あれからしばらく家の周りを歩いてみた。でもお母さんは見つからない。失意の中近所の公園のブランコに腰掛ける。夜の風が私の頭を冷やしてくれる。
どうしよう… 何で家を飛び出しちゃったんだろう…
冷静になった頭の中でいろいろな感情がぐるぐる回る。
一回家に帰ってどうするかかんがえたほうがいいよね…やっぱりお母さんを探すのは明日にしよう。もしかしたら家に帰ってきているかも。
勢いよく家を出たはいいもののやっぱり怖いものは怖い。家に帰ってお父さんがなんとかしてくれるのをまってたほうがいい。そう考え、家に帰ろうと公園を出───
「ひっ…」
全身を寒気が襲った。漏れてしまった声に気づき慌てて口を抑える。目の前の電柱の下に細長い黒い影、その上に不釣り合いなほど大きい頭が乗っている。
気づかないで気づかないで気づかないで…
そんな私の思いも虚しく、影はその白い穴みたいな目をこちらに向けながらゆっくり、けれど着実に私に近づいてくる。表情はわからない、けど間違いなく私に敵意を持っている。これが町の人たちが言っていたお化けだろうか。覚悟はしていたはずだった…はずだったのに体が動かない。お化けに捕まったらどうなるんだろう。もしかしたら私はここで死んでしまうのかも。
お父さんとお母さん、そしてこともの顔が脳裏に浮かぶ。
「ごめんね。」
目の前に立っている影がその手が私に触れる…前に鉄パイプが影を貫いた。
〜〜~
“鉄パイプが影を貫いた”
鉄パイプは遠距離対応ゥ…(大嘘)
ギリギリセーフ‼しっかりレベル上げて「投擲」取っててよかった~。このスキルはその名の通りアイテムを正確に投げることができるようになります。どうです?私のこと見直しました?ここからはさくさくマッマを救助に向かいましょう。(手のひらクルー)
鉄パイプを拾ってっと、ヘイカノジョこんなところで何してんの?一緒にお茶しない?
「来ないでください…!」
“逃げられた”
どぼじでそんなことするのぉーーー
なんですか逃げられたって…逃げる要素なんてどこにも…(深夜に何かが付いた鉄パイプを握りしめる不審者)
はい。いやはいじゃないが⁉
私が悪うございました。こんなのと会ったら誰でも逃げます。私でも逃げます。探してきますからたたかないでください。それにほら、お姉ちゃんが走っていったほうをよく見てください。なんと商店街ですよ。あの場所は山の神と敵対している大百足の神様の縄張りなのできっと安全なはずです。あそこならお化けも…お化け…
たどり着く前に襲われたら意味なくね?
間に合えぇ‼(建前)間に合えぇ‼(本音)
目の前にでかい蜘蛛が現れましたね、道ふさぎっていうお化けで自分から近づかない限り安全なんですが邪魔なので鉄パイプでポーン。打ち上げて宇宙の塵にしておきましょう。
そろそろ追いつきそうです。あ~!お姉ちゃんの前に影が…キャー変態よ~‼
鉄パイプ、君に決めた!
“鉄パイプが影を貫いた”
ギリギリセーフ‼なんかデジャブですが助かったので許してください。許し亭ゆるして
「嫌…」
“優しく声をかけてなだめる”
「ヒッ…あ、あれお兄さんだったんですか…」
ホモお兄さんですよー。ここはしっかり声をかけてから近づきましょう。じゃないとまた逃げられてゲームオーバーです。(1敗)
え?コミュ障には厳しい?ふっ…w
“そっと抱きしめる”
やめて‼通報しないで‼なんでもしますから(なんでもするとは言ってない)
さて、問題なく合流をすることができたので今後についてお姉ちゃんと話し合いましょうか。
ともこちゃんともこちゃん、マッマのお守りについて知ってる?ふむふむ今持ってると。これはありがたいですね。もし持っていなかったらおうちに帰って確認しないといけないところでした。
お守りを拝借してと…あっ…ふ~ん(察し)
山の神に目をつけられたことで気休めのお守り程度じゃ守り切れなくなったかんじですね。今度もっと強いの渡しときましょ。道具の整備は大事、はっきりわかんだね。
じゃけんこれから百足神社でお守りを入手してから山の神を鉄パイプで殴りに行きましょうかね。では~、イクイ
“嫌な予感がする ともこを突き飛ばす 空から大きな蜘蛛が落ちてきた”
あっっぶな⁉ホモ君はまだしも突き飛ばさなかったらお姉ちゃん死んでましたよ!誰がこんなことを…
『邪魔なので鉄パイプでポーン。打ち上げて宇宙の塵にしておきましょう。』
スゥ~…許せません!でも今は犯人捜ししている場合ではないのでさっさと道ふさぎ滅して百足神社に
“袋を持った黒いお化けがともこを袋に詰め込んでいた”
おい!てめぇ俺の女に何してんねん。この触手が蠢いている黒いのはよまわりさんです。夜廻の中でも有名なお化けで捕まえた人を工場のコンテナに詰め込みます。
こいつにチャートを狂わされた走者は数知れず…私はまったりプレイなのでそこまで恨みはありませんがね。確かにこれはうざいですね。キレそう。
もうこの距離じゃ救出は間に合わないので。お姉ちゃんに目が覚めてもその場を動かないようにと伝えてよまわりさんの後ろ姿を見送りましょう。後で覚えとけよ。(憤怒)
~~~
カランカラン…
お化けを貫いた鉄パイプが落ちる音が響いた。電柱の下に誰かが立っていることに気が付いた。いきなりのことで思考が停止してしまっていたが、その誰かが鉄パイプを拾っている光景が目に入る。
次は私かもしれない。逃げないと…この距離ならまだ…
「来ないでください…!」
勢いよく公園を飛び出した。全力で走りながら商店街を目指す。近所のお兄さんがあそこは夜でも安全だと言っていたからだ。後ろや横から嫌な気配を感じて息が詰まる。でも足は止めない。止められない。今止まってしまったら夜に飲み込まれて帰れなくなってしまいそうだから…
どれくらい走っただろう。疲れと不安で、肺がつぶれてしまいそうで、自然と視界がにじんできてしまう。後ろを振り返ってももう誰もいない。よかった…
このまま商店街に向かおうと前を向きなおすと、黒い影と目が合う。電柱の下にいたお化けだ。いやあの時に会った影は鉄パイプに貫かれて消えていたから別の個体かもしれない。もしかしたら兄弟なのかも。そんな場違いな思考が私の頭の中を満たす。現実を直視してしまうと叫びだしてしまいそうだから…
詰みだ。私は目を閉じてくるべき時を待った。
?おかしい、何も起きない。もしかしてあのお化けは無害だった?困惑しながらそっと目を開いく。
目の前には鉄パイプを持った誰かが立っていた。
「嫌…」
追いつかれてしまった。今度こそ私は死ぬかもしれないと身を固くしてうつむいた。しばらくの沈黙の後、誰かは聞き覚えのある声で私の名前を呼んだ。バッと顔を上げる。近所のお兄さんの声だ。
「あ、あれお兄さんだったんですか…」
体から力が抜ける。しりもちをついてしまいそうだったけれど、お兄さんが抱きとめてくれた。昔からお兄さんは私やこともが寂しいとき、不安なときには優しく抱きしめてくれる。
「あの…逃げちゃってごめんなさい。」
怖かったとはいえ、いきなり逃げてしまったのは失礼だと思い謝罪すると、お兄さんは困ったような笑みを浮かべて怖がらせたこちらが悪いとしょんぼりとした雰囲気を漂わせて謝ってきた。
その姿が、面白くて、いつも通りで、お化けばかりのこんな夜でも少しだけ安心できて少しだけ口元をほころばせた。
ということで続き書いてください