暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3   作:dwwyakata@2024

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多数の魔物、それも雑魚では無い連中との大乱戦。

しかし中核であるフェンリルが落ちたことにより、一気に形勢は傾くことになります。


2、神殺しと呼ばれ

レントが吠える。

 

そして、サメと入れ替わりに襲いかかってきたラプトルの頭を、たたき割っていた。更にクラウディアが、立て続けにバシリスクに矢を浴びせる。バシリスクは走り回って回避しようとするが。

 

その鼻先には、タオが来ていた。

 

「遅いね!」

 

タオの乱撃が、バシリスクの顔を滅茶苦茶に切り裂く。

 

バシリスクの顔にある幾つもの目のうち、何個かが爆ぜ割れた。悲鳴を上げてバシリスクがさがろうとするが。

 

稲妻のように降り立ったリラさんが、バシリスクの脳天に杭のように膝を叩き込む。

 

竿立ちになるバシリスクに。

 

アンペルさんが空間切断の魔術を突き刺す。

 

喉を抉られたバシリスク。

 

そこにとどめとばかりに、ボオスが数度の剣を叩き込んでいた。

 

倒れ臥すバシリスク。

 

更に森からどんどんラプトルが来るが、皆が押し返し始めている。あの奇襲特化のフェンリルがいないのだ。

 

後問題なのは、攻撃を散々浴びているのに平然としている巨大サメと。

 

地中に潜って真下からの奇襲を繰り返してくるワーム。

 

猛毒の申し子であるバシリスクが倒れた今。

 

この二体に、集中攻撃を仕掛けていけば、活路はある。

 

サメが、周囲全域を吹っ飛ばすような音波攻撃を、見境なくぶっ放す。それだけではない。

 

奴の全身から、触手が生える。

 

今のは形態変化を行う痛み。

 

それを行わせる呪文詠唱か。

 

更に、動きが止まった瞬間を狙って、ワームが仕掛けて来る。狙って来たのは、フェデリーカだ。

 

足下から出現して、一気に飲み込みに来たが。

 

その瞬間、至近であたしが地面に全力の蹴りを叩き込んでいた。

 

フェデリーカも、セリさんの植物魔術で作り出した蔓が掴んで。安全圏まで引っ張り。地面から這い出てきたワームが、派手に血をまき散らしていた。

 

今のあたしの蹴りで。

 

地面の中で、四方から潰されたからである。

 

悲鳴を上げながらも、地面から這い出してくるワーム。そこに、クリフォードさんの投擲したブーメランが突き刺さる。

 

動きが止まった瞬間に、カラさんが大魔術を発動。

 

ワームの下半分が、即座に氷漬けになっていた。

 

動きが一瞬止まれば、それで充分。フルパワーの横蹴りを叩き込んで、ワームの体の下半分を、氷ごと蹴り砕いてやる。

 

地面にどうと倒れるワーム。

 

まだぴくぴくと動いていたが。

 

カラさんがとどめの雷撃魔術を浴びせて、完全にとどめを刺していた。

 

「さて……」

 

あたしが顔を上げる。

 

あの巨大サメは脅威だが、みんなに任せてしまって大丈夫の筈だ。あたしの相手は、あのサタナエルだ。

 

薬を飲み干す。

 

回復薬と同時に、全身の力を短時間増幅させるものも一緒に。フェデリーカが舞い始める。

 

ちょっと違う奴か。

 

ああ、なるほど。

 

任せてしまって良いだろう。

 

あたしは、体勢を低くすると、地面スレスレに跳ぶ。距離を取って様子を見ていたサタナエルが、直線的に間を詰めてくるあたしを見て、手にしているトライデントを振るが、遅い。

 

残像を抉らせて、そして飛び膝をサタナエルの顔面に叩き込む。

 

サタナエルは踏みとどまると、トライデントで唐竹割りを狙って来るが、すっと横に避けてかわしつつ。

 

今度は後ろ回し蹴りを叩き込んで、脳天にもう一撃を入れていた。

 

吹っ飛び、さがるサタナエル。

 

飛ばせる訳にはいかない。

 

此奴を逃がしたら、更に大戦力を揃えて来る可能性がある。そうなったら、サルドニカは壊滅する恐れがある。

 

神代の奴らが作った魔物の戦力は、それだけ強大だ。

 

フィルフサですら、奴らにとっては便利な戦力の一つ、くらいでしかなかったのだから。だから、見つけ次第に葬る。

 

それが出来るあたし達が。

 

それを此処でやらなければならないのだ。

 

「ぐ、くっ! お、おのれ……」

 

「前のサタンだかは最後まであたし達を馬鹿にしていたし、あり得ないとかほざいていたけれど。 貴方も同じ轍を踏むのかな?」

 

「サタンは己を神々のもっとも忠実な僕だと思い込み、事実そうだった。 私は違うぞ。 私はあくまで神々をお守りする盾である。 盾は影を孕もうとも、あらゆる手段で神々をお守りする」

 

「守る価値が無い存在を守るか。 まあいい。 あたしもその考えだけは敬意を払わせてもらうよ。 奥義をもって貴方を討つ」

 

サタナエルは、砕けた顔……顔と言うには機械的で、目も鼻も殆ど彫像のようだが。あたしの攻撃を再三喰らって砕け、血が流れているそれを振るうと。

 

飛び下がり、低い体勢を取る。

 

魔術は通じない。

 

だから、体術の奥義で挑ませて貰う。

 

サタナエルの周囲に、多数のトライデントが出現する。なるほど、これを一斉投擲して来る訳か。

 

後ろで凄まじい音。

 

巨大ザメと皆との死闘が佳境のようだ。彼方にも、加勢する余力は残しておかないとまずい。

 

だが、それはそれとして。

 

あたしを敵と考えながらも。

 

奴らに脳みそまで弄くられ、思考までもコントロールされていながらも。

 

誇りを持ち戦うこのサタナエルの僅かな光を、あたしは尊重する。

 

だから、ここで全力にて仕留めさせて貰う。

 

深呼吸すると、体勢を低くする。

 

時間がゆっくり流れるように思う中。

 

あたしは、地面を蹴った。

 

同時に、多数の熱魔術を発動。発動地点は後方。爆破して、一気に全身を前に押し出すのである。

 

そうして、最大速度まで加速。

 

サタナエルは、超加速したあたしを見ても怯まず、トライデントの飽和攻撃で迎え撃ってくる。

 

それも一撃一撃が、地面を抉り吹っ飛ばす破壊力だ。

 

防御全振りだったサタンと違い、こっちは盾と言いながら攻撃的だな。飛来するトライデントを、急所だけ避ければ良いとかんがえ、或いは弾き、或いは抉らせ、間合いを侵略する。

 

最後の一個を右腕で弾き飛ばし、至近に。

 

サタナエルが、胸部の装甲を解放。特大の魔力砲を其処に蓄えていた。

 

此奴も人間の要素があるのなら、こんなものを使ったら即死だろう。

 

そうか、そこまでの覚悟であるのなら、受けて立つ。

 

踏み込む。

 

ゼロ距離。

 

時間が、あまりにもゆっくり流れるように感じられる中。

 

あたしは地面に手を突くと、バクテンしつつサタナエルの頭を両股で掴み。勢いのまま、、全力でその体を回転させる。

 

「おおおおっ!」

 

空気に火花が散る。

 

それほどの速度での攻防と言う事だ。

 

魔力砲がぶっ放される。だが、その時には、あたしはサタナエルを掴んで振るっていた。直撃すればサルドニカが消し飛んだだろう魔力砲が、虹を描くように放たれ、空の雲を消し飛ばす。

 

あたしは弧を描きながらサタナエルを振るい。

 

そして、地面に、全力で頭から叩き付けていた。

 

「奥義、フォトンパイルブレイク!」

 

辺りの地面が砕け、吹っ飛ぶ。

 

クレーターが出来、あたしが息を整えながら立ち上がる。

 

クレーターの真ん中には。

 

頭を砕かれながらも。

 

最後まであたしを倒そうと全力を尽くし。

 

今のフォトンパイルブレイクで全身の構造を砕かれながらも。魔力砲をあたしに当てようと、執念で足を掴んでいたサタナエルの死体が、突き刺さっていた。

 

挟み、捻り、投げ、蹴る。

 

全てのあたしの蹴り技を収束させた最大奥義を最初に使わせた相手だ。あたしも敬意を持って、その亡骸をみつめた。

 

 

 

凄まじい地割れが来て、巨大サメが体勢を崩す。全員飛び退いて、巨大ザメから離れる。仕切り直しだが。パティには分かった。

 

ライザさんがやった。

 

サタナエルというあの魔物に勝ったのだ。

 

流石である。見ている余裕は無かったが、恐ろしい荒々しい戦い方をした事だけは分かる。

 

地盤が吹っ飛んで、此処まで砕けるのである。

 

はっきり言って、絶対に敵に回したくない。巫山戯た真似をしたらあの人に首を狩られる。

 

そう子孫に伝えるだけで、当面馬鹿な真似はしないだろう。そうはっきりと確信できるほどだ。

 

ただライザさんも、かなりのダメージを受けたはず。

 

あの人は自分を大事にするような戦い方をしないからだ。

 

此処からは、パティ達でこの巨大ザメと、残っているラプトルの群れをどうにかしなければならない。

 

それを悟ったパティは、フェデリーカに頷く。試してみたい舞いがあると、言っていたのだ。

 

元々フェデリーカの舞いは春夏秋冬にちなんだ神降ろしをするもの。

 

今まではそれを皆の強化。

 

それに、夏と冬による温度変化による奇襲。

 

それくらいにしか使えていなかった。

 

今後春と秋も使いたい。

 

全て使いこなしたとき。フェデリーカの固有魔術、神降ろしの舞いは完成するのだと。

 

凄まじい強さの魔物がわんさか現れている状況だ。

 

フェデリーカだって、もっと強くなりたいと考えるのは当然だ。

 

ライザさんみたいに明らかに人間を越えている強さになりたいと思うかは兎も角。世界に溢れて好きかってしている魔物をどうにかできる強さに関しては、此処にいる皆が求めているだろう。

 

大太刀を強く握る。

 

形態変化した巨大ザメは、触手を振るって周り全部を攻撃するだけじゃない。魔術に対する強烈な耐性と、複数の魔術を同時に展開して全範囲を薙ぎ払って来る。それに加えてあの桁外れのパワーだ。

 

レントさんとディアンが壁になってくれているが、それもあまりもたないだろう。

 

「タオさん! 突撃します! 支援を!」

 

「分かった! 任せるよ!」

 

頷くと、突貫。

 

巨大ザメはディアンの猛攻を受けて、触手で弾き吹っ飛ばしたところだ。吹っ飛んだディアンが、リラさんと交戦していた巨大ラプトルに突っ込み、もろともに倒れる。即座にラプトルの首をリラさんがへし折ったのは流石だ。

 

パティは走る。

 

触手。抜き打ちで軌道をずらし、そのまま回避。魔術。火の矢が飛んでくるが、これは大丈夫。

 

強引に突っ切る。

 

熱いが、身を固めている装備の守りもある。

 

これくらいだったら、耐え抜ける。

 

更に走る。巨大ザメが、レントさんと激しくぶつかり合っているが。こっちにも注意を払ってくる。

 

あのアンペルさんの空間切断をかき消すほどだ。

 

こいつの魔力耐性は生半可な魔物なんて比較にもならない。今の時代の海の王者。それがサメ達だ。

 

だが、地上に上がれば。

 

人間だって、勝機はある。

 

大量の矢がサメに襲いかかる。サメは触手を振るわせ、シールドを即座に作り、防ぎ抜く。

 

その隙間をクリフォードさんのブーメランが狙うが。サメは器用かつ俊敏に動き、ブーメランを肌で受け、滑らせてダメージを最小限に抑え。

 

カラさんが投擲した巨大な氷の錘を、尻尾で叩いて粉砕する。

 

地上でも機動力が凄まじい。

 

レントさんの大剣に噛みつき、動きを封じに掛かるサメだが。

 

その時、パティが足下に到達していた。

 

集中。

 

目の前の至近だけが見える程に、集中して一気に力を爆発させる。

 

大太刀を抜く。

 

横薙ぎ。

 

続けて、斬撃を立て続けに繰り出す。サメの肌が大きく抉れ、巨体を揺らしてサメがパティを排除に掛かるが。

 

タオさんが触手を弾き返してくれる。

 

そう信じて、連撃を加速させる。

 

火を噴くような連撃の末に。

 

真上に跳躍。

 

上空から、鷹のように巨大サメに襲いかかる。

 

巨大サメが、触手を多数展開して、迎え撃ってくる。だが、その全てを、カラさんの援護射撃と、クラウディアさんの援護狙撃が弾く。

 

ありがたい。

 

空中で納刀。

 

そして、サメの背中から腹に掛けて、一気に駆け下りながら、抜刀し切り抜き、更に納刀、抜刀を繰り返す。

 

五十七の斬撃を叩き込んだ後、地面に着地。

 

すっと、それで集中が抜けた。

 

ルミナイトイグニス。

 

そう呟くと、飛び離れる。

 

ダメージを受けつつも、まだ戦えるサメが、ひれをパティに叩き付けて来る。吹っ飛ばされるが、時間は稼いだ。

 

見える。

 

フェデリーカが、舞いを完成させていた。

 

あれが、春夏秋冬の力を結集させた神楽か。船で散々練習していた。カラさんにアドバイスを受けながら。

 

どんな足場でも舞えるように、必死にやっていた。

 

それだけじゃない。

 

パティも頼まれたのだ。ちょっとやそっとの事では動じないように、フェデリーカの稽古を見て欲しいと

 

舞うフェデリーカに、何度も真剣で仕掛けて。

 

メンタルに問題があるフェデリーカは、本番で舞えるようになったのだ。

 

「行きます! 神楽舞奥義! 千変万幻の舞!」

 

巨大ザメが。

 

温度変化の嵐に包まれる。

 

高熱、低熱だけじゃない。あらゆる温度に、巨大ザメが包まれ、そして翻弄される。サメは確か体温を自力管理できない。いや、大半の生物も、機械だって、あんな無茶な温度変化には耐えられない。

 

悲鳴を上げる巨大ザメに、レントさんが突貫。

 

巨大ザメの鼻面に、大剣の一撃を叩き込んでいた。

 

悲鳴を上げながら、それでも温度変化を吹き飛ばす巨大ザメ。

 

その全身に、クラウディアさんが放った矢が突き刺さり、片目をクリフォードさんの投擲したブーメランが抉り取る。

 

たまらずさがった巨大ザメの頭上。

 

パティは思わず絶句し、即座に飛びさがる。

 

あんなもの、巻き込まれたら即死だ。

 

巨大ザメも上を見る。

 

其処にあったのは、恐らくは魔術の究極。カラさんが練り上げた、あらゆる属性が混ざり合った極限の破壊の権化。

 

「覚悟は良いな……?」

 

巨大ザメがシールドを展開する。だが、既に全身ぼろぼろだ。触手も動かないものが多い。

 

そこに、カラさんが、すっと指を向ける。

 

「魔術の力は月の力。 受けるが良い、月の裁きを」

 

巨大ザメが、必死に力を振り絞り、巨大なシールドを更に展開。二枚、三枚、そして四枚。

 

だが、それは。

 

風に揺られる、ろうそくの火にしか見えなかった。

 

「魔術の深奥を見せてやろう。 ルナ・ジャッジメント!」

 

あまりにも、さっくりと。

 

音もなく、その魔術の巨大な矢は。

 

まるでクリームを棒で突き刺すようにして。

 

シールドごと、巨大サメの体を貫いていた。

 

柔らかい光が漏れる。

 

そして、それが収まったときには。もう、巨大サメは動いていなかった。

 

呼吸を整える。

 

凄い。

 

カラさんが世界最高の魔術師である事は疑っていなかったが。ライザさんの装飾品による強化がそれに加わると、此処までの破壊力が出るのか。

 

千三百年フィルフサと戦って生き残ってきているのも納得である。

 

逆に言うとこの人ですらフィルフサの群れはどうにも出来なかった。ライザさんが怪物過ぎるのだ。

 

へたり込んでしまう。

 

既にラプトルは全滅していた。

 

辺りには、多数の死体と臓物が散らばって、焼け焦げた臭いがしている。

 

どうやら、サルドニカに戻って最初の苦難は、乗り越えられたようだった。

 

 

 

まず皆の手当をしてから、タオにひとっ走り行って貰う。

 

サルドニカから人手を出して貰い。

 

あたし達は、エアドロップで魔物の死骸を運び、其方で受け取って貰うのだ。フェンリルの死体は内側から丸焦げだが。比較的ワームやバシリスクの死骸は綺麗に残っている。後で丁寧に解体する。

 

巨大サメは、体内をばらしてみたが、セプトリエンは見つからなかった。ただ、ひれなどの先端はもの凄い魔力を放っている。

 

これは切り札として、素材に使えるかも知れなかった。

 

サルドニカに、魔物の死体が運ばれて行くのを見送る。

 

もう夕方で、そろそろ夜になる。

 

死闘だったが、それほど長くは続かなかったのだ。嘆息して、粉々に打ち砕いたサタナエルの死体を荷車に詰め込んでおく。

 

人間も含めて改造した、人間がやって良い事では無い悪逆の結果の存在。

 

脳みそまで弄られ、自主的な意思すらもてない者達。

 

だけれども、此奴はそれでも誇りを持っていた。

 

それは尊い事だっただろう。

 

解析して、もう少し敵について知る必要がある。

 

出来るだけ効率的に殺すためだ。

 

サルドニカに戻ると、フェンリルの死体に民が群がっていた。あたし達の姿を見ると、ひっと声を漏らす者もいる。

 

フェデリーカが前に出た。

 

「ギルド長!」

 

「此処にいるライザさん達が死闘の末にこの恐ろしい魔物達を仕留めてくれました。 もしもこの人達がいなかったら、サルドニカにこの魔物達が襲いかかっていたでしょう」

 

ざわつきが消える。

 

当然だ。

 

フェデリーカの声はあまりにも怜悧だ。フェデリーカも、流石に頭に来ているようだった。

 

「誰のおかげで皆が命を拾ったのか、考えてください。 私はこれから、戦後処理に移ります。 みなさんも、この恐ろしい魔物達が街の近くにいたということを、肝に命じてください」

 

「……」

 

民が散って行く。

 

ディアンが、なんだよと口を尖らせる。

 

「なんで素直に有難うがいえないんだ。 ライザ姉とみんなで此奴らブッ殺さなけりゃ、今頃この辺り血の海だろ」

 

「ディアンくん、今日は食事にして、もう休もう」

 

「クラウディアさんがいうならそうするけどよ、納得いかねえ」

 

「じきにわかるようになるさ」

 

ボオスが寂しそうにいう。

 

まあボオスは経験者だ。だからこそ、余計にディアンの憤りは分かるし、こたえるものもあるのだろう。

 

宿は取ったがキャンセルだ。余力はあるからアトリエに戻る。そんな余力もなくなる事も考慮して宿を取ったのだし、キャンセル料なんて痛くも痒くもない程度に蓄えはあるから問題は無い。

 

アトリエに戻り、アトリエの前で獲物を解体する。あの大乱戦だったし、綺麗なままの素材は余り取れなかったが。

 

ただ、バシリスクの体内からは、小さめながらセプトリエンが見つかったし。

 

サメの骨は強靭で、色々な用途に使えそうだった。

 

皆の装備もひとつずつ点検する。

 

調整は必要なさそうだが、今後の強化は必須だろう。あたしが湯沸かしに行こうとすると、ディアンが代わりにやってくれるそうだ。

 

ディアンに任せて、後はのんびりする。

 

クラウディアとパティとフェデリーカは料理を始めているが。

 

あたしには声が掛からないのは、まあそういうことだ。

 

「時にライザ、あのサタナエルとか言う奴を肉弾戦だけで倒したのか」

 

「魔術通じなかったからね」

 

「そ、そうか」

 

ボオスがちょっと引いている。

 

なんだ今更。

 

ボオスだって現時点では、生半可な傭兵なんか束になってもかなわない実力だ。そろそろアガーテ姉さんに並ぶかも知れない。

 

別にあたしは錬金術抜きだと、そこまで皆の中で傑出して強くはない。

 

錬金術を正しく使っていなければ、此処までの戦力は出せない。

 

逆に言うと、あたし程度でも錬金術を使うとあれくらいの実力になると言うことである。戒めなければならないだろう。

 

あたしが慢心して堕落したとき。

 

神代のカス共と同じになりかねないのだから。

 

料理が出来てから、皆で食卓を囲む。

 

「前の個体より弱かったとは言え、あのフェンリルをあっさり倒せたのは、とても良い事ですね」

 

「そうとも限らん。 サタンだかの同類はまだいるのだろう。 流石に危機感を募らせて、更に強大な戦力をぶつけて来る可能性がある」

 

パティの言葉に、リラさんが釘を刺す。

 

あたしも同意見だ。

 

次は何を繰り出してくるか分からないが、いずれにしても油断は出来ない。

 

そしてもう一つ分かった事もある。

 

途中サルドニカで仕入れたらしいラム肉を臭みを抜いて仕上げたスープを飲みながら、見解を皆に伝える。

 

「サタンとサタナエルは随分と考え方が違ってた。 まだ残りがいるとして、其奴らも考えは独自の可能性が高いとみて良いと思う」

 

「そういえばライザさん、サタンはとことん軽蔑していたようでしたけれど、サタナエルには敬意を払っていたようですね」

 

「……頭を弄くられ、思考を固定されていた所までは同じだったけれどね。 サタナエルは、誇りを持っていて、主君を守ろうとしていた。 守る価値が無い主君なのは事実だったけれども、それでも全力で相手をするべき敵だったよ」

 

パティにそう答えておく。

 

苦労したからか。

 

ボオスはちょっと苦虫を噛み潰していた。

 

焼きたてのパンがなかなかに美味しい。小麦の質が上がっているらしい。バターを塗って食べる。

 

他にも豪快に焼いた牛の肉もなかなかだ。

 

繊細な料理だけではなく、クラウディアはこういう豪快な料理もしっかり出してくれるのが嬉しい所だ。

 

意外に小食なディアンは、豪快な料理は喜ぶが、食べ尽くしてしまうようなことはない。

 

クラウディアも計算がしっかりしていて、丁度皆が食べきるくらいの料理を出してくれるのだった。

 

食事を終えた後、風呂に入って、汗と血を流す。

 

しばしぼんやりしてから、ちょっと調合をして調整して。

 

その後は、休む事にする。

 

サルドニカの百年祭には協力しておきたい。

 

元々サルドニカは好事家に対する芸術品ではなく、各地で使われる実用品で稼いでいた街だ。

 

魔石細工と硝子細工で街の力を割ってしまって、争いまでしていたら愚の骨頂である。

 

この機会に、しっかり街のあり方を改めて。

 

それで、団結して世界をよくする方向に動いて欲しい。

 

フェデリーカはそう考えているだろうし。

 

あたしもそれは同意見だ。

 

それと同時に、世界の危機にも対処しなければならない。

 

神代の連中をのさばらせていたら、何度でも同じ事がこの世界でもオーリムでも起きる事だろう。

 

奴らの根拠地を灰燼に帰すためにも。

 

早々に鍵の強化をするための金属と。

 

各地の座標。

 

それに、奴らの根拠地の座標について。

 

調べ上げなければならなかった。







※フォトンパイルブレイク

本作におけるライザのもう一つの奥義。魔術の奥義がフォトンクエーサーだとすれば、蹴り技の奥義がフォトンパイルブレイクです。

技の流れはプロレスなどにもある足で挟んで相手を投げつつ頭から叩き付ける技に近いですが、ライザの場合は足の力に魔術や錬金術装備でとんでもない倍率が掛かっている事もあって、挟まれた時点で「人間は」即死です。魔物でもただではすみません。挟まれる時点で致命打が入るのです。

それに加えてライザは捻ると投げるの動作も入れているため、相手は文字通り頭から地面に、しかも地盤を砕くほどの破壊力で叩き付けられる事になります。結果として首が折れるなんてなまぬるい話ではなく、構造体から完全粉砕されることになります。

文字通りの必殺技。「必ず相手を殺す技」です。慈悲はありません。

魔術が通じない相手もいる中、ライザが確実に相手を倒せる技として開発したのが。この殺意の塊みたいな技なのです。

なお多段蹴りの類ではないのは、魔術の奥義であるフォトンクエーサーが膨大な火力投射をする応用が効く多段型の技なので、懐に入ってからの一撃必殺技として差別化したためです。
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