空き教室。先生と二人きり。いつもならこの空間を愛おしく思っただろう。
しかし、今の私にそんな余裕はない。
「先生、それは間違いないの?」
「連邦生徒会、エンジニア部、ヴェリタス、シスターフッドにウイやセイア。そしてなによりシッテムの箱と別世界線のシロコの証言。これだけの知識人が集まって、検証したんだ。なによりデータが示している。間違いない。セリカとアヤネは、別次元に居る」
「……帰る方法は?」
「こちらでは見つけられない。でも、こちらから助けに行く方法ならある」
「未だ存在する、色彩への侵入だね」
「これは、かなりキツいけどね。一番やりやすいのは、前にやったような宇宙船での侵入だけど、さすがに何度もできることじゃない。エンジニア部の方で、多少なら生身でも色彩と接触できるように、なんとか解析してるところだよ」
「じゃあ、助けに行けるんだね?」
「うん。例え解析できなくても、私だけは助けに行く」
「それなら私も」
「ダメだ」
「……言うと思ったよ」
立ち上がり、色彩のある方を眺める。
「それでも行くよ。私も、そして、二人も」
先生が止めることを私が知っていたように、私達が行くことを、先生も知っていただろう。
先生は、諦めるだろう。どうやっても意見は変わらないのだから。きっと、私達が来る前提で作戦を立てているはずだ。
「可能性の話にすぎない。色彩は未だに小さく滞空したままだ。しかし、このキヴォトスごと飲まれる可能性がある。第一被害者はアビドス生で、一見他の学園には関係無いように思えるけど、キヴォトスに居る以上は誰も無視できない」
「だから、みんなでやるの?」
「そうなった。どうせ、キミ達は止まらないから、無理矢理言って、みんなを巻き込んだんだよ」
先生は疲れたようにネクタイを緩めた。
「急遽、色彩対策委員会が組まれた。先遣隊はアビドス対策委員会。オペレーターは、同行する私と、こちらに残るヴェリタスに任せる。その後、色彩と深い関りを持っている……かもしれない、アリス及びゲーム開発部と、護衛にネルの派遣が決定している。こちらはヒマリやリオ、ユウカがオペレーターに志願した」
前回の色彩発生があったからか、対応が早い。みんな最悪の結果を考えざるえなくなっているんだ。
「幸か不幸か、私達には前例がある。加えて、今でも私の端末には二人の生体反応が届いている。おそらく、ここからでも通信は届くだろう。作戦は容易じゃないけど、無理なことばかりでもない」
先生は立ち上がり、こちらへと手を伸ばす。
「行こう、ホシノ」
「……うん。もちろんだよ、先生」