暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3 作:dwwyakata@2024
東の地。
歴戦の戦士ですらいつ落命してもおかしくない其処は、神代の頃からずっと錬金術文明に抵抗を続けてきた土地だった。
例え土地を支配されても抵抗を続け、名のある錬金術師を何人も倒した。
その土地の戦士達は、侵略者を必ず殺し、どんな手を用いても土地を守った。
その荒々しい魂は今も受け継がれているが。
それ故に神代の者達は其処への執拗な攻撃を続けて。様々な生物兵器を放ち、絶滅を目論んだ。
実はフィルフサも、この土地に投入される予定があった。
それをガイアは知っていた。
母による解析の結果分かってきた事である。
いずれにしても、この土地にいる魔物は実力が他の土地と次元違いであり。此処が島国でなかったら、古代クリント王国が滅びたタイミングでこの土地の魔物が流出し、人類が滅亡していてもおかしくなかった。
今、この土地の長である「征夷大将軍」と同胞は連携しており。
最重要拠点に、常に精鋭を展開しているが。
今回の敵の猛攻は凄まじく、歴戦の戦士達……同胞から見ても唸らされる腕の豪傑達が、次々に命を落としていた。
ガイアは希望たるアインのために、さらには同胞のために人間と子を成し、四代先まで子孫がいるが。
戦力は衰えていない。
四代先まで行くと、同胞としては思考などがずれてくるが、それはあくまで「同胞と比べて」である。
生物的な特徴で差異は出ない。
特に疫病などの耐性は致命的で、遺伝的な多様性は一切確保できない。
これが如何にまずいかは、ガイアは良く知っていた。他愛もない病気で同胞がころっと死ぬ所を何度も見ている。
だからこそ。
アインは希望であり。
ガイアも希望のために命を賭けるのだ。
今、ガイアは激戦が続いている「東砦」に向かっている。ベヒィモスが暴れているのもあるのだが。
それ以外にも多数、本土では見られない魔物が暴れており。
同胞から技術提供し、屈強のこの地の戦士「侍」がそれを用いてなお、防戦がやっとという有様だった。
「ガイア、着到!」
「おお、名高きガイア殿か!」
「助太刀感謝する!」
東の砦は、土と木で作られているが、これはこの土地に地震が多いからだ。石造りだと地震に耐えられないのである。
すぐに最前線に。
うめき声が彼方此方から聞こえる。
負傷者が次々とさがってくる。補充される戦士は、それに対して明らかに足りていない状態だ。
上。
飛来したのは、それこそ育ちきったエイほどもある鳥の魔物だ。それを、ガイアは即応し、手にしている巨大な弓で叩き落とす。
こんなのは、この土地では雑魚だ。
頭が爆ぜ割れた鳥が、その場に落ちて。
バタンバタンと暴れた後、動かなくなる。おおと、声が上がっていた。
「流石のお手並み!」
「名人の武芸よ!」
「有難う。 それより戦況は」
砦の前門に出る。かなりの乱戦の中、魔物の猛攻を必死に侍達が支えている。魔術も飛び交っているが、魔物が使う魔術には時間系や空間系もおおい。
この土地を支配しようとした古代クリント王国が、遠征軍をひねり潰されたのも納得が行く。
こんなのを相手に戦い続けた……それも千年以上も……集団が相手だったのだからだ。
「敵の猛攻激しく、味方苦戦著しく!」
「分かった。 すぐに出る!」
「心強し! 名人ガイア殿が出られる! 気勢を上げよ!」
「エイトウトウ!」
叫び声が上がる。
ガイアは連れてきた四名の同胞とともに、魔界の住人そのものの魔物の群れに突貫していた。
「サタナエルが倒されただと!?」
四刻にいたる激戦の末、どうにか生きて戻ったガイアが、血を拭き取りながら聞く。観測者の中の一体。
サタンと同じく、収穫を目論んでいた神代の負の遺産だ。
伝令に来た新参の同胞に聞かされる。倒したのは、聞くまでもない。まあ、ライザだろう。
「観測者共の動向は」
「分かりません。 ただ恐らく、ライザリンに最大級の警戒をするものと見て間違いないかと」
「……分かった。 現地での観測を引き続き行え。 彼方にはコマンダーがいるから、し損じる事はないと思うが」
「それと、母より伝言です」
頷く。
アインのために動くのもそうだが。神代の連中とは違う行動原理で動いている母の命令もまた、ガイアにとっては絶対服従のもので。
そして何よりも、母は消耗品と同胞を考えていない。
命を賭けるに相応しい存在である。
「ハッキングが完了した区画の中に情報あり。 観測者は全部で五体。 その内一体が、この地にいるようなのです」
「……!」
「コマンダーが母と協議を行うようですが。 もしも観測者がベヒィモスを操作していた場合は厄介です。 観測者はどれも魔物を自在に操作する力を持ちます」
「そうだな……」
ベヒィモス一体が現れただけで、屈強の東の地の戦士達がこうも苦戦するのだ。
この地には奴と同格の魔物が数体はいる。
全部が同時に動き出しでもしたら、手に負えない。
幸い、観測者共の目的は人間の殲滅では無い。人間の命もどうでもいいと考えている連中ではあるが。それだけは救いか。
「分かった。 我等はこの地で敵を食い止める。 それだけ母に伝令を」
「は……」
伝令の同胞がさがる。
ため息をつくと、休憩を終えて立ち上がる。
これは、今日中に大物を何体か倒さないと、戦況を好転させるどころではないな。
そう、ガイアは悟っていた。
(続)
描写からも分かるとおり「東の地」はもろに日本……ではなく、日本っぽい世界です。
これはどういう場所なのか、後に説明が入ります。