暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3   作:dwwyakata@2024

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会敵。

神代の作ったある意味最高傑作との交戦開始です。


2、魔界の入口

鉱山の奧に入る。壁際に並んでいた幽霊鎧の原型と思われる兵器は、予想通りというか。近付くと襲いかかってくる。

 

動きが驚くほど滑らかで、重装の鎧を着込んだ人型とは思えないし。

 

中身ががらんどうだとも思えない程だ。

 

「炎は出来るだけ使わないように! 空気の入れ換えが出来ていない可能性が高い!」

 

「分かった!」

 

警告を飛ばしながら、あたしは前衛に出ると、ボオスに右から斬りかかろうとしていた幽霊鎧の原型らしいのを、中段からの蹴りで叩き伏せていた。

 

吹っ飛んでバラバラに散らばる幽霊鎧の原型。

 

だが、今の手応え。

 

重いな。

 

「堅ったあ……!」

 

「手強い相手だ! 気を抜くんじゃねえぞ!」

 

レントが二体同時に相手にしている。リラさんも。セリさんが、覇王樹で一体を押し潰すが。

 

覇王樹で倒し切れない。

 

アンペルさんが、数度空間切断の魔術を叩き込むが、ちょっと破損しただけでとまる様子もない。

 

見た目よりも。

 

遙かに厄介な相手だ。

 

「もっている剣も凄い業物です! 剣技の技量も高い!」

 

「接近戦が苦手な人は前線に近寄らないで! 一太刀で斬られるよ!」

 

「畜生、達人とやりあってるみてえだ! 本当にこいつら、中に人がいないのか!」

 

「いないよ! でも……」

 

首を狩りに来た一太刀をかがんでかわすと。

 

逆に回し蹴りを叩き込んで、鎧をくの字に拉げさせる。

 

壁にぶつかって大破して、それで動かなくなる。

 

この装甲、恐らく合金だ。

 

そして分かる。

 

これは、求めていたものだと。

 

それはそれとして、此奴らがサルドニカに進軍でも始めたら、恐らくはとめる事は出来ないだろう。

 

今、此処で。

 

全滅させるしかない。

 

激しい戦いの末に、どうにか敵を全滅させる。深手を負ったのは、ボオスとパティ、リラさんか。

 

すぐに薬を塗り込む。

 

あたしの薬は効果がどんどん上がっている。ただ、右腕がぶらんぶらんになっていたボオスは、顔色が真っ青なので、一度後方にさがらせる。

 

レントが、ざっくり斬られた鎧を見て、嘆息していた。

 

「こいつらの剣普通じゃねえぞ。 鎧の曲部分にあわせて弾こうとしたのに、完璧なタイミングで切り裂いて来やがった」

 

「……ひょっとするとだけれど、本当に達人なのかも知れない」

 

「どういうことだ」

 

「神代の連中は、ホムンクルスなんて形で命を作り出すことさえ出来た。 フィルフサや各地で暴れている魔物にも、神代に作り出された者もいる。 サタンやサタナエルは、頭の中を弄くられて思考を完全にコントロールされていた。 だとすると……例えば達人の記憶を集めて、最強の剣技を幽霊鎧に振るわせる。 そういう事が出来るのかも知れない」

 

冗談じゃねえぞとレントが言う。

 

レントは一部だけ鎧を着けている。それは魔物の攻撃を耐えるためのものではなくて、体捌きである程度「弾く」「逸らす」事を目的としたものだ。人間が振るう武器には、それは更に有効になる。人間の主敵が魔物になったから鎧は廃れたのだが。使い方次第では、命を守れる。

 

パティみたいな軽装戦士は、余計に鎧での「弾く」「逸らす」が立ち回りで大事になってくるのだ。

 

だが、この敵の技量。

 

ちょっと侮れない可能性が高い。

 

「妙じゃな」

 

「カラさん、何か思い当たる事が?」

 

「ウィンドルに攻め寄せた錬金術師どもは炎の牙や光の剣を持っていて、それらの破壊力は凄まじかったが。 一方で使いこなす技量はお粗末そのもので、それで我等でも対抗が出来たという面があってのう。 そんな達人の技を抽出できたのなら、何故奴らはそれを学ばなかった」

 

「……或いは錬金術師以外は卑職と考えていて、剣術なんかは軽視していたのかも」

 

これはあくまで仮説なので、そうだとは言い切れないのだが。

 

可能性は大いにある。

 

怪我の手当てが終わる。ボオスに栄養剤を渡す。指を二本切りおとされたパティは、薬でそれをつなげて。

 

もう問題ないと、動かしていた。

 

フェデリーカはそれを見て、絶句している。

 

まだまだ線が細いな。

 

とにかく奧に。

 

最大限の警戒をしながら進む。通路そのものは格子状と言うか、なんというか神経質に整えられていて。

 

坑道というよりも。

 

地下に作られた建物のようだった。

 

また幽霊鎧が来る。

 

ただ、通路の一方からだ。

 

カラさんとあたしで連携して、大火力の冷気魔術でまとめて凍らせ。続けてプラジグを複数叩き込んで、範囲攻撃をぶち込んでやるが。

 

なんと耐え抜いて、迫ってくる。

 

これは雑魚とは侮れないな。

 

フラムはダメだ。兎に角、この坑道……いや遺跡と言うべきか。此処の解析を済ませないと、窒息しかねない爆弾は使用厳禁である。

 

「くっそ! つええ!」

 

「感情が読めないから、やりづらくて仕方がありません!」

 

「うおっ!」

 

ディアンが斬られた。

 

リラさんが引っ張って、まだ戦おうとするディアンを引き戻す。やれると叫ぶディアンをあたしは抑え込むと、薬をねじ込む。というか、内臓まで傷が達している。このまま戦えば死ぬ。

 

激しい戦いに、あたしも参戦。

 

斬撃が兎に角綺麗だ。本当に達人なんだ。少なくとも、技だけは。

 

だからこそに、剣が泣いていると言える。

 

此奴らの使っている剣だって、グランツオルゲンが入っていないとはいえ、凄いテクノロジーの産物だ。

 

使うのも達人の技。

 

全て外道を極めている神代錬金術師の走狗として仕上げられたのだとしたら。

 

どっちも無念だろうな。

 

蹴り砕く。

 

もう一つ、蹴り砕く。

 

レントが肩をざっくりやられながらも、豪腕を振るって数体の鎧をまとめて吹っ飛ばしていた。

 

今の時点では、倒すには構造を完全破壊するしかない、

 

叫んで、更に一撃。

 

また、短いが激しい戦いの末に、負傷者を大勢出しながらも、なんとか幽霊鎧の殲滅に成功していた。

 

「倒した幽霊鎧は徹底的に破壊して、残骸は荷車に詰め込んで。 剣はとても鋭いから気を付けて」

 

「この剣、王都で騎士達が見せびらかしているものなんか問題にもならない業物ですよ……」

 

「でもなんか量産品っぽいんだよねえ」

 

「それは、確かに。 一本ずつ名匠が魂を込めて打った業物とは違いますね」

 

パティは何度も手傷を受けても、治療を受けて向かって行く。戦士としては、既に完成していると言う事だ。

 

ただ、皆の消耗が激しい。

 

昂奮物質が出て傷みが消えているだけで、体を欠損していてもおかしくない。一度点呼をして、皆に五体無事か確認して貰う。

 

その上で、栄養剤を渡す。

 

休んでいる間は進まない。

 

この様子だと、まだまだ幽霊鎧はいるだろうし。みんな達人並みの技量だし。戦えば大きな被害が出る。

 

そんな状況で、迂闊に進むわけにもいかなかった。

 

タオが地図を見せてくる。

 

「この鉱山……いや遺跡なのかな。 意外と狭いかも知れない。 抵抗さえ排除できれば、一気に奧に進めるかも」

 

「……薬の残量がちょっと心許ない。 もう一戦で今日は切りあげかな」

 

「少し時間が余るね」

 

クラウディアの指摘ももっともだが。

 

余った時間は、物資の補給だ。いずれにしても此処の敵は質が高い。それに……。

 

散らばっているこの素材、極めて優秀だ。回収して、鍵の素材にしてしまうべきだろう。

 

それと、この鎧を作る材料になった原石を見つけられれば、更に有益だと思う。或いは、改良出来る可能性も高いからだ。

 

それと、もう一つ気になる事がある。

 

「レント、パティ、リラさん。 戦った幽霊鎧達、なんだか動きが似ていなかった?」

 

「そういえば……確かに剣筋なんかは全く同じだったな」

 

「私もそう感じました。 手強い相手ではあったのですが」

 

「私も同意見だ。 もう何度か戦えば、より容易に勝てるだろうな」

 

そうなると、みな同じ技量なのかも知れない。

 

其処が気になることなのだ。

 

少し考えてから、意見をまとめてみる。

 

「サタンやサタナエルは脳を弄られていた形跡があったんだ。 サタナエルは粉々にしちゃったけれども、それでも残骸からはそういった形跡が確かに見つかった」

 

「そういう話はしていたな」

 

「でもこれらは空っぽなんだよ。 そもそも幽霊鎧の技術が、空っぽなのにどうやって動かしているのか……」

 

からくりなのは分かっている。

 

つまりは機械の一種、ということだ。

 

だが、どういう機械なのか。

 

後代の幽霊鎧は、より動きが鈍いし、いかにもからくりという感じで動く。しかし神代のものは……。

 

明らかに、達人レベルの剣技を、滑らかに繰り出してくる。

 

鎧の装甲も分厚い。

 

まさかとは思うが、何処かに何かしらの未解析の仕組みがあるのか。しかし、それを解明するには。幽霊鎧を無事なまま錬金釜に放り込んで溶かすしかないだろう。それは流石にこの面子でも無理だ。

 

「ライザ、今はとにかく遺跡の深部に向かおう。 この守り、はっきりいって過剰だ。 絶対に何かあるよ」

 

「同意見だな」

 

タオとクリフォードさんに言われて、頷く。

 

まずは深部に到達すること。

 

そして、この遺跡を解き明かす事は、必ず大きな意味を持つと、あたしは確信していた。

 

 

 

夕方少し前にサルドニカに戻る。薬の消耗が激しい。フェデリーカは精神的にも消耗が激しいようで、本部でデスクワークをしてから戻ると言う事だ。ボオスだけ来て欲しいと言う事だったので、貸す。

 

まあボオスも相当しんどそうだったし、それで大丈夫だろう。

 

アトリエに戻ってからは、戦闘で最も激しく戦った前衛から順番に風呂に入って貰う。あたしは粉々にした幽霊鎧の残骸を錬金釜に放り込んで解析だ。

 

調べて見ると、未知の鉱石だが。

 

腕組みして考え込んでしまう。

 

確かこれ。

 

コンテナから取りだして、調べて見る。

 

正解だった。

 

これ、フェンリルが咥えている剣と同じだ。あれも色々と解析が進んでいるのだが。そうか、神代では量産出来る品だったのか。

 

ディアンが風呂から上がって、珍しくへばっている。今日は負傷がひどく、内臓へのダメージもあったし大出血もあった。

 

調査は一旦切り上げて、薬を補充する。セリさんも、せっせと薬草を出してくれる。かなり厳しい相手だった。明日は午前中、休憩に回しても良いかも知れない。

 

フェデリーカが戻った。

 

サヴェリオさんをつれている。硝子ギルドでなにかあったのか。ちょっと不安になったのだが。

 

サヴェリオさんは、あたし達が大苦戦したのを何となく悟って、様子を見に来たらしかった。

 

「ず、随分な有様だな。 あんた達に勝てる魔物なんて想像できないとまで思っていたんだが」

 

「世の中広いですからね。 それで何かありましたか」

 

「いや、そろそろドゥエット溶液が尽きそうでな。 ギルド長が提案してくれた実用的な街灯に関しても進めてはいるんだが、広場中央に飾るものは、やっぱり職人の技術の粋を詰め込みたい。 ドゥエット溶液の品質強化を急いでくれるか」

 

「今調査中の鉱山を突破したら……その次に行きます。 それまでは待って貰えますか」

 

問題ないとサヴェリオさんは言う。

 

アルベルタさんはというと、魔石部分が出す灯りを調整しようと色々やっているそうなので。

 

まあ、より高品質なドゥエット溶液は欲しいのだろうが。

 

今は職人としての仕事に全力を注ぎたいのだろう。

 

それについては、あたしも錬金術に対する比重を上げたい時があるから、分からないでもない。

 

「しかしサルドニカの北がそんな魔郷だとはな……」

 

「この世界は魔物が多く、それらの多くが人間に敵意を向けています。 だから、あり得ない話ではないですよ」

 

「それは分かっているつもりだったが……」

 

「とりあえず、サルドニカの周辺での入植は出来るだけ控えてください。 少なくとも一世代は」

 

サルドニカは別に人口爆発しているわけでもない。

 

鉱山街など、周辺の集落を整備する方が優先度が高いだろうとあたしは思う。

 

それについては、フェデリーカとも話してある。

 

今のフェデリーカは、そういったことが出来るだろう。

 

時々パティと政治の専門的な話をしているのを見かける。どっちも重要な政治的なポストをもっている。

 

だからこそ、わかる事もあるのだろうし。

 

「高地の方にも危険な奴がいます」

 

「マジか……」

 

「ええ。 ただ、今回の遠征で片付けます。 それでも全部始末できるかはわかりませんから、迂闊な入植は避けてください」

 

頷くと、サヴェリオさんは戻っていった。

 

ボオスがぼやく。

 

職人が入れ替わり立ち替わり、好き勝手なことをほざいているのを見るという。硝子ギルドと魔石ギルドはある程度統率されている方で、小規模なギルドだと、かなりゴロツキと区別が付かないような職人が混じっているそうだ。

 

小規模なギルドは街での発言権を挙げるために、何でもかんでも職人として囲い込むケースが多く。

 

流れ者だったり与太者だったりが、いつの間にか職人面をしてギルドに潜り込んでいるケースがあるらしく。

 

そういう連中からの悪影響を真面目な職人が受けることもあるらしいと、ボオスが嘆く。

 

クーケン島でも他人事じゃあない。

 

アガーテ姉さんががっつり見張っているからいいが、それでも時々与太者やお尋ね者はやってくるし、暴虐の限りを働くケースが多いのだ。

 

まあ近年では全部首だけにしてお帰り願っているので。あたしの名前が、その手の輩には恐怖とともに知られているのだろうが。

 

「それで、どうするんだ。 明日もあの恐ろしい鉱山に行くのか」

 

「タオ、後どれくらい戦闘が見込まれる?」

 

「地図を見る限り、多分だけれどもあの鉱山は遺跡であって、入口付近以外は研究施設か工場になっていると思う。 鎧が配備されているのは入口付近だけで、恐らく明日中に抵抗は排除できると思うよ」

 

「随分楽観的だけど、まあいいかな」

 

あの幽霊鎧の大きい奴がいたら、とんでもない脅威だが。

 

さっき調べて見た感じだと、そもそも使っている素材が見た事もない鉱石だと判断していい。

 

神代では、或いはサルドニカの近辺は、そういった鉱石を採掘する場所で。それが古代クリント王国の時代で全滅した事で、跡形もなくなり後世に伝わらなかったのではないだろうか。

 

そういう可能性すらあった。

 

ともかく、薬を増やしておく。

 

明日の戦闘で、ある程度攻略の目星をつけなければならなかった。

 

 

 

翌日は皆の疲労を考えて、午前中はゆっくりする。

 

敵の動きをある程度見切ったらしく、リラさんがボオスとタオに講義をしていた。二人ともかなりの達人だが、それでも流石にリラさんにはまだまだ及ばない。

 

「今説明したのはあくまで傾向だ。 だが、傾向が分かっているだけで、戦闘では手傷を減らす事が出来るはずだ」

 

「ありがたい。 助かった」

 

「リラさんは相変わらず頼りになりますね」

 

「そうでもないさ」

 

リラさんの表情はほろ苦い。

 

故郷でフィルフサに蹂躙されるばかりだった。

 

そう思うと、辛いのかも知れない。

 

いずれ、リラさんの故郷も取り戻さないといけない。今はリラさんが此方に来た門はしっかり閉められていて。後回しで良いと言っているが。

 

今回の一件が終わったら、復興に手を貸すつもりだ。

 

オーリムにいるフィルフサの数は、文字通り星の数ほどだろう。王種だけでもどれだけいることか。

 

だが、それも神代の連中を叩き潰したら、全て解明できるかも知れない。

 

あくまで楽観だが。

 

昼少し前まで、薬を増やし。皆の疲れが取れるのを待ってから、サルドニカの北に向かう。

 

フェデリーカがちょっとげんなりしている様子だが。

 

大丈夫だろうか。

 

「大丈夫、フェデリーカ」

 

「はい。 でも、戦っている相手が如何に恐ろしいか、今更ながらに思い知らされているみたいで……」

 

「此処にいるメンバーで苦戦するなら、もう他の誰を連れて来ても無駄だよ」

 

クラウディアがずばり言う。

 

まあ、そうだろうな。

 

あのメイドの一族の人達が何人か助太刀してくれれば、全然話は変わってくるのだろうけれども。

 

流石にそれはムシが良過ぎる。そもそもあの人達は、どういう目的で動いているか分からない。

 

当てにすることは止めた方が良いだろう。最悪敵になることもあり得るのだから。

 

移動は比較的スムーズに行く。入植地は人が戻り始めているが。やはりフェンリルがまた出たと言う事が、恐怖になっている様だ。ひそひそと、魔物が出たらどうする、逃げるときはとか、そういう話が聞こえる。

 

戦おうとは、流石に考えられないか。

 

だが、それをあたしは情けないとは思わなかった。ただ、努力はして欲しいとも思ったが。

 

現地に到着。少し遅めだが、それでも薬などを補充するために必要だった時間である。入口で、壁を解除。

 

タオの説明通りに動く事にする。

 

昨日の戦いで、リラさんはあの幽霊鎧達の動きを見切ったようだ。正直その辺りで見かける幽霊鎧とは次元違いだから、神代鎧とでも名付けるか。ともかく神代鎧は、全部が同じ達人の動きをベースにしていて。

 

あたし達には戦いにくい相手である。

 

あたし達は、対人戦というのにそれほど習熟していない。敵は基本的に魔物だ。幼い頃から戦士として訓練を受けるときも、対魔物を想定していた。勿論対人戦の経験も、人間を殺した経験もあるが。

 

あの幽霊鎧は対人戦がそもそも発達した世界で。

 

人間サイズで、人間を殺傷するためだけに作られている。

 

勿論古代クリント王国の幽霊鎧もそうだろうが、あれとは動きも装甲も火力も何もかもが別次元だ。

 

魔物にどう対処していたのかは少し気になるが。

 

神代は好き勝手に魔物を作り出したり、フィルフサを改造したりしていた文明なのである。

 

今とは魔物との立場が決定的に違っていたのだろう。

 

ゆえに、やりづらい。

 

入口付近で打ち合わせをした後、隊列を組む。釣るのはタオの仕事だ。笛を渡しておく。いわゆるホイッスルで、口に咥えて噴くだけでそれなりに大きな音が出せる。これで、接近を知らせる訳だ。

 

タオが奧の通路に一人で行き。

 

間もなく、笛がなる。

 

来る。

 

わっと、かなりの数の神代鎧が来た。

 

どうやら一体が反応すると、まとめてかなりの数が動き出すらしい。まあそれはいい。とにかく叩き潰すだけだ。

 

タオがこっちの陣列に逃げ込んだ後、リラさん、レント、パティが最前列で武器を構える。

 

敵には最初からあたしが、大火力の爆弾である氷爆弾メルトレヘルンを叩き込み。凍らせた所に雷撃爆弾リアプラジグを放り込む。炸裂する冷気と雷撃が、神代鎧を強かに撃ち据えるが。

 

それでも奴らは止まらず、数体を失いながらも迫ってくる。

 

其処に更に大量の炸裂爆弾クラフトをまとめたクラフトリオを放り込む。爆発が連鎖し、多数の神代鎧が傷つくが、それでも倒れない。

 

流石だな。

 

だけれども、あの繊細な達人としての動き、それだけ傷んだ状態で、どれほど再現出来るか。

 

前衛が、猛烈な冷気が立ちこめる中、神代鎧と激突。

 

クラウディアが多数の矢を叩き込み、しかも中空で屈折させる。神代鎧に突き刺さる矢だが、ダメージは与えても倒せない。猛攻を受けて、少しずつ前衛がさがる。十字路にさしかかった瞬間、左右に伏せていたディアンとボオスが仕掛ける。半包囲において、敵を逆に死地に誘い混んだのだ。

 

一気に敵を減らしていく。

 

あたしは様子を見ながら、敵後方にメルトレヘルンをもう一発放り込む。派手に氷結するが、それでも神代鎧は砕け散らずに立ち上がってくる。

 

これは恐らく、対錬金術師も想定した作りになっている。

 

錬金術師同士の殺し合いは、神代では珍しくもなかったのだろう。あたしはそうだろうなと呟く。

 

神代の中で、勝ち残った連中が、世界を滅茶苦茶にした。

 

勝ち残った奴らは、正義でもなければ、心が正しかったわけでもなかった。

 

だから世界は無茶苦茶になった。

 

それだけの話だったのだ。

 

データを取りながら、前衛と適宜交代して、戦闘を進める。あたしとタオも前衛に入り、クリフォードさんとクラウディアが射撃支援を続行。カラさんは神代鎧に雷撃での牽制を続け。

 

そしてレントが、二体三体と、大剣で薙ぎ払う。

 

レントの剣を弾いてみせる神代鎧さえいるが、予想通り傷んだ状態では十全に動けないようである。

 

この辺りは、人間の達人もかくやという動きを実現できてしまっているが故の弊害なのだろう。

 

パティが納刀。

 

斬りかかってきた神代鎧に二連撃を浴びせて、上半身を三つに割り断った。火花が散るような斬撃だ。

 

ボオスも二本の剣を駆使して必死の戦いを繰り広げて、蹴りも交えて次々神代鎧を退けている。

 

第一の集団を、撃ち倒す。

 

呼吸を整えて、負傷者、と声を張り上げる。あたしも足をざっくり斬られていたので、すぐ薬をねじ込む。

 

多めに作った薬だけれど、これは今後どんどん消耗が激しくなるだろうな。そう覚悟する。

 

「パティ、もう完全に敵の動きは見切れたか」

 

「いえ、まだ。 ですが、目では追えます。 もの凄い手練れで、相対していてひやひやしますが」

 

「そうか。 もう剣士として十全の力があると思うがな」

 

「俺も同感だ」

 

レントも手傷を受けているが、最後まで最前衛にいてくれた。

 

セリさんも戦闘では要所で覇王樹や蔓を出して敵の動きを阻害してくれたし、カラさんの魔術の火力も凄まじい。

 

手当て完了。

 

次だ。

 

そうして、敵をタオが次々に誘い出して、合計三度戦闘を終える。かなり手酷く負傷はしたが、昨日ほどじゃない。

 

「よし、ライザ風に言うなら神代鎧、片付いたね。 この通路が心臓部に続いていて、こっちが倉庫や書庫につながっているみたいだ」

 

「調査は明日にしようぜ。 そろそろいい時間だし……やべえのが奧にいる可能性もあるからな」

 

「いや、その心配はないな。 もう敵がいる感じがしない」

 

クリフォードさんが壁に手を突きながら言うと、そうかとレントも嘆息していた。それだけクリフォードさんの勘は皆に信用されているのだ。

 

とりあえず、安全は確保できたか。

 

これから神代鎧は、敵の雑兵として姿を見せるかも知れない。最低でも達人レベルの力の持ち主が、しかも爆弾の直撃を受けても耐える奴がわんさか出てくるというわけだ。

 

ちょっとぞっとしないが。

 

それでもこれくらいは退けられなければ、この先に進めるとは、とても思えなかった。









※神代鎧について

原作でも登場するゴーストアーマー系統の敵は、時代が遡るとどんどんテクノロジーが上がって行き、終盤にはロボそのものの姿のが出て来ます。

本作の「神代鎧」は、その究極型です。

装甲はチタンを中心とした合金でできており、これを錬金術で極限まで強化しています。これにもとの形状が記憶されており、多少の破壊ではすぐに再生します。魔術も効きが極めて悪いです。

また達人級の武人の「対人戦」の究極レベルの武技が使えるようにされているため、全部の個体が達人並みの強さで襲いかかってきます。その上接近戦も遠距離戦もこなします。中身がほぼ空っぽなので完全破壊しないと倒せず、急所もないに等しいです。身体能力も人間の領域を超えています。

問題なのはこれが量産型の兵器であり、要所を警護するだけではなく、超ド級の魔物などの随伴歩兵も務める事です。

ライザの時代は対人戦の技術が軽視されており(対人戦が起きるほどの余裕がなく、人間の主敵が魔物であるため)、対人戦の技術の粋が詰め込まれたこの兵器は、ライザ達にとって最悪の相性の敵となります。

しかもこれが今後はわんさか出てくる事になります。
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