パエトーン直属エージェントの日常   作:Kei0503

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chapter01 猫の落とし物

「…ってことなんだ!ニコたちを助けてくれ!」

 

…なしてあいつらはこうも問題に巻き込まれるの???

俺とパエトーンは顔を見合せて苦笑していた。

 

前日

 

「ありがとうございましたー!」

 

俺はそう言って今日の客を送った。

ふぅ…。

 

「疲れたぁ…。」

 

でも、結構稼げたな…。

大体…10万ぐらいだな。

…やっぱり武器より稼げん!!

うーん…どうするか…。

なんか作って売るもありだなぁ…。

fairyが来てから1ヶ月、俺は金を稼いでいた。

なんでかって?

今日が約束の日だからだよ。

 

「来たわよ!空!」

「…噂をすればなんとやら。命の銭ゲバ、ご登場だ。」

「ちょっと!命の銭ゲバってなによ!命の『恩人』でしょ!?」

「はいはい、すまんすまんニコ。」

「他2人もいるんだよな?」

 

俺が聞くと

 

「えぇ、もちろんよ!さぁ!ラーメン屋に行きましょ!」

 

と言われた。

は?ラーメン?

 

「別にいいが…ちょっと待て。」

「アンビー、お前の武器見せな。」

「?分かった。」

 

俺が声をかけると、はてなマークを浮かべたような顔をして、アンビーが剣を渡してきた。

ふむ…機構としては単純、エーテルエネルギーをバックパックで電力に変換、チャージして放出する感じか。

 

「少し、切れ味が悪くなってるんじゃないか?」

「!えぇ。その通りよ。」

 

やっぱり。刃先が爪に引っかからねぇ。

 

「とりあえず3人とも、そこに座ってくれ。茶出す。」

 

そう言って、俺は後ろに引き、キッチンで緑茶を入れた急須と湯のみを出した。

 

「あ、ありがとう。」

『ちょうど喉が渇いてたんだぜ、空、ありがとな!』

「有難くいただくわ。」

 

そう言って3人は緑茶を飲んでゆったりしている。

その間に、俺は砥石を使ってアンビーの剣に切れ味を取り戻させていく。

…この材質、エーテル合金にしては…。

もしや鋼鉄?この時代にか?

…いや、気にしてもしょうがない。

まぁ、耐久性に振った形状だし、折れることは無いだろ。

 

「アンビー。終わったぞ。」

「ありがとう。」

 

あとは…

 

「ビリーとニコ、お前らちゃんと武器メンテナンスしてるか?してないんだったら見せな。」

『本当か?一応俺なりにやってはいるんだが心配だったんだ!見てくれ!』

 

そう言ってビリーが二丁拳銃を手渡してくる。

…ふむ。完璧だな。ちゃんと拘ってメンテナンスしてる。

 

「うん、問題ないな。このまま続けていけば相当長持ちすると思う。」

『本当か!ありがとな!空!』

 

ビリーからそうお礼を言われる。

…そんな大層なことしてないんだが。

まぁいいか。

 

「ニコ、お前は?」

「わ、私!?私は大丈夫よ!」

 

…まぁいいか。

 

「ならなんかあったら言えよ?1回なら無料でやってやっから。」

「じゃ、行くか。」

 

そう言って俺たちはラーメン屋に行った。

 

「お、空じゃねぇか。どうしたんだ?」

「こいつらに飯奢りに来たんだが…ラーメンがいいんだとよ。」

 

俺がそう言うと

 

「そりゃ嬉しい限りだな!じゃ、なんにするんだ?」

「俺はいつもので。」

「私は…二郎系ラーメン!」

「私は黒鉢ピーマン鶏白湯。」

『俺も二郎系ラーメンで頼むぜ!』

 

…マジか。こいつら懲りてなかったのかよ。

 

「あいよ、ピンクの嬢ちゃん、ニンニクどうする?」

「ニンニクヤサイマシアブラスクナメカラメフツウで!」

「そっちの機械のあんちゃんは?」

『全マシで頼むぜ!』

 

は!?こいつマジか!?

 

「じゃあまず空からな。ほらよ、二郎系ラーメン、全マシマシ。」

「お、おう。大将ありがと。」

 

そう言って俺はすすり始める。

うん。相変わらず美味い。

あとやっぱこの量よな。超満足するもん。

 

「はいよ、お次はピンクの嬢ちゃん!ニンニクヤサイマシアブラスクナメカラメフツウ!」

「ありがとう!前に食べたのでもうコリゴリって思ったのに、なんか食べたくなっちゃったのよね。」

 

とニコがいいだし、それにビリーが大きく頷いた。

…こやつら、どっぷりハマってらっしゃる。

 

「んで、次はそっちの白髪の嬢ちゃん。黒鉢ピーマン鶏白湯ラーメンお待ち!」

「ありがとう。」

 

…アンビーは普通なんだな。

いや、二郎系が俺にとっては普通なんだけどな?

 

「そして機械の兄ちゃん!ほらよ、全マシ!」

『うっひょー!頂きます!』

 

そう言って、ビリーもすすり始める…。

あれ、よく考えたら機械にラーメンって大丈夫なのか?

…まぁ食えてるしいいか。

そうして食べて。

 

「ご馳走様!」

 

と、全員食べ終わった。

 

「じゃあ大将。勘定。」

「あいよ!二郎系ラーメン3杯に、黒鉢ピーマン鶏白湯ラーメン1杯、締めて6万5000ディ二ーだな!」

「はいよ、これで。」

 

そうして支払いを終わらせ、俺たちは帰路に着いた。

 

「いやー、お腹いっぱい!ありがとね、空!」

「元々お礼だったんだし、気にすんな。」

「んじゃ、また今度な。」

「えぇ、またね!」

『たまに来るぜー!』

「また、剣が切れなくなったら来るわ。」

 

そう言って、俺たちは別れた。

ふぅ…。

帰ってだらけて寝るか。

明日パエトーンのとこ行って状況確認しとこう。

仕事も受けたいとこだしな。

 

次の日

 

今日は鍛冶屋を休みにしている。

個人営業の為せる技よの。

昼頃に起きて、和服に着替える。

私服を他に持ってないのかって?

いいじゃん和服。かっこいいじゃん。

っと、そんなことを頭で言っているうちに

 

「着いたっと…。ん?今日休みか…。」

 

まま、えやろ。

そう思いながらドアを開けて中に入る。

 

「ンナナ!(空さん!)」

 

俺が中に入ると18号ちゃんが出迎えてくれる。

 

「おー、18号。おはよう、いや、こんにちはか。」

「ンナ、ンナンナ!(空さん、今日は休みですよ!)」

「知ってる知ってる。」

「看板出てたから。」

「俺が用があるのは『パエトーン』の方。お仕事ないかなってね。」

「ンナ〜。ンナナ!(なるほど〜。了解です!)」

 

そう会話をして、18号ちゃんはカウンターのところで寝始めた。

うん。かわいい。

そしてそのままSTAFFONLYの前に立つ。

もちろん6号ちゃんは俺の顔を知っているから、すんなり開けてくれる。

 

「ンナナー!(空さん来たよー!)」

「あ!空久しぶり〜。」

 

俺が部屋に入ると、そうリンが声をかけてくる。

 

「よっす。で…アキラはなんでそんなどっかのボクサーに真っ白になってんだ?」

「あ、あぁ…。お兄ちゃんね、電気代がとんでもないって絶望してるの。」

「は?」

 

あまりに突拍子もない問題で俺は驚きを隠せなかった。

 

「電気代が増えるようなこと…あ。」

「もしかして、お前か?fairy。」

『肯定。私の情報収集は24時間行われているため、それが原因であると考えられます。』

「…ちょっとは加減できねぇのかよ。」

 

俺が呆れて言うと

 

『この行為は私の存在意義に関わるものであるため、必要不可欠です。』

『よってエージェント"銀狐"の提案は却下します。』

 

と、当たり前のように却下された。

…さすがにまずいな。

 

「…わかった。なら家から半分使え。」

「空!?君は一体なにを」

『了承。エージェント"銀狐"の家庭より、私の活動に必要な電力を半分徴収します。』

 

…ちゃんと稼がないとな。

値上げするべきか…。

 

「これで、ある程度はマシになるだろ?」

 

俺はアキラの方を見てそう言った。

 

「それはそうだけど…!君がそこまでする必要は」

「あるだろ、俺はお前らと一蓮托生なんだぞ。」

 

「お前らが"銀狐"(エージェント)を必要とするように、俺だって"パエトーン"(プロキシ)を必要としてるんだ。」

「これぐらいは俺にも背負わせろ。」

「ほら、テレビでも見ようぜ。」

 

そう言って俺はテレビを付けた。するとそこではデッドエンドホロウにある旧地下鉄改修に関するニュースがやっていた。

そのテレビでは工事を請け負った"ヴィジョン・コーポレーション"という会社が、どういう計画で地下鉄を改修するのか。その計画について社長が長々と喋っていた。

…端的にまとめるとエーテル爆薬による爆破で旧地下鉄を木っ端微塵に。

そこに新しく地下鉄を作成するという計画らしい。

白祇重工より安値で工事権利を勝ち取ったらしいが…。

エーテル爆薬を安値で入手できるルートなんてあるのか?

どーにも胡散臭い…。

 

「工事が行われる場所はホロウの近くで、しかも大量の人員を移動させる必要がある…。」

「やっぱりTOPS財政ユニオン入りを目指す企業は違うね。ねぇ空?」

「ん?あぁ…。」

 

そうなんだよな…。あの近くって住宅街があるからそいつらの避難もしないといけないはずなんだよ。

ますますうさんくせー…。

そう考えていると

 

『警報。街道カメラにて何者かが本店へ急速に接近しているのを確認。』

『推測:トイレを借りたい、レンタルしたビデオの返却期限が迫っている、本店に対し悪さを企んでいる。』

「今日は店を閉めてあるはずなんだけど…。」

「僕が出て確かめてくるよ。」

 

そう言ってアキラが動こうとすると、ドアが開け放たれ

 

「いたたた…。は、鼻が…。」

 

と鼻を押さえる尻尾が2本ある猫のシリオンと、ニコのボンプである『アミリオン』が飛び込んできた。

 

「はっ!このだるまみたいなオッサンを信じちゃだめだ!こいつは嘘をついてる!」

 

とテレビを指差してそう言ってきた。

…ひとまず話を聞くか。

 

数分後

 

猫のシリオン…本名『猫宮又奈』。"猫又"と呼ぶが…。

彼女は昨日俺と別れたあとの邪兎屋と契約し、今日赤牙組の拠点を探しにデッドエンドホロウへ向かった。

契約内容は「赤牙組に奪われた家族の形見を回収すること」。

そこからなんか色々あって爆破エリアにあやつらはいるらしい。

そして最初に戻るってわけだ。

 

「…うん、本当になんであいつらはこんなに面倒事に巻き込まれるんだよ。」

 

まぁいいや。

 

「じゃ、ガイド頼むぞ。"パエトーン"。」

「えぇ!?ガイドって言っても、どうするの!?」

 

そうリンに聞かれる。

まぁ力技ではあるが…。

 

「簡単。ホロウ内で列車を止める。」

「そしたら外からは検知できない。時間稼ぎにはなるだろうさ。」

「なるほど、確かにそうだな!」

 

俺の言葉に猫又が同意を示す。

 

「確かに、それならどうにかなるかも…fairy、安全なルートはある?」

 

リンがfairyに聞くと

 

『はい、マスター。現在発見されることが薄いルートを構築しています。』

「じゃあよろしく。"銀狐"。」

「あいよ。5分待て。用意する。」

 

俺が部屋から出ていこうとすると

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!」

 

と呼び止められた。

 

「もしかして、あんたが…!」

「ん?あぁ…。」

 

そういや自己紹介してなかったか。

 

「俺が"パエトーン"直属エージェント、『銀狐』だ。」

「よろしく頼むよ、依頼人。」

 

そう言って、俺は猫又を車に乗せ、デッドエンドホロウへ出発した。

 

デッドエンドホロウ

 

『もしもし、リン、猫又、銀狐、聞こえてる?』

「おう、聞こえてるぞ。」

 

俺がそう返すと猫又が隣で

 

「おお、すごい…!直接ホロウの中と通信できるプロキシなんて初めてだぞ。どうりで、ニコが新エリー都最強のプロキシって言うわけだ!」

 

と褒め称えた。まぁ、たしかにこの技術は特殊だよな。

 

『褒めてくれてありがとう。今から列車を止めるための計画を始めるよ。行動する前に、まずは要点をおさらいしよう。』

 

確か…。コンピューターによる自動運転で列車は動いてるから、障害物置いて進路を変更。そっからリンが運転席でハッキングって流れだったな。

 

「猫又、一応確認だが大丈夫か?」

 

念の為確認を取ると

 

「大丈夫、ちゃんと頭に入ってる…。」

「あたしたちの目標は、爆薬を積んだヴィジョンの無人列車。自動運転モードの列車はコンピューターが操ってるから、線路に障害物を置けば強制的に進路をトンネルの方に変えられる。」

「あたしはボンプを連れて先にトンネルで待機、列車がトンネルに入って減速し始めたら、あたしはその隙にボンプを列車の上に投げる!」

『へへ〜、そっからが私の見せ場だね!』

『あぁ、リンは列車のメンテナンスハッチから内部に潜入して運転席で列車を止めるんだ。僕とfairyがサポートするから、安心して行っておいで。』

『それと、デッドエンドブッチャーの具体的な位置は不明のままだ。くれぐれも慎重に行動するんだよ。』

「任せな。」

「りょーかい!」

『最後に…銀狐、キャロットはちゃんと持っているかい?』

「おう、しっかり持ってきてる。」

『なら大丈夫だね。それじゃ、行動を開始しよう。グッドラック!』

 

そうして、俺達はそれぞれの位置に動き始めた。

 

数分後

 

「えーっと…?あ、あったあったこれだ。」

 

俺は作業台を使い、サクッとコンテナを移動させた。

これで列車はズレるだろ。

…追いつくのめんどくせぇな。乗るか。

と考えている瞬間列車が走ってきた。

 

「お、来た来た。よっ…と。」

 

俺はコンテナによじ登り、上で待機。

うーん。風が気持ちいいねぇ。飛ばされそうだけど。

どうやって耐えてるのかって?

そらお前、手よ。手。

ホロウ内はエーテル濃度が高いから筋力マシマシよ。

…まじでこの体質なんなんだ。

そう思っていると、目の前にイアスが降ってきた。

それをキャッチすると

 

『あ!空!』

『ありがとうございます、エージェント"銀狐"。おかげでマスターがおしりをしたたかに打たずに済みました。』

 

と言われた。

…まぁ、たしかにあのまま落ちてたら尻打ってたな。

 

「お礼は後でな。ほら、行くぞ。」

 

そう言って俺はメンテナンスハッチにイアスを連れていき、穴の中に入れた。

すると中から

 

「ちっ、めんどくせぇな。任務とはいえ、こんな格好しなきゃならんとは…。」

「少しは我慢しろよ。俺だって靴が合わなくて辛いんだ。」

 

と声がした。

うーん計算違い。

俺は速攻で横の窓を蹴り割って突撃した。

 

「ぐわぁ!」

 

とうめき声を上げる偽治安官。

 

「はいはい、静かにしねぇと…殺すよ。」

 

俺はそう言って刀を向ける。

それとほぼ同時に猫又が後ろから来た。

 

「猫又、一回イアスを離脱させるぞ。」

「わかった!こっちだ!」

「ここは俺達に任せろ!キャロットで戻る!」

 

俺はそう伝えて、一気に一閃を叩き込んだ。

 

「う、うわぁ!!!」

 

俺に続いて猫又が

 

「えーい!」

 

と蹴りを放つ。

それで大半のやつは気絶したようだった。

そのまま隣の部屋の扉を蹴破り、俺は緊急停止させる。

 

「さて、猫又。一応聞くが、お前は何も知らないんだよな?」

「…」

 

俺が聞いても、猫又は黙ったままだ。

 

「…はぁ。なぁ猫又。話してくれねぇと何もわからんぞ。それとも、俺達を嵌めたのか?」

「ち、違う!そんなことない!」

「なら話してくれ。どれだけ拙くてもいい。」

「お前らは…邪兎屋は何に巻き込まれてんだ?」

「あの列車は普通の輸送列車だと報道されてた、治安官の格好した野郎どもが乗ってることもおかしい。」

「それに…。お前、とっさの出来事で驚いた、みたいな顔しなかったよな。」

「店に戻る間でいい。ゆっくりでいい。1つ1つ教えてくれ。信じるから。」

 

俺がそう言って頭を撫でると、

 

「う、うわああああぁぁぁぁぁ…。」

 

と、泣き始めた。

 

「うえぇっ!?ちょ、泣くなよ…!」

「だ、だってぇ…!いろんなことを隠してたのに、信じるって、言ってくれて…!」

 

そう言って、猫又は泣き止まない。

 

「…とりあえず、店に戻るぞ。その間、ゆっくりと教えてくれ。」

 

そうして、俺達は店に戻った。

 

「戻ったぞ。すまんな。色々と話を聞いてたら遅くなった。」

「あぁ、おかえり。ちょうどよかった。君にも聞きたいことがある。」

「治安官に関してだろ?」

「あれはただただ列車の進路を変えたときに移動めんどくさくて列車の上に乗って待機してたら声聞こえたから突撃しただけだ。」

「それ以上でもそれ以下でもねぇ。」

「猫又があの状況で即座に動けたのも、あの姿の奴らを見たことがあったかららしいな。」

 

俺がそう話すと

 

「…その、猫又は?」

 

リンがそう聞いてきた。

 

「車で寝てるよ。泣きつかれてな。」

「その代わり、話を色々と聞いてきた。」

 

俺はそう切り出して

 

「fairy。アミリオンの残りの視覚映像を流してくれ。」

『了解しました。エージェント"銀狐"の要望により、識別名『アミリオン』の視覚映像を流します。』

 

そして、俺とリン、アキラで視覚映像を確認した。

 

「猫又の話だと、ニコは委任状集めをして、彼女がパエトーン…俺等を呼んでくるって役目だったみたいだな。」

「あいつの本当の依頼は『爆破エリアにいる住民と邪兎屋を助け出し、ヴィジョン・コーポレーションの悪事をあきらかにすること』。どうする?お前ら。」

「わたしたちは、依頼人に従うよ。でも、プロキシとしてそれに首を突っ込むリスクを警告する義務がある。それは銀狐もわかってるでしょ?」

 

俺が猫又の言葉を代弁すると、そうリンが詰めてきた。

 

「あぁ、だから俺がそれも聞いておいたよ。」

「曰く、『今のあたしには、それしか考えられない』だとさ。」

 

俺がそう伝えると

 

「ふぅ…わかった。彼女がそういったなら私達から言えることはないね。」

「ならさっそく、救助計画を考えよう。」

「話を聞く限り、今邪兎屋と住民たちはカンバス通り駅にヴィジョン・コーポレーションによって閉じ込められている。」

「こことヴィジョン・コーポレーションの監視拠点からは数キロ離れているんだ。」

 

そうアキラから説明があった。

 

「もうすぐ遅らせた列車がたどり着く頃だ。監視員が増えると俺でも正面突破はきついな。」

 

俺が口を挟むと

 

「そうだね…。でも防御の穴を突くことはできる。」

「住民たちはエーテル適応体質ではないんでしょ?だからあいつらは正面だけを警戒すると思うんだよね。」

 

なるほど、そういうことか。

 

「住民には駅で待っててもらって、俺達は電車を奪う。」

「駅からそのまま地下鉄で住民を脱出させるってことか。」

 

俺がそう言うと

 

「そういうこと!」

 

とリンがウインクして言ってきた。

 

「fairy、電車をホロウから新エリー都まで最短で運転できる?」

『可能。すでに最短経路を計算済みです。』

 

こいつはやぁ。

 

「ま、なら後は俺の仕事だな。」

「イアスと猫又を連れてカンバス通り駅にいる住民に説明してくる。」

「よろしく、銀狐。」

「おう。じゃ、行ってくる。」

 

そして俺はまた車を出してカンバス通り駅に向かった。

カンバス通り駅

そこでは邪兎屋と住民が俺達の話をしていた。

 

「それにしても…助けを呼びに行ってくれたお嬢ちゃんだけど、中々戻ってこないねぇ。」

「はぁ、確かに妙だわ…。また想定外のことに巻き込まれたんじゃないでしょうね?」

「それはお前らだろ。」

 

あ、思わず突っ込んじゃった。

 

「銀狐!ってことは、来たのね!」

『おまたせ!プラン考えてきたよ!』

「みんな、おまたせ!」

 

ニコの言葉にリンと猫又が返事を返し、そして、猫又とこれまでの経緯を説明した。

 

「なるほど、列車を止めて爆破をやめさせようとしたけど、中はヴィジョンの構成員でいっぱいだった…。」

「でも。プロキシのプランはいいと思うわ!さっすが、知恵と勇気の『パエトーン』ね!」

「おばあさん、さっきの救助プランは聞いててくれたわよね?住民のみんなを一番近い地下鉄駅に集めてもらえる?」

 

ニコがそうばあさんに頼むと

 

「安心しなさい、足手まといにはならないよ。すぐみんなに知らせてこよう。」

「えぇ、お願いね。あ…そうそう、この近くのホロウに赤牙組の古い拠点があるって聞いたんだけど、何か知らない?」

 

とニコが言い出した。

 

「お前、まだ依頼料諦めてなかったのかよ…。」

「う、うるさいわね!でも、家族の形見が見つかってないのよ。何か知らないかと思って。」

 

やっぱこいつ銭ゲバだけど優しいんだよな。

そうしみじみと思っていると

 

「そのあたりのことなら知っているよ。というより…ここに住んでる人で赤牙組のことを知らない人はいないだろうね。」

 

と、びっくりすることを言ってきた。

 

「ばあさん、詳しく聞いてもいいか?」

 

俺がそう言うと

 

「もちろんだとも。もとはといえば…赤牙組はここで生まれたのさ。それでここに住んでる人は彼らと何かしらの関わりがあるんだよ。」

 

まじかよ。

詳しく話を聞くと、ここの拠点を使っていた赤牙組は弱きを助け強きを挫く、義賊のような人たちだったようだ。

それがシルバーヘッドがトップになったときから腐ったということだった。

 

「そんなわけで、シルバーヘッドが治安局に追われてホロウに落ちたのだって、ただの自業自得としか思えないね…。」

 

と、婆さんが言うと

 

「え、今、なんて?」

 

と、猫又が聞き返した。

 

「どうしたんだい、お嬢ちゃん?たしかに赤牙組には関わりたくないと言ったけど、気に障ってしまったかい?」

「そ、そこじゃなくて!シルバーヘッドは、治安局に追われてホロウに落ちたの?邪兎屋に、やられたんじゃなくて?」

 

と聞いてきた。

あ。これもしかしなくても猫又シルバーヘッドに関わりあるやつだ。

で勘違いしてたやつだ。

 

「ぎくっ。そ、それは…。」

 

とニコがどもり始める。

 

『コホン。子猫ちゃん…いや、依頼人さん、わかってくれ!』

 

二コの代わりにビリーがそう話し始めた。

 

『誤解を解こうとしたんだが、そのキラキラした目で見つめられると、何も言えなくなっちまって…!』

『悪い!確かに、俺達はたまたま現場に居合わせた…。でも、あいつをやったのは、治安局なんだ…。』

「そんな…あんたたちじゃ…なかったの…?」

 

猫又は明らかにがっかりしたような顔を見せた。

それに対してアンビーが

 

「猫又、気を落とさないで。たとえ治安局の介入がなくても、邪兎屋なら、シルバーヘッドに手こずることはなかったわ。」

 

とフォローする。

…いや、フォローになるのか?これ。

 

「コホン…。今回の件は、猫又が勝手に誤解しただけとはいえ、あたしたちにもほんの少し責任があるわ。」

「形見探しの依頼料はちょっぴりオマケしてあげる!」

 

とニコが言い出す。

絶対少しじゃない。絶対少しじゃないぞ!

と言いたくなるのを抑えて、俺は黙っていた。

 

「と、とにかく!この話は終わりよ!今は一刻も早く列車を奪って、住民たちを連れ出さなきゃ!」

「さぁ、出発するわよ!」

 

そうニコが言い出し、街からホロウに入っていく。

俺達はそれについて行って、列車を奪いに行った。

道中さまざまなエーテリアスが出てきて、その都度処したが…特に異常なくすんなりと列車のところに着いた。

 

「さあみんな、そろそろ列車に着くわよ!」

「わーい!!」

「ちょっと銀狐!?どうしちゃったのよ!?」

 

俺がふざけて言うと、そうニコに突っ込まれた。

 

「すっごい引率の先生っぽかったから。」

「あんたふざけてるの!?敵の拠点近くなのよ!?」

「うん。ふざけた。」

「あんたねぇ…!もう!」

「とにかく、作戦に移るわよ!」

「作戦は至ってシンプル!守衛を倒す、列車を奪う、そのままずらかる、以上!」

『了解!』

 

とビリーが返した後

 

「ドンドドドンドン、ドンドンドンドン、ドンドドドンドン、ドンドンドンドン、ドンドドドンドン、ドンドンドンドン…」

 

と、アンビーがつぶやき始めた。

 

「お?アンビー、緊張で壊れちゃった?」

 

と猫又が弄りだす。

いやー多分…。

 

「『BGMで盛り上げようとしてるだけじゃねぇか?』」

 

そう俺とビリーが言うと

 

「大丈夫よアンビー、そんなのなくたってこの作戦の重大さはみんなわかってるはず…よね?」

 

ニコは俺の方をじとーっと見てそう言ってきた。

 

む。失敬な。

 

「そんなことわかりきってるぞ。」

「そうは思えない言動したから言ってるのよ!」

 

怒られた。

 

「ほんとにもう…。プロキシ、運転はあんたに任せたからね。そっちの準備はどう?」

『ふっふっふ〜。腕が鳴るね〜!』

『相変わらず、やる気は十分だね。作戦の成功が最優先なんだ、あまり興奮しすぎないように。』

 

とリンとアキラが話す。

 

「よし!それじゃあ行きましょ!あっと言わせてやるわよ!」

 

数分後、列車前

 

「ぐはぁ!」

 

と言って地面に突っ伏すダル…ヴィジョン・コーポレーションの社長。

 

「だるまのおっさん!命をなんとも思わない大悪党め、大人しく降参しろ!」

 

そう脅す猫又。

 

「猫又、そいつを連れてきて!銀狐はこいつをお願い!アンビーとビリーが運転席に向かってる。プロキシ、ホームで乗車を待つよう住民たちに伝えて!」

 

ニコの指示に従っていると

 

「お、お前たち…あのスラムの連中を電車で連れ出すつもりか?」

「させん!させんぞ!連中が外に出てなにか言おうものなら私とヴィジョンは終わりだ!」

 

とダル…もういいや。ダルマがほざく。

『私』とヴィジョンねぇ…。

 

「猫又、どけ。」

 

ちょっとキレた。

ダルマの顔面を叩きつけ、

 

「馬鹿なのか?俺らは終わらせに来たんだよ。んな事もわかんねぇのか低脳ダルマ。」

 

と、ドスの効いた声で脅した。

もちろんその間頭を地面に押し付ける。

 

「い、痛い痛い!お前、私にこんなことしてタダで済むと思ってるのか!?」

「とんだ馬鹿だな。お前のその傘が無くなろうとしてんのに、まだそんなことがほざけるか。」

 

俺はuziを構えてダルマの目の前に撃った。

 

「次、そんなことほざいたら…分かるな?」

「ひ、ひいいぃぃぃぃぃ!!!!!!」

「殺される!誰か!誰でもいい!どんな手段を使ってでも、こいつらを阻止しろ!!!」

 

そうダルマが叫んだ瞬間リンが

 

『ニコ、銀狐、大変!線路が壊れちゃった!』

 

と言い出した。

 

「何ですって!?」

「パ、パールマン長官、ご安心を!新エリー都へ続く唯一の線路を爆破しました。これでやつらはもう出られません…!」

 

やりやがった。

 

「おおおお前、このバカタレが!線路を爆破するのは我々が撤退した後だ!」

「スラムの連中だけでなく、我々まで閉じ込められてしまったではないか!?」

「ニコ、四方から敵の増援が来てる!どうする?」

 

ダルマが騒ぎ、四方からは敵。

 

「ああもう!ダルマのおっさんを連れて、列車の中に隠れるわよ!」

 

そうして俺らは電車内に移動した。

 

電車内

 

「…すまん。」

「起こったことはしょうがないわよ。その代わり埋め合わせはしてもらうからね!」

 

俺はニコにお叱りを受けていた。

いや…まさか爆破されると思ってなかった…。

 

『パールマン長官。電車付近で身元不明の侵入者による襲撃を受けました。』

『負傷者も出ておりますが、人数や物資の面では我々が優勢と思われます。』

『侵入者は今、電車の運転室に立てこもっています。火力を頼んで突入いたしますか?ご指示願います!』

 

とダルマの胸元から声がする。

するとダルマはこっちを見てきた。

ニコを見ると、首をダルマに向けて振った。

俺は胸元から通信機を外して横に置いた。

 

『パールマン長官、ご指示を!』

 

そう催促が聞こえる。

 

「と、突入はするな!私は今その運転室だ!邪兎屋の侵」

 

そう言いかけた瞬間、俺は銃を向ける。

 

「ひっ…し、紳士淑女に捕まっている!」

「よく聞け、絶対に動くんじゃないぞ!この私が少しでも怪我を負ったら、会社はお前たちの責任を問う!」

 

と言って止めた。

 

「よし。」

 

俺はそう言ってダルマを起こした。

 

『あのオッサン、意外と役に立つなー。』

「暫くは攻撃してこないはずよ。でも、私たちの作戦も失敗に終わった。」

 

グサッ。

 

『そうだよな…線路が無くなっちまったんだ。列車があったところで、住民たちを連れ出すことは出来ねぇ!』

『これが…絶体絶命のピンチってやつか!?』

 

グサグサッ。

 

「ほんとにすまん…。」

 

俺がとにかく謝っていると

 

「…へへっ…。」

 

と猫又が笑った。

 

「…ヤバ、泣きそう。」

『ちょ、銀狐…そんなに思い詰めなくていいぜ?』

『猫又も笑うのはやめてやれよ!』

 

俺をビリーは慰めてくれる。

いいさいいさ…。戦犯は俺だよちくしょう…。

 

「ううん…銀狐のこと、笑った訳じゃなくて。…これ、さっきの戦闘でたまたま見つけたんだ。」

「あたしの家族の、形見。」

 

そう言って猫又が見せてきたのは、猫又と赤牙組のトップ、シルバーヘッドとのツーショットだった。

 

「これって、写真?写ってるのはあんたと…赤牙組のシルバーヘッド?」

 

ニコがそう驚き混じりに聞く。

 

「実は、あんたたちを騙してたんだ。赤牙組に形見を奪われたってのも嘘。私は、昔カンバス通りの近くに住んでて、組に引き取られた孤児のひとりなの。」

「昔の赤牙組には理想があった。みんなで故郷を守ろうって、お互いに誓い合ったんだ。」

「だけど、あんたたちが聞いた通り…組は日に日に酷くなっていって…あたしも組を抜けて、ここへは戻らなかった。」

「でも、どんなに組に失望しても…それでもシルバーヘッドが引き取ってくれたことは事実だし、あそこはあたしにとって1番『家』に近い場所だったんだ。」

「シルバーヘッドがホロウにおびき寄せられて死んだと聞いて、あたしは復讐のために、あんたたちを同じようにデッドエンドホロウへ連れてった。」

「だけど、あんたたちは、あたしが想像してたのとずいぶん違って…。」

「子供を助けるためにホロウを駆け回ってくれたり、ヴィジョンの陰謀を知った後も、躊躇わず残ることを選んでくれた。」

「結局、シルバーヘッドが死んだのもあんたたちのせいじゃなかったし…あたしにはもう、あんたたちに復讐する理由がない。」

「赤牙組は誓いを破って、守るべき人を見捨てちゃった…。かつて一員だった者として、組が同じ過ちを繰り返すことを、黙って見てる訳には行かないんだ。」

「覚悟は出来てる。あたしがヴィジョンと交渉してくる。」

「安心して。パールマンって切り札もあるし、あたしの出身が赤牙組だって知ったら、きっと交渉に応じてくれる…。」

 

そう言って、猫又は電車から出ていった。

 

『依頼人さん!猫又!おい、戻ってこい!!!』

「猫又!!おい!!!」

 

俺とビリーがそう叫ぶ。

 

「猫又!猫又ってば!」

「ビリー、アンビー、銀狐!早くドアを開けて!」

 

ニコがそう言い、俺達はドアを開けようとするが…

 

『ダメだニコの親分!この車両、窓もドアも信じらんねぇほど頑丈だ。あのパールマンってやつが、わざわざ補強させたに違いねぇ!』

「あぁもうっ、クソっ…!」

「しっ、静かに!外から話し声がする!」

 

アンビーがそういい、その話を俺たちは聞くことにした。

 

同時刻

 

「はっきり言ったでしょ?」

「今からあたしは、あんたたちのボスを連れて徒歩でホロウを抜ける。目的は、新エリー都の爆破解体本部での交渉だ。」

「武装部隊は封鎖を解いて、住民たちを解放して。それが終わったら、あたしと一緒にここから立ち去るの。」

「あんたたちのボスはあたしが預かってるんだ。彼に無事でいて欲しいなら、耐侵蝕装備とホロウを抜ける最短ルートを用意して!」

 

猫又はそう脅す。

 

「ニコ、みんなのことを頼んだ。」

 

そう呟きながら、彼女はヴィジョンと一緒にホロウに向かった。

 

数分後

 

『よし、ようやく出られたぞ!』

「ああもう!車両を破るのに随分てこずったわね…。猫又とパールマン達はもうホロウに入っちゃってるはずよ!」

『fairy、猫又の位置を教えて!』

『依頼人の現在地を特定。進路によると、依頼人はおよそ30分後にホロウの出口に到着すると推測されます。』

 

リンの言葉に、fairyはそう返答する。

30分…30分か…。

 

『ってことは、もう猫又を止める方法は無いのか…!?』

「そうだとしても…住民の救出なんて大事、猫又ひとりに背負わせるわけには行かない。」

「ヴィジョンは人命を踏みにじるようなドクズなんだから、きっと一筋縄じゃ行かないわ。」

「でも、列車に乗せるプランが失敗した今、どうやってエーテル適性のない住民たちを脱出させたらいいの…?」

「ああもう!一瞬で全員のエーテル適性をあげる方法があればいいのに!」

 

ニコはそう地団駄を踏む。

…エーテル適性をあげる?

待て、つまりは「エーテル濃度」が問題なんだろ…!?

 

『見方を変える必要があるかもね。「山もしわれに来たらずば、われ山にいくべし」って言うでしょ?』

 

とリンが言い出す。

…やっぱり、その手になるか…!

 

『…なるほど、さすがは僕の妹だ。危険は伴うけど、僕たちに残された唯一の方法かもしれない。』

 

アキラもそれに賛同する。

 

「え?どういうこと?」

 

ニコは分かっていないようだった。

 

「…つまり、ホロウを一気に縮小させる。」

 

俺はそう口に出す。

 

『そういうこと!』

『そうか、その手があったか!エーテリアスを叩けばいいだけだろ?俺たちにとっちゃ楽勝だな!』

 

ビリーがそう言ってくる。

そこまで単純な話なら多分世のホロウは全部無くなってるぜビリー…。

 

「だけど、ホロウの規模を効率的に縮小させたいなら、さっきみたいなエーテリアスを3000体ぐらい倒さないと。」

『ブッ…はぁ!?3000!?』

 

アンビーの言葉にビリーは吹き出して驚く。

 

『でも特定条件下において、一部の巨大な個体のエーテル活性は、標準的なエーテリアスの数千倍、あるいはそれ以上に達する…。』

『そう、『デッドエンドブッチャー』のことだ。』

 

アキラがそう説明すると

 

『あのデデデ、デカブツのことか!?』

『俺にゃ、色んな意味でデカすぎるぜ…。』

『何かあったら、明日の朝モニカ様に会えなくなっちまう!』

 

ビリーはそう慌て出す。

 

『あぁ…僕たちだけではデッドエンドブッチャーに敵わ…なくもないけど、確実じゃない。』

『でもここには、ヴィジョンが送り込んでくれた武器がたくさんある。』

『つまり、エーテル爆薬が使い放題ってこと!』

 

アキラとリンはそう説明してくれる。

 

「爆薬でデッドエンドブッチャーを倒すってことね!」

「ふふん、いいわ。あんたたちの言う通り、確かに危険が伴う方法だけど…迷ってる時間はないわ!すぐに作戦開始よ!」

「すまんが、俺は離脱する。お前ら3人なら行けるだろ。」

 

俺は盛り上がっているところでそう言う。

 

『は!?なんでだよおい!』

「あんたがいないともっと危険になるじゃない!」

 

ビリーとニコにそう言われる…が。

 

「すまんが、俺はやることがある。猫又を、止める。」

「…猫又は、『あたしと一緒にここから立ち去る』と言っていた。彼女は、自分を犠牲にするつもりなのかも。」

 

アンビーはそう俺を援護してくれる。

 

「そういう事だ。30分なら余裕で間に合う。」

「ただ、本気で走る。お前らは多分追いつけないし、デッドエンドブッチャーの処理をお前らに頼みたい。」

「その代わり猫又は任せろ。」

俺はそうビリーとニコに言った。

「…分かったわ。その代わり、ちゃんと防ぎなさいよ!」

「分かってるよ。じゃ、任せた!」

 

俺はホロウに飛び込んでキャロットを起動。

 

「スゥ…フッ!」

 

エーテルを吸い込んで、活性化。足の筋肉を増強した。

待ってろよ、猫又…!

犠牲になんてさせねぇからな…!

 

10分後

 

「着いた。」

 

その本部では、絶賛猫又が話し始める所だった。

裏に回り込み、話を聞く。

 

「あんたが今の責任者?あたしの要求は簡単。爆破を中止して閉じ込められた住民たちの救出を約束すれば、こいつを返す。」

「はっ…簡単に言ってくれるわね。あなたの言う通りにしたとして、我々ヴィジョンはこの件をどう世間に申し開きすれば?」

「それ以前に、あなたは誰?1人で交渉の場に来た度胸は買うけど…狩る側が狩られる側になる可能性だってあるのよ?」

「おっと、自己紹介を忘れてた。あたしは猫宮又奈。猫又って呼んでもいいぞ。」

「何を隠そうあたし、元赤牙組の組員なんだ。」

 

その猫又の言葉にざわつく。

 

「こっちから持ちかけたからにはそれなりの切り札がある。」

「こんな筋書きはどう?赤牙組の残党、今は亡きシルバーヘッドミゲルの爪。旧都の住民を人質にし工事を妨害した張本人。」

「猫宮又奈を、ヴィジョンは捕らえた。」

 

やっぱり言い出しやがった。

 

「自分を犠牲に幕を引くの?なかなか殊勝なことをするのね。」

「殊勝?ははっ…あたしは帰る場所を失くした、ただの野良猫。」

「どこにも属さないあたしには」

 

その時。

俺は隠れていた後ろの足場らしきものを、総て叩き斬った。

 

「お前らの悪事を暴くことが何より大事な事象だ。」

「にゃ、にゃんで…!?」

 

猫又は驚きすぎて猫語が出ていた。

 

「おいおい、猫語出てんぞ?落ち着きな。」

 

そう言って頭を撫でる。

 

「あなたは誰かしら?」

 

そう女が聞いてくる。

 

「ん?そうだなぁ…。」

 

その瞬間、女の後ろに回り込み、持っていた銃を斬った。

 

「ただの狐だよ。」

 

そう名乗ると、周りの奴らから銃を向けられる。

 

「おいおい、ただの狐にそこまで警戒心を剥き出しにするか。」

 

そして俺は、持ってきていた非常用の『燃料』を飲む。

 

「…狐火、一閃。」

 

そう言いながら一気にエーテルを活性化させ、刀を振るい、猫又の隣まで移動した。

敵は俺に向けて銃を撃とうとする…が。

 

「遅せぇよ。」

 

その瞬間、全員のバレル部分が斬れて落ちた。

 

「なっ…何よ、あんたは!」

 

女は発狂するように俺に言ってきた。

 

「おいおい、聞いてなかったのかよ。」

「俺は、ただの狐だよ。」

 

そう言って、俺は風で曲がった仮面を元に戻す。

 

「それじゃ、説明がつかないから言っているのよ!」

 

そう女が叫ぶ。

 

「ふーん…ならもっと詳しく言ってやろうか?」

「正義の味方ぶった、ただの狐さ。」

「さてそこの女。お前はさっきこう言ったな?狩る側が、狩られる側になる可能性だってある。」

「お前は、自分が狩る側だと思ってたみたいだが、ここで問題。」

「今、狩る側はどっちだ?」

 

そう言うと

 

「巫山戯るな!!」

 

と叫んで隠し持っていたのか、もう一丁の拳銃を撃ってきた。

…もちろん、不発なんだけどね。

 

「なっ…なんで!?なんで撃てないのよ!!

 

そう喚き散らかす。

 

「もっと冷静さを持たないと、モテないぜ?女さんよぉ。」

 

俺はそうマガジンを上に投げては掴み、上に投げては掴み、と遊んでいた。

 

「なっ…いつの間に!?」

「隠してるのバレバレ。マガジンを抜くぐらいちょー簡単。」

 

そう言って、俺はマガジンを空中で斬った。

 

「女さんよ、質問には答えようぜ。」

「今、狩る側はどっちだ?ほら、言ってみろよ。」

 

俺がそう煽ると

 

「ふ…ふふ…私たちに、決まってるじゃない!

 

そう言うと、ロケットランチャーが飛んできた。

それは俺たちの地点で爆発する。

 

「あははははは!!私を舐めるからこうなるのよ!!!」

 

そう高笑いする女。

 

「そうだねぇ。俺を舐めてるからお前はこうなってるんだよ。」

 

その姿は…片腕が落ちていた。

あ、もちろん傷口は焼いてあるぞ☆

 

「え?…う、うぎゃああああああああああああああぁぁぁ!!!!!!!!!!!

 

そう言ってのたうち回る女。

 

「うるせぇ。」

 

俺は斬った腕の方の肩を踏み付ける。

 

「あがっ…!い、痛い!その足を退けなさい!!

「んー?人に物を頼む時にはもっと言い方があるんじゃないかなぁ??」

 

そう言って刀の鞘を傷口に押し付ける。

 

「いぎゃあああああああああああ!!!!!!!!!!」

「いやいや、『いぎゃあ』じゃなくてさぁ。」

「『貴方様の脚を私の汚い傷跡に触れさせるわけにはいきませんのでどうかその脚をお退けください。』でしょ?」

「君さ、立場分かってる?」

 

そう言って鞘の押し付ける力を増やす。

 

「あっ…がっ…ぎっ…ご、ごめ」

「その言葉望んでる訳じゃないんだわぁ。」

 

さらに鞘を押し込む。焼けた傷口が抉れ、血が流れ出てくる。

 

「てか、それ言うなら相手が違うだろ。」

「その言葉は、住民に言うべき言葉だろ?」

「ふ、ふふ…。」

 

俺がそう言うと女は笑い始めた。

 

「…何がおかしい。」

 

俺は鞘を本気で押し込む。

鞘が肉に穴を開け、血が吹き出す。

 

「あがっ…ふふ、ふふふふふ。」

「彼らは、ここで死ぬのよ!」

 

そう言って、女は片手でスイッチを押す…瞬間俺が手を斬り落とした。

 

「あのさ。やっぱお前、俺の事舐め腐ってるよね?」

「そうとしか思えないんだけど。」

「何、殺されたいの?それならそう言いなよ。殺してあげるから。」

 

そう言って俺は女の首筋に刀を当てた。

 

「ま、もういいよ。これ以上話したところで意味ないし。」

「あと、君らに一応伝えておくけど。」

「彼女はエーテル爆薬の誤爆で腕が無くなった。いいね?」

 

そう言うと全員が俺に対して敬礼を示した。

 

「よし。ならさっさとこいつを連れて申し開きをするんだな。」

 

俺はパールマンと女をおいてけぼりにして猫又と一緒にニコの元へ向かった。

すると空からヘリ、陸はマスコミと治安局に囲まれた。

これからヴィジョンの事情聴取を行うらしい。

 

「銀狐、この後ご飯食べに行くけど来るわよね?」

「おま、マジで言ってんのか…?金ねぇんだけど。」

「えー?しょうがないわね…立て替えてあげる!その代わり、1週間以内に返しなさいよ!」

「普段2人に返さない奴が何を…いひゃ、いひゃいいひゃい!やめへ、わらった、わらったはら!

 

俺が煽ると思いっきりほっぺた引っ張られた。痛い。

 

「…ん?」

 

隣を見ると、いつの間にか猫又が居なくなっていた。

というより…なんか離れてってた。

 

「逃がさないぞ。」

「うわぁ!な、何!?」

「ほら、自分の分の金出せよ。」

 

俺がそう手招きすると

 

「え?じ、自分の分って、なんの事?」

 

と聞いてきた。

 

「なんのことって…飯だよ飯。事件解決の打ち上げ。」

「まさか来ないとか言わないよな?」

 

俺がそう聞くと

 

「…だって、解決したのはほぼあんたたちだし、あたしなんかがいなくたって」

 

よーし。

 

「なーんにも聞こえない!!」

 

俺はそう言いながら猫又をお姫様抱っこして、ニコのところに行く。

 

「えぇ!?ちょっ、降ろせ!」

「きーこえなーい。」

「てかお前話聞いてたんだろ?なら大人しくこいや。」

「あたしは『大事な顧客だから盛大に奢る』って聞いてたし、そもそも行くなんて一言も言ってない!」

 

そう猫又が言い切った時、ちょうど邪兎屋の所に着いた。

 

「そう。なら正式に聞くわ。猫又。私たちとご飯に行く?」

 

そうアンビーが猫又に聞く。

 

『店長たち、プロキシ兄妹も来るぜ!しかも食べ放題だぞ!』

「えぇ、サバを好きなだけ食べられるわよ!」

 

ビリーとニコもそう説得してくる。

 

「ほら、行くのか?行かないのか?」

 

俺がそう誘う。

 

「あたし、その、えっと…」

 

と言いながら、猫又は泣き始め

 

「ほんとに、好きなだけサバを食べていいなら…考えてやってもいいぞ!」

 

そう言って俺の腕の中で涙を流しながら言った。

最終的に誰が払ったのかって?

俺とアキラとビリーの3人だよ。(血涙)

くそぉ…。あいつの武器メンテナンスする時状態悪かったら絶対高額請求してやる…!

 

数日後

 

randomplay

俺とリン、アキラはニコからの色々な連絡を聞いていた。

猫又と赤牙組の間柄のおかげで赤牙組が邪兎屋にちょっかいをかけることはなくなった。そして結局、あの金庫に関しては情報が少なく、何も分からないとの事だ。

 

「そういえば、猫又はどうしたの?あの日以来、見かけていないけど。」

「あ、あの子猫ちゃんのこと?あの子は…その…うぅっ…。」

 

アキラの質問に、ニコが少し暗い声で言ってくる。

 

「やっぱり行ってしまったんだ。」

「いや、んな事」

 

ないぞ、と言おうとした瞬間。

 

「にゃにゃーん、子猫ちゃん、参上だにゃー!みんなの集合写真をプリントしてきたんだー!ん〜、よく撮れてる!」

「はいどーぞ。これがアキラの分でこれがリンちゃんの分。これが店長の分ね!」

 

そう言って猫又は俺たち3人に写真を渡してきた。

 

「ん、二人とも、どうかした?大事にしまってたおやつを誰かに食べられた!って顔だぞ。」

「ぷっ…」

「はあぁ…。」

 

猫又の例えにニコは吹き出し、俺は思わずため息をついた。

 

「ニコ、空、良くも僕たちの心を弄んでくれたね。それならこっちだって容赦しないよ。ニコにはこれまでのツケの1割、空には…やっぱりいい。僕達の方が借りがある。」

 

なんか許された。

 

「…まぁ計画したのはニコだしな。」

「ちょ、空!?協力した時点であんたも同罪よ!?」

「この時『割り勘』つってたのに結局男組に支払わせた銭ゲバはどこのどいつかなぁ!?」

「うっ…で、でもツケの1割は酷いじゃない!

 

ニコがそう弁明すると

 

「いいや、酷くない!これでも待ってあげてる方なんだよ!」

 

とリンが正論で殴る。

 

「ちょ、勘弁してよ…!何よ、ちょーっとサプライズしてあげよって思っただけじゃない!」

「コホン…改めて紹介するわ…邪兎屋の新しい従業員…」

「兼うちのバイト。」

「猫宮又奈、猫又って呼んでいいぞ!今は邪兎屋で働いてて、店長のとこでバイトもしてるんだ!二人とも、これからもよろしくだにゃー!」

 

猫又はそう自己紹介した。

 

「邪兎屋で働いてるのはいいとして…空、空の鍛冶屋ってバイト募集してたっけ?」

「いいや全く。ただ、最近出費が酷くてな。どこぞのピンク髪とAIのおかげで。」

 

俺が横目でニコを見るとニコはそっぽを向いて吹けない口笛を吹いていた。

 

「はぁ…まぁ、だから少し事業を展開しようと思ってな。既製品の刃物を、安値で売るようにしたんだ。」

「もちろん、今までのメンテナンスも請け負ってる。」

「猫又にはその既製品のとこで店番とレジをしてもらってんだ。」

 

ほぼ邪兎屋の運営資金に流れてるのは癪だけど。

 

「そういうことだったんだね。納得だ。」

「ま、近況報告はそんな所だな。」

「そうだアキラ。今回の報酬はなしでいいぞ。」

「え?でも…」

「いいんだ。押し通されたとはいえ、俺も騙したしな。」

「また、依頼待ってるよ。表も、裏もな。」

 

そう言って俺は店から出た。

さて、これで大きい仕事は終わりだ…!

鍛冶屋に行って包丁量産しよ…。

 

空がいる世界線のゼンゼロプレイヤー掲示板

01:ほんま相変わらず。

02:相変わらず。

03:肝心な時に居ないチートキャラ。

04:神視点とんでもないことやってんだけどニコたちからしたら大迷惑。

05:てか結局割り勘してないの笑った。

06:そこはまぁニコだし。

07:確かに毛蟹。

08:というか、猫又鍛冶屋でも働いてんのな。もしかして信頼度イベント常設?

09:ある。

10:てかそうだろ。運営猫又好きすぎ。

11:てかそもそも思ってたんだけど、空ってなんであんな超スピード出せるわけ?

12:筋トレ。

13:チートだから。

14:知らね( 。∀ ゚)

15:こいつら使いもんにならん。

16:うるせぇニート。

17:黙れニート。

18:ハイハイ。まぁ真面目に考えるとエーテル関連の特異体質だろ。

19:その心は?

20:銃ぶった斬る時戦闘時のマップに置いてあるエーテル燃料入った瓶の小さい版飲んでた。

21:は?

22:は?

23:は?

24:は?

25:…見直してきたけどマジだ。色も形も同じ。

26:そう言えば序章で5年でも10年でも護るつってなかったか?

27:たし蟹。あれが伏線…?

28:だとするなら空は異常なまでのエーテル適性を持ってて、エーテルを摂取することで身体増強が出来る…?

29:もはやエーテリアスじゃないですかヤダー。

30:実際どうなんだろうな?

31:不穏なのやめようぜ…。

ifストーリーやサイドストーリー欲しい?

  • どっちも欲しい!
  • ifだけ欲しいな
  • サイドだけくれ
  • どっちもいらんわたわけ
  • そんなことよりおうどん食べたい(閲覧用)
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