パエトーン直属エージェントの日常   作:Kei0503

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お久しぶりです。
やっとアウトロの上が書き終わりました。
少し終わりが汚いかもしれませんが…楽しんでいただければ幸いです!
それでは、どうぞ!
※今回残酷な描写、オリジナルストーリーがあります。もし苦手とする方がいらっしゃいましたら、ブラウザバックの方お願い致します。


シーズン1 アウトロ・涙と過去を埋めて(上)

「今日はどうしようか、猫又?」

 

「ん~…。ルミナモールで買い物がしたいぞ!」

 

俺と猫又はデート中…というより、デートするために家から出発したところだ。

 

「OK。じゃ、行こうか。」

 

俺は個人で所有していた車を運転して、猫又と一緒にルミナスクエアへ向かった。

そして、到着したとき。

 

「…ん?リン?」

 

なにやらごたごたに巻き込まれてそうなリンと金髪の耳長な男がいた。

 

「とにかく、僕のそばにいたのはお前だけだ、財布を盗ったのはお前に決まってる!さっさと認めたらどうだ!」

 

そう騒ぐ銀髪の男。

うっわ、面倒な男だなぁ…。

 

「空、助けなくていいのか?」

 

「ん?リンなら大丈夫だろ。」

 

そう言い終わると同時に、銀髪の男が

 

「く、くそ!お前たちの顔は覚えたからな…首洗って待ってろ!」

 

そう騒いで男は退散していった。

 

「俺は無辜の人々が無実の罪を着せられるのが何よりも耐えられないのだ。」

 

そう、リンの隣で言いだす金髪の男。

 

「ともあれ、無事に解決した。このことは綺麗さっぱり忘れたまえ。」

 

「いやいや、早々忘れらんねぇだろ。あんな冤罪。」

 

俺は金髪の男に近づき、そういった。

 

「あ、空!やっほ~!空も抽選に?」

 

「んにゃ、俺はデート中。な?猫又。」

 

「そうだぞ!今からルミナモールで買い物するんだ!リンちゃん、大丈夫?」

 

猫又がそう聞くと

 

「私は大丈夫!助け舟を出してくれてありがと…じゃなきゃあいつ、まだゴネてたよ、多分。」

 

「俺は何もしていない、これは君自身の手で掴み取った勝利だ。」

 

「して…こちらの方は?」

 

金髪の男は、俺と猫又にそう聞いてきた。

 

「あぁ、紹介するね!こっちは空で、こっちが猫又!」

 

リンは俺たちをてのひらで指し、そう紹介した。

 

「『鍛冶屋夜月』の店主、夜月空と言います。こっちは俺の彼女の…」

 

「猫宮又奈だぞ!猫又って呼んでもいいぞ!」

 

そう俺たちは自己紹介をした。

 

「丁寧な自己紹介をありがたく思う。どうかヒューゴ…と呼んでもらえるだろうか。私のことは一収集家の人間と思ってくれたらいい。」

 

そう深々とヒューゴはお辞儀をした。

 

「ひとまず、彼も然るべき罰を受けた。」

「かような愚行に及んだ時点で、覚悟はできていたはずだがね。」

「誰かに害をなさんとすれば、まったく同じことを報いとして受ける…俺に言わせれば、それこそが真の『公平』なのだ。」

「我々の住む世界には、この種の公平が著しく欠けている。そうだろう?」

 

ヒューゴはそう俺たちに向けて言ってきた。

 

「…『因果応報』ってやつか。確かに、その通りかもな。」

 

俺はそう口に出した。

 

「おぉ、君は同志のようだな。」

 

「んにゃ、そういう訳でもねぇよ。」

 

だって、俺が仮にそれを実行していたなら。

 

今、この新エリー都に、『星見家(えいゆういちぞく)』はいなかったから。

 

「…そうなのか。それは残念だ。」

「俺は、『公平』を期すためであれば、時に特別な手段に依ることもやぶさかではない。」

 

ヒューゴはそう言いだした。

 

「なんか怖いことみたいに聞こえるけど、まさか…。」

 

「秀逸な映画が早々に結末を明かさないのと同様に…君には思う存分真実をもとめる権利がある。」

「いずれにせよ、この場でまみえたことは行幸以外の何物でもない。君と俺の邂逅を記念して…。この抽選券を受け取ってくれたまえ。」

 

そうヒューゴは話をそらし、リンに抽選券を渡した。

 

「君に幸運をもたらし、汚らわしき者たちや、取るに足らない物事を忘れさせてくれると願っているよ。」

「あぁ…そうだ、TOPS傘下にいるレイヴンロック家のことは、君達も聞いたことくらいあるだろう。」

「かつてこそTOPSにおいて絶大な存在感を誇り、飛ぶ鳥を落とす勢いであったことは事実だ。だが惜しいかな、盛者必衰は世の常でもある。」

「現状はもはや…資産と評判の両面において、かつての栄光には遠く及ばない。彼らレイヴンロック家にとっては、因果応報とも言えるがね。」

 

ヒューゴはそう言う。

収集家なら、そりゃ関わることもあるか。

 

「何か、因縁でもあるの?」

 

リンが聞くと

 

「ハハハハ…知っての通り、俺は収集家なのだ。あの手の上流階級と関わることは避けられない。とはいえ、その中でも厄介な手合いであることは確かだと言えよう。」

「邪険にして狡猾、手段を選ばないとは彼らのための言葉だ。TOPSにおいてそれが珍しいかと問われれば…」

 

そうヒューゴは少しの間言い淀む。

 

「とはいえ、とりわけ嫌悪される部類であることは間違いない。」

「先ほどのカーティスがよい例だな。傍系であることを歯牙にもかけない威張り散らしよう、君も見たはずだ。一収集家に過ぎない俺には到底太刀打ちできないのだよ。そうでなければ…」

 

…なるほど。

こいつは…『俺と同じ』だ。

はぁ…。

 

「?どうしたんだ空?」

 

猫又にそう聞かれる。

 

「ん?あぁ…家で話すよ。」

 

俺がそうこっそり言うと

 

「とにかく、今後レイヴンロック家の人間に出会うことがあれば、距離を取ることを勧める。無論、TOPSの人間なら誰であれそうすべきだがね。」

「何しろTOPS財政ユニオンは、新エリー都を頂きで統べる者たち…少なくともそのうちの一方と言えるからな。当然、もう一方とはメイフラワー家に代表される市政勢力だ。」

「両者は水面下において犬猿の中でね。新エリー都という陽だまりに、彼らのような存在は2つと入れない。俺からすれば、ただの内ゲバなのだが。」

「おっと、少しばかり話し込みすぎたか。今日のところはこれでお開きとしよう。機会があればまた。」

 

そう言ってヒューゴは去った。

…はー。まさか、だったなぁ…。

 

「さてリン。俺たちも買い物に行ってくるよ。それじゃあな。」

 

「あ、うん!またね!」

 

俺と猫又はそう言って、ルミナモールに向かい、買い物を楽しんだ。

 

 

「ふぅ…にしても買ったなぁ。」

 

俺は猫又の私服やアクセサリーを床に置いた。

 

「すっごく楽しかったぞ!ありがと、空!」

 

「じゃあ、聞いてもいい?なんで、空はあのヒューゴとかいうやつに対して、あんな表情をしたんだ?」

 

俺は猫又にそう聞かれた。

 

「…猫又は、あの言葉をどう感じた?」

 

「あの言葉?」

 

「あぁ。『俺は公平を期すためであるならば、時に特別な手段に依ることもやぶさかではない。』『一収集家には

太刀打ちできない。そうでなければ』って言葉だ。」

 

俺がそう聞くと

 

「どうって…。特に何も思わなかったぞ?」

 

猫又はそう答えた。

 

「そうか…。俺は、な。」

「あいつが、俺と同じだと。そう思えたんだ。」

 

「え…?」

 

俺が言うと、猫又は困惑した表情を見せた。

 

「俺は、俺が目指す道において障害となるのであれば、そいつらを殺すこともやぶさかではない。」

「あいつも、同じなんだよ。」

「進む道が違うだけなんだ。」

「あいつは、『すべてを公平にする』という目的のためならば、手段を選ばない。騙し、奪い、殺す。」

「俺もそうなんだよ。」

「俺は、俺の友人が不利益をこうむるのであれば、手段を選ばない。それが相手を殺すことになっても。」

 

「…でも、空は違う!その行動をしないように、出来る限りしてきてたぞ!」

 

猫又にそうなだめられる。

 

「…そうなのかもな。まぁ、ひとまず気を付けろよ。あいつは、相当危険だ。」

 

俺はそう言ってキッチンに向かい、晩飯を作る。

…あいつらからの依頼は、なるべく受けないとな。

 

次の日

 

朝起きると、リンから連絡が来た。

 

”ライカンさんとエレンがうちに来てる。重要なことを伝えたいんだって。来てくれる?”

 

”あぁ、わかった。すぐに行く。”

 

俺はサクッと普段着の着流しに着替え、Random Playへ向かった。

 

Random Play

 

「来たぞ、リン。ライカン。」

 

「お待ちしておりました、夜月様。」

 

「それで?重要なことってのは一体何なんだ?」

 

俺がそうライカンに聞くと

 

「その前に、まずはお伝えしなければならないことがございます。」

「ヴィクトリア家政がお仕えするご主人様について…」

 

「そ。多分まだ知らないでしょ。」

 

ライカンとエレンはそう俺たちに言ってきた。

 

「確かに知らないけれど…君たちの謎めいたご主人様…というところだろう?」

 

アキラがそう言い返すと

 

「左様でございます。私共ヴィクトリア家政がお仕えするのは、メイフラワー家の現当主…そして、新エリー都の市長閣下でもあらせられるお方にございます。」

 

俺はそれを聞き、驚いた。

ほぉ…。ヴィクトリア家政は一体どこに仕えてんのかと思ってたら、まさかそんな大御所だったとは。

 

「市長って、私が知ってるあの…?」

 

「まぁ、エリー都の市長ならいざ知らず、新エリー都の市長は現状一人だけだからな。リンが知ってる人で確定だろうさ。」

「で?その市長が俺たち犯罪者に何の用だ?」

 

俺がそうライカンに聞くと

 

「実のところ、皆様とお話をしたいというのは市長閣下のご意向でございまして。なにせ皆様はブリンガーとサクリファイスの件に、深く関与されておりますから。」

 

なるほどねぇ…。まぁつまるところ

 

「俺たちに協力してほしいって話か。」

 

「お話が早く、とても助かります。」

 

俺が言うと、ライカンがそうお辞儀をした。

 

「どうする?お前ら。俺は受けても構わんと思ってるが。」

 

「ご安心ください。私めの名誉にかけて申し上げますが、市長閣下にはいかなる悪意の類もなく、皆様にいかなる責任を問うこともございません。また、物理的な対面でないこともお伝えしておきましょう。」

 

俺とライカンがそう話すと

 

「じゃあ…話してみるよ。」

 

そうリンが言い出し、ライカンが

 

「感謝いたします。」

 

とお礼を言った。

 

「それでは早速、市長閣下にお取次ぎをしたく。」

 

そう言って、ライカンはスマホをスピーカーにし、電話を始めた。

相手は即座にその電話へ応答し、相手にライカンは

 

「市長閣下、皆様をお連れしました。」

 

と言い出した。

すると市長は

 

『こうして君たちと言葉を交わす機会を得られて、嬉しい限りだ。親愛なる子供たちと、それに協力してくれている星見の子よ。』

 

…結局、そう呼ばれるんだな。

 

『…へーリオス研究所は、あたたかな場所だった。』

 

その言葉に、リンが反応した。

 

「ご存じなんですか…あの場所を!?」

 

『もちろんだとも。君たちの先生のこともね。カローレ君は…素敵な人だったな。』

『旧都陥落の責が彼女にあると聞かされた時は、何とも残念に思ったものだ。』

 

リンの問いかけに、市長はそう答えた。

 

「先生は無実です!あのことには、何か裏があるに決まってます!」

 

リンはそう大声で言う。

 

「リン。落ち着け。」

 

俺はリンをなだめ、市長に

 

「御託はいい。さっさと本題に移ろう。こちとら今までの経験上、すぐ信用するわけにはいかないんだわ。さっきの呼び方からして、知ってんだろ?」

 

そう言い放った。

 

『…当たり前、だな。すまなかった。では本題に移ろう。』

『今回連絡を取るに至ったのは、ある重要なことを2人に教えるためだ。2人の…目について。』

『私は、カローレ君が生前遺したデータを発見した。君たちの目に入っているインプラント…その副作用を緩和する方法を、彼女は長い時間をかけて求めていたようだ。』

 

その言葉に、2人は辛そうな表情を浮かべる。

 

「先生…ずっと私たちのことを気にかけてくれてたんだ。」

 

そうリンが言うと

 

『その通りだ。』

 

と市長が同調した。

 

『ゆえに私は、これが彼女の意志に他ならないと考えている。かつての友として、彼女の課題を全うする手助けをしたい。』

『簡潔に言うと、君たちの目に埋め込まれたインプラントは大脳と直結しており、その動作は君達の体がどれだけ負荷に耐えられるかに依存している。』

『このため、H.D.Dシステムが君たちの身体機能の一部を占有することで、いくつかの問題を引き起こしていた。その最たるものが、システムの使用によって、君たちに生来備わっているエーテル適性が抑制されてしまうことだ。』

 

なっ…マジかよ。こいつら、元々エーテル適性がないんじゃなく、抑制されてたのか…!?

 

『カローレ君が遺したデータサンプルを元に、私は人員を雇い研究を行わせた。時間はかかってしまったが、H.D.Dシステムのアップグレードプランが遂に完成したのだ。』

『これにより、H.D.Dシステムは動作時の消費エネルギーを大幅に抑えることが可能になる。結果として、君たちのエーテル適性は大きく向上…正確には、本来の適性に戻るだろう。』

 

…なるほど、今までこいつらが「プロキシでなければならなかった」理由が、これでなくなるのか。

 

「システムをアップグレードしたら、自分の体でホロウへ入れるようになるってことですか?つまり、イアスや銀狐に頑張ってもらわなくても…。」

 

『そうだ。適応には時間こそかかるだろうが、徐々に慣れていくだろう。』

『今後は、マルセルグループの技術者に君たちの体の状態をチェックさせる。君たちの消耗を抑え、エーテル適性が滞りなく回復するようにな。』

 

市長は、リンの言葉にそう返した。

そうか…俺は、お役御免になりそうだな。

 

「そんなすごい技術があるなんて…でもこんな簡単に教えてくれて、その、いいんですか?なんか交換条件とかあったり…それに私たちのことなんてとっくに知ってると思ってたから、今更このタイミングでっていうのもちょっと気になるというか…。」

 

リンがそう市長に言いだした。

すると市長は

 

『私から君たちに与えるものについては、いかなる条件もない。だが、今の疑問は確かに重要だ。私がこのタイミングで接触を決めたのは…』

『こちらで把握している情報によると、これまでに分かっている以上の力が君たちの目には秘められているからだ。』

『君たちの体内には、新エリー都全土に影響を与えかねないものが隠されているかもしれない。』

『力とは、よく研がれた刃物のようなもの。その刃が正しい方向に向けられるか、それが肝要なのだ。悠…いや、空君なら、よくわかっていると思う。』

 

市長は、俺にそう言ってきた。

 

「…俺自身、正しい方向に向けているとは思ってませんがね。」

 

だって、俺の進んでいる道は正しくない。

正しいとは、お世辞にも言えない道だから。

 

『…私は新エリー都市長として、全市民の安全に対する義務がある。これまで、君たちのことを観察させてもらっていたが…今のところ、ヴィクトリア家政の面々からは賞賛しか聞いていないな。』

 

は…?

俺はその時、ライカン達を見る。

すると、ライカンとエレンが

 

「僭越ながら…リン様やアキラ様、夜月様は善良かつ誠実なお人柄でいらっしゃいます。皆様であれば、彼らの力を正しい方向に向けることができると…このライカン、信じております。」

「そ、三人とも悪い人じゃないし。」

 

そう言いだした。

 

「なんというか、恐縮ですね。その力というのが、どんなものかは皆目わかりませんが…絵にかいた餅とならないかだけが心配です。」

 

『むろん、そうはならない。今はまだ十分な情報が集まっていない段階でね。価値ある情報が見つかり次第共有しよう。』

 

そう市長がアキラの言葉に返した。

 

『ではこれよりライカン君に君たちのH.D.Dシステムをアップグレードしてもらう。』

『安心してほしい、アップグレードの全行程は君達にも見てもらう。君達にもシステム面の知識はあるだろうから、それぞれの作業がどういうものか分かるはずだ。』

 

…俺分かんねぇや。

 

「それではプロキシ様、失礼いたします。」

 

そう言ってライカンがstuff onlyの部屋に入って行った。

 

『空君は残ってもらえるかな。』

 

俺は市長にそう呼び止められた。

…なんだ?

 

「どうしました?」

 

『君は…まだ、彼らを恨んでいるかい?』

 

俺が聞くと、いきなりそう聞かれた。

 

「当たり前です。私のこの恨みは、消えることはありません。」

 

『そう…か。』

 

「ですが、殺す気もありません。なぜなら…彼らを殺せば、この都市の秩序は…法は、成り立たなくなります。」

「それを行えば、俺が守りたい人々にも危害が及ぶ。」

「それを防ぐために、しないだけです。」

 

『…そう考えてくれて、感謝する。』

 

俺が言うと、市長はそう言ってきた。

…お礼を言われるようなことじゃ、ないと思うんだけどな。

そう話していると、ライカンから

 

「市長様、アップグレードが完了いたしました。」

 

と伝えられる。

 

『具合は、どうかな?』

 

市長がそうリンとアキラに聞くと

 

「今のところいい感じ…です…。」

「本当かい?僕はなぜだか…ちょっと…気持ちが悪いな…。」

 

と、2人が答えた。

すると市長が

 

『体質によるものだろう。君の体が変化を受け入れるのには、ある程度時間がかかるだろう。万一のため、回復するまでは無暗にホロウへ入らないほうがいい。』

 

とアキラに言った。

 

「なるほど…わかりました。回復するまでは、リンの助手に努めます。」

 

『しかし、君たちの内一人がこれほど早く適応できたことは注目に値する。いま、君のエーテル適性は大多数のホロウ調査員と同じレベルに達している。特別なホロウでない限りは入ることが出来るだろう。』

 

『だが、最初に入るときはくれぐれも慎重に行きなさい。ライカン君、エレン君、空君と共に付き添ってあげるように。』

 

そう市長が2人に指示すると

 

「承りました。」

「へーい。」

 

と2人は答えた。

 

『ちょうど今、地下鉄のホロウでデータスタンドがいくつかトラブルを起こしている。経験を積んだプロキシが必要なのだ。君に任せたい。むろん、報酬を支払うれっきとした依頼だ。』

 

『ここからの旅は、ゆっくりと進んでいけばいい。時間をかければ、君たち自身の本当の力を見つけることが出来るだろう。』

 

そう市長は言って、通話が切れた。

…さて、仕事だな。

 

「じゃ、行こうか。リン。」

「う、うん。よろしくね、空。ライカンさん、エレン。」

「おう。」

「お任せください。」

「任せて。」

 

俺たちはそう言って、地下鉄のホロウへ向かい、さくっと依頼を終わらせた。

 

数十分後

 

「では、市長閣下にお取次ぎいたします。」

 

ビデオ屋に戻ってきた後すぐ、ライカンはそう言いだした。

ライカンが電話をかけると、さっきと同じように市長はすぐに通話に出た。

 

「市長閣下、ご依頼は滞りなく完了いたしましてございます。『パエトーン』様についても、大変に優れたパフォーマンスを発揮なされました。」

 

そうライカンが伝えると

 

『よろしい。君達には、やはり天賦の才がある。』

『実のところ、今回君たちに接触を図ったのはもうひとつ…協力してもらいたい重要事項があるからなのだ。』

 

そう市長が言い出した。

はえぇ…めんどくさっ。

 

『君たちに、とあるオークションにて競り落としてもらいたい品がある。』

 

そう市長が言い出すと

 

「あ、それ聞いたことあるかもしれないです…近々、上流階級の人たち御用達のオークションが開かれる、って…」

 

と、リンが言い出した。

 

「おま、何でんなこと知ってんだよ!?」

「いや、その、ヒューゴさんが…。」

 

俺はその言葉を聞いたとき、一瞬背中に寒気がした。

それは、丁度ライカンの方向。

…なるほど、なんかしら因縁があるやつだな。これは。

 

「…とりあえず市長さんや、続きを頼む。」

 

『あ、あぁ。わかった。ひとまず、君たちに白羽の矢を立てたのは、ますます正しい選択だったようだな。』

『単刀直入に言おう。この件は…君たちがかつて遭遇した『サクリファイス』と関係がある。』

 

俺が促すと、市長はそう言ってきた。

…一生付きまとってきやがるな、あのくそエーテリアスめ。

 

「『サクリファイス』…!まさか、また現れたんですか!?」

 

『かつて君たち…いや、空君が、工事現場で打ち負かしたあのサクリファイスだよ。治安局に回収させ、調査を行っていたものだ。』

『その結果、サクリファイスはホロウの外でも存在を維持することが出来るという恐るべき力を持つこと、そして体内には人間のDNAが組み込まれていることが判明した。』

 

市長はそう衝撃の事実を告げた。

…まさか、俺みたいなやつの暴走形態が、あれだってのか…?

 

『そのサクリファイスの体内から、我々は奇妙なコアを摘出することに成功したのだが…。』

『コアにもまた、サクリファイス同様謎めいた力が働いておりエーテル環境から離れた場所でも存続できるのだ。』

 

市長はそう言いだす。

…おいおい、まさか…!

 

「コアが、市場に流れたとか言わねぇよな…!?」

 

『…その通りだ、空君。コアはしばらく前に盗まれた。しかも新エリー都で最も厳重なセキュリティが敷かれたラボからだ。私は内部の犯行とみている。』

 

市長はそう言いだし始めた。

…内部の反応、もしくはfairy系統の汎用型AIの仕業だろうな。

あいつ並みの計算速度があれば、造作もないだろう。

 

「わ、私たちがそれを競り落とすんですか…!?でもどうして私たちに…。」

 

リンは市長にそう発言する。

 

『サクリファイスはその被害をもたらす力もさることながら、不確定な要素が多すぎる。現時点で、あれのことを知る人間は少ないほうがいい。』

『そして私は知っての通り、オークションという場に出ていくにはふさわしくない立場にある。またコアが盗難に遭ったという経緯から、身の回りを徹底して洗い直している最中でね。』

『率直に言って、今の私に信頼のおける人材というのは多くないのだ。』

 

そう市長は淡々と告げた。

 

『だが安心してほしい。資金は豊富に用意したし、ヴィクトリア家政の面々が全面的に君たちを補佐しよう。』

『もちろん、すべては…3人が私に力を貸してくれるか、その一点にかかっているわけだが。』

 

そう市長は俺たちに言ってきた。

するとリンが

 

「や、やるだけやってみます!」

 

と言い出した。

…ほんと、お人よしだよな。

 

「リンがやるなら俺も動くよ。オークションへのチケットの用意を3人分頼む。市長さん。上流階級御用達であるなら、それなりのセキュリティがあるはずだ。それこそ、招待制という形…とかな。」

 

『感謝する。君たちはやはり、信頼に値する同志だ。』

『それに、空君のその先を読む力は尊敬に値する。その通りで、招待制のためチケットを手に入れるのに遠回りをしなくてはならない。出来るだけ早く手に入れるよう手配はしよう。そこからは、どうか頼んだぞ。』

 

そう言って、市長は通話を切った。

 

「うーん…。」

 

通話が切れた後、リンはそううめき声を上げ始めた。

 

「プロキシ様、何か思うところがあるご様子ですね。」

 

そうライカンがリンに聞くと

 

「市長さんって、なんかTOPSとは仲良しって感じじゃないみたいだね…?」

 

と言い出した。

 

「そりゃ、そうだろうな。」

「新エリー都の運営はメイフラワー家のみで執り行われる。大してTOPSは巨大企業の協会だ。」

「リンだって、『六分街の市民にディニーを分配するために、利益を全て徴収しますね~。』とか言われたら嫌だろ?」

「簡単に言えば、そういう話なのさ。」

 

俺がそう言うと

 

「さすがでございます、夜月様。」

 

そうライカンが褒め始めた。

 

「そう大したことじゃねぇよ。」

「さて、ライカンも忙しいだろうし、さっさと聞きたいことを聞いてしまいたい。2人でちょっと話そうか。」

 

俺はそう言って、ライカンを外の路地に呼んだ。

 

「…かしこまりました、夜月様。」

「あ、リンとアキラはヒューゴに連絡とってみな。収集家なら、オークションのチケットなんぞ、いくらでも買えるだろ。」

 

そう言って俺はライカンと店内から出た。

 

店裏の路地

 

「さて、ライカン。俺が聞きたいのはただ一つだ。」

「おそらく、お前ヒューゴとかいう耳長金髪とかかわりがあるだろ。しかも相当深い。」

 

俺がそう言うと

 

「…えぇ、その通りです。」

「やつは…怪盗団『モッキンバード』の一員です。そして、モッキンバードは、私とやつで建てたものでした。」

 

へぇ…あの義賊がねぇ…。

 

「で?お前が抜けた理由は?」

 

「…奴が、誓いに背いたからです。」

 

俺が聞くと、そうライカンが答えた。

 

「…その誓いの内容は?」

 

「『この世は公平でない、それを正すためであるならば、時に特別な手段に依ることもはばかるな。しかし、人の命に手を出すことはご法度。』という、我々に技術を教えてくれた父親のような存在の言葉です。」

 

…なるほど。

 

「あいつは、つくづく俺と同じらしいな。」

 

俺はそう、歯ぎしりしながら言った。

 

「…どういう、ことでしょうか。」

 

「俺とあいつは、進む道が違うだけなんだ。そして、あいつは…着いてはいけないゴールに着いた。」

「そう言う話さ。ありがとな、ライカン。代わりに…。」

「あいつは、俺の手で殺してやる。」

 

俺はそう手をエーテリアス化させて言った。

 

「!い、いえ!そのような事は!」

 

「…お前が決めろ。あいつを、殺すか。殺さないか。」

 

俺はそうライカンを睨み付けて言った。

おそらく、あいつのあの考えはずっと昔からあったもの。

それをこいつの保護者が見抜けなかったとは思えん。

確実に、あいつのセーフティをライカンに頼んでいたはずだ。

そのうえで、こいつはどういう判断を下す?

すると、ライカンは

 

「…彼を止めるのは、私の仕事です。これだけは、譲れません。」

 

そう俺の目を見て言ってきた。

 

「わかった。なら俺は今まで通りあいつらの手伝いとして動こう。」

「ただ、あいつらに何かあれば、その時は…わかってるな。

 

俺はそう脅しをかける。

 

「えぇ。わかっております。」

 

ライカンはそう涼しい顔で言ってきた。

 

「ならいい。それじゃ、俺分のチケットをよろしく頼むよ。リンとアキラに関してはヒューゴから受け取ることが出来ると思う。」

 

俺がそういうと

 

「…やはり、彼をご存じなのですね。」

「あぁ。ちょうど昨日、ルミナスクエアでごたごたに巻き込まれてたよ。」

「ま、リンにいたくご執心のようだったからな。おそらく『パエトーン』だってことも知ってるだろう。」

 

そう返すと

 

「えぇ…。モッキンバードの情報網は現在の私から見ても優れたものだと存じております。」

「そのような情報は、すでに持っているでしょうね。」

 

ライカンはそう返してきた。

なんならあいつらが生身でホロウの中へ入れるようになったことも知ってそうだな。

 

「ま、警戒しておくに越したことはない。これから俺はホロウレイダーとして、がっつり動く。」

「あいつらがホロウ内で活動できるようになったということは。」

 

俺がそう言いかけると

 

「…パエトーンとしての姿が割れ、襲撃に遭う可能性が高くなる、と?」

 

そうライカンが言い当てた。

 

「その通り。」

 

…それに。

 

「それに、あいつらからしてみりゃ、ようやく人に頼らないで手がかりを見つけられるようになったんだ。」

「俺はもう、お役御免だろうさ。」

 

俺はそう、顔を伏せて言った。

 

「…もし、働き口が必要であればヴィクトリア家政へお越しください。歓迎いたします。」

 

ライカンはそう礼をしてきた。

 

「はは。一応鍛冶屋の店主だからな。そうもいかねぇよ。」

 

…まぁ、あいつらには話しておいたほうがいいのかもな。

そんなところで、俺たちは別れた。

 

数日後

 

朝早くにチャイムが鳴った。

 

「はい。」

 

そう言ってインターホンから画面を確認すると、そこにはカリンがいた。

 

『あ、よ、夜月様!お届け物がありまして…!』

 

そうおどおどした声でカリンが言ってくる。

おそらく招待状だな。

 

「わかった、今扉を開ける。少し休んでいきな。」

 

『あ、ありがとうございます!』

 

そう言ってカリンは大きく礼をする。

そこまでかしこまらなくていいんだがな。

とりあえず、カリンを家の中に招こう。

俺はそう考えて扉を開け、カリンを家の中に入れた。

ひとまずお茶を入れ、カリンを席に座らせる。

 

「はい、緑茶でよかったか?」

「あ、はい…!ありがとうございます!」

 

そう言って、カリンはゆっくりと緑茶を飲み始める。

 

「それで…届け物ってのは、招待状のことか?」

 

俺がそうカリンに聞くと

 

「あ、はい!ライカンさんから、『夜月様に渡すように』と!」

 

そう言って、カリンは背中のリュックから招待状を取り出した。

 

「ありがとう。さて、と。」

 

開催場所は…ルミナモールか。

相応のドレスコードでいかないと、だな。

戦闘服でいいか。一応あれ準礼装だし。

 

「そ、それで、ですね…!」

「ん?」

 

まだ何かあったのか。

 

「ライカンさんからもう一個渡してほしいものがあるといわれているんです。」

 

そう言って、カリンはファイルを取り出した。

…どう入れてたんだろ。

 

「私は、何か知らないんですが…。ライカンさんが『夜月様なら見ればわかるでしょう。』と…。」

 

俺が、見たらわかるもの…?

俺がそのファイルをめくると、そこには設計図があった。

…なるほど。そういうことか。

 

「…ライカンに助かるって、伝えてくれ。」

 

俺はカリンにそう伝えた。

 

「?わかりました!では、カリンはこれでお暇しますね!」

 

そう言って、カリンは席を立つ。

 

「カリン、ちょっと待て。ついでだから確認するが、武器の調子はどうだ?」

「へ?あ、とっても調子がいいです!最近はお手入れもしっかりしています!」

 

俺が聞くとそうカリンは答えた。

 

「そうか、また何かあったら持って来いよ。」

「はい!ありがとうございます!」

 

そう言って、カリンは帰っていった。

…少し、雅のところに行くか。

俺はスマホで電話をかける。

 

『はい。こちら対ホロウ6課。』

 

「俺だ。柳。」

 

『空さんですか。そちらから連絡してくるとは、珍しいですね。』

 

「少し、お前らに頼みたいことがあってな。」

「俺と、模擬戦をしてくれ。」

 

俺が柳にそう言うと

 

『…いきなりですね。どうしたんですか?』

 

と、聞かれた。

…本心は、隠さないとな。

 

「…単刀直入に言おう。人を殺す技術を身に着けるためだ。」

 

『…穏やかでないですね。』

 

「…いろいろ事情があるんだ。すまんが、話せん。」

 

『…わかりました。本来であれば断るべきですが…空さんのお願いです。1週間の業務援助で手を打ちましょう。』

『場所は、HIAセンターでよろしいですか?』

 

「あぁ。俺も今から向かう。よろしく頼む。」

 

俺はそう言って、携帯を切った。

これで…いいよな。

さっさと向かおう。

 

ホロウ6課(あいつら)が、俺を殺せるようにするために。

 

HIAセンター

 

「む。来たか、兄様。」

 

「やっほー空。君から呼び出すなんて珍しいね。」

 

「空だー!」

 

「来ましたね、空さん。」

 

そう4人からそれぞれ挨拶を受けた。

 

「あぁ…お疲れさん。じゃあ…さっさと始めよう。話は、聞いてんだろ?」

 

俺はそう言ってVRセットに向かった。

すると、雅に腕を掴まれた。

 

「兄様。」

 

「…やろうか、雅。先に入れよ。」

 

俺がそう言うと、雅はVRに入っていった。

 

「お前らも、どんどん入って来いよ。」

 

そう言って俺はVRに入る。

目を閉じ、次に目を開ければそこは闘技場だった。

そして、目の前には雅が刀を抜いて立っていた。

 

「…なぜ、兄様がいきなりこんなことを言い出したのか私にはわからない。」

「そして、どうしてそんなにつらそうな顔をしているのかもわからない。」

教えてくれ、兄様。私は、どうしたらいい?

 

そう雅は涙を浮かべて言ってきた。

 

「…始めるぞ。」

 

俺はそう言ってエーテル燃料を飲んだ。

刀が紫色に発火する。

そして一気に距離を詰めて刀を振るう。

 

「…っ!」

 

雅は当たり前のようにそれを弾き、俺の胴体に刀を入れようとしてくる。

それを銃身で防ぎ、バックステップで距離を取って脳天にuziを打ち込む。

雅は横に避け走る。

俺はその姿を追って銃を撃つ。

 

「はっ!」

 

そして弾切れが起きた時、雅が俺の足を狙って刀を振るってきた。

ジャンプで避け、バク転し、前に踏み込み肩へ向けて刀を振るう。

 

「くっ…!」

 

それを雅は両手で刀を使い防ぐ。

 

どうしてだ!どうして、いきなり!

「…もしものためだ。」

「さぁ、ギアを上げるぞ。」

 

俺はエーテル燃料を2本一気飲みする。

体の侵蝕が進む。

刀の炎が深紅へと変わる。

俺はスピードを上げる。

胸、足、肩、腕、首。

様々な部位を様々な場所から切りつける。

雅はかろうじてそれを防ぐが、少しずつ対応できなくなっていく。

エーテルが切れるまでそれを続ける。

そして雅を確認すると、彼女の体は傷だらけになり、刀を支えにして立っていた。

 

「…本気出せよ、雅。」

 

俺がそう睨んで言うと

 

兄様に…本気なんて出せるわけがないだろう!!

 

雅はそう涙をぽろぽろと流して言い出した。

 

「…あぁそうかよ。」

 

俺はポーチから錠剤を取り出し、かみ砕く。

全身にエーテルが流れる。

結晶が生まれる。

 

なら、殺す。

 

刀は漆黒へと変わった。

そして、雅の首に刀を振るったとき。

 

「…なぜ、そんな考えになったのかはわかりかねますが。」

「本当に殺す気なら、私たちが相手です。」

 

柳が刀を薙刀の柄で止めた。

 

来やがれ、ホロウ6課。

我を、殺してみろ。

 

そう言って我はさらに出力を上げた。

体の侵蝕がどんどんと進んでいく。

それを柳が抑え、悠真が俺の体にダメージを与えていく。そして後ろに引くと蒼角が詰めてきて凍らせてくる。

…さすがのコンビネーションだな。

それを強引に割って戦っていると、右腕の骨が折れた。

どうやら、悠真の攻撃でひびが入っていたらしい。

 

「…」

 

我はすぐに右腕を切り落とす。

 

なにを!?

 

そう3人が反応した瞬間、我は腕から結晶を生やした。

さらにポーチから錠剤を2錠取り出しかみ砕く。

さらに体の侵蝕が進み、体中から結晶が生える。

そこから、我は記憶をなくした。

 

 

 

次に目を覚ました時。俺は病院で寝ていた。

 

「…負荷をかけすぎたか。」

 

ベッドのところには雅が寝ていた。

外を見ると、すでに夕方。

その時、病室の扉が開き、柳が入ってきた。

 

「…空さん。」

 

泣きはらしたような跡のある柳は、そう言って俺を軽く睨んできた。

 

「いくらなんでも、あれは惨すぎます。」

 

そういう柳の手には、力が入っていた。

 

「…すまんな。いろいろと…考えさせられることが多かったんだ。」

「でしたら、相談してください。それとも、私はそんなに頼りないですか?」

 

俺がそうはぐらかすと、そう問い詰めてきた。

 

「…そうじゃねぇよ。ただ…いや、なんでもない。いずれわかることだ。」

 

俺はそう言って立ち上がる。

 

「トイレに行ってくる。今回は、すまなかったな。」

 

そう言って、俺は病室から出て行った。

…しょうがねぇだろ。

いろいろなことが、起きすぎてんだよ…。

整理が、つかねぇっつの…。

 

次の日

 

昨日の入院はVRでの気絶による経過観察だったようで、俺はすぐに退院することが出来た。

…まぁ、退院した後すぐホロウ6課に呼び出されたが。

 

「兄様。それで、どうしてあのようなことをした。」

 

雅からは強い恨みのような感情が感じられた。

 

「今回のことは、僕もちょーっといただけないかな。空。」

「そーだよ!どうして!?」

 

そう悠真と蒼角にも言われる。

…まぁ、いずれ知ることになるだろう。俺がここで伝えたとて、大して変わらん。

 

「あいつら…パエトーンは、エーテル適性を抑制されていた。イアスとのリアルタイム接続システムが起こした影響でな。」

「そのシステムにアップグレードが入った。よって、パエトーンは今後生身での活動が可能となる。」

 

俺がそう説明すると、口を閉ざしていた柳が

 

「…つまりは、空さん…いえ、銀狐が必要なくなると?」

 

と言い出した。

 

「あぁ。今まで俺があいつらに協力していたのは、あいつら自身が動けなかったからだ。それを俺は肩代わりしていた。」

「あいつら自身が直接動けるのであれば、俺は必要ない。」

「…それに加えて、俺たちはまた特大の厄ネタに巻き込まれた。」

「いろんなことが起きすぎてんだ。」

「何が起きてもおかしくない。それこそ…俺が暴走する可能性だってな。」

「あ、兄様に限って」

「あるに決まってんだろ雅。」

 

雅の言葉を遮り、俺はそう言った。

 

「事実、お前らは戦ったはずだろ?俺の暴走状態と。」

「…ないわけじゃないんだよ。そして、それを止められるとしたらお前だけなんだよ。『星見 雅(虚狩り)』。」

 

俺はそう雅を向いて言った。

 

だ、だが…!

「しっかりしろ雅。…前やった話し合いの時も言ったけどよ。俺はもうお前の兄じゃない。ただ同じ親から生まれただけなんだ。」

「序悪務本。何が悪で何が正義か、決めるのはお前だろ?」

「暴走して、市民を殺そうとするエーテリアスは、悪じゃないのか?」

 

俺は雅の顔を覗きそう言った。

それに雅は黙りこくり、涙を浮かべた。

…こりゃ、どうしようもないな。

 

「…お前らにも言っとくぞ。俺が暴走する確率は0じゃない。なんなら、このまま戦闘を続けていれば確実に暴走するだろうさ。」

「それを止めるのはお前らの役目だ。頼んだぞ。」

「それじゃあな。」

 

俺がそう言ってホロウ6課のオフィスからルミナスクエアへと向かおうとした時。

 

「待ってください。」

 

そう柳に呼び止められた。

 

「…どうかしたか?」

「…これを、渡しておきます。」

 

そう言って、柳から渡されたのは…

 

「…キーホルダー?」

「えぇ。私たち、ホロウ6課を示すマークのキーホルダーです。お守り代わりに持っていてください。」

 

そう言われた。

 

「…ありがとな。それじゃ。」

 

そう言って、俺は今度こそオークションへ向かった。

…オークション。

リンとアキラに、気を配っておかないとな。

 

ルミナモール

 

ルミナモールの入り口にたどり着くと、入り口には人が立っていた。

 

「オークションに参加したい。」

 

そう言って招待状を見せると

 

「確認しました。お客様、VIPラウンジのご利用はされますでしょうか?」

 

と聞かれた。

…おそらく、あいつらはVIPラウンジに入ってるな。

 

「あぁ。案内してくれ。」

「かしこまりました。ではこちらに。」

 

そう言って、俺は案内を受けVIPラウンジに入っていった。

 

VIPラウンジ

 

俺がVIPラウンジに入ると

 

「お願いします、どうか助けてください…もう他にどうしようもないんです…。」

 

という懇願する声が聞こえた。

 

「…なんだ?」

「あ、空。君も来たんだね。」

 

俺が疑問に思う声を上げると、アキラがそう声をかけてきた。

 

「あぁ。ちょうど今来たところだ。」

 

そして、俺たちがその声のしたほうを見ると

 

「虚言…欺瞞…背反…迷夢が立ち込め、真相は底知れぬ幻の中…。」

「見つけたのです。運命の人。」

 

と、紫色の傘を差した耳長の女性がこちらに歩きながら言ってきた。

俺がそいつに対して警戒を強めると

 

「思った通りなのです。」

 

と言い出した。

…思った通り?

 

「運命の人って…なに?久しぶりに聞いたよ、そんな懐かしい口説き文句…。」

 

リンがそう女にツッコミを入れる。

するとその女は

 

「言葉で表現できることには限界があるのです。今のあなたに理解できないとしても、それは普通のこと…。」

「すぐにわかるのです。わたしが何を言わんとしているか…。」

 

と言い出した。

すると後ろの懇願していたシリオンが女に向けて

 

「お、お嬢さん…。私を詐欺師だと疑っているのはわかっています。でも…。」

「あれは本当のことなんです!あのコレクションは私の夫が遺したものです。生活が苦しくて、質に入れざるを得ませんでしたが…。」

「誰ともわからない人の手に渡ってしまうところをただ見ているのは、耐えられないんです…!だからどうか、あれを競り落とすのを手伝っていただけませんか…!」

 

と言い出した。

…生活に苦しむやつが、ここによく来られたな。

普通に怪しい。というか、十中八九詐欺師だな。

シリオンは続けて

 

「あのコレクションには、実は傷がついています。競り落とした後、裏で手続きをする際に運営へ指摘してください。そうすれば出品そのものが無効となり、質屋へと戻っていくでしょう…あなたがお金を払う必要もありません!」

 

うわうさんくさ。

これでこの女がOKを出したら相当な甘ちゃんだぞおい。

…リンならやりそうだけど。

 

「もちろん手間賃として、いくらかお支払いいたします…!多くはありませんが、私の用意できるすべてを…だからどうか…!」

 

シリオンはまたそう懇願していた。

それに娘が

 

「ママ、泣かないで…。」

 

と泣きそうな声で言っていた。

…けっ、いい教育してんなこいつ。

この一連の話に対し、女は

 

「あなたのお話が事実だとして、そのために来たわけではないのです。」

「第一、わたしと何の関係が?あなたが不幸になろうと、わたしの知ったことではないのです。」

 

女はそう一蹴した。

…それなりに判断はできるみたいだな。

 

「お嬢さん、そんな…お金に困っているようには見えないのに、どうしてそこまで冷徹になれるんです…!」

 

シリオンはいまだにそう泣き落としを狙ってくる。

 

「お隣にいらっしゃるお上品そうなご友人方も、きっとそう思っていらっしゃいますよね!」

 

おっとこっちに振ってきたか。

 

「…え?私?」

 

リンはいきなり振られたことにびっくりしたのか、そう拍子抜けな声を上げる。

それに対し、シリオンは

 

「そうです!もしよろしければ、お願いを聞いていただけないでしょうか…!」

 

と言ってきた。

しかし、それを女が遮り

 

「まもなくオークションが始まるのです。どうやってここに紛れ込んだのかは知らないですけれど…小さい子ともども警備員に突き出されたいのですか?」

 

と言い出した。

ま、残当だな。

その言葉に、シリオンは言葉を詰まらせる。

あーあー。裏ルートで入ったよって認めるようなもんじゃねぇかそれ。

 

「それと、あなた。」

 

女はリンのほうを向き冷ややかな視線を向けた。

 

「ささやかな忠告をしてあげるのです。オークションは洗浄、安易な同情は命取り…。そんなふうにしていると、今に身ぐるみはがされてすってんてんにされるのです。」

「…隣の御着物の方は、大丈夫そうですけれど。」

 

女はリンに言った後、俺のほうをちらっと見てそう言いだした。

 

「それと、わたしはビビアン。お見知りおきいただければ嬉しいのです。」

 

そう言って深く礼をし、ビビアンはオークション会場へと入っていった。

すると今度はライカンが近づいてきた。

 

「プロキシ様、夜月様、ご無事でしょうか?何やらトラブルに巻き込まれたようにお見受けしました。」

 

ライカンがそうリンに聞くと

 

「ううん、大丈夫!大した問題じゃないよ!」

 

と明るく返した。

 

「そのようであれば安心いたしました。実は、会話がいくらか耳に入ってしまったのですが…。」

「率直に申し上げますと、このようなオークションに彼女のような親子連れが客人として招待されているのには…少しばかり違和感を覚えます。」

 

ライカンはそう言いだした。

 

「俺個人の見解だが、十中八九詐欺師だろうな。しかも家族ぐるみ。」

「ところどころ穴がある。まぁ詐欺に手を染めたのは今回が初か、2回目か…はたまた、こういうでかめのものをやったことがなかったかの3択だと思ってるぞ。」

 

俺がそうライカンに伝えると

 

「夜月様がそう思われるのでしたら、ほぼ確実でございましょう。」

「ともすると、あの謎めいたビビアン様の仰る通り、正規のものではない手段という可能性が高いでしょう。何やら裏がありそうな気も致します。」

「だろうな…ま、警戒は怠らねぇよ。」

 

俺とライカンがそう話していると

 

「ちょっとちょっと、二人とも冷たいよ!ちょっとは優しく…」

 

とリンが言い出した。

 

「…リン、今回ばかりはお前には同意できねぇ。」

「こっちはオークションで目的がある。金もないのに、詐欺に加担する必要はない。」

「お前にはまだオークションは早かったかもな。」

 

俺がそういうと

 

「むー…!私もう子供じゃないもん!」

「はいはい、じゃあこれぐらいの判断はできるようになろうな。」

 

リンがほほを膨らませて言ってきた文句に頭をなでながら返した。

 

「話は終わったかい?終わったなら入場しようか。」

 

アキラがそういうと、ライカンが

 

「プロキシ様。夜月様。もし気に入る品がありましたら入札していただいて構いません。ご主人様がご負担くださるとのことですので。」

 

と言ってきた。

 

「ほんとに!?じゃあお言葉に甘えちゃうよ!」

「…俺はやめておこう。金が足りなくなったらまずい。」

 

リンはそう喜び、俺は断った。

 

「ご安心ください、夜月様。ご主人様の予算は潤沢でございます。およそ通常のオークションに出回るような品であれば支障はないかと。」

「もっとも、我々の追い求める『あの品』を狙う勢力がほかにいなければ、でございますが…。」

 

そうライカンは神妙な顔で言ってきた。

 

「…ま、そうなったら臨機応変に対応しよう。」

「よろしくお願いいたします。夜月様。あなた様のお知恵を信頼しております。」

 

そうライカンと話していると、いきなり近づいてきた輩がいた。

それは、以前くじ引き屋でリンに絡んでいた男だった。

 

「またお前か…!しかも、今度は別のやつ一緒だと?あの自惚れ屋のパツキンはどこ行った!?」

 

そう騒ぎ立てる男。

するとライカンが

 

「…『自惚れ屋のパツキン』?」

 

と言い出した。

 

「あの野郎のことだ、気にすんな。」

 

俺がそう言うと

 

「なんだ貴様は!?俺のことを誰だと思っている!」

 

と大声を出してきた。

はぁ…。

 

「そんなくたびれた服着てて偉そうにできんのかよ。」

「偉そうにするならもうちょっとしっかりとした服装にするべきだな。」

「貴様…!そういう貴様もまともな服装をしてないではないか!」

 

俺が冷静に返すと、そう文句を言ってきた。

ほう…?

 

「この服装を、『ふざけた服装』だと?」

 

俺はそう圧をかけながら言う。

 

「うっ…そ、そうだ!なんだそのひらひらした服装は!まるで格式に沿った服装ではないだろう!」

 

そう文句を言ってくる男。

 

「はっ!無知もここまで来ると滑稽だな。」

「この服装はれっきとした礼装だよ。」

 

ほんとはちょーっとグレードが下だけど。

 

「な…!そんなわけが!」

 

そのタイミングでライカンが口を出してきた。

 

「こちらは着物と呼ばれる服装の礼装でございます。他人の服にケチをつける前に、自分の知識を磨くことをお勧めします。」

 

そうライカンが言い返すと

 

「う、うるさい!」

「貴様らみたいな庶民風情が、よくこのオークションに参加したな!」

「どこで招待状を手に入れたのか、エドモンド様は大層ご興味を持たれるだろうな!」

 

そう男は言ってきた。

エドモンド…?

 

「誰のこと?」

 

リンが聞くと

 

「エドモンド様のことさえ知らないのか?彼はTOPSの重鎮で、TOPSそのものを代表して発言される権限を持つほどのお方だぞ!」

「このオークションにも、後々お顔を見せに来られる予定だ。彼の額に刻まれた高貴な印は、お前もひとたび見れば二度と忘れないさ。」

「はぁ、なんでこんな奴に説明してやらなきゃならないんだ。どうせ理解できないとわかっているのに…。」

 

男はそう説明してため息をついた。

…ほんっきでキレそう。

俺が腰から拳銃を取り出そうとすると、ライカンがその手を止めてきた。

 

「…わかった。」

 

俺は拳銃を掴んだその手を離した。

 

「せいぜい僕と同じ品に目を付けないことだな、僕は絶対に勝つぞ!」

 

そう捨て台詞を吐いて、男は慌ただしく去っていった。

 

「プロキシ様。いましがたの彼は、ずいぶんとあなた様に敵意を向けているようでした。何やら過去にトラブルのあったご様子…。」

「しかしながら、間もなく時間でございます。まずは入場すると致しましょう。」

 

そして、俺たちはオークションに参加。前半のオークションは俺は何も落札しなかった。

リンはゴールドボンプのやつを落札してたみたいだが…。

その後、前半が終わり、ラウンジに戻ると、リンとビビアンが話していた。

そのとき、ビビアンがリンに近づき、何か話した。

その時、リンは驚いたような顔を見せた。

…後で事情聞いておくか。

そして、俺たちはオークションに戻る。

するとそのタイミングでちょうどオークションが始まった。

 

『レディース&ジェントルマン!ようこそお戻りくださいました。』

『続いての品こそ、本オークション最大の目玉、比類するものなき『勇者の外套』でございます!』

 

そこには普通のコートに、奇妙な宝石…サクリファイスのコアがあしらわれていた。

…おいおい、ふつうあんな風にあしらわれるかよ!?

 

『はるか昔、真に勇気ある者だけが袖を通すことを許されたというこの逸品…』

『さらに驚くべきは、襟元にあしらわれた奇妙な宝石でございます。私もこのようなものを見たのは初めてです…何やら、怪しげな魔力のようなものを漂わせていますね!』

 

…絶対に競り落とす。

俺とリン、アキラはそう目配せして落札に挑む。

…が、結果は敗北。

敵対していたハルトマンが天文学的な数字の金額で落札した。

 

「ハハハ…!どうもどうも。やはり最後に勝つのは俺だったようだ。」

 

そうワインを片手に高笑いするハルトマン。

 

「これにて、こちらの品は俺のものとなった。改めて皆には心からの感謝を…」

 

そうあーだこーだと高説を垂れる。

ちっ…!こうなったら、力ずくで!

俺が拳銃を抜いて照明を消そうとしたその時。

アキラのスマホに通知が来た。

 

「ん?ヒューゴさんからDMだ。」

「え?お兄ちゃん、それ見せて!」

 

…おい、まさか…!?

 

「「上を見たまえ…?」」

 

そう言って2人が上を見た瞬間、照明が落ちた。

 

「な、何が起きたの!?」

「明かりが消えた…!?」

 

…ちぃ!あの野郎、盗みに来やがった!

俺が必死に目を凝らしてあいつの姿を探していると

 

「レディース・アンド・ジェントルメン!」

 

という声が響き、スポットライトが付いた。

そこには金髪の仮面をつけた男…いや、ヒューゴがいた。

 

「オークションを楽しんでいるだろうか?」

「冗長かつ、下らん前座に付き合わせてしまったことをお詫びしよう。」

「能のないやつほど決まってよく囀るものだ…。どうか許してやってくれたまえ。」

 

そう下を見ながら言い出すヒューゴ。

ちっ、こっから攻撃しようにも、ここで部分侵蝕起こすのはまずい…!

動けないままじっと睨みつけていると

 

「あの人…なんだか見覚えがあるような…。」

 

と、リンが言い出した。

 

「まさか…!?」

「あぁ、そのまさかだ。あいつはヒューゴだよ。」

「えぇ。この後やつは逃げるはず。逃げる前に」

 

俺とライカンはそうアキラとリンに言い、動こうとしたとき

 

「何を突っ立っている!?不法侵入だぞ!とっ捕まえろ!」

 

とハルトマンが叫びだす。

それにヒューゴは

 

「無礼な。俺はただ、俺の物を取り戻しに来ただけなのだがね。」

 

と言い、勇者の外套を掲げた。

なっ…!

 

「い、いつの間に!?」

 

ハルトマンがそう言いだすのを無視し、

 

「さて、今宵のショーも終わりが近づいている…。」

「会場のみな皆様、最後までどうか…素敵な夜を。」

「モッキンバードより、心を込めて。」

 

そう言ってコインを弾き、ヒューゴは逃げて行った。

くそったれ…!

つっても、ここですぐに追うわけにはいかねぇ…!歯がゆい…!

俺はそう思いながらも、一度VIPラウンジへと戻り、ライカン、リン、アキラと話すことにした。

 

数分後

 

「ここに現れるとは…しかも我々と同じ、コアに狙いを定めて…」

「さすが、モッキンバードというべきか…相当な情報網を持ってるみたいだな。くそったれ。」

 

俺とライカンはそう話していた。

するとそこにリンとアキラが戻ってきた。

 

「ライカンさん…。」

 

そうリンがライカンに声をかけると、ライカンは

 

「…真実を申しますと、先ほど現れた、あの…モッキンバードなる輩とは、面識がございます。」

 

と言い出した。

そのライカンの言葉に

 

「信じてもらえないかもしれないけど、実は私も…あの人、知り合いなの。」

 

とリンも言い出した。

 

「えぇ、存じております。夜月様から聞いておりました。」

「…もうずいぶん昔のことでございます。私がヒューゴとともに、怪盗団『モッキンバード』を立ち上げたのは…。」

「幼稚で壮大な夢を掲げ、自分たちが正しいと思うことを1つずつ成し遂げてゆきました。当初は全てが順調だったのです。」

「…あんなことが、起こるまでは。」

「今思えば、予兆はあったのかもしれません。誰も気づく者がいなかったか、あるいは気づくこと自体を避けていたか…。」

「いずれにせよ、私はモッキンバードから足を洗い、市長閣下が差し伸べてくださった手を取りました。」

「当然、穏便に別れることは叶わず、今やヒューゴとは宿縁の仲という有様ではございますが。」

 

ライカンはそう俺たちに話した。

 

「そうなんだ…いろいろ、大変だったみたいだね。」

 

リンがそうねぎらいの言葉をかけると

 

「えぇ。ですが、今の状況にそれは関係ありません。」

「恐れながら…リン様、夜月様。あの男をどう見ますか?」

 

と、ライカンはリンと俺に質問してきた。

 

「悪い人には思えないけどね…一応、この間は助けてくれたし。」

 

そう話すリン。

 

「…俺と同じ。そう俺は見ている。」

「まぁ、ライカンには話したはずだがな。」

 

俺はそう告げた。

 

「…そうでございましたね。」

「え?空とヒューゴさんが、同じ?どういうこと?」

 

ライカンは頷き、リンはそう俺に聞いてきた。

 

「リン、俺とヒューゴが会った時…あいつがなんて言ったか覚えてるか?」

「え?確か…『誰かに害をなさんとすれば、まったく同じことを報いとして受ける…俺に言わせれば、それこそが真の『公平』なのだ。』だっけ。」

 

リンは、そう俺に言ってきた。

 

「あぁ、その通りだ。」

「そしてこれが指す意味は…まぁ簡単だろ?」

 

俺がそう言うと

 

「…因果応報、ってこと?」

 

リンはそう返してきた。

 

「そうだが、そうじゃないな。」

 

俺ははっきりと告げた。

 

「あいつはこう言いたいんだよ。『人を殺した奴がのうのうと生きてるんじゃねぇさっさと死ね。』ってな。」

「そして、あいつはそれを実現するために手段を選ばないだろうさ。」

「目的が違うだけで、俺も成し遂げたいことに関しては手段を選ばない。」

「だから、俺とあいつは一緒なのさ。」

 

俺はそうリンに話した。

 

「…左様でございますか。少なくとも、リン様。私が思うに、あの男があなたを助けたのは、あなた様に近づくための偽りの姿ではないかと。」

「いずれにせよ、彼は危険な男でございます。」

「今のところ彼の目的は明らかではありませんが、サクリファイスのコアを明け渡してはならないことだけは確かかと。」

「そもそも、俺たち以外に明け渡していい人物がいるかどうかは甚だ疑問だがな。」

「で、ライカン。過去の経験とかそういうところから逃走経路割り出せねぇか?」

 

俺がライカンの言葉に皮肉を言いながら質問すると

 

「えぇ。おおよそ推測できます。追っ手を容易に振り切るのに適したルート、それはすなわち…ホロウの中でございます。」

 

…そらそうか、いや、そらそうなるわなぁ…。あんな天然迷宮、使わないわけがねぇ。

 

「ついてはプロキシ様ならびに夜月様…」

 

そうライカンが言いよどむ。

 

「時間がもったいないし、このまま行っちゃお!なんか今の私、自分でも怖いくらい調子がいいの!」

「調子がいいかどうかは置いといて、さっさと行くのには俺も賛成だな。コアを取り戻すのは最優先事項だ。」

 

俺とリンはそう思い思いに声を発する。

 

「かしこまりました。では、私とともにこちらへ!」

「…空気だったけれど、僕は先に帰ってサポートに回るね。がんばってくれ。」

 

そうアキラ俺に告げて帰っていった。

そうか、まだ体調が戻ってないもんな。

 

「任せろ。俺が守り抜いてやるよ。」

「さて。じゃあ行くか。」

 

そうして、俺たちはヒューゴが逃げたと思われるホロウへと向かった。

 

ホロウ内

 

ホロウ内に入り、ライカンの予想の通りにホロウを進むと、空いたコンテナを通り、奥へと逃げていくヒューゴの姿が見えた。

 

「ヒューゴめ、やはりここに…。」

「かつて…行動を共にしていた頃、彼は守りやすく攻めにくいルートを選ぶ傾向にありました。」

 

ほう…さすがと言うべきか、逃げるルートはちゃんとしてるわけか。

 

「で?行けんのか?ライカン。」

「ご安心を、夜月様。あの男は、私が捕まえてご覧に入れます。」

 

ライカンはそう俺の問いに答えた。

 

「なら…リン、案内を頼むよ。俺は…」

 

そう言いながら空気のエーテルを吸い上げ、足に回す。

そして、そのままコンテナを蹴破った。

 

「道を作る。」

「…やはり、夜月様がいらっしゃると進むのが楽ですね。」

「これは楽とは言わないんじゃないかなぁ、ライカンさん。ただゴリ押してるだけに思えちゃうよ…。」

 

そう俺にライカンとリンは思い思いの発言をしだす。

 

「んな事気にしてられっかよ。ほら行くぞ。」

 

そう言って、俺はどんどんと進んでいく。

すると、コンテナの制御盤がヒューゴに壊された。

 

「アディオス、我が友たち。」

 

とほざくヒューゴ。

 

「…何を言ってるのか…なっ!!」

 

俺は燃料を飲み、さっきよりも力を込めてコンテナを蹴破った。

すると、そのコンテナは吹き飛び、中身は奥に撒き散らされ、それにより設置してあったであろう地雷が爆発した。

 

「…でたらめだな。」

「はんっ。でたらめじゃなきゃ生きてけねぇんだよ。」

 

俺がそのまま進んでいくと、デッドエンドブッチャーにも似た大きなエーテリアスが出てきた。

…面倒くさ。

 

「当たると痛いぞ。せいぜ」

 

俺はヒューゴの口上すら聞かず、燃料をもう一本飲み干した。

 

「狐火一閃。」《/b

 

そう言ってエーテリアスを真っ二つにした。

 

「…で?何が…痛いって?」

 

そう言って俺がニヤリと笑う。

すると、それに脅えたのか、ヒューゴは即座にそこから逃げ去っていく。

 

「…追うぞ。」

 

そうやって追っていると、俺たちはギミックを何度も解かされ、どんどんと距離を離されていった。

 

「くっ…やはりあの男が一枚上手でしたか。逃げおおせる機会を与えてしまいました。」

「さすが怪盗だな。でたらめにも対応してきやがった。」

 

俺だけならすぐに追いつけるが…。そういうわけにもいかねぇだろうな。

 

「負けないで、ライカンさん!」

 

そうリンが声をかけると

 

「…大変申し訳ございません、急ぎ追いついて見せます。」

「ヒューゴが逃げた方向を見るに…私の推測が正しければ、私共がこの空間に初めて足を踏み入れた位置、そのさらに上方のエリアにいるかと。」

「プロキシ様、夜月様、急ぎ追いかけてまいりましょう。」

 

ライカンがそういうのに、俺たちはうなずいて出発した。

 

数分後

 

「…この方向、間違いない。」

「どうかご安心ください、プロキシ様、夜月様。」

「じきに…追いつけます。」

 

そうライカンが言い出した。

ふむ…このホロウには来たことがあったのか?

追いつけるってことはたぶんこの先は…。

 

「行き止まりか。」

「えぇ。そして…やはりですか。」

 

ライカンの見る先にはショートしたコンテナ制御盤があった。

ふむ。

 

「ぶち抜けばいいな?」

 

俺がライカンに言うと

 

「…事態は一刻を争います。よろしくお願いいたします。」

「あいよ。」

 

俺はその言葉を聞き、エーテルを吸うが…やめた。

 

「…武装したやつがいるな。」

「あの者たちは…オークション側の追手でしょうか?いえ、さすがにここまでは追って来れないはず…。ただのホロウレイダーでしょう。」

「過去の経験に照らし、戦利品を手に入れたヒューゴはそのままホロウへ逃げ込みます。」

「その一方で、相棒である私が追っ手を誤ったルートへと誘い込む…それが当時のやり方でした。」

 

ふむ…理にかなった作戦だな。

 

「だとするなら、新しい相棒がいることは確実だろうな。」

「そうだね、怪盗にサイドキックはつきものだもん。」

 

そう俺とリンが話し始める。

ふむ…ヒューゴがリンに接触してきたってことは、パエトーンをサイドキックにしたいのか…?

いや、考えてもしょうがねぇな。とりあえずは追うことだな。

 

「…もし新たな相棒がいるとするのであれば厄介でございますね。隙を見て、サクリファイスのコアをもう一人に渡した可能性もあります。」

「とはいえ…ひとまずこのホロウレイダーたちから身を隠すと致しましょう。」

 

ライカンがそう言い出した。

…いや、そんなことしなくていいな。

 

「ライカン、リンのこと任せた。」

「え?銀狐?」

「捻り潰す。飛んでくる火の粉は振り払うだけだ。」

 

俺がそう言うと

 

「…承知しました。ですが、殺さぬよう。」

「わーってるよ。さっさと行け。」

 

俺はそう言って塀を破壊し、ライカンたちを先に進ませた。

 

「なんだてめぇ!ここが俺らのナワバリだってこと、わかってんだろうなぁ!?」

 

そうチンピラのような言動を起こすホロウレイダー。

 

「うるせぇよ。目的の邪魔だ。」

 

俺はエーテルを追加で吸い込み、ホロウレイダーにグーパンを叩き込んだ。

 

「じゃ、しばらく寝てろ。」

 

俺がそう言ったとき、周りにエーテリアスが沸き始めた。

…急いでんだよ。

 

「さっさと…《b》死にやがれ!!」

 

俺はその瞬間一気に刀を振り、全員真っ二つに切った。

さて。加勢にいかないとだな。

俺がその場に到着したとき、ライカンがちょうどヒューゴを壁に追い詰めていた。

だが…ヒューゴはバッグを握っている。

 

「相変わらず…偉そうに!」

 

そういいながらヒューゴはバッグを地面に落とす。

するとバッグが変形し、鎌へと変化した。

そして、激しい戦闘が始まった。

ライカンがヒューゴの攻撃を避け、ヒューゴがライカンの攻撃を避け…それを続けていると

 

「二人とも…もうやめて!」

 

そういいながらリンが入っていった。

!!まずい!

俺はその瞬間エーテル濃縮剤をかじり、侵蝕化。

リンより先に到達し、二人を掴んだ。

 

やめろ。

 

我がそう言い、掴んだ手を離すと、二人はそのまま武器を下した。

 

「ありがと、銀狐…。」

 

任せろ、そのために我がいる。

しかし…危ないだろうが。お前は今生身だぞ。

 

我がそうリンをたしなめると

 

「そっか、うっかりしてたなぁ…。イアスの中にいるつもりで間に入っちゃったよ。あの子の身長なら届きっこないし、とか思って…。」

 

ったく…。

 

とにかく、次から気を付けてくれ。

 

俺はそう言いながら侵食化を解除した。

そして、水と鎮静濃縮剤を飲んだ。

 

「安心したまえ、銀狐くん。店長くんが何度飛び込んで来ようと、俺はその度にすぐ刃を収めよう。」

 

そうヒューゴが笑顔で言ってきた。

 

「俺の鎌が、志を同じくする者に向けられることはない…他でもない、店長くんには。」

「だが、そこにいる男に関しては…何とも言えん。昔のそいつは、けんかとなると誰彼構わずぶん殴るものだから手に負えなくてな。」

 

ヒューゴはライカンのほうを見ながらそう言ってきた。

 

「…そのような物言いは、止して頂きましょう。」

「何か間違ったことを言ったかね?」

「俺が嘘をついているとでも?」

 

そうライカンが言って、ヒューゴが言い返していると、俺たちをホロウレイダーの集団が囲んだ。

 

「今日はボウズだと思ってたが、最後の最後でツキが回ってきたな!」

「おおお、大人しくしろ!エーテル物質をありったけ差し出せ。金目のものがあればそれでもいい。タダで逃げられると思うなよ!」

 

そうホロウレイダーが言ってくる。

…なんだこいつら。

俺がそう呆れ返っていると、ライカンが前に出て

 

「皆様と事を構えるつもりは毛頭ございません。ここに来た目的はエーテル物質の採掘ではなく、単なる私事ですので。」

 

と言った。

だがホロウレイダー共は

 

「ごちゃごちゃ言ってんじゃねぇ。今日の稼ぎは散々でな、何かで埋め合わせなきゃなんねぇんだ。」

「お前らの目的がなんであれ、通行料なしにここは通さねぇぜ。」

 

…は?

 

「通行料?ここはホロウだ。まさか貴公ら…自分がホロウの主とでも言うのかね?」

「なぁ?メイフラワー家の番犬くん?」

 

ヒューゴがそう言いながらライカンを煽る。

だがそれすら気にならない。

 

こいつら、勘違いしてねぇか…???

ここで1番、ホロウの主に近いのは、俺だぞ。

 

「ぎ、銀狐…?」

 

そうコソッと声をかけてくるリン。

 

「誰が…誰が……。

 

そう俺は言いながら足で地面を叩く強さが上がっていく。

 

「なんだぁ、もやしみてぇな体で偉そうな口ききやがって…!」

「差し出す気がねぇってんなら、こっちも容赦はしねぇ。こちとら、もう何人もあの世送りにしてんだぜ…!さぁお前らはどうしてやろうか…!」

 

うるさい。

 

 

 

うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい。

 

 

 

「…やめて」

 

もういい。ライカン。

誰が、通行料を課したって?

誰が、お前らなんぞに殺される?

あぁ??

こっちは取り込み中なんだよ。

邪魔すんなら…死ね。

 

俺はその瞬間、またエーテル濃縮剤を噛み砕いた。

そして、切り札を使う。

 

狐火怨火 山の神。

 

サァ。オイデオイデ?

 

我がそう笑ってそいつらに顔を見せる。

 

あぁ???てめぇこそ死にやがれ!!

 

そう言って向かってくるホロウレイダー達。

そいつらの腕に、エーテルの槍が突き刺さった。

 

「あ゛…あ゛?」

 

そう呻くゴミ共に、さらに槍を突き刺そうとした時。

 

空!!!

 

そう、後ろでリンが叫び、俺が意識を取り戻した。

奴らは磔状態。

 

……あぁ。

 

「ははっ…。あぁ、くそったれ。」

 

こうなるから、俺は同じなんだよ。

 

「…夜月様。」

「分かっただろ?ライカン。俺は、ずっと間違った道を歩いてんだよ。」

 

そう言うと、ヒューゴが俺に鎌をかけてきた。

 

貴様…!何をしたか、分かっているのか!!

 

そう大声で叫ぶヒューゴ。

 

「分かってるよ。」

 

侵蝕が消えかけた手で、その鎌をへし折った。

 

「黙れ。口だけの雑魚が。」

「……リン。頑張れよ。」

 

俺はそう言って、その場から離れた。

二度と、彼らの元へ近づかない。

そう心に決めて。




久々に書くと何を考えて書いてたのかわからなくなります。
ということで、次はオリジナルストーリーが挟まります。苦手な方がいらっしゃいましたら、ブラウザバックのほど、よろしくお願いします。

キャラ紹介(性能含め)欲しい?

  • 欲しいに決まってんだろ!?
  • キャラ設定だけ欲しいかなぁ。
  • 性能だけ欲しいわ。
  • どっちも要らねぇよばーか。
  • そんなことよりらあめん食べたい(閲覧用)
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