暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3   作:dwwyakata@2024

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今度はおまけつきで現れるフェンリル(二体目)。

しかもそのおまけは、決して弱い相手ではありません。

更にサルドニカでは、また問題も発生していました。

しかしその程度では。

今のライザは止められません。


1、サルドニカふたたび

一度、サルドニカのギルド本部に戻る。

 

アルベルタさんとサヴェリオさんは既に来ていた。他のギルド長は、まだ集まっていないようだ。

 

だが、アンナさんもいる。

 

だったら、話は先に進めておきたい。

 

フェンリルだけではなく、奴を支援する強力な魔物がいたこと。

 

恐らく其奴がフェンリルを操作していて、的確な奇襲を仕掛けて来たこと。

 

フェンリルを取り逃がしたが、確かな手傷を負わせたこと。

 

フェンリルそのものは、前回の奴よりも弱い事。

 

それらを説明すると。

 

二人は黙り込む。

 

なお、立場があるので。フェデリーカにそれらはやって貰った。

 

「頭が痛い問題だな」

 

硝子ギルドのサヴェリオさんが腕組みしてぼやく。

 

魔石ギルドのアルベルタさんは、じっと黙り込んでいた。

 

「フェンリルはライザさん達と連携して此方でどうにかします。 百年祭はどうなっていますか」

 

「現在、魔石と硝子の融合を試しているところだ」

 

アルベルタさんが、技術的な話をする。

 

やはり前に渡したドゥエット溶液が極めて効果的で、非常に高度な接合を可能としているらしい。

 

それは良かったと思ったが。

 

良い事だけでは終わってはくれない。

 

「だが問題もある。 まず、我等が手がけるような最高レベルの接合となると、まだ溶液の滑らかさが足りない」

 

「ライザさんにそれを解決して貰うとして……具体的にどうすればいいか、もうまとめてありますね」

 

「もちろんだ」

 

レポートをアルベルタさんに渡されて。あたしはさっと目を通す。

 

非常に神経質そうな字だな。

 

まあ、それはいいか。

 

見た感じ、単純に濃度が足りないらしい。

 

だとすると、濃度を上げるか。仕組みは分かっているから、別に難しく無い。座標を集めるのと並行して、やってしまうだけだ。

 

「分かりました。 そちらはどうにかします」

 

「本当にすげえな。 あんたが来てくれてから、サルドニカはダイナミックにどんどん変わっている。 百年前にこの街を作る基礎となってくれた「始祖」でも、ここまでやれたかどうか」

 

「その始祖についても情報がありましたが、私の目から見てもライザさんの方が上のようです」

 

「……そうか」

 

サヴェリオさんは、口の端を少し引きつらせていた。

 

まあ、畏怖を抱いてくれる方がこっちの方でもやりやすい。

 

舐められると終わりだからだ。

 

咳払いすると、話を進めてもらう。

 

フェデリーカも頷くと、順番に話をしていく。

 

まずはアトリエに対する物資的支援。以前サルドニカにあった機械などは直した。それに加えて、今回は巨大構造物。彼方此方にあるさび付いた大型歯車なども直してしまうつもりである。

 

サルドニカから余所に出る物資は順調。

 

嗜好品である細工ものだけではなく、各地に輸出される生活必需品についても、生産は順調だそうだ。

 

ただ問題が起きていると言う。

 

「東の地から輸入しているマツがどうも滞りがちだ」

 

「マツ?」

 

「簡単に言うと、最高品質の薪になる木材だ。 東の地でしか生息が確認されておらず、その炭は極めて繊細な細工物には必要不可欠なのだ」

 

「……これから東の地には向かうつもりでした」

 

フェデリーカが咳払い。

 

あたしにマツについての説明と、アルベルタさんとサヴェリオさんに、それぞれ東の地に出向く事についても説明をする。

 

一通り話が終わった所で、アルベルタさんが咳払いしていた。

 

「問題がある。 小物はいいのだが、百年祭のシンボルとなるものがまだ見繕えていないのだ」

 

「それぞれの技術の粋を尽くしたものは作れなさそうなんですか。 一任してある筈ですが」

 

「ただの巨大な細工物だったら幾らでも作れるんだがな。 今回の百年祭では、技術の復活を見せたいんだ」

 

サヴェリオさんがいう。

 

なるほど、それは納得が行く話だ。

 

そもそもサルドニカは、嗜好品を売りながら街の経済力と技術力の誇示に務めてきた街だ。

 

だが機械類があらかた直ったこともある。

 

今後はより実用的なもの。

 

魔石も硝子もだが、生活に必要なものを量産して、それを各地に売ってお金にする。そういった戦略の転換が必要と言う事だろう。

 

あたしにも納得出来る話だ。

 

「今、話を詰めているが、職人が顔を合わせると非建設的な事になることも多くてな。 何か、アドバイスを求めるかも知れない」

 

「分かりました。 ライザさん、いざという時はお願いします」

 

「了解です」

 

「それでは、フェンリルに対する厳戒態勢を続けてください。 出来るだけ早く、ライザさんを中核とした反撃作戦を開始します。 最悪の場合、サルドニカに直接攻めてくる可能性もあります。 避難誘導については徹底してください」

 

フェデリーカの言葉に、少し驚いたようだが。

 

二大ギルド長は頷くと、すぐに解散した。

 

荷車に色々な物資を受け取って詰め込むと、すぐにアトリエに向かう。今は。座標集めよりも、フェンリルを仕留める方が先だ。

 

ただでさえ手負いは厄介なのだ。

 

即座に対応しないと非常にまずい事になる。

 

それにだ。

 

あの悪魔もどきが出て来たと言う事は、鉱山に近付かれるのは余程に奴らに……神代にとってまずいとみるべきだろう。

 

だったら、鉱山に出向く事で、奴らの行動を抑制できる。

 

アトリエに到着。

 

クラウディアが手を叩いて、即座にみんなに指示を出す。みな、それぞれの行動を開始する。

 

あたしは皆にそれらは任せて、すぐに調合を開始。

 

ピンポイントに最大火力を集中し、即座に爆破できるように、アネモフラムを改良しておく。

 

今度のフェンリルは、動きが鈍そうに見えてかなり倒しにくい相手だ。

 

それにあの悪魔もどきの介入もある。

 

手を分けて探すのは愚の骨頂。

 

最大戦力をぶつけて、相手の出撃を誘うしかない。

 

時間が掛かると、相手に戦略的優位を譲ってしまうことになる。

 

急がないとまずい。

 

よし、爆弾の調整完了。

 

コアクリスタルを用いれば、数度使えるはずだが。一応ジェムを利用して四つに増やしておく。

 

今後使えるかも知れないからだ。

 

仕上がると、フィーが懐で動く。

 

どうやら、食事が仕上がったようだった。この辺りで取れる魚や野菜を用いているおいしそうなものだ。

 

香草の香りが食欲を誘う。

 

すぐに、食事を始める。

 

傷を受けた皆の様子を確認。フェデリーカはかなり疲れている様子なので、栄養剤も渡しておく。

 

排便と風呂もすぐに済ませて貰う。

 

サルドニカのアトリエも、今の人数が充分にいられるものだ。

 

全く問題は無い。

 

あたしも先に風呂に入っておく。今から出ると、恐らく夕方くらいに鉱山の手前までいけるはず。

 

先にタオに伝令を出して貰う。

 

フェンリルを仕留めたら、そのついでにあの悪魔もどきも倒してしまうつもりだ。

 

その時にアトリエに戻るのではなく、鉱山にすぐ調査の手を入れたい。

 

そう考えると、サルドニカに宿を取っておきたい。

 

ゆえに、宿の準備をして貰う。

 

これについては、フェデリーカに書状をしたためてもらった。後はアンナさんがやってくれるだろう。

 

タオが戻るまで、無心に横になって休む。

 

フェデリーカは船旅による疲れと、いきなり走り回ったことでかなり参っていたのか。完全に寝落ちしていたが。

 

タオが戻ってから、悪いがすぐに起きて貰う。

 

まあ可哀想ではあるが。

 

今回は、時間との勝負なのである。

 

すぐにサルドニカに向かう。

 

全員で一気に駆け抜ける。フェデリーカに、声は掛けておく。

 

「大丈夫、フェンリル戦で舞える?」

 

「だ、大丈夫ですっ!」

 

「無理なら荷車に乗れよフェデリーカさん。 あんたの舞いは凄いけど、あんた自身の体力は弱いだろ」

 

「問題ありません!」

 

ディアンにそう叫び返すフェデリーカ。

 

ディアンもサルドニカのギルド長達とのやりとりは見ていて。フェデリーカが大人達を、それも街を支配している大人達を相手に一歩も引いていない様子は見ているのだ。馬鹿にしている訳ではない。

 

ただ、事実を告げているだけだ。

 

そのまま、一気にサルドニカを走り抜ける。

 

自警組織の戦士達が走り回って、緊急体制に移行しているようだ。

 

それでいい。

 

とにかく、今は最悪の事態に備えて貰う。

 

あのサタンだとかは、クーケン島を潰すつもり満々だった。今度の奴も、何をしでかすか分からないのだ。

 

だったら最初から全力で行き。

 

有無を言わさず潰す。

 

それだけである。

 

走る。

 

サルドニカを抜けて、橋を越える。

 

ハンドサインを出す。

 

いつ仕掛けて来てもおかしくない。だから、既に全力警戒状態でいてくれ。皆、それで警戒度を上げてくれる。

 

だが、ずっと警戒したままだと、疲労の蓄積は早い。

 

気を付けなければならない。

 

湖まで、一気に来る。

 

其処で一旦止まって、呼吸を整える。

 

クリフォードさんを見ると、頷く。

 

いる、というわけだ。

 

皆で最大の勘をもつこの人の直感は、非常に頼りになる。全員がそれで危険度を共有していた。

 

不意に、あの悪魔野郎が空より来る。

 

夕焼けを背負った奴は、大胆にも湖の端に降り立ってきていた。

 

「ほう、もう来たか。 慢心していたとはいえ、サタンめが倒されたのは偶然ではないようだな。 確かに此方の手持ちが手負いの内に仕掛けて来るのは、戦略的に正しい判断だ」

 

「貴方は」

 

「サタナエル」

 

「そう。 いずれにしても、ぶっ潰すよ」

 

此奴の狙いは分かっている。

 

自分に注意を引きつけさせ、それでフェンリルに奇襲させるつもりだ。

 

問題は、サタンだとか言う此奴の同類が、多数のゴーレムや幽霊鎧を引き連れることが出来た事。

 

神代のテクノロジーの塊だと言う事だ。

 

しばし、にらみ合いが続くが。

 

その拮抗を崩すように、湖から巨体が飛び出していた。

 

凄まじい巨体。

 

あれは、サメか。

 

外洋には、船に匹敵する……それも交易船に……巨大なサメがいる。あたしも何度か目撃したし。

 

面倒な場合は追い払いもした。

 

だが、こいつは。

 

ネメドで目撃した、巨大魔物に匹敵するプレッシャーを感じる。

 

「私は貴様を危険視している。 サタンをはじめとする他の監視者は、貴様も同じだとたかを括っていたようだが、貴様の戦績を考える限り、油断は非常に危険だと判断した。 メインシステムは方針を変えていないが、私は主の安全を優先する」

 

更に、もう一体。

 

今度は、森から巨大なオオトカゲが姿を見せる。

 

いや、オオトカゲじゃない。

 

以前王都近郊で戦ったほどの大物ではないが。バシリスクだ。

 

これに加えて、手負いとはいえあのフェンリルか。

 

あのサタンとやらも相当な手札を揃えて向かってきたが、此奴は。

 

冷や汗が流れる。

 

どうやら総力戦になりそうだ。

 

「仕留めさせて貰うぞ、錬金術師ライザリン!」

 

「ふっ」

 

「ほう、笑う余裕があるか」

 

「この辺りの面倒な魔物をわざわざ集めてくれたから喜んでいるんだよ。 サタナエルだったね。 あたし達に喧嘩を売ったこと、後悔させてあげる!」

 

一瞬の無音。

 

それが過ぎると、殺到してくる巨大ザメとバシリスク。サタナエルは距離を取ったまま、瞬く間に始まる激戦を、傍観に掛かる。

 

これは、まだ手札を隠していてもおかしくない。

 

巨大ザメの突進を、レントがディアンと息を合わせて弾き返す。

 

だが、二人ともずり下がる。

 

バシリスクが、猛毒のブレスを吐こうとした瞬間、セリさんが奴の目の前に覇王樹の壁を造り。

 

更にクラウディアが一斉に矢を叩き込む。

 

それは空に放たれたが。

 

反射板を利用して、上からバシリスクに襲いかかった。

 

サメが凄まじい雄叫びを上げる。

 

そういえばサメは本来音を発しないらしいが、陸に上がるようになってから音を発するようになったらしいという説があるとか、タオに聞いた。

 

サタナエルが連れてくるほどのサメだ。

 

そういった水陸両用のサメの始祖に近い存在かも知れない。

 

巨体で豪快に暴れ回るサメ。あたしは冷静に状況を見極めながら、乱戦の中を歩いて行く。

 

何度もつぶてや攻撃が掠める。

 

パティがサメのひれを抜き打ちで斬り飛ばし。一瞬怯んだサメに間を詰めて。数度の乱舞斬りを叩き込む。

 

だが、グランツオルゲンで強化している大太刀で、その肌を貫ききれない。

 

サメは体当たりでパティを弾こうとするが。

 

逆にレントが体当たりを浴びせて出鼻を挫き。

 

何回転もしながら中空から襲いかかったディアンが、サメの鼻面を強打。

 

上半身を反らしたサメに、アンペルさんの空間切断が襲いかかるが。サメがひゅっと音を立てると。

 

空間を切断する黒い糸が、かき消されていた。

 

それだけじゃない。サメの周囲の魔力そのものがかき消された。

 

なるほど。

 

圧倒的フィジカルを生かす能力か。

 

魔術を体内でだけ循環させ、体に触れようとする魔術全てを弾く。パティの攻撃があっさり防がれたのも、それが理由だろう。

 

サタナエルの至近に、あたしがいつの間にか踏み込む。

 

サタナエルは戦略家だ。

 

今までので分かった。

 

ふいに至近に来ていたあたしに、サタナエルが流石に動揺。飛びさがろうとした瞬間、二段蹴りを叩き込む。

 

体勢を崩したサタナエルに、踏み込むと同時に後ろ回し蹴りを入れた。

 

ガードの上から、完全に通る。

 

吹っ飛びながらも、羽を使って体制を立て直すサタナエル。感情は薄いようだが、明らかに苛立つのが分かった。

 

「やはり危険だ。 個人でもつ戦闘力としては、劣等血統としては異常すぎる」

 

「ふーん」

 

「なんだ!」

 

「あなたもその思考からは逃れられないんだね。 血統なんていい加減極まりないモノなんだけど」

 

事実あたしの両親は農民だ。

 

戦闘力は多分父さんと母さんから引き継いでいる。

 

ザムエルさんと昔戦友だった二人は、今の穏やかな暮らしからは信じられないくらいの武闘派だったはずだ。

 

魔術の才覚もそうだろう。

 

二人は殆どひけらかす事はないが。前に母さんが熱魔術を極めてあっさりこなすのを見ている。

 

父さんもかなり出来ると今なら分かる。

 

しかし、錬金術の才覚なんて二人には無い。

 

神代の連中も、此奴の台詞を聞く限り、血統絶対主義者だったのだろう。だから滅んだのだ。

 

「……やはり此処で排除しなければならん。 出し惜しみせずに行く!」

 

「きなよ。 全部蹴り潰す!」

 

森から来る数体の魔物。湖に飛び込むと、一斉に泳いで来る。

 

あれは、最大サイズまで育ったラプトルか。

 

それだけじゃない。

 

後方の地下から、何か巨大なのが迫ってくる。まだ此奴、温存している戦力があったのか。

 

地面を吹っ飛ばして姿を見せるのは、巨大なワームだ。

 

口を八方に開くと、長い舌をずるりと振るう。

 

湖から次々に上がってくるラプトル達。これは、油断出来る相手ではないな。

 

「ライザ! 分が悪いぞ!」

 

「……耐えてくれる?」

 

「勝機があるんだな!」

 

「当たり前だよ!」

 

ボオスが、ラプトルの群れを必死に捌きながらこっちに叫ぶ。叫び返す。

 

あたしは意識を集中。

 

サタナエルは距離を取ると、何かしらの合図を出した。

 

あのフェンリルは、完全に体をこの世界から隠蔽できるが、攻撃の鋭さに関しては今までやりあった超ド級の魔物達よりだいぶ落ちる。その上手負いである。今までと違って、いきなり全力で仕掛けてくる筈だ。

 

そして狙って来るのは。

 

飛びかかってきたラプトルに回し蹴りを叩き込んで弾き返し、上から丸呑みにしようと踊り来るワームを紙一重で回避しつつ、熱槍を直に叩き込んでやる。真横から熱槍の直撃を受けたワームは。全身を振るって必死の反撃にでるが。あたしはそれを弾きつつ、バックステップ。

 

敢えて受けてやったのだ。

 

地面について、跳ね起きる。追撃のワームがくる。横っ飛びに逃れながら、熱槍を連続して叩き込む。悲鳴を上げてワームが身をそらす。だが、同時に横殴りに舌が飛んでくる。長い舌は、鉄で出来た鞭のような鋭さと強度を併せ持つ。

 

熱槍を連射して、弾き返した。

 

完全に戦力の空白地点になったあたしの周囲。あたしも立て続けの大技を食らって、対応できないタイミング。

 

そこに、凄まじい音が叩き付けられる。

 

サメが音を収束させ、あたしに向けてピンポイントでぶっ放したのだ。

 

勿論腕を用いてガードする。

 

全身がずり下がる。

 

飛び退きながら、反撃の熱槍を連射しつつ、その時が着たのを悟った。

 

真上から。

 

フェンリルが丸呑みに来る。

 

今のを受けて。サメに対する反撃をしているこのタイミング。あたしに対応できる隙なんかない。

 

「神話の真逆だが、それもかまわん! 神に仇なすものを仕留めろ、フェンリル!」

 

サタナエルが吠える。

 

そっか。

 

だが、その神話はかなわない。

 

あたしはふっと、足で蹴り上げる。それは、あたしを丸呑みに真上から空間を割って現れたフェンリルの口に、吸い込まれていた。

 

この乱撃が、狙ったものだと分かっていなかったら、どうにもできなかっただろう。

 

だがあたしは、サタナエルが狙っているのをもう悟っていた。

 

だから、対応できた。

 

ある程度敢えて隙を作り、それで攻撃を誘発した。

 

基礎の基礎。

 

戦術の基本。

 

相手に仕掛けさせたい場合は、敢えて隙を作れ。アガーテ姉さんから、叩き込まれた戦いの基本だ。

 

アネモフラムを炸裂させる。

 

フェンリルは何が起きたか分からなかっただろう。

 

体内で炸裂したアネモフラムが、フェンリルの全身を内側から焼き尽くし、即死させたのだ。

 

飛び退く。

 

空間の穴からずり落ちた、内側から吹き飛ばされた巨狼の死骸。

 

それが、そこに。

 

力無く横たわっていた。

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