暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3 作:dwwyakata@2024
パミラが久々に同胞の本拠地に出向くと、アインが本を読んでいた。パミラにきづくと、笑顔でぱたぱたと走ってくる。
愛くるしい子だ。
こんな愛くるしい子が。どうしてこんな目にあわなければならなかったのか。子は親を選べないとはいえ。
いや、それは今は良い。
ともかく、かなり重要な話だ。勿論アインの体調についても、確認をしておく必要はあるが。
「アイン、体は大丈夫かしらー? あまり無理をしてはダメよ」
「大丈夫ですパミラ様! 昨日なんて、今までで最長の活動時間を更新できたんですよ!」
「それは良かったわー」
そうはいうが。
パミラとしては心配ではある。
アインの体はただでさえ不完全だ。元々粉みじんに破壊されたのを、無理矢理修復したのだから当然だろう。
今まで、友人が回収したデータを用いて、少しずつ体を改善してはいるようなのだけれども。
それでも、やっぱりアインの「時」は止まってしまっている。
最近は毎日外で活動できる事も増えてきてはいるようだが。
前は、数時間外に出たら、年単位で培養槽にということも珍しくは無かったのだ。
崩れる体と、痛み。
いたいよいたいよ。
助けて。
そういう思考がパミラには理解出来ていたから、本当に苦しかった。
しかもこの子は傲慢な連中の純然たる犠牲者だ。
この子を救いたいという気持ちは。
嫌と言うほど理解出来てしまうのである。
アインに案内されて、友人の元へ。
安全な場所も少しずつ増えている。以前はちょっと下手な所に触ると、すぐに警報システムが作動して、面倒な戦いをこなさなければならなかったのだが。
「パミラ、よく来てくれましたね」
「ええ、それで状況が大幅に変わったのだと聞いたのだけれど」
「ライザリンがついに門の開発に成功しました。 加速度的にここに来る日が近付いていると言えます」
「うーん、早いわー。 私が知っている凄い錬金術師達と比べても、遜色ないくらいの才能ねー」
危険ですね。
そう友は言う。
気持ちは分からないでもない。というか、「気持ち」というのも変な話だが。何しろパミラだって人間ではないし。友だって。
ともかく、対策については考えなければならないだろう。
「門を開いたことは、センサか何かで判断したのね-?」
「はい。 管理下に置いたシステムの一部で、検知することが出来ました。 ライザリンは間違いなく、この世界の歴史上最高の才能を持つ錬金術師ですね。 あまりにも成長が早すぎる」
「うーん、私の知っている錬金術師にはもっと上の子もいるんだけれど。 ただこの世界の堕落しきった錬金術師達には、ライザに勝てるのはいなかったと思うかなー」
これは事実だ。
もっと凄まじい、それこそ宇宙を変えるような錬金術師も知っているから、あまりライザを褒めるつもりは無い。
ただ、才能の学問というものは、基本的に才能があればあるほど精神的に人間から逸脱していく。
パミラが知っている最強の錬金術師は。
最後は邪神ですら怯えるような、深淵の存在となっていた。
ただ、それでも。
この世界の錬金術師のような、堕落とは無縁の存在でもあったのだが。
「それで、ライザは殺さない方向で、この世界の膿出しに使うつもりなのよね-。 話はまとめられそう? 最悪、私が仲介するけど?」
「最悪の場合はお願いします。 何があってもアインだけは絶対に……勿論同胞も……守らなければなりません」
「了解。 ただライザは、アインや同胞の事情を知ったら悪いようにはしないと思うけれど。 それに同胞の正体にも、気付いているのではないかしらねそろそろ」
ホムンクルスは、錬金術とは不可避の存在だ。
どんな世界でも、人間は奴隷を欲した。
時にそれは機械であり、錬金術がある世界ではホムンクルスだ。ただ、それだけの話である。
アインについても、事情を知ったライザは手をさしのべると思う。
最近はとにかく荒々しくなってきているようだが。
激しい怒りを秘めていても。
ライザは弱者に手をさしのべる存在だ。
アインは休ませる。
昨日も培養槽から出ていたというのだ。まだ、「人間として」そのままの時間を過ごさせるのは早いだろう。
あっと言う間に体が崩れてしまう。
あの子には、人間として当たり前の人生を送ることすら出来なかった。それをさせてあげるのは。
出来る存在なら、やるべきだ。
そしてあの子がしっかり成長したとき、どうするかは自分で決めれば良い。
ライザのように人間を止めて、世界のために豪腕を振るってもいいし。
ただ一人の人間として、子供を産んで種族の一個体として過ごしても良いだろう。子供が生まれれば、それは同胞にとっても貴重なデータになる。
多様性が存在せず、それを危惧している同胞には、文字通り希望そのものになるだろう。
勿論そうしない路もある。
アインがそれを決めるべきだが。
可哀想な話で、アインにはまだそれが出来る状況ではないのだ。
「今のうちから、ライザリンとの交渉はパターンを組んでおきます。 ただ最悪の場合は、同胞の全戦力を集めて、迎撃する必要があるでしょう」
「そうならないように私も全力を尽くすわー」
「ありがとう。 貴方が友で良かった。 世界の監視を行う神よ」
「私は世界を見守るただのモノよ。 この世界は、そうも言っていられなかったから手を貸した。 ただそれだけ」
そう、ただそれだけだ。
この世界の神格は、存在していない。
そもそも世界が意識を持つことがなかった。そういう世界はいくらでもある。
別に劣っている訳でもなんでもない。
ただ世界のルールが、そうだったというだけの事だ。
だから、パミラが動く。
全知全能には程遠いが。
出来るのなら、やるべきだ。
膿出しで散々ダーティーワークもやってきた。この世界にまともな錬金術師がもういないのも、パミラが根こそぎ駆除したからだ。駆除されて当然の錬金術師しかいなかった。アンペルは見落としていたが。存在を知っても、殺しに行く事はなかっただろう。
ライザが今の時代に生を受けたのは。
神の手によるものではないが。
だが古い言葉で言えば、運命を感じさせる事でもある。
ライザは世界を変えうる。
そして、この世界にとっての、初めての本当の意味での神になるかも知れない。神を気取った馬鹿者共と違って。
それはこの世界に幸運か不幸かは分からないが。
少なくとも、神代のバカ共がまき散らした災厄を、ライザが一掃するのは必要な事なのだ。
パミラですら、手出し出来ないシステムはまだまだあるのだから。
「それはそうと、メインシステムはどうかしら」
「まだライザリンを見張っているだけですね。 現状では何かしらの監視をするつもりはないようです」
「ふむ、だとすると観測者が動いているのは何故かしら」
「メインシステムからの連絡がずっとないからでしょう。 スタンドアロンで行動していると言う事でしょうね。 もう、知らないのでしょう。 行動する意味など、とうにないと言う事も」
そうか。
だとすると、哀れなものだな。
あと三体の観測者は、いずれライザに立ちふさがり、それぞれ倒されていくことだろう。今までにも観測者は仕留めた事があるが。
既にライザの力は、パミラを凌いでいる。
ライザに勝てるとは、思えなかった。
一度、この場所を去る。
此処は、世界の狭間にある場所。
自分を神と勘違いした愚か者共が作りあげた。虚構の城だ。
(続)
パミラさんの辿って来た道……。
ネルケのアトリエをやっていればぴんと来ると思います。