クラウドがFate世界に迷い込む話   作:ジ-ェ-ノ-バ

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闘う者達

「◼️◼️◾️◼️◾️◾️─────ッッ!!」

 

大気を割るような咆哮があがった。

それは紛れもない、怪物の雄叫びだった。

巨岩を彷彿とさせる目の前の巨人は、岩塊そのものである大剣を右手に握り、獣のごとく地面を蹴り上げながらクラウド達へと迫った。

 

その速度は、尋常ではない。

モンスターと一括りにしても、その危険度には大きく差がある。弱いモノは軍用犬に負ける場合もあれば、強いモノは神羅の最新鋭機体にすら勝る場合もある。

……そして目の前のモンスターは、召喚獣にも匹敵するほどの脅威だった。

 

「──────ッ!」

 

火花が散った。

巨人は新たな獲物と定めたクラウドを、まるで品定めをするかのように攻撃した。

岩塊の大剣を、人が操れる大剣で受け止めた。

 

ジリ……、と電気のような衝撃が腕を伝う。

クラウドはそのあまりもの一撃に顔を歪ませながら、渾身の力で巨人の大剣を無理やり弾いた。

 

「はァ─────ッ!!」

 

弾いてからの行動は速かった。

クラウドの身体能力すべてを注ぎ込んだ一撃が、大剣を弾かれた怪物のガラ空きの胴体へと襲う。超高速、その凄まじい速度によってバスターソードの剣先は彗星のごとき軌道を描いた。

 

対人用というより、モンスター用を想定して作られた大剣の重さは、岩塊を真正面から打ち破るほどの威力を持つ。

ソルジャー、クラス1st。

英雄の領域に立つ一撃だ。

 

しかし、

 

「っ……!!」

 

怪物は先のクラウドの動きを模倣したかのように、攻撃を弾いてきた。

獰猛、凶悪。

しかし、その中に紛れる確かな技術。

クラウドの思考に違和感が混じる。

 

(知性……いいや、野生の勘か……?)

 

どちらにしても、普通じゃない。

 

「ぐっ……!」

 

攻撃がくる。

今のクラウドはガラ空きだ。

この隙を、奴は見逃さない。

 

クラウドは無意識に歯を食いしばった。

同じように敵の攻撃をやり過ごさなければ、確実に致命傷を負うことになる。あの怪物の斧剣は鋭利とは言えないが、人体を斬り裂くには十分すぎる。

それだけは避けなければならない。

 

「この─────ッ!!」

 

地面を踏み抜いて、体制を立て直そうとした。

ズンッ! と足が地面にくいこむ。

 

瞬間、横から何かが通り過ぎた。

 

それは先程まで、この怪物と戦っていた騎士だった。

 

「……!」

 

尋常ではないほどに速い。

一見すれば鎧を身に纏っているただの少女だが、その身体能力はソルジャーとも表すべき異質なものだ。

 

砲弾のように突き抜ける彼女の髪がなびく。

 

上から下へ、彼女は見えない剣を叩きつけた。

 

ギィンッ!! と鉄の火花が散った。

衝撃が地面を砕き、大気を割く。

 

怪物の大剣と、見えない剣。

その衝突が起こした結果だった。

 

「……セイバーは放っておきなさい、バーサーカー」

 

その時、クラウドの耳にそんな言葉が聞こえた。

声の主のほうへと目を向けると、そこには白髪の少女が坂の上からこちらを見下ろしていた。

 

「……まずは、そのイレギュラーを始末して」

 

クラウドと少女の目があう。

互いが互いに敵意を向け、同時に殺意も孕んでいた。

 

「マスターと、サーヴァント」

 

バチチッ! と。

ノイズと共に、そんな言葉が脳裏をよぎる。

 

「◾️▪️▪️◼️◼️◾️ッッ!!!!」

 

バーサーカーと呼ばれた怪物が咆哮を上げた。

 

バゴン─────ッッ!! と、鍔迫り合いとなっていた騎士の体を吹き飛ばすと、呼びかけた少女の言葉に従うようにクラウドへと一直線に突き進む。

 

クラウドは雑念を払うと、バスターソードを構えた。

 

「……来い」

 

振るわれる巨人の大剣。

クラウドの頸を狙った一撃が、斜めに放たれる。あまりの巨体、あまりの重量、大剣を構えて放つだけで土埃が宙をまう。

質量の暴力とも言えるソレは、必殺の一撃だ。

 

しかし、それは空気を斬り裂くだけに終わった。

 

「─────ハァアッ!!」

 

クラウドは一層身を屈めて攻撃を避けると、渾身の一撃をカウンターとして繰り出した。

バスターソードが振り上げられた。

直線上に、剣先で弧を描きながら巨人の胴体を滑る。

 

ピシ──────と、巨人の体にかすり傷がつくが、それは両者にとっても些細なものだった。

 

「◾️◾️◾️━━━━━ッッ!!!」

 

巨人が咆哮するだけで、クラウドの体が吹き飛んだ。

数メートルほど飛び、背中から地面へと落ちるが、クラウドは受け身をとって地に足をつける。飛んでくる土埃から目を防ぎながら、あの巨人の打倒方法を静かに模索していた。

 

(あの反応速度……超えれそうにないな)

 

巨人の背中からあの騎士が斬りかかる。

しかし、巨人は不意打ちとも取れるそれに反応した。

大気は割れ、地は穿たれる。

見えない剣、距離幅をも正確に取れないアレに対して寸分違わず対応する、あの技量。

 

そう、問題なのはそこだ。

クラウドとあの騎士では、あの巨人の反応速度を超えることが出来ない。このまま行けば消耗戦にちかい戦いになるだろう。

そうなればクラウド達は負ける。

 

スタミナ勝負では、きっと勝てない。

それはすぐに分かった。

 

ならば……

 

「───────ッ!」

 

クラウドも同様に斬りかかった。

巨人は騎士に対応してため、クラウドに背を向けている状態になっている。同様、不意打ちとも取れる状況だ。

 

しかし、当然として巨人は対応するだろう。

クラウドには確信があった。

 

「……」

 

騎士に視線を向けていた巨人は、迫るクラウドへとソレを向けた。長さ2メートルにもなる大剣を真横へと一閃する。

斬り払われた一撃は、半ば斬撃となって空気を切断していった。

 

ギャインッッ!!

空気を弾きながら、さらに突進する。

巨人が叩き落とすような剣筋が迫るが、クラウドは左側へとスライディングしながら、巨人の真横を突き抜けていった。

 

「◼️◼️◾️……ッ!?」

 

死角に入られた。

そう判断し、不利と感じた巨人が高く飛んだ。

 

20メートルほど、ほぼ垂直に。

巨人は荒ぶる暴風のように体を無造作に回転させながら、クラウド達から距離を取ったのだ。

ドゴォ!! と着地をするだけで、その質量に耐えられなかった地面が凸凹に浮き上がった。レンガ製の地面はひび割れ、宙をまった。

 

クラウドはソレを見ながら、すぐ近くにいる騎士に向かって声をかけた。

 

「おい、あんた。考えがある」

 

「……どのような?」

 

「あの反応速度だ、真正面からの突破は難しい。手数で攻める、俺に合わせてくれ」

 

一本の剣は、一本の剣で返される。

ならば、2から1を引くような計算にすればいい。

そうすれば、必ず1が残る。

 

「……承知しました」

 

騎士はクラウドの意図を読み取ったのか、頷きながらそう言い放った。

クラウドはバスターソードの剣先を巨人へと向けるように構えると、そのすぐ横で合わせるように騎士もその見えない剣を構える。

 

クラウドはいつも以上に畳み掛けることを意識して、騎士はただ彼に合わせることを意識して。

 

先程までバラバラだった呼吸が、確かに重なった。

 

 

「───────ッッッッ!!!!」

 

 

クラウドは目を見開くと、まるで砲弾のように10メートル以上は離れている巨人に向かって突き進んだ。

その瞬間、0.5秒ほど遅れて騎士はその後を同じ速度で追った。地を蹴ってから激突までは1秒すらもかからなかった。

 

 

「斬撃に踊れ──────!」

 

 

瞬間、残像が無数に展開された。

 

紅くきらめく剣尖が、夜空に流れる彗星の如く、その尾を引きながら巨人へと殺到した。超高速で繰り出される剣技の数々は非常に軽く、先程まで一撃一撃に全力を込めた攻撃とは正反対のようだった。

 

しかし、それをマトモに食らえば致命傷へと確実だ。なにより、その彗星のなかの一撃でも許容すれば、残るすべての斬撃を捌き切れなくなる。

巨人の、戦士としての本能。

 

狂気に埋もれた英雄の勘がそう告げた。

 

 

射殺す百頭(ナインライブズ)──────。

 

 

狂化によって使えない宝具、それに近いカタチで彼の英雄はクラウドの斬撃にカウンターを行った。

 

一瞬と呼ばれる時間に繰り出される超連撃。

それは全てクラウドを殺す斬撃だ。

 

だが、

 

「─────!」

 

もう1人、その場には剣がある。

青と銀、そして金色の姿をした少女は、クラウドの剣技を模倣したかのように超高速で斬撃を繰り返した。

紅くきらめくクラウドの剣筋とは対照的に、少女の剣筋は蒼くかがやく。しかし、それはクラウドと同じように彗星の如く流れていた。

 

1秒間に繰り広げられる、金属音と肉を斬り裂く音。

 

花火のような火花が散り、血飛沫が舞う。

ただ空気に身を任せるだけの無機物なソレらは、この斬撃空間が起こす暴風に為す術もなく、この三英雄の周りを飛来するだけだった。

 

 

「◼️◾️◼️◾️◾️◼️◼️◼️━━━━━━!!!」

 

 

巨人が悲鳴のような咆哮をあげた。

ドッッッ─────!!! と天地を震わせる叫び。

しかし、それは何の意味も為さない。

 

大英雄が編み出した戦闘技法も、クラウド達の前では無力に近かった。

これが一対一の戦いであれば、巨人の勝利で幕は閉じていたかもしれない。

だが、あまりにも手数の違いがあった。

1が2になっただけで、もう勝負は決まった。

 

「決めるぞ─────ッ!!」

 

クラウドが叫ぶ。

それに呼応するように騎士は一層踏み込む。

 

グォォンッッ!! と巨人の大剣が掲げられた。

 

それはどちらかの頭を真っ二つに叩き割るための、最期の抵抗のようだった。

直後、それは振り下ろされる。

爆発があった。

100キロを超える大剣の一撃は、地面にクレーターを残すほどの威力を孕んでいた。擦りでもすれば即死だったのは明白だ。

 

しかし、2人は左右に分かれて避けた。

 

まるでモーセの海割りを彷彿とさせるように、クラウドは右へ、騎士は左へと避けていた。

今までの軽い斬撃とはちがう。

お互いは、これまで以上の力を全力で込めていた。

 

グッ……っ!! と大地が軋む。

2人はシンクロしたように、膝を曲げて剣を大きく振りかぶると───────

 

 

 

巨人の胴体に、斬撃を交差させた。

 

 

 

「◼️────────」

 

紅と蒼が、クロス字になって奔った。

その衝撃波は巨人の胴体を貫いてその後方、数十メートルまでをも無造作に破壊し尽くした。

 

「……………………」

 

巨人の体が崩れた。

貫通した斬撃によって、元のカタチを維持することが出来ず、肉塊へと変わったのだ。

どう足掻いても、ここからの反撃はない。

間違いなく絶命した。

 

「…………よくやった」

 

クラウドはバスターソードを背中に納めると、呼吸を荒げている騎士に向かってそう言った。

正直、自身の動きについて来れるか不安だったクラウドは、少女が完璧に近いカタチで合わせてくれたことに対して、心からの賞賛を送った。

本当に、何の皮肉もなかった。

 

「はぁ……はぁ……、貴方は……?」

 

「……クラウド・ストライフ」

 

吐き捨てるように言い放ったクラウドは、騎士の少女から視線を移動させる。

その先には、坂の上から見下ろしていた白髪の少女の姿があった。

 

(………………笑ってる)

 

クラウドは眉をひそめた。

そう、笑っていたのだ。

おそらく、あの怪物を使役? していたと思われる少女は、自身が不利な立場にいることを自覚しているはずなのに笑っていた。

 

違和感しかなかった。

次は自分かもしれないというのに。

 

(負け惜しみか?)

 

クラウドの思考には疑問しかなかった。

 

だが、静かに悪寒が走っているのを、自覚していた。

 

「───────……!」

 

パキ、と音が鳴った。

その音のほうへと目を向けると、そこには肉塊が静かに組み上がっていく光景があった。

紅い稲妻が走り、肉体を補強していく。

崩れた体が、遡るように再生していった。

 

「なに……!?」

 

クラウドが驚嘆の声を上げながら再び構えた。

その横で、同じように騎士も目を見開いている。

 

「自己再生……? いや、蘇生の呪い? これが、バーサーカーの宝具……!?」

 

距離をとって2人は離れる。

先程までと同じように、構えながら。

 

「哀れね。わたしのバーサーカーは、一度殺された程度じゃ死なないの。どれだけ息ぴったりな攻撃を繰り返しても、それは貴方たちの命を延命しているに過ぎない」

 

その時、あの白髪の少女が坂の上から降りた。

踊るような足取りで、この戦場に入ってくる。

あの、バーサーカーと呼ばれた怪物の隣まで。

 

「すごいでしょ? これがわたしのサーヴァント、『ヘラクレス』の力。貴方達がどこの英雄であったとしても、バーサーカーには敵いっこない」

 

「ヘラクレス……ギリシャ最大の英雄か……!」

 

「そう。貴方に勝てる、セイバー?」

 

意地が悪そうに、白髪の少女は笑った。

その間に、バーサーカーの蘇生は完了したようだった。何一つ、寸分違わずに、元の体へと完璧に戻っていた。

 

「………………」

 

その時、セイバーと呼ばれた騎士に向けられていた少女の視線が、クラウドへと移った。

クラウドの突き刺すような視線と交錯する。

 

数秒間、沈黙があった。

そして──────

 

「いいわ。おもしろそうだから、このぐらいにしてあげる。バーサーカーを一回殺しただけでも、すごい事なんだから」

 

「……逃げる気か?」

 

「ええ。これでお終い」

 

少女はそう、明後日の方を向いた。

 

 

「──────また遊ぼうね、お兄ちゃん」

 

 

そしてそれだけ言って、バーサーカーと呼ばれた怪物と共に、何処かへと消えていったのだった。

 

「………………」

 

クラウドは息を吐くと、今度こそ大剣を納める。

厄災は去った。

アレほどの脅威は、5年ぶりだ。

それほどまでに、あの怪物は強かった。

 

 

 

 

 

 

 

 




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