暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3   作:dwwyakata@2024

110 / 200
4、新たな門と

パミラが久々に同胞の本拠地に出向くと、アインが本を読んでいた。パミラにきづくと、笑顔でぱたぱたと走ってくる。

 

愛くるしい子だ。

 

こんな愛くるしい子が。どうしてこんな目にあわなければならなかったのか。子は親を選べないとはいえ。

 

いや、それは今は良い。

 

ともかく、かなり重要な話だ。勿論アインの体調についても、確認をしておく必要はあるが。

 

「アイン、体は大丈夫かしらー? あまり無理をしてはダメよ」

 

「大丈夫ですパミラ様! 昨日なんて、今までで最長の活動時間を更新できたんですよ!」

 

「それは良かったわー」

 

そうはいうが。

 

パミラとしては心配ではある。

 

アインの体はただでさえ不完全だ。元々粉みじんに破壊されたのを、無理矢理修復したのだから当然だろう。

 

今まで、友人が回収したデータを用いて、少しずつ体を改善してはいるようなのだけれども。

 

それでも、やっぱりアインの「時」は止まってしまっている。

 

最近は毎日外で活動できる事も増えてきてはいるようだが。

 

前は、数時間外に出たら、年単位で培養槽にということも珍しくは無かったのだ。

 

崩れる体と、痛み。

 

いたいよいたいよ。

 

助けて。

 

そういう思考がパミラには理解出来ていたから、本当に苦しかった。

 

しかもこの子は傲慢な連中の純然たる犠牲者だ。

 

この子を救いたいという気持ちは。

 

嫌と言うほど理解出来てしまうのである。

 

アインに案内されて、友人の元へ。

 

安全な場所も少しずつ増えている。以前はちょっと下手な所に触ると、すぐに警報システムが作動して、面倒な戦いをこなさなければならなかったのだが。

 

「パミラ、よく来てくれましたね」

 

「ええ、それで状況が大幅に変わったのだと聞いたのだけれど」

 

「ライザリンがついに門の開発に成功しました。 加速度的にここに来る日が近付いていると言えます」

 

「うーん、早いわー。 私が知っている凄い錬金術師達と比べても、遜色ないくらいの才能ねー」

 

危険ですね。

 

そう友は言う。

 

気持ちは分からないでもない。というか、「気持ち」というのも変な話だが。何しろパミラだって人間ではないし。友だって。

 

ともかく、対策については考えなければならないだろう。

 

「門を開いたことは、センサか何かで判断したのね-?」

 

「はい。 管理下に置いたシステムの一部で、検知することが出来ました。 ライザリンは間違いなく、この世界の歴史上最高の才能を持つ錬金術師ですね。 あまりにも成長が早すぎる」

 

「うーん、私の知っている錬金術師にはもっと上の子もいるんだけれど。 ただこの世界の堕落しきった錬金術師達には、ライザに勝てるのはいなかったと思うかなー」

 

これは事実だ。

 

もっと凄まじい、それこそ宇宙を変えるような錬金術師も知っているから、あまりライザを褒めるつもりは無い。

 

ただ、才能の学問というものは、基本的に才能があればあるほど精神的に人間から逸脱していく。

 

パミラが知っている最強の錬金術師は。

 

最後は邪神ですら怯えるような、深淵の存在となっていた。

 

ただ、それでも。

 

この世界の錬金術師のような、堕落とは無縁の存在でもあったのだが。

 

「それで、ライザは殺さない方向で、この世界の膿出しに使うつもりなのよね-。 話はまとめられそう? 最悪、私が仲介するけど?」

 

「最悪の場合はお願いします。 何があってもアインだけは絶対に……勿論同胞も……守らなければなりません」

 

「了解。 ただライザは、アインや同胞の事情を知ったら悪いようにはしないと思うけれど。 それに同胞の正体にも、気付いているのではないかしらねそろそろ」

 

ホムンクルスは、錬金術とは不可避の存在だ。

 

どんな世界でも、人間は奴隷を欲した。

 

時にそれは機械であり、錬金術がある世界ではホムンクルスだ。ただ、それだけの話である。

 

アインについても、事情を知ったライザは手をさしのべると思う。

 

最近はとにかく荒々しくなってきているようだが。

 

激しい怒りを秘めていても。

 

ライザは弱者に手をさしのべる存在だ。

 

アインは休ませる。

 

昨日も培養槽から出ていたというのだ。まだ、「人間として」そのままの時間を過ごさせるのは早いだろう。

 

あっと言う間に体が崩れてしまう。

 

あの子には、人間として当たり前の人生を送ることすら出来なかった。それをさせてあげるのは。

 

出来る存在なら、やるべきだ。

 

そしてあの子がしっかり成長したとき、どうするかは自分で決めれば良い。

 

ライザのように人間を止めて、世界のために豪腕を振るってもいいし。

 

ただ一人の人間として、子供を産んで種族の一個体として過ごしても良いだろう。子供が生まれれば、それは同胞にとっても貴重なデータになる。

 

多様性が存在せず、それを危惧している同胞には、文字通り希望そのものになるだろう。

 

勿論そうしない路もある。

 

アインがそれを決めるべきだが。

 

可哀想な話で、アインにはまだそれが出来る状況ではないのだ。

 

「今のうちから、ライザリンとの交渉はパターンを組んでおきます。 ただ最悪の場合は、同胞の全戦力を集めて、迎撃する必要があるでしょう」

 

「そうならないように私も全力を尽くすわー」

 

「ありがとう。 貴方が友で良かった。 世界の監視を行う神よ」

 

「私は世界を見守るただのモノよ。 この世界は、そうも言っていられなかったから手を貸した。 ただそれだけ」

 

そう、ただそれだけだ。

 

この世界の神格は、存在していない。

 

そもそも世界が意識を持つことがなかった。そういう世界はいくらでもある。

 

別に劣っている訳でもなんでもない。

 

ただ世界のルールが、そうだったというだけの事だ。

 

だから、パミラが動く。

 

全知全能には程遠いが。

 

出来るのなら、やるべきだ。

 

膿出しで散々ダーティーワークもやってきた。この世界にまともな錬金術師がもういないのも、パミラが根こそぎ駆除したからだ。駆除されて当然の錬金術師しかいなかった。アンペルは見落としていたが。存在を知っても、殺しに行く事はなかっただろう。

 

ライザが今の時代に生を受けたのは。

 

神の手によるものではないが。

 

だが古い言葉で言えば、運命を感じさせる事でもある。

 

ライザは世界を変えうる。

 

そして、この世界にとっての、初めての本当の意味での神になるかも知れない。神を気取った馬鹿者共と違って。

 

それはこの世界に幸運か不幸かは分からないが。

 

少なくとも、神代のバカ共がまき散らした災厄を、ライザが一掃するのは必要な事なのだ。

 

パミラですら、手出し出来ないシステムはまだまだあるのだから。

 

「それはそうと、メインシステムはどうかしら」

 

「まだライザリンを見張っているだけですね。 現状では何かしらの監視をするつもりはないようです」

 

「ふむ、だとすると観測者が動いているのは何故かしら」

 

「メインシステムからの連絡がずっとないからでしょう。 スタンドアロンで行動していると言う事でしょうね。 もう、知らないのでしょう。 行動する意味など、とうにないと言う事も」

 

そうか。

 

だとすると、哀れなものだな。

 

あと三体の観測者は、いずれライザに立ちふさがり、それぞれ倒されていくことだろう。今までにも観測者は仕留めた事があるが。

 

既にライザの力は、パミラを凌いでいる。

 

ライザに勝てるとは、思えなかった。

 

一度、この場所を去る。

 

此処は、世界の狭間にある場所。

 

自分を神と勘違いした愚か者共が作りあげた。虚構の城だ。

 

 

 

(続)







パミラさんの辿って来た道……。

ネルケのアトリエをやっていればぴんと来ると思います。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。