暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3   作:dwwyakata@2024

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上手く行っている時こそ、足下をすくわれるものです。

ライザは此処で、今までで最悪レベルの突発的トラブルに見舞われ、それに対処する事になります。

やさしいせかいである原作ではこういう事は……少なくともプレイヤーの見ている所では起きませんが、この世界では違います。


1、襲撃受ける鉱山

翌朝。

 

体操を終えて、朝食を取り。本日のミーティングについて話していると、ガンガンと鐘が遠くで鳴らされる。

 

フェデリーカが思わず顔を上げる。

 

「どうしたの?」

 

「魔物です。 ええと、数多数、場所鉱山、被害既にあり、救援求む……!」

 

「行くぞ」

 

「ああ、行こうぜ!」

 

リラさんとレントが即座に立ち上がる。

 

あたしもミーティングを切り上げると、全員に出るように指示。皆、もう慣れているものだ。

 

即座に武具を身につけると、アトリエを出る。クラウディアが鍵をしっかりアトリエにかけてくれるのを尻目に、手を叩いた。

 

「あたしとパティ、タオとリラさん、クリフォードさんで先行する。 後続の皆は、フェデリーカとともに一番危険そうな場所に向かって、支援を優先。 大物がいる場合は、信号弾を打ち上げて」

 

「了!」

 

「行くよっ!」

 

あたしが走り出すと、快足組でまずは戦地に急行する。

 

大まかな位置はフェデリーカに聞いている。

 

鐘はまだ鳴っている。

 

余程襲撃の規模が大きいらしかった。

 

まだ朝かなり早いのに、こんな時間にも掘ってるんだな。そう思うと、鉱山労働が訳ありの集まりだと言う事がよく分かる。

 

普通だったら、命を削りながら、こんな時間から働かない。

 

クリフォードさんが走りながら跳躍。

 

「見えたぜ! 鼬の群れがかなりいる! 今の時点は、小型の魔物ばっかりだが、数が多い! あれは警備の戦士や騎士だけだと、捌ききれん!」

 

「たかが鼬の群れが、組織的に鉱山を襲うとは思えませんね。 何かがけしかけていると思うべきでしょう。 ただ、単純に魔物が活性化しているだけの可能性もありますが」

 

「ああ! どちらにしても、ともかく最前線に向かうぞ!」

 

リラさんが、あたしの意見に同意。

 

複雑に掘られている露天掘りの地形の中走り、逃げ出してくる鉱夫を飛び越えて、一気に進む。

 

飛び越えられた鉱夫は、唖然としてこっちを見るが、かまっている暇はない。

 

「彼方に逃げて! 安全圏はあっちです!」

 

「まだたくさん取り残されてる!」

 

「可能な限り助けます!」

 

パティが指示を出し、少し遅れてついてくる。

 

あのメイドの一族の人が一人でもいたら、全然状況は違うのだろうが。あの人達の多くが今は出払っているらしい。

 

状況を詮索するよりも、今は一人でも助けるのが先だ。

 

走る。

 

見えてきた。

 

鉱夫の中のごつい人や、警備の戦士が必死に鼬に応戦しているが。数が多い。

 

鼬は何処にでもいる魔物だ。

 

だから何処にでも適応する。

 

水場以外にも幾らでもいる。

 

数で勝負し、そしてどんどん増える。人間が鼬と呼んでいるだけで、タオによると犬と猫くらい違う品種も多くいるのだとか。

 

最初に突貫したのはリラさんだ。

 

鉱夫に噛みついて振り回していた鼬の首を、上空から躍りかかって一撃で断ち割る。そのまま、旋回して鉄爪と蹴り技で、片っ端から近くにいる鼬を薙ぎ払い始める。遅れてパティとあたしが突貫。

 

あたしは飛びかかってきた身の程知らずの鼬を、蹴り一発で腹をブチ抜く。内臓をまき散らしながら吹っ飛ぶ鼬。

 

更に後ろ回し蹴りを、死角から迫ってきた鼬に叩き込み、顔面を陥没させ粉砕してやる。鼬の戦意は旺盛だが、そこを薙ぎ払うクリフォードさんのブーメラン。タオも戦線に加わり、鼬を次々斬り伏せる。

 

この鼬も、クーケン島付近にいる奴よりも段違いに大きいが。

 

それでも今では雑兵だ。

 

だが、雑兵でも油断すると命を刈り取られる。

 

それがこう言う場所だ。

 

前線に皆が到着したことで、余裕が出来る。詠唱。熱槍を多数出現させると、鼬が判断する前にまとめて叩き付ける。

 

一瞬で大炎上した鼬の群れが、転げ回って逃げようとするが。

 

殆どはその場で息絶えていった。

 

パティが片っ端から残りを斬り伏せている間に、タオが負傷者を担いでくる。あたしは、コアクリスタルから薬を取りだすと、トリアージ開始。手足を失っている人も多かった。

 

「あっちに弟が……」

 

「可能な限り助けます」

 

「……」

 

気を失った鉱夫。

 

どうみても指さした方に、生存者はいない。

 

かなり周辺の魔物は削ったのに。

 

いや、逆にだからこそ、警備が油断して、こんな規模の襲撃を許したのか。

 

「残敵掃討終了!」

 

パティが叫んで、大太刀についた血と肉片を振るって落とす。血抜きの溝に沿って、血がばっと散った。

 

まだ襲撃を知らせる鐘は鳴っている。

 

クリフォードさんが跳躍。

 

すぐに戦地を見つける。

 

「レント達は二手に分かれて戦闘を開始してる。 雑魚ばかりだが、数が多い。 あっちにまだまだ魔物がいて、鉱夫が襲われてる」

 

「よし、次に行きます!」

 

「ライザ、魔力は大丈夫!?」

 

「こんなの屁でもないよ」

 

まあ、実際には消耗はあるが、今は一秒を争う。

 

遅れて来た警備の人間に負傷者を任せると、すぐに次へ。孤立して襲われてる警備や鉱夫を次々に助ける。

 

鼬はこれは、全域で三百、いや五百はいるか。

 

見た感じ別種も混じっているし、同一の群れによる襲撃ではないだろう。何よりこんな規模の群れを鼬が作るなんて、聞いたこともない。

 

それに、だ。

 

上空から、鋭い音とともに飛来するのは巨大な猛禽の魔物アードラだ。色々な名前の亜種がいるが、今は確認している暇もない。

 

即応したクリフォードさんが、ブーメランを叩き込んで、即座に叩き落とす。遙か視界の先で、鉱夫を掴んで空に行こうとしているアードラを発見。ダメだ、この位置からは間に合わない。

 

だが、その時、アードラを黒い線が貫く。

 

アンペルさんの狙撃だ。

 

アードラが落ちていく。

 

頷くと、走る。

 

これは皆が散りながら、襲撃に対応するしかない。

 

鼬の群れとある程度の数の戦士や鉱夫の集団が交戦しているのに遭遇。勿論助けに入る。

 

パティが抜き打ち一閃。

 

鉱夫に馬乗りになって、生きたまま肉をむしって食べ始めている鼬が気付く前に、首を飛ばしていた。

 

そのまま乱戦に入るが。

 

この程度の質の相手だったら、まあ苦戦する理由も無い。

 

次々に斬り倒していく。

 

蹴り砕いていく。

 

クリフォードさんが、飛びかかってきた鼬を。ブーメランでなぎ倒して、更にはけり飛ばす。

 

リラさんの動きは竜巻のようで、それを見て逃げ出した鼬を、タオが回り込んで斬り伏せていた。

 

「次!」

 

「まずは救護! 負傷者は!」

 

「あ、あんた噂の魔法使い……!」

 

「錬金術師です。 安全圏は彼方。 薬はこれを使ってください。 怪我人は……」

 

その場でトリアージ開始。

 

皆で連携して、負傷者の救助に当たる。

 

鐘の音が変わった。

 

どうやら、サルドニカから支援部隊が来たらしいな。わっと喚声が上がっている。というか、はっきりいって遅い。

 

安心しきっていたのだろう。

 

正直情けなく感じるが。

 

今はそれを怒鳴りつけるよりも、一人でも助けられる人間を救わなければならない。

 

コアクリスタルの欠点は、使用に魔力を用いる事だ。

 

薬を出す度に、ごっそり魔力を持って行かれる。今回は急いで飛び出してきたから、荷車もない。

 

千切れた腕をくっつけると、涙を流して鉱夫が感謝する。

 

だが、感謝の言葉を聞くのは後だ。

 

すぐにさがって貰う。

 

クリフォードさんが跳躍して周囲を確認。さっき見た戦場が、更に不利になっているようである。

 

もう一刻の猶予もない。

 

「パティ、タオ、急いで向かって! あたし達も遅れていく!」

 

「分かりました!」

 

「大物が出たら即座に信号弾! これだけの広域の攻撃、雑魚だけが示し合わせて仕掛けて来たとは思えない!」

 

「了解! パティ、行くよ!」

 

タオとパティが。疾風のように行く。

 

本当に人間か、と警備の女戦士がぼやくが。咳払いを受けて、背筋を伸ばしていた。そのまま、手当てと避難指示をしてから、二人を追う。

 

クリフォードさんが、魔物に追われている鉱夫を発見。規模からして、一人で大丈夫。リラさんが、そっちに展開。

 

とにかく、急ぐ。

 

向こうでぼんと凄い音がして、蔓が多数の魔物を絡め取り、空に伸びていた。セリさんも大暴れしているわけだ。

 

あっちは雷だ。

 

カラさんによる大魔術だろう。

 

戦線を押し戻してはいるが、これは最終的な被害がどれほどになるか、見当もつかない。そのまま、最前線に。

 

途中で鉱夫の亡骸を囓っているラプトルを見つけたので、問答無用で丸焼きにする。

 

ラプトルまで来ているのか。

 

鼬よりも組織的に動く上、戦闘力も高いラプトルは厄介だ。他の種類の魔物も来ているとみて良いだろう。

 

一瞬、あの悪魔みたいな奴を思い浮かべたが。

 

それだったら、戦力が分散している今、あたしを狙って来る筈だ。

 

もしくは、誰かに仕掛けているはず。

 

その気配がないということは、違うのか。

 

いや、そうとも言い切れない。今は、とにかく安全圏を拡げて、前線を押し上げていくしかない。

 

高地への入口辺りを、跳躍したクリフォードさんが見る。

 

警備の死体が散乱しているだけではなく、魔物が次々入り込んで来ているようだ。だとすると、其処を塞ぐしかないか。

 

リラさんが合流してきたので、急ぐ。

 

また魔物の群れだが、この辺りはもう生きている警備も鉱夫もいない。出会い頭に殲滅して、先に。

 

幸い雑魚しかいない。

 

ただそれでも、今の分散した状況では、非常に危険だが。

 

次。

 

叫びながら、行く。

 

千切られた人体が、辺りに散らばっている。これは全域での死人は十人やそこらではきかないだろうな。

 

だが、それでも。

 

助けられるだけ助ける。

 

魔物が入り込んで来ている高地への入口が見えた。

 

一応大きな扉で塞いでいるのだが、苦も無く破られたようだ。

 

くっちゃくっちゃと獲物を囓っている魔物どもの上空から、熱槍を容赦なく叩き込んでやる。

 

其処にクリフォードさんとリラさんが躍り込み。

 

当たるを幸いと薙ぎ払い始めたが。

 

そろそろ、疲れが見え始めている。

 

皆、人間のものも魔物のものも含めて、派手に返り血を浴びている。

 

ガンガン。ガンガン。ずっと鐘も、鳴り続けていた。

 

この状態で大物に出られると、正直対処のしようが無いな。そう思っていると。多数の雑魚が集まってくる。

 

どうやら退路を塞がれると思ったのだろう。

 

悪いが。

 

一匹も生かして返すつもりは無い。

 

人間の味を覚えた時点で、絶対駆除対象だ。

 

此処で皆殺しにする。

 

しばし、激しい乱戦が続く。あの神代の鉱山で戦った神代鎧とは比べものにならない雑魚ばかりだが。

 

それでもこっちは補給なし、孤立しての少数戦闘、何よりも敵は無尽蔵、ついでに非戦闘員を庇いながらだ。

 

これはフェデリーカなんか負傷していてもおかしくないだろうな。

 

だけれども、多分皆がついてくれている。

 

そう思いながら、前蹴りで飛びかかってきた鼬を返り討ちにし。

 

着地と同時に周囲全域を熱槍で薙ぎ払って、飛びかかってきたラプトルを火だるまにしていた。

 

流石に息が切れてくる。

 

クリフォードさんが空中殺法を魔物に繰り出しながら、叫ぶ。

 

「パティとタオがこっちに向かってる! 踏ん張れ!」

 

「この程度の相手、今までに比べればどうということもない!」

 

「そうかもな! ともかく此処で敵の増援を防ぎ切って、後は残敵を掃討する流れに持っていくしかないな!」

 

「その通りだよ! 長引くと血の臭いを嗅いで、どんどん魔物が増える!」

 

高地から、かなり大きな蛇の魔物がこっちを伺っている。

 

まだまだいるんだな。

 

そう思いながら、立て続けに四体の鼬を、時間差で蹴り砕く。立ち位置をめまぐるしく変えながら、一体多数の状況を避ける。勿論頭をフル回転させるから、尋常で無く体力も使う。

 

それでも。

 

此処から先には通さない。

 

パティとタオが来た。パティが。抜き打ちで文字通りラプトルを真っ二つにして見せる。頷くと、あたしは叫ぶ。

 

「パティ、来てくれて助かった! クリフォードさんと組んで、後方の魔物を殲滅して回って! タオはこのまま、此処で戦闘を!」

 

「分かりました!」

 

「ふっ! お嬢、行くぞ! ついてこられるかな!?」

 

「クリフォードさん、お嬢は止めてください……」

 

クリフォードさんは、普段はアーベルハイムに雇われている身だ。だから、或いは他の戦士と一緒にいる時は、お嬢とか呼んでいるのかも知れない。

 

まあこのくらいの茶目っ気は許されても良いだろう。

 

この惨状の中なのだ。

 

それくらいでないと、正気を保てない。

 

高地にいた魔物が、引き始める。これは、漁夫の利を狙うのは無理と判断したのだろうな。

 

だったら、鉱山に散っている魔物を全部蹴散らすだけで終わりだ。

 

なんて楽なのか。

 

そう自分に言い聞かせながら、集まってくる魔物を蹴散らし続ける。タオが快足を生かして魔物を攪乱して周り。

 

リラさんが豪快にそれを蹴散らして回る。

 

地面はもう、誰のものかも分からない臓物と肉片、血で真っ赤だ。

 

血震いすると、あたしは吠えていた。

 

「次! なんぼでも掛かって来なさい!」

 

明らかに鼬の表情に怯えが走る。

 

これが人間だったら尋問して黒幕を聞き出すところだが、今はどうでもいい。

 

多数のラプトルが、凄まじい勢いで来る。詠唱しようと思ったが、低い体勢から鼬が飛びついてきて。

 

あたしはそれをかわしつつ、ローキックを浴びせて鼬にダメージを与え。

 

動きが止まった所で、熱魔術を利用して跳躍。

 

そのまま、多数の熱槍を出現させると。

 

文字通り炎の雨を出現させ。

 

まとめて狼藉者どもを、火だるまに変えていた。

 

流石に呼吸が乱れてきた。

 

辺りは熱も凄まじい。あたしが暴れているのだから、当然だろう。タオもリラさんも、全力で敵を駆逐している。

 

こっちに来たのは、セリさんか。

 

セリさんは、問答無用で覇王樹を、高地の入口に展開。

 

それも、いつもよりずっと大きい奴だ。

 

「あれは探知機も兼ねてる。 もう増援は気にしなくていいわ」

 

「ちょっと、呼吸が乱れてきました」

 

「これを」

 

セリさんが差し入れてくれたのを飲むと、あまりの苦さにうえっとなったが。これ、多分薬草のスムージーだ。

 

植物魔術の応用で、普段からストックしているのだろう。

 

効く筈だ。

 

飲み込むと、何度か咳き込む。

 

とにかく、やるしかない。

 

下。

 

強い気配。

 

ワームだ。

 

避けて。叫んで、飛び退くと同時に、ワームが地面を砕いて飛び出してくる。それほどのサイズじゃない。

 

こいつも好む土があるようだけれども、多分この襲撃に紛れて、襲ってきたのだとみて良い。

 

セリさんが、即座に植物魔術を展開。

 

棘だらけの植物がワームを拘束。首を振るって溶解液をぶちまけるワームだけれども。即座にリラさんが、鉄爪で胴体を輪切りにしていた。

 

呼吸を整える。

 

今、熱槍での対応が出来なかった。

 

だけれども、スムージーの効果か、体は温かい。

 

此処からは体術でいくか。

 

また、鐘の鳴り方が変わる。

 

フェデリーカがいないからなんとも分からないが。何かしら状況が変わったのだろう。音の感じからして、悪い方では無いはずだ。

 

魔物がどんどん来る。

 

だけれどもこれは、撤退しようとして来ているとみて良い。

 

そうか、ならば生かしてかえさん。

 

全部此処で駆除してくれる。

 

魔物を追って、パティとクリフォードさんも戻ってくる。これで戦力は充分に揃ったと言える。

 

後は、全て蹴散らすだけだ。

 

高台。

 

ちかっと光ると、多数の矢が魔物の上から背中から貫く。クラウディアが乱戦から抜け出して、狙撃に移行したと言う事だ。

 

クラウディアの音魔術と併用しての狙撃は精度も威力も申し分なく、雑魚相手だったら文字通り殲滅が可能だ。

 

戦況が一気に変わる。

 

昼少し前。

 

ついに、魔物の殲滅が終わっていた。

 

 

 

岩壁に背中を預けて、しばらくぼんやりする。

 

フェデリーカが荷車を引いてきてくれた。ありがたい。

 

話によると、途中からフェデリーカは鉱山での指揮を執っている本部に出向いて、其処で指揮を続けてくれたそうだ。

 

サルドニカの警備から、例のメイドの一族の戦士二人を割いて、こっちに回してくれたらしい。

 

あたしは薬を飲んで無理矢理体力を回復させながら、立ち上がる。

 

「アトリエに戻る。 薬増やすよ」

 

「ありがとうございます。 今、野戦病院を作っていますが、薬も手も足りなくて……」

 

「普段偉そうにしている職人も全員駆りだした方が良いだろうね」

 

「……一応、声は掛けます」

 

分かっている。

 

医師よりも職人の社会的地位が高いような街だ。

 

医師を賤業と考えているような人間が、ギルドには少なからずいるような場所なのである。

 

それは基幹インフラの一つである医療だって、おざなりにされるだろう。

 

あたしは荷車の薬は全部使って問題ないとパティに告げると、出来るだけ急いでアトリエに戻る。

 

他の皆は、セリさん以外全員で散って、トリアージと負傷者の回収開始だ。亡くなった人を回収するのは後回し。

 

勿論魔物に食い散らかされて顔も分からない亡骸もあるだろう。

 

瀕死の人間を見逃すことがあってもならない。

 

ここからが、大変だ。

 

アトリエに、セリさんと戻る。

 

セリさんには、ありったけ薬草を出して貰う。そしてあたしは、それでひたすらに薬を作る。

 

クラウディアはずっと音魔術で周囲の警戒。

 

第二波が来てもおかしくは無いからだ。

 

フェデリーカだけではなく、アルベルタさんとサヴェリオさんも来たようだ。サルドニカにとって大事だ。

 

二人が来るのは、むしろ遅すぎる位だろう。

 

薬が出来次第、あたしがもっていく。野戦病院は地獄絵図だ。薬を医師……前に手伝った医師に渡すと。

 

手伝いを寄越すから、薬だけくれと言われた。

 

まあ、あたしが薬を運ぶ時間も惜しいと言うのだろう。

 

分かった。薬を運ぶのは、セリさんと手伝いに任せる。

 

神代の鉱山付近から回収したトロッコは、一度エーテルに分解した後、危険な機能がないことは確認してある。

 

この辺りは、エーテルでの分解が出来ると、色々便利である。

 

これを、病院に一時貸与する。

 

これがあると、雑多なトロッコなんかよりも、ずっと楽に負傷者を運べるはずだ。

 

ずっと調合を続ける。

 

セリさんが額の汗を拭いてくれた。

 

「スムージー作ったわ。 飲んで」

 

「はい。 ありがとうございます」

 

苦いけれど効く。だからスムージーを飲んで、調合を続ける。これは昼飯はなしだな。そう思っていると、手伝いらしい人が来た。

 

まだ幼いが、この子。

 

ひょっとして、例のメイドの一族か。

 

ある程度育った子しか見た事がなかったから、子供は初めて見る。なんというか無機質な雰囲気で、でも戦力はどうみても普通の大人より上だが。

 

「薬、受け取りに来ました」

 

「ライザ、私が一緒に行ってくる。 調合を続けなさい」

 

「ええ、任せてください」

 

セリさんに薬を渡すと、後は対応を頼んでしまう。

 

一日まるごと潰れるだけで済むかなこれは。あたしはぼやきながら、調合を続ける。

 

確かに計画は狂う。

 

だが、それは仕方がない。多くの人の命が優先だ。もしも計画を優先するようでは。あたしは神代と同レベルになってしまう。

 

それだけは、死んでもいやだった。







自身の事よりも目の前で失われている命を救うのが先。

この辺りは、苛烈ではあってもライザはしっかり倫理観念を持っています。

だからこそ、それを平気で踏みにじる相手には容赦しませんが。
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