとする。

 

「意味だよ!!」

 

そして、悠真にその刀を振るう。

しかしそれはすんなり避けられ、俺はそこにぶっ倒れた。

そして…そのまま意識を失った。

次に目を覚ました時は、俺は荒野の上に転がっていた。

 

「…ここは…?うぎっ!?

 

体に尋常じゃない痛みが走る。

 

「あっ空!動いちゃダメだぞ!ただでさえ莫大な侵蝕症状が出てるんだから!」

 

そう左にいた猫又に言われ、寝かされる。

 

「…分かった。で?俺の処遇は?」

 

俺はそう猫又に聞いた。すると右から

 

「…真相が明らかとなるまでは、協力体制とします。色々と、不明瞭な点が多いので。」

 

と、柳が説明した。

 

「…そうかよ。猫又。俺の腰のポーチから、箱取り出してくれ。後水。」

「?分かったぞ。」

 

そう言って猫又は少しその場を離れ、箱と水を持ってきてくれた。

 

「箱、渡してくれ。」

「…?分かったぞ…でも、箱の中身ならもう」

 

と、猫又が言う間に、俺は腕と指を器用に扱い、箱を開け、蓋のカラクリを解いた。

 

「…説明して、これが分かると思うか?」

「……空の説明じゃ、絶対に無理だと思うぞ。」

「だよなw」

 

俺と猫又はそう話して、俺は今開けた2つ目の箱から錠剤を取り出した。

 

「…それは?」

 

「侵蝕鎮静剤の成分を1錠につきおおよそ10本分ほど固めた錠剤だ。」

 

俺はそれを10個開けて、一気に口に含む。

 

「ん。」

「はい、お水だぞ。」

 

俺は猫又から水を貰い、その錠剤を飲み込む。

すると掌や、足に浮かんでいたエーテル侵蝕は見えなくなった。

 

「よし、何とか動けるようになったな。」

 

まだ痛いけど。

 

「!?そ、そんなもの、どこで…!?」

「え、闇医者。」

「高かったんだぞこれ。」

 

俺はそう言いながら箱を元に戻す。

 

「まぁ、応急処置の意味合いが強いからしばらく経つとまたエーテル侵蝕が発露してくるんだけどな。」

「で?あの後は?」

 

俺がそう聞くと、猫又が事細かに説明してくれた。

どうやら、俺が倒れたあと猫又が箱の中の侵蝕鎮静剤を全て打ち込み、ビリーがここまで運んでくれたらしい。

そして、その間に6課の方に雅から連絡。

リンが危篤状態ということで、大急ぎで処置をして、現在に至るそうだ。

そして、リンと雅がホロウ内にいる際、雅の刀に異常が起こったらしい。

…だが、確認している余裕が無い。

道具も車の中にあり、手元にない。

 

「…今は、何も出来ねぇな。」

 

くっそ、リンを頼るしかねぇのが難儀だ…!

そう考えていると、リンが目を覚ました。

 

『どうだ、起きたか…?おぉ…!店長が目を開けたぜ!

「ぜー、ぜー…ようやくのお目覚めね!死ぬほど疲れたわ…。アンビー、委員長、あんたたちは平気?」

「ふぅ…私は平気。猫又、そこのケースに水が入ってるから、持ってきて。」

 

そう話す邪兎屋陣営。

 

「あれ…目の機能が全部回復してる…?まだ頭痛とめまいがするけど…後、なんかみぞおちが痛くて、ほっぺと口の周りがヒリヒリする…。私、ホロウから出られたの?これ夢?」

 

と、リンはとぼけたことを言い出す。

 

「夢なんかじゃないわ!あんたはもうとっくにホロウの外よ。これでもし意識がはっきりしなかったら、あんたの片割れがあたしをホロウに蹴りこんでたわね。」

 

と、話していると、イアスからfairyの声がした。

 

『おかえりなさい、マスター。私がイアスを通して、貴方様の眼球知能インプラントを調整しました。対ホロウ6課責任者、星見雅があなたをホロウから連れ出したのは約30分前のことです。』

『その時点で検査した結果、貴方様は致死量寸前のエーテルエネルギーに曝露しており、部分的な侵蝕症状を発症していました。』

『ホロウ離脱後も、拒絶反応が進行して合併症を引き起こし、深刻な心肺停止状態に陥る可能性があったため、邪兎屋と対ホロウ6課により、専門的な蘇生措置が試みられ』

「そ、そのへんでいいってば!とにかく命の危機だったから、緊急でやることやっただけ!以上!戻ったらすぐ病院に行って、ちゃんとした侵蝕治療を受けなさいよね。」

 

と、ニコがfairyを遮って言った。

 

「空もだぞ。」

「はい。」

 

隣で猫又に言われた。分かってるよそんなことは…。

 

「ニコ、6課の人と仲直りしたんだね?ところで雅さんは?あの人は無事?」

 

と、リンが聞くと、隣に雅が立ち

 

「私に心配は無用だ。今度こそな。」

 

と言っていた。

 

「さすがですねぇ、課長!侵蝕でぶっ倒れた人を抱えて大立ち回り…それでいて自分には侵蝕のしの字もないんですから。」

 

とおだてる悠真。

…俺をディスってるように感じるのは俺だけだろうか。

その後はあっちで状況確認をしていた。

 

「…ひとまず、メンテナンスしないとな。」

 

俺はそう呟いた。弾丸にエーテルが詰められてたとなると、刀に異常が起こってもおかしくない。

 

「よい…しょっと…。」

「空、だいじょぶ?」

 

そう猫又に聞かれる。

 

「あぁ、大丈夫だ。丁度あっちも確認が終わったみたいだし…。ブレイズウッドに向かおう。」

「?どうしてだ?鍛冶屋に行けばいいんじゃ…。」

「嫌な予感がする。パールマンが連れ去られたことを考えるに、おそらくあいつが言ってたことは本当だ。だったら、ブレイズウッドで簡易的なメンテナンスを行った方がいい。」

「私も同行する。刀に異常が起こっていたからな。」

 

と、雅も言い出した。

 

「分かった。じゃあ猫又、ここで別れよう。また後で連絡してくれ。」

 

俺たちはそう言って、ブレイズウッドに向かった。

ブレイズウッド

早速俺は武器の修繕を行い始めた。

 

「…ふぅ、こんなところか。鍛治台がないから、あんまり細かいところまでは修繕できねぇが…。」

「助かる。これで、また悪を断つことが出来る。」

「だが…私の刀を先に修繕して良かったのか?それに、出来栄えも変わらないように思える。私とお前は、もはや敵対関係なのだぞ?」

 

俺が無尾をある程度元の状態に戻し、雅に返すと、そう聞かれた。

 

「…敵対関係どうこうの前に、俺はお前の刀鍛冶だ。そこに嘘はねぇよ。」

「それに、今は臨時とはいえ共同戦線だ。俺を殺すなんてこと、お前は」

 

そう言いかけた時、fairyから連絡が入った。

…ビデオ屋に治安局特捜班襲来!?説明求むって…。

 

「む、特捜班か。私の知り合いがいる。私が話そう。」

「マジか、よろしく頼む。」

 

俺は雅からそれを聞いて、すぐにfairyに連絡。リモート接続した。

そして、接続を終わらせ、雅が

 

「説明しよう。」

「久しいな、朱鳶。私だ。」

 

と言い出す。

そう言って、雅は今回の出来事について色々とかいつまんで簡略的に説明した。

すると向こうの方でなにやら様々なやり取りがあったようだった。fairyから詳細を聞くに、治安官共は、慣例通りであれば捕縛し、上層部の指示を仰ぐところを、雅の名に免じて、1日見過ごすことにしたらしい。

そしてその間、治安官共も独自ルートで調べると。

 

「…なるほどね。」

「ひとまずはこれで大丈夫だろう。…む?空。プロキシから連絡だ。」

 

俺はそれを聞いて、スマホを改めて見た。

そこには

『バレエツインズのホロウ内にパールマンらしき生体反応が見つかった。6課のみんなで向かってくれ。空は待機。休んでエーテル侵蝕を回復してくれ。』

と書かれていた。

 

「では空、行ってくる。」

「おう。行ってこい。」

 

俺はそう言って雅を送った。

さて…六分街に戻って、ビデオ屋で待機しよう。

俺は車を運転して、ビデオ屋に戻った。

そしてビデオ屋の裏手に車を停め、中に入ると…

 

「…あなたは。」

 

店の中には治安を乱してそうな女…さっき検問してた奴がいた。

 

「あ。治安乱してそうなケツと胸してる治安官さん。」

 

俺がそう言うと

 

わ、わいせつで逮捕しますよ!?

 

と顔を真っ赤にして言ってきた。

 

「すまんすまん、冗談だ。…あんたが、朱鳶か?」

「えぇ。治安局特捜班、朱鳶です。あなたは、何者ですか?」

 

そう、睨み付けて聞いてきた。

 

「通った時に言っただろ?鍛冶屋夜月の店」

「そうではありません。この店の裏から入ってきたということは…そういうことですよね?」

 

なーんだ、そっちを聞いてたのか。

 

「…『パエトーン直属エージェント 銀狐』だ。よろしく頼むよ。朱鳶とやら。」

 

俺がそう言って手を差し出すと、その手は叩き落とされた。

 

「犯罪者と交わす手はありません。」

「…そうかよ。で、そっちのツインテールのロリっ子は?」

 

俺がそう聞くと

 

「ロリっ子と言うでない。同じく治安局特捜班、青衣だ。よろしく頼むぞ、銀狐よ。」

 

そういう青衣は手を差し出してきた。

 

「よろしく頼む、青衣。」

 

そう言って手を握ると、あまりに硬かった。

なるほど、こいつは機械人だ。にしては人間の見た目に似せてんな。

そういうフェチだったのか?青衣の作者。

まぁそれはそれとしてロリにしたのはグッドチョイスだ!

そう考えていると、アキラが6課に通話を繋げたようで、こちらの状況を説明していた。

 

「すまないみんな、僕たちはしばらく、雅さんの行方を追えそうにない…。」

 

行方?どゆこと?

 

『そうですか…私の方でも、部長やマスコミの友人にそれとなく探りを入れてみましたが、雅課長の逮捕や、パールマンの出現に関する情報は届いていないようです。』

 

逮捕!?は!?しくったのかよ!?

すると朱鳶がその通話に入り込み

 

「もしもし?こちらは朱鳶です!聞こえていますか?至急確認して頂きたいことがあります!パールマンはそこにいるのですね?」

 

と口を出してきた。

どしたんやろ。

 

「うなじです!彼のうなじを見てください!耳の後ろ、生え際のあたりに、小さな傷がありませんか?」

 

その朱鳶の言葉にパールマンが

 

『ななな、何をする?わ、私の髪がどうしたというのだ?ぐわああああ!!そっと、優しくしてくれぇ!!

 

と怯えて、叫んだ。

あ。柳が絶対力任せにした。俺分かる。

すると柳から

 

『朱鳶治安官…確かに、右の襟足付近に、2ミリ程の小さな傷があります。どうしてこんなものがあると?』

 

と、聞き始めた。

まぁ定番は小型チップ型のGPSだろうけど…そんなんあったらさっさと捕まえ

 

「治安局では、特殊かつ重大な事件の容疑者を収監する場合、中で危険なことをしないように、小型チップを埋め込むことがあるんです。」

 

…ん?

 

「そして、一連の重大事件の容疑者であるパールマンに使用されたチップは…GPSタグが付いていて、まだ有効であることがわかりました。」

「いや当たってんのかよ!!」

 

俺は思わずそう突っ込んだ。

いや、だってなんで!?なんで捕まえに来なかった!?

アホなん!?あいつ、アホなん!?

 

「うるさいです銀狐。」

「…はい。」

 

朱鳶に怒られた。

 

『GPS?それに、まだ有効だって?それって、飛行船が事故ったあとも動いてたってことですよね?』

『えぇ…。』

「つまりは、治安局はやろうと思えばずっとこいつを追跡することが出来たってことだな。」

 

俺はそう言って朱鳶を見た。

 

「えぇ、そういうことです。つまり、ブリンガー長官はずっとパールマンを探す手段を保持していたんです。飛行船が郊外に墜落して以降も…」

「さらに、局内の記録を調べたところパールマンの所在地は『依然として不明』のままでした…。彼は、ただ野放しにされていただけではありません…!」

 

…なんのためだ?

普通に考えて、相手方にはパールマンを生かしておくメリットが薄いはず。

パールマンの泳がし、パエトーンの関与、雅の逮捕……。

俺が考えていると、柳が

 

『我々のこれまでの行動は、ある仮説に基づいたものでした。黒幕の目的は、パールマンを抹消することで証拠を隠滅し、我々に真相を明かされないようにすることだと…』

『いつでもパールマンを見つけられたのなら、これまでの包囲や連れ去り、逃亡、そして妨害には、なんの目的が…?』

 

と、困惑した声で言ってきた。

それに蒼角が

 

『えぇ?ワルモノのちょーかんがボスをタイホしたのって、わたしたちを弱っちくするためじゃないの?』

 

…そうだよ。なんで雅を逮捕した?

あいつを逮捕するのは、もはや自殺と同意義だ。

あいつの刀の…扱い……!?

 

「『無尾』だ!!」

 

俺はそう叫んだ。

 

『無尾?課長の、刀ですか?』

 

そう、柳が通話越しに聞いてきた。

 

「そうだよ!あの制圧射撃、刀の異常、雅の逮捕!」

「全て無尾が目的なら辻褄が合う!」

 

俺がそう早口で言うと、

 

ちょ、ちょっと待って!?どういうこと、空?」

 

とリンが疑問を浮かべてくる。

 

「あの制圧射撃の弾、あれにはエーテルが詰まってた!」

「そして無尾は超合金で作成されてるが、その中にはエーテルエネルギーが詰まってる!」

「それに対して、エーテルを外から浴びせれば…」

 

俺がそこまで説明すると

 

『力の均衡が乱れ、異常が引き起こされる…!?』

 

と、柳が驚いた声を上げた。

 

「あぁ!しかも、雅の逮捕も無尾を回収するためなら理屈が立つ!雅は、徒手に今まで労力を割り振っていない!」

「雅を仮想敵として置くのであれば、目的がどうだろうと、雅の弱体化は可能だ!!」

 

俺がそう話すと

 

『理由はどうあれ、雅はもう連れ去られてしまいました…しかも目の前で…!私はなんて愚かなんでしょう…!すぐ部長に連絡しないと!』

 

俺たちが慌てていると

 

「みんな落ち着いて。まずは雅さんがどこにいるか、はっきりさせるのが先じゃない?ブリンガーにも言えることだけど…。」

 

と、リンが冷静に言ってきた。

確かにそうだ。まずはっきりさせなきゃ動くもんも動けねぇ。

すると朱鳶が

 

「雅を護送している車は治安局のものですから、追跡する方法はあります。ブリンガー長官の方は…。」

 

と、言い淀んだ。

それに続いて青衣が

 

「あやつなら、当時ヴィジョンの事件が終結を迎えた広場にいるはずであるぞ。デッドエンドホロウの外周にほど近い、あの場所にな。」

 

あそこか…。あの、猫又を後ろに置いた、大立ち回りのとき。

…そういや、あそこから始まったんだったな。この体の異常も。

 

「青衣先輩、どうしてわかるんですか?」

 

そう朱鳶が聞いた。

えっあっ先輩なのこの人?相当古い型番なのかなぁ…。

 

「ニュースで報じられておったではないか。そこには今日、あやつが演説を行う特設会場があり…また、予定通り執り行われると。ヴィジョンの件に縁ある者たちや、熱心な市民が大挙して押し寄せるとも言っておったな。」

 

……不味いぞ、目的が分かった…!

 

「俺は直ぐにそこに向かう!仮に俺の予測が合ってるなら、目的が分かった!」

 

俺はそう言ってすぐに仮面を付ける。

 

「ど、どういうこと!?空!」

「無尾の特性だ!あいつは妖刀なんだ!生物を切れば切るほど、強くなる!」

「雅の性格上、市民を斬ることは禁忌になりうる!そして、現状の無尾は、雅の精神力で無理やり調伏させられてるだけなんだ!」

『つまり、黒幕の目的は…!』

「あぁ!雅の弱体化で確定だろう!そのために、雅に市民を襲わせ、精神力を削り、無尾を強制的に暴走させる気だ!」

 

俺がそう言うと

 

「空、待って!ここは手分けしよう!」

 

と、リンが言ってきた。

 

「何言ってんだ!急がねぇと…っぐ!?

 

その瞬間、いきなりエーテル侵蝕が現れた。

 

「あっ、がっ、グギっ…、み、水…!!」

 

俺がそう言うと

 

「み、水!?わかった!すぐ持ってくる!」

 

と、リンは大急ぎで2階に上がった。

く、薬…!薬を…!

俺は震える手でポーチから箱を取り出す。

 

「しゅ、朱鳶…!これ、全部出して…!!」

「え!?あっ、はい!!」

 

俺はそう言って、薬の包装を渡した。

残りの5錠…!足りる訳もねぇが、タイミングが悪い…!!

 

「はい、出しました!」

 

その朱鳶の手から薬を掴み取り、そのタイミングで

 

「はい!水だよ!!」

 

と、リンが水を渡してくれた。

 

「あ、りが…うぐっ!?

 

まっずい…!時間が、ない!

俺はお礼を言う前に水を受けとり、薬を飲む。

すると一旦はエーテル侵蝕が引いて行った。

 

「はぁ…はぁ…。ありがとな、2人とも。」

「行くぞ…。雅を、抑えねぇと…!」

 

俺がそう言って、刀を杖にして立ち上がると

 

「ダメだよ空!!そんな体じゃ!」

「んな事言ってられるか!!じゃあ、あいつが暴走してたら、誰が抑えるんだ!!」

 

俺はそう怒鳴った。

 

「…私も同行します。私であれば、車の位置をリアルタイムで追跡できます。」

「私も行くよ!空だけに、背負わせるわけに行かないもん!」

『私も行きます!すぐにホロウから…!』

 

朱鳶とリンが言い出し、柳がそう言いかけると、悠真が

 

『いや…僕たちは課長を追うべきじゃないと思いますよ。』

 

と言い出した。

 

『なぜです!?雅が心配では無いのですか!?もし彼女に万が一のことがあったら、私は…!』

 

と、慌てる柳を悠真は宥め

 

『月城さん、落ち着いてくださいってば。僕たちの現在地は、どっちかと言うとブリンガーの近くですよ。それにこっちはまだパールマンを連れてるんですから。さらに言えば、空の予想が合ってようと合ってなかろうと、課長の方には空が行くんです。彼の強さは、僕たちがいちばん分かっているでしょう?一度は敵対した、僕たちが。』

 

と言い出した。

 

『ですが…!』

『ですがもよすがもないですよ、副課長。僕の言う通りだって、内心分かってるくせに。』

『ナギねぇ…わ、わたしも、今回だけはハルマサの言う通りかなって…!こんなことめったにないんだし、たまには聞いてあげようよ?』

 

うわ、蒼角中々に酷いこと言うな。

 

『蒼角ちゃんさぁ…結構傷つくよ?それ。まぁでも、賛成してくれてありがとう。』

 

と、通話の向こうで話していると

 

「雅については、私が問答無用でついて行きます。さっきも言った通り、囚人護送車の位置は特定出来ますし、私も治安局の人間ですから…容易には疑われないかと。」

 

と朱鳶が言い出した。

…こいつの感じからして、変わることは無いだろうな。

 

「月城さん、私と雅はかつての同級生で、昔からの友人でもあるんです。あなたの気持ちはよく分かります。必ず、連れて帰ると約束しますね。」

「私ももちろん行くからね!朱鳶さん、一緒に雅さんを連れて帰ろ!」

「なぁ俺は?」

「空は戦力外!なんでそんな体で戦おうとするの!」

「どうせ変わらないだろうから、ついて行くのは認めるけど、戦闘はダメです!」

 

と、リンに言われた。

…いや普通にするが。

すると青衣が

 

「よきかな。配役は決まったようであるな?我はビデオ屋に残り、後顧の憂いを絶つとしよう。」

 

と言い出した。

すると、通話から頬を叩く音が聞こえた。

 

『すみません皆さん。先程はお恥ずかしいところを見せてしまいました。ここは、手分けして行動するのが最も合理的ですね。今すぐ開始しましょう!』

『その、プロキシさん。あなたは…その、とてもお強いんですね?』

 

と、柳が言い出した。

 

「…柳。お前自分で調べた情報ぐらいは信じろや。」

「俺たちは、伝説のプロキシ、『パエトーン』と、その専属エージェントだぞ。」

「そうそう、私たちは新エリー都最強のプロキシとそのエージェントのチームなんだから!きっと雅さんを連れて帰ってくるからね!」

 

と、俺とリンが言うと

 

『ふふっ…わかりました。信じています。どうか、課長を頼みます!』

 

そう言って、通話は切れた。

そして、外に出ると朱鳶は電話を掛けた。

 

「こちら特捜班、朱鳶です。囚人護送車の追跡をお願いします。」

「はい。はい、特徴は…」

 

そう流れるように追跡の申請を行い、朱鳶はこちらを向いた。

 

「護送車の位置情報が入り次第、出発します。」

 

その後沈黙が流れた。

その沈黙を破ったのは、リンだった。

 

「…朱鳶さん。その…まだ、怒ってる?」

 

そう言うと、

 

「いいえ。怒る理由がありませんから。」

 

と、冷淡な態度で答えた。

何やったんよリンは…。

俺がそう呆れていると

 

「本当に、本当にごめんなさい!これだけは信じて!私、ほんとに隠し事なんてしたくなかったの!だって、他でもない朱鳶さんだから!」

 

えっ!?仲良かったの!?

俺はぎょっとするが、朱鳶はそれで目を赤くして

 

「じゃあ…ど、どうして黙ってたんですか…!ずっと…!」

 

と言い出した。それにリンは

 

朱鳶さんを困らせたくなかったの!だって、栄えあるエリート治安官と社会のグレーなとこにいるプロキシなんて…絶対相容れないし、いくら朱鳶さんとでも、もう仲良しじゃいられなくなるかもって…」

 

いやまずなぜ仲良くなった。そこが気になってしょうがないんだが。

俺の疑問なぞよそに、朱鳶はその言葉を聞き

 

「確かに私は法や規則、秩序を重んじていますが…融通の聞かない教条主義者じゃありません!自分できちんと線を引くことは出来ます!

「友達だと言うなら、もっと信用してください!」

 

そう朱鳶が言うとリンは

 

「朱鳶さん…もう絶対嘘つかないって約束する!もしもう一度騙すようなことがあったら、お兄ちゃんと空の運気がダダ下がりしてもいい!

 

と言い出した。

 

「おぉいなんで俺まで!?」

 

俺の反論はよそに2人は言い合いを続ける。

 

「そ、そんなに思い詰めなくても…!」

 

「ううん、思い詰めさせて!朱鳶さんは、私にとって大切な友達なんだもん!!」

 

と、リンは手を取り朱鳶の目を見つめた。

それに朱鳶はたじろぐ。

あっ。こやつこういうのに弱いんだ。

 

「朱鳶さんの気持ちを裏切りたいと思ったことなんて1度もないよ!これで私たちの仲に亀裂が入っちゃうのは嫌!」

と、さらに目を見つめる。

えっ、えぇっ?

 

さらにたじろぐ朱鳶。

うーんよわよわ。

その時、朱鳶の通信機が鳴り始めた。

朱鳶はそれを確認すると

 

「囚人護送車の位置が分かりました。出発しましょう。」

「ですが、今はあちこちに検問所があります。店長さんや空さんのような一般市民を乗せての走行は何かと厳しいかもしれませんね…。」

 

と、朱鳶は言い出す。

 

「うちのボンプを連れてって!緊急時には役に立つはずだよ!これで連絡を取り合お!」

 

と、リンはそれに返した。

 

「分かりました。ですが空さんは…」

「俺は問題ねぇ。エーテル侵蝕のおかげで、空中のエーテルに敏感になってる。俺はビル伝いにお前らについて行く。」

「…なぜそんなことが出来るのかが甚だ疑問ですが、今はその疑問を解消している場合では無いですね。」

「今すぐ出発しましょう。」

 

そう言って、俺たちは出発した。

俺はエーテル燃料を隠れて1本飲む。

すると、侵蝕症状が半分復活した。

 

あ゛〜…初めてだなぁ。こんなに長い侵蝕は…。」

 

普段は侵蝕なんて起きないような耐性を持つ体だ。

こんな風に、体に不調が出るんだな。

酒に酔ってるみたいだ。

 

「ま、そんなこと気にしてらんねぇか…!」

 

俺はいつも通り足にエーテルを流す。そして、朱鳶の車を見逃さないようビル伝いに跳んでいくのだった。

するとリンから通信が入った。

 

『銀狐、銀狐の予想で合ってたよ!ブリンガー長官の演説会場に、雅さんを乗せた車も向かってる!』

「わかった。先に向かってる。多分道路が混んでるだろうから、ホロウを突っ切りな。」

『分かった!また後で!』

 

そう言って、俺は通信を切り、さらに加速した。

そして、演説会場に近づいた時、リンからまた通信が来た。

 

『空、雅さんの刀って、鞘が機能してないと不味いって言うのは本当なの!?』

 

そう聞かれた。

 

「誰から聞いたのかものすっごく気になるが…その通りだ。あの刀の鞘には封印機構が施されてる。」

「さっきも言ったように、星見家の家宝、無尾は妖刀で、多くのエーテルエネルギーを保有している。しかも、そのエネルギーは負の感情が乗っているものだ。」

「それを封印するための機構が鞘についてるからこそ、鞘が機能してないととてつもない危険が起こる。」

 

俺がそう話すと

 

『待て!貴様はなんでそこまで知っている!?』

 

と男の…俺がよく知る声が聞こえた。

…そういうことか。

 

「お久しぶりです。星見宗一郎様。私は鍛冶屋夜月の2代目店主、夜月空と申します。師匠は不慮の事故により亡くなられたため、現在は技術を受け継いだ私めが無尾のメンテナンスを行っております。」

 

俺がそう話すと

 

『そ、そうだったのか…。ひとまずお悔やみを申し上げよう。』

「宗一郎様、申し訳ありませんがそんなのはどうでもいいのです。現在、そちらのパーティーに雅が近づいている可能性があります。直ちに、お知り合いのみでも構いませんので避難を。」

『分かった。すぐにしよう。君が今何をしているのかは分からないが…雅をよろしく頼む。』

 

そう言って宗一郎の通話は切れた。

 

「リン、多分相手はそこら辺も全て分かってやっている。急いでくれ。」

 

俺がそう言うと

 

『分かった!銀孤、よろしくね!』

 

そう言って通話が切れた。

そして数分後、俺が到着すると、雅が演説会場に道路から投げ出されたところだった。

 

「これはこれは、光栄なことだ!」

「まさか私の演説に、あの星見雅執行官が足を運んでくださるとは!市民の皆様、彼女に拍手を!」

 

とブリンガーが声を上げ、その場は歓声に包まれる。

俺は近くに降り、雅の様子を見る。

雅は黙ったまま動かない。

まっずい、完全に暴走状態だ…!!

 

「雅!」

 

俺がそう声を掛けて降りると同時に、リンと朱鳶も辿り着いた。

 

「雅さん!」

 

そうリンが声をかける。

が、その声は届いていないようで、刀は赤いオーラを纏い始める。

あーもうクソッタレ!!

 

「朱鳶、今すぐ避難させろ!こいつはもう…雅じゃねぇ!!

 

俺はそう言って、刀を抜く。

そして、雅は俺に向かって刀を振るってきた。

 

「!っぐ!」

 

重い…!暴走状態って、こんなにやばかったか!?

俺はそれを弾き、その衝撃で下がる。

そして踏み込み、雅の刀を弾こうと横から逆袈裟の形で刀を振るう。

しかししっかりと防がれ、そのまま俺が袈裟斬りの形で斬られる…ところだったものを、間一髪で回避した。

 

「あっぶな!…これは、一度ホロウに押し込んだ方がいい!」

 

俺は雅の懐に入り、腕にエーテルを回した。

 

「許せよ、雅!」

 

そして、後方にあるホロウに雅を押し込んだ。

それを追うように、俺もホロウの中に入る。

 

「ここでなら、存分にやれる!」

 

俺はエーテルを吸った。

痛みが来る。とにかく痛い。

視界が、歪み始める。

 

「気にしてられっかぁ!!」

 

俺と雅はそのまま相手に合わせて刀を振るい、何度も何度も鍔迫り合いをする。

しかし、俺の体力も尽きる。ただでさえ、エーテル侵蝕に犯された体だ。

限界も近かった。

 

「っはぁ…!はぁ…!」

 

雅はまだ体力が有り余っているようで止まった俺に一気に近づき、首を斬ろうとしてくる。

それを反射で刀で防ぐが、戦闘で相当ダメージを受けていたのか、はたまた防ぎ方が悪かったのか。

刀に、ヒビが入った。

 

「なっ…!」

 

うっそだろ…!

俺はそれを防ぐので手一杯。そのまま、そこに座り込んだ。

そして、雅はその俺に刀を向けて歩いてくる。

刀を…向けて?

…はは、そうだよ。なんで、俺は忘れてた?

俺の体は、どういう特性を持ってたよ…!!

俺は雅が向ける刀に、肩を突き刺した。

 

「あぁあああああああぁああああああああああああぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

とてつもない痛みが走る。

突き刺されただけじゃ無い、そこから体が凍っていく痛み。

そして、エーテルエネルギーで凍っていくにつれて流れてくる、負の感情。

殺す、ころす、コロス。

こんなことをした奴らを、殺す!!

 

「…わけねぇだろうがああああああああぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

俺はさらに肩に突き刺す。そして、無尾の持ち手を掴む。

さらにエーテルエネルギーが流れ込んでくる。

…ありがとな、今まで付き合ってくれて。

 

『空!!!!』

 

リンの声が聞こえる。

 

「あ、ああ、ああああああああぁぁぁ!!!!」

 

雅が、目の前で叫び、泣く。

 

「泣くなよ、雅。お前は、何も悪くない。」

 

俺はそう言って…死んだ。

 

 

 

 

目を覚ますと、俺はホロウが空に浮かぶ何も無い世界にいた。

…俺は、死んだんじゃねぇのか?

 

「あぁ、お前は死んだ。半分な。」

 

目の前の、真っ黒い塊がそう俺に言ってきた。

 

「はん、ぶん?」

「手を見ろよ。」

 

俺は、その塊の言う通り、手を見る。

 

「なっ…この手は!」

俺の手は、灰色の、鉱石におおわれた…エーテリアスの形をしていた。

「お前は、エーテリアスになった。」

「そんなの、そんなの死んだのと同じだろ!どうして、半分なんて言った!!」

 

俺が黒い塊の言葉に怒鳴ると

 

「話を最後まで聞けよ。狐。」

 

と、言ってきた。

 

「…狐?」

 

俺はその言葉に疑問を持った。

 

「あぁ、お前が、どういう存在なのか、どういう扱いを受けたのか。俺は全て知っている。」

「なぁ。星見 悠。

 

その黒い塊は、俺の…僕の、昔の姿。

シリオンの時にあった、9本の尻尾と耳を付けて出て来た。

 

「な、なんで…!?なんで、今更そんな姿を見せる!!」

 

僕はそう叫ぶ。

 

「お前は、認められた。」

「認められた?どういうことだ!」

 

僕の見た目をしたやつに、そう怒鳴る。

 

「気付いていないのか?お前は、エーテルに認められた。」

「お前が受け入れれば、お前はさらに強くなる。」

「あえてこう言おう。」

 

そして、そいつは僕の周りを囲み、僕の知り合い…ニコ、アンビー、ビリー、クレタ、ベン、アンドー、グレース、ライカン、リナ、エレン、カリン、シーザー、ルーシー、ライト、バーニス、パイパー、雅、柳、悠真、蒼角、朱鳶、青衣、リン、アキラ…そして、猫又。

みんなの姿になって、俺を囲み、手を差し伸べ。

 

『力が、欲しいか?』

『この先、ありとあらゆる困難を乗り越える、力が。』

『危険な力だ。だがしかし、見返りは莫大。』

『取らなければお前はエーテリアスとなるだろう。』

『取っても、お前は地獄の苦しみを味わうだろう。』

『どうする?星見 悠。』

 

そう気色悪いほど高く口角を上げて聞いてきた。

…なーんだ。そういうことかよ。

 

「全部、全部。仕組まれてたのか。」

 

全て。理解した。

 

俺は手のひらからエーテル結晶を生み出し、刀にする。そして、周りのみんなを、一刀両断した。

 

「てめぇの手、取ってやるよ。クソ野郎。」

「ただし、主導権は俺だ。」

「それはどうだろうか。我には、お前が折れるようにしか思えんがな?」

 

ひとつに戻ったそいつは、そう言ってくる。

 

「言ってろ。」

 

そう言って、俺はそいつのいる場所に、全く同じ姿勢で立つ。

体に、エーテルが流れ込んでくる。

 

「うがあぁああああああああああああああぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

今まで、感じたことの無い痛み。

この世の痛みを、全て圧縮したような痛み。

そして、体が作り変わるのが分かる。

その、何十時間にも感じた痛みを耐えて。

俺は目を覚ました。

場所は変わらない。しかし、多くの問いかける声があった。

 

「うるせぇよ。クソジジイ共。」

 

俺はそう言って、手にエーテル結晶の刃を付けて横に一閃する。

するとそいつらは

 

『…貴様は、なんなのだ。』

 

と聞いてきた。

俺?俺がなんなのか、だと?

星見悠?

夜月空?

銀狐?

そのどれでもない。

俺は…

 

「ただの、化け物だよ。」

 

そして、俺はその声を全員叩き潰す。

 

「雅に服従しろ。あいつは、お前たちの願いを叶えてくれるだろう。」

 

俺がそう言うと

 

『貴様に何が分かる!!』

 

と大きな声で言われた。

 

「何も分かっちゃいない。ただ…お前らみたいなのを満足させられるのはあいつしかいない。それだけは分かる。」

 

俺がそう言うと

 

『…ふん!我らの力に耐えられたらだがな!』

 

と言ってきた。

 

「はっ!言ってろ。あいつはそんなヤワじゃねぇよ。」

 

そう言って、俺はまた目を閉じる。

そして目を開ける。

そこは、俺が一度死んだ所。

近くには、雅と、朱鳶が。

 

「私は…大きな過ちを…!!ごめんなさい、ごめんなさい…!!」

「雅、落ち着いて、落ち着いて…!」

 

そう謝り続ける雅と朱鳶。

 

「泣くなよ、雅。お前は悪くないって、言ったろ?」

「「え…?」」

 

俺が近づいてそう声をかけると、2人は俺の方を見てくる。

 

「目を腫らせすぎだよ。なんでそんなに、っと。」

 

俺が言い終わる前に、雅が俺に飛びついてきた。

 

「ごめん、空…!私、貴方を!!」

「ごめんなさい、本当にごめんなさい…!」

 

そう胸元で言ってくる雅。

 

「気にすんな。ほら、これ。」

 

俺はそう言って、無尾を渡した。

これからは、雅と共に戦ってくれるだろう。

 

「朱鳶、リンは?」

「うっ…ぐすっ…。」

 

朱鳶まで泣いてて話にならん。

 

「あー、もう!なんでそんなに泣く!生きてんだからいいだろ!」

 

俺は怒りながらアキラに連絡する。

 

『空!?ど、どうやって!?』

「後で話す。リンは?てか今どうなった?」

『…ポートエルピスのホロウ内で、ブリンガーが理性を保ったままエーテリアス化した。』

 

ほーん…面白い。

 

「分かった。すぐに向かう。」

『空!?君は』

 

俺はアキラの言葉を聞かずに、即座に切った。

 

「さてと、じゃあ行くぞ。2人とも。」

 

俺はそう言って、2人を担ぎ、ホロウから強引に飛び出した。

 

「「ええええええええええええええええええええええええ!?!?!?!?!?!?」」

 

と叫ぶ2人は…まぁ、置いておこう。

そして数分経つと、そこはもうポートエルピスの目の前だった。

 

「はい、到着。」

「お、おえ…吐くかと思いました。」

「奇遇だな、朱鳶。私も…うぷ。」

 

2人とも吐きそうになってる。

まぁ、驚きで涙は引っ込んだみたいだしよかったよかった。

さてと…エーテル燃料は…

胸ポケットを確認すると、あと7本あった。

しかも割れずに残っている。ただ…

 

「…ちと足んないか?」

 

ま、問題ねぇだろ。

じゃ、突撃すっか!

俺はそのままホロウに跳んで入る。

すると、その近くでどデカい白い腕が見えた。

 

「おっ?あそこか。」

 

俺はそこに一直線に向かう。

すると道中にエーテル燃料が転がっていた。

ラッキー…!

それを回収し、俺は近くに辿り着く。

するとそこのてっぺんで、赤く光る球が見えた。

あれが、ブリンガー?

まぁいい、さっさと一刀両断…!?

そのタイミングで、雅がシーザーと共にやってきた。

そして、腕に生えていた目玉を斬る。

すると赤い球はなくなり、白い腕も消える。

 

「猪突猛進、お届けだぜ!」

「皆、待たせた。」

 

そうシーザーと雅が話す。

おー、かっこよ。

 

「課長!」

「雅さん!」

「やっと来た!」

 

そうホロウ6課はそれぞれの反応を示す。

そして、シーザーにニコが近づき、

 

「早かったわね!さっすが覇者!」

 

と笑っている。

するとブリンガー?が

 

『星見雅…幻を振り切ったか。いや、あの男がいないのを見るに、殺したか?』

 

そう笑って言う。

それに、雅は震え出す。

 

「お前が…お前が、元凶だな…?」

 

雅が、そう震えながら言う。

 

『だったら、どうする?』

『あの男を殺したのはお前だ!それは変わらないぞ!』

 

そう言い出すブリンガー。

 

「ひっどいなぁ。勝手に殺さないでもらっていいか?」

 

俺はそうエーテル燃料を飲みながら言った。

 

『空!?』

 

全員からそう驚かれる。

 

「よっす。生き返ったぞー。」

『いや、ちょっと待ってよ!?だって、空!』

「説明はあと。まずはあのデブだろ。」

 

俺がそう指を差して言うと

 

『貴様…!』

『だが、妖刀の力は既に私のものだ!やってみるがいい!!』

 

そう言って、ブリンガーは強いエーテルの波動を出す。

皆はそれに飛ばされないよう防御姿勢を取る。

 

「あー、いいねぇ…。いいエーテルだ。」

 

俺はそのまま、前を見てそう言う。

1歩。また1歩。

俺の体は、徐々に結晶に包まれていく。

 

『空!?空!!』

「安心しろ、リン。」

 

そう叫ぶリンに俺はそう言った。そして、後ろからはエーテリアスの気配。

 

「ニコ、エーテリアスだ。」

 

そう猫又が言い出す。

 

「ただの雑魚よ。やっ」

「伏せろ邪兎屋。」

 

俺はそう言って後方にエーテルの斬撃を飛ばした。

目を閉じ、開く。

視界は良好。

 

「おい空!お前、侵蝕が!!」

 

そうシーザーに言われるが

 

「後で説明してやる。とりあえず…でかいのは我の敵だ。」

 

我は九尾を抜く。

そして、九尾には…黒の炎が纏われた。

 

「我の初陣だ。お前らは…控えてろ。」

 

そう言って、俺は四肢を斬った。

 

「九尾怨火。コトワリ。」

『ぐあっ…!?いつの間に!?』

 

そう叫ぶブリンガー。

 

「ご丁寧にリアクションどうも。」

 

我は手からエーテルの黒い炎を大量に発射し、ブリンガーに落とした。

 

「九尾怨火。雨女。」

『ぐっ!?始まりの主よ!我に力を!』

 

そうブリンガーが唱えると地面から白い腕が出てくる。

だが、弱い。

 

「九尾怨火。猟奇霊。」

 

我は刀を仕舞い、手から鉈の形をしたエーテル結晶を取り出す。そしてその腕を滅多切りにした。

 

『ふざ、けるな!!貴様は、貴様は何なんだぁ!!』

 

そう言って、ブリンガーは空に刀の持ち手を。地面に手を出現させる。

我はそのタイミングで雅のところに戻った。

 

「やるぞ、雅。」

 

我がそう言うと

 

「分かった。」

 

そう言って雅は無尾を抜く。

その刀は、これまでよりさらに蒼く、冷気を出していた。

 

「ブリンガー。冥土の土産に教えてやる。」

「我は、ただのエーテルに認められた、化け物だ。」

 

そう言って、雅と一緒に刀を振った。

その斬撃は十字となり、ブリンガーの刀、そしてブリンガー。ホロウまでもをその形に斬った。

そして、ブリンガーは爆発する。

エーテルの雨を降らせて。

 

数十分後

 

俺たちはホロウから脱出した。

そして、俺は全員に囲まれる。

 

「さーてと…後で説明すると言ったな?あれは嘘だ!!

 

俺はそう言ってエーテルを足に回して跳び上がった。

俺は説明したくないんだ!!!

 

『逃がすかぁ!!!』

 

そして、俺vs今まで関わってきた人たち。

その鬼ごっこが始まったのだった。

もちろん、次の日にビデオ屋に強制連行され、全て吐かされたのは言うまでもない。

 

『…で?弁明は?』

「…生きて帰ってこれたから、いいよね!」

『いいわけあるかああああああああぁぁぁ!!!!!』

そう全員に怒られたのはいい思い出。

 

空がいた世界線のゼンゼロプレイヤー掲示板

01:満足感えげつない。

02:それな。やっとここまで来た感がある。

03:にしても、空とんでもないな。

04:本当に覚悟ガンギマってんだよな。普通わざわざ激痛選ばねぇって。

05:後、結局闇堕ちはしたな。再起したけど。

06:ほんと意味不。なにあの姿。

07:それな。あの和服が全て結晶化して、さらに目は水色に。顔には目に繋がるような水色の割れ目が走って、エーテルで尻尾と耳が生えるとか。

08:あとはあの炎やばいな。

09:紫、真紅と来て最後は黒ですか。

10:しかもあれ、エーテル属性だったな。

11:元々銀狐って物理と狂炎の異常よな?これにエーテル掛け合わさるってまじすか。

12:ただ条件は厳しそうだぞ。エネルギーリチャージ使用後、MAXまでエネルギーを貯める、銃モードを1度10秒以上使い、刀モードに戻すことでデシベル値の上限が突破、6000になり、6000の時に終結スキルを打つことで侵蝕化するらしい。

13:あの形態って結局侵蝕化なのか。

14:らしい。チュートリアル確認したら、文字化けしてた最後のページに書いてあった。

15:はへぇ。

16:結局あれってなんなの?疑問しか浮かばんのだが。

17:さぁ…神視点でも、空がなんで生き返ったのかは全くわかってないし。

18:ただ予想は出来るぞ。おそらく、空はエーテルの寵愛を貰ったとか、そういう話になってくる気がする。

19:いきなりスピリチュアルすぎん?

20:実際そうとしか言えないんだよ。空が言っていた言葉、覚えてるか?『冥土の土産に教えてやる。』『俺は、エーテルに愛されたただの化け物だよ。』っての。つまりはエーテルに愛された、寵愛を受けたから10年というバカげたエーテル適応体質を持てたし、ホロウ内の方が体が動く。エーテルに侵蝕されても、自我を保ってむしろ強化にする。ってのが出来たんじゃないか?

21:まぁそれが妥当よな。

22:早くエージェント秘話ください。

23:考察進まん。

24:ほんそれ。

25:あとびっくりしたのはさ、技名が全部夜廻シリーズの怪異なんだよな。

26:あー。

27:せやな。

28:どゆこと?

29:あれ許可もらったんかな?

30:いや多分ないやろ。

31:>>28知らん?いや知ってるけど意味が分からんのか。

32:気付いてないのか。

33:空の九尾怨火の時、コトワリ、雨女、猟奇霊ってのが出ただろ?あれは全部、深夜廻に出てきた敵キャラなんだよ。しかも行動までほぼ同じ。

34:コトワリ≒コトワリさま、行動は四肢と首をハサミで切り落とす。雨女≒雨女、行動は血の雨を降らせる。猟奇霊≒猟奇霊、行動は鉈を振り回して主人公を切り裂く。

35:ひぇっ。

36:実際、コトワリの時には四肢を切り落としてたし、雨女の時は炎の雨を降らせた。さらに猟奇霊なんて、ガッツリ鉈持ってたぞ。

37:多分確定だろうな。

38:今考えられるのはこんなところか?

39:だろうな。

40:次のストーリー待つかぁ。

41:空使ってみよー。

42:やめとけ。

43:ほんとにやめとけ。

44:ゼンゼロ面白くなくなるぞ!

キャラ紹介(性能含め)欲しい?

  • 欲しいに決まってんだろ!?
  • キャラ設定だけ欲しいかなぁ。
  • 性能だけ欲しいわ。
  • どっちも要らねぇよばーか。
  • そんなことよりらあめん食べたい(閲覧用)
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