暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3   作:dwwyakata@2024

118 / 200




激戦の末のかろうじての勝利。

鉱山への猛襲からの連戦が、ようやく一段落です。

これほどの相手だと、ライザも無傷とはいかないどころか、薄氷の勝利だといえます。

まだまだライザの道は険しく。

原作で装備を極めるレベルで作り込んでいる状態みたいに、余裕で勝てるとはいかないのです。


2、激戦続く

炭クズになった巨獣が倒れる。

 

あたしが呼吸を整えながら、片膝を突く。

 

今ので、殆ど消耗した。薬。荷車から薬を取りだして、傷口に。肩はざっくりやられていて、骨も見えている。それだけじゃない。

 

空間切断の余波を何カ所にも貰っていて。

 

あしもざっくり。

 

今の全力フォトンクエーサーの影響もある。鮮血が噴き出していて、意識が薄くなるのも同意だった。

 

傷を修復して、増血剤も飲む。

 

トリアージ。

 

叫んだレントが、すぐに皆の手当てに。

 

カラさんが運ばれてくる。

 

さっきの隕石群の一発を避けきれなかったらしい。かなり火傷が酷いが。あたしの薬ならまだ助かる。

 

他も酷い損害だ。

 

何よりも、酷いのは、それだけじゃない。

 

「やっぱり倒し切れていない!」

 

タオがぼやく。

 

あたしがまとめて凍らせた神代鎧。

 

半数ほどは機能停止したようだが、あれだけの超火力で凍らせたにもかかわらず、半数ほどはもう動き始めている。

 

それどころか体から熱を発して、無理なく機能を回復させ初めているではないか。

 

これは相手を舐めていたな。

 

ならば、その反省を次に生かす。

 

そう考えつつ、あたしは手当てを急いで、と叫ぶ。

 

セリさんが必死に遠距離組の神代鎧を抑えてくれているが、それだけでは無理だ。クラウディアも倒れて動けないようである。クリフォードさんが、走るのが見えた。

 

「俺様が時間を稼ぐ! 回復し次第、支援に来てくれ!」

 

「くっ……! 死なないでくれよ!」

 

「まだまだ死ぬつもりは無いさ!」

 

手当てを順番にする。

 

リラさんが、最後の一撃のカウンターを受けた時に、内臓までダメージが通ったようで。あたしの薬を飲ませても、すぐには動けそうにはない。この薬も、セリさんが増やした最高の薬草によるもので、摂理を超えた性能があるのに。

 

あたし自身も、まだ全身が怠い。

 

この状態で戦っても、一刀両断されるのが関の山だ。

 

栄養剤を飲み干すと、パティも行く。ディアンも。

 

三人だけで、二十体以上の神代鎧と正面からやりあっても、膾にされるだけだ。相手の剣技は達人級なのである。

 

レントも傷が酷い。

 

あの巨獣と真正面からやりあって壁になってくれていたのである。生きているだけでも凄いほどなのだ。

 

「予想の最悪を極めちまったな……くそっ!」

 

「大丈夫、すぐに動けるようになるよ」

 

「だが、あの鎧どもが殺到する前には無理だ……」

 

「分かってる。 あと、数手欲しい」

 

あと、動けそうなのは。

 

フェデリーカは、なんとか乱戦の中で身を守ることに成功したようだ。惨状で青ざめているが。

 

「フェデリーカ」

 

「……はい」

 

「全力で神楽舞を。 今すぐ」

 

「分かりました!」

 

声を掛けて。

 

それでも動けるのは立派だ。

 

こんな戦況である。

 

普通だったら腰が引けて、何もできなくなってしまう所である。声を掛けなければ出来ないなんて言い方もあるらしいが。

 

実際には、こう言うときには指示を出す側に責任がある。

 

つまりあたしの方だ。

 

指示を出して動けるなら、それで充分。

 

とにかく、時間を稼いで、手数を。

 

前衛は、殺到してきた神代鎧と交戦開始。あの冷気だ。流石にダメージはあったようで、なんとか防げているが。

 

それでも達人級の、数が七倍が相手だ。

 

簡単に撃退出来る訳がない。

 

必死に防いでいる三人。

 

それに加えて、敵には遠距離支援もある。セリさんが必死に阻害しているが、それでも時々こっちにも投擲槍が来る。

 

あたしがあわてて飛び退いた其処に、槍が突き刺さる。

 

さっきの肩をさっくり抉られた威力を思うと、ちょっと洒落にならない。もしも弓を装備した奴が出てきたらと思うとぞっとしない。

 

ボオスもダメだ。

 

カイザーエンフォースというあの技を使った後の触手による打撃で、動ける状態じゃない。

 

アンペルさんが、遠距離から神代鎧に狙撃を続けているが、ちいさな穴を開けても止まる相手じゃない。

 

パティが数体の猛攻を受けて、立て続けに浅手を受けたのが分かった。しかも坂だ。こっちにさがるのも容易じゃない。

 

傷の状態よし。

 

あたしは立ち上がる。

 

「後の手当て任せる。 あたしも出る!」

 

「持ち堪えてくれ!」

 

「分かってる!」

 

あたしが前衛に躍り出る。そして、パティにとどめを刺そうとしていた神代鎧にドロップキックを叩き込んで、バラバラに打ち砕いていた。

 

 

 

フェデリーカは舞う。

 

ひたすらに、神楽舞を続ける。

 

なんと非力なのか。

 

そう感じる。

 

情けない。

 

そう思う。

 

だけれども、そういった心の迷いは、前に比べれば、ずっとマシになって来たのも事実である。

 

神楽舞の力は、もろに迷いが影響する。

 

前衛が必死に持ち堪えているのも、神楽舞による皆の強化があっての事なのである。だから舞え。

 

足が千切れようと。

 

必死に言い聞かせて、意気地なしの自分を叱咤する。奮い立たせる。名前を呼ばれて、あわてて横っ飛び。

 

今までいた位置を、鋭く投擲槍が抉っていた。

 

また立ち上がる。辺りはもう、地獄絵図以外の何者でもない。

 

巨獣は仕留めたが、あいつは倒れる前にライザさんの必殺技なみの制圧火力を容赦なく放ってきた。そのおかげで、高原は焼け野原だ。

 

むしろこれくらいの事をあっさりやってのけるライザさんが凄まじい。それもまた、分かってはいるのだけれども。

 

今はそんな事を言っている場合でもない。

 

とにかく舞え。

 

そして、皆を支援するんだ。

 

自分にひたすら言い聞かせる。

 

そして、カラさんが、ボロボロになった服を無理矢理縛りながら立ち上がる。酷い火傷は全治していないが。

 

これは寝ていられないという事だろう。

 

「大きいのを一発行くぞ」

 

「総長老!」

 

「今は一戦士じゃ! あの遠くから飛んでくるのをどうにかしないかぎり、もはや勝機はないでな!」

 

セリさんの言葉に、にっとカラさんが笑う。幼い子供みたいな容姿のカラさんだが、それだけで古豪なのだとよく分かる。

 

詠唱を開始するカラさん。

 

フェデリーカは、今はカラさんを最大支援するべきだと判断した。

 

八百万の神々よ。

 

今此処にて、魔術の権化を助けたまえ。

 

世界を守るために。

 

世界を私物化した邪悪を屠るために。

 

その手先を排除するために。

 

此処にフェデリーカが願い奉る。勝利を幸運を、そしてその大望の成就を。

 

たんと、踏み込み。そして回る。

 

次の瞬間、ざくりと音がした。投擲されてきた槍が、フェデリーカの腹を、文字通り刺し貫いていたのだ。

 

倒れながらも、やりきった。

 

フェデリーカは、意識を失うのを感じつつも。

 

カラさんの大魔術が、発動する気配も同時に感じ取っていた。

 

 

 

空から降り注いだのは、なんだ。

 

赤黒い光の球。それが炸裂すると同時に、敵後方にいた神代鎧数体が、文字通り吹っ飛ぶのが見えた。

 

あたしは、後方でフェデリーカが重症を受けたのを理解しつつも、そっちにかまう余裕がない。

 

あれはカラさんの魔術だろう。

 

そして吹っ飛んだ神代鎧を、巨大な覇王樹が多数、同時に抑え込む。これでもう、槍の投擲は出来ない。

 

振るわれる達人級の神代鎧の剣。

 

だが、其奴の鎧はかなり傷んでいる。ラヴィネージュの直撃ではないにしても、爆心地至近にいたのだ。

 

無事で済む筈がない。

 

剣撃を潜ると、とんと軽く押して、そしてちょっとさがった所に、本命の蹴りを叩き込んでやる。

 

胸部装甲が粉みじんに砕けた神代鎧が、吹っ飛んで坂を転げ落ちていく。あれは、もうまともに動かないだろう。

 

ディアンが、くぐもった声を上げる。

 

全身をかなり切られている。

 

それでも気合で立って立ち回っているが、元々ディアンは人間大の相手との戦闘が得意ではないし。

 

ましてやこんな超級の剣技をもつ相手だ。

 

まだ首を飛ばされていないだけでも、よくやっている。

 

だが、クリフォードさんも回避主体で立ち回っていても、限界があるし。

 

パティももうそろそろ。

 

呼吸を整えているあたしの真上から、唐竹の一撃。反応しようとした瞬間、フィーがその神代鎧に横から体当たり。

 

鬱陶しいといわんばかりに、フィーを斬ろうとした其奴を、あたしは数発の蹴りで粉砕していた。

 

残りは、八体か。

 

こっちも満身創痍で、もう限界近い。

 

レントやボオスも、リラさんも厳しいだろう。

 

タオが参戦してくる。パティを守って、神代鎧の一撃を弾き返す。少しずつ押し返す。とにかく、倒すしかない。

 

ざくり。

 

思い切り斬られた。

 

脇腹を大きく抉られたが。それでも体を旋回させ、動きが鈍っている神代鎧を蹴り砕く。パティが渾身の、多分最後の斬撃を浴びせて、神代鎧を袈裟に真っ二つにした。ディアンも根性をみせる。

 

蹴り技で半ば相討ちになりながら神代鎧を浮かせ。

 

手斧での一撃で、全身に致命打を当てた。

 

だが、そのまま倒れ伏して、動かなくなる。

 

クリフォードさんが真上に飛び、動きが鈍っている神代鎧を空中殺法で粉砕したが、着地のタイミングを狙われる。

 

だが、タオが反応。

 

元々乱戦でダメージを受けていた神代鎧を、通り抜けざまに斬り伏せる。

 

気付くと、辺りは死屍累々。

 

また、大きいのを貰ったな。

 

そう、あたしは苦笑いしながら、腰を下ろして、何度も深呼吸した。ざくりとやられた場所、多分内臓でてるな。そう思いながら。

 

クラウディアが来て、薬を塗り込み始める。

 

フェデリーカは無事か。

 

聞くと、クラウディアは凄く悲しそうな顔をした。

 

「大丈夫。 薬を即座に入れたから、もう平気よ。 でも、こう言うときは、自分の心配をして」

 

「へへ、そうだね」

 

「一度戻ろう。 あの様子だと、遠距離攻撃型の神代鎧はもう動けないし。 でも、また動いた時に備えて、少なくとも射線は切らないと」

 

「任せるねクラウディア。 ちょっと頭も働かないや」

 

情けない事だ。

 

総力戦になることは分かっていた。だが、これほどの被害を出したのは、或いはあたしも初めてかもしれない。蝕みの女王との戦闘はどうだったか。あれももっと楽だった気がする。

 

一度射線を切って、それで高地で一度安全圏を確保。しっかり手当てをする。

 

特に状態が酷かったディアンは。左手は手首から先が切りおとされていて。見つけるのに苦労した。どうにか間に合ったので。無事にくっつけることが出来たが。

 

カラさんはあの巨獣の大魔術で大やけどをした時に、服をごっそり焼かれてしまっていたので、あたしが作ってプレゼントすることにする。

 

どうにか動けるようになった後は、アトリエに直行。

 

驚くべき事に。あれだけの大乱戦だったのに。まだ昼だ。ともかく、食べたい。そう、思った。

 

こう言うときだからこそ、腹が減る。

 

腹を切り裂かれて内臓がちょっと前まで出ていたのに。

 

そう思うと、ちょっと不思議な話ではあった。

 

だが、戦いとはそういうものなのだろうとも、あたしは思った。

 

 

 

アトリエで、しばし休む。

 

反省の多い戦いだった。フェデリーカはまだ真っ青になっていて、何度か戻しそうにすらなったが。

 

それでも保存食を中心に出してきて、火だけ通して皆で囓る。

 

今は流石のクラウディアも、料理している体力的余裕がない。反省会をする元気すらもないので、今回が全滅の可能性もある本当に危険な戦闘だったことがよく分かったと言うものだ。

 

しばしして、干し肉をかじってやっと少し力が出て来たので。あたしがコンテナから栄養剤を出してくる。

 

回復薬だけじゃだめだ。とにかくいっちゃん効く奴を呷る。体力には自信があるつもりだったのだが。

 

それにしても、自分で作ったのに、こう言うときは信じられないくらい効くし。口に優しくもなかった。

 

溜息が出る。

 

クラウディアも、かなり無理をして栄養剤を飲んだ後、皆に粥を出す。簡単な料理だが、おなかは温まるし元気も出る。

 

皆で粥……卵粥だが。それを囲んで、無言のままがっつく。普段はもっと和気藹々だが、今日は余裕がない。

 

しばらくおなかを温めて、ディアンは寝ると横に。

 

アンペルさんは、大きくため息をついていた。

 

「私はサルドニカの北集落の警戒に出向く。 万全とは程遠いが、警戒だけだったらどうにかなりそうだ」

 

「アンペルさん、無理はしない方が……」

 

「我々の姿を見て、サルドニカの警備は動揺していた。 多分見ている余裕はなかったと思うが」

 

アンペルさんは見る余裕があったということだ。あたしも今回ばっかりは、気にしている余裕すらなかった。

 

我ながらまずい戦いをしたものだと思う。もっと迅速に巨獣を仕留めていれば、話は違ったのだろうが。

 

ため息をつくと、レントが立ち上がる。

 

傷は治ったが、まだ体調は万全では無いはずだが。それでも、今回はでる必要があるのだ。

 

「俺も出る。 粥の残り貰うぜ」

 

「すぐに次を作るわ」

 

「レント、大丈夫? あれだけあの大きい奴の攻撃をまともに受け止めていたでしょ」

 

「大丈夫だ。 アンペルさんが言う通り、一番今怖い思いをしているのは鉱山の警備の戦士達だ。 これ以上動揺させるわけにはいかない」

 

その通りだ。

 

ただでさえ彼等は油断からとはいえ大きな被害を出して、再建の途中である。それが、あたし達の負傷した姿を見せれば、下手すると士気が下がりきって逃亡する者まで出かねない。

 

そうなったら完全に警備の戦士達の秩序は崩壊する。それはあってはならないことだ。

 

ボオスがため息をつくと、フェデリーカに声を掛ける。

 

鉱山で回収したコンテナ。あれは病院から戻ってきたが、それにフェデリーカを乗せてつれて行くというのだ。

 

流石に無理だと思ったが、此処で一番頑張らないといけないのがサルドニカで指揮を取る人間である。

 

少なくとも無事な姿は見せないといけない。

 

腹を思い切りブチ抜かれたフェデリーカは。薬で回復させながら、同時に槍を抜くという荒療治で生還した。

 

当然凄まじい痛みだったようで、今も顔面蒼白である。

 

女性が経験する最大の痛みは出産だなんて良く言うけれど、それすらどうでも良くなるほどの痛みだっただろう。

 

今のフェデリーカを見ていると、痛み止めというか……麻酔を開発する必要があるなと、あたしは強く感じる。

 

常習性がある薬物の中に麻酔薬に適しているものがあるらしいが、そういう悪用されるものではなく、純粋に痛みを止めて薬用としか使えないものだ。色々クリアするハードルは高いだろうが。

 

戦闘時の厳しい状態、回復薬だけではどうにもできない今回みたいな状況で、しかも野戦医療を行う場合。

 

麻酔の存在は必須だなと感じてしまう。

 

パティがフェデリーカの肩を持つと、びくりとフェデリーカはふるえる。

 

「無理なら大丈夫ですよ。 訓練を受けた私でも、今回の戦いは震えるほどでしたから」

 

「俺はどうにか大丈夫だ。 先に行っている。 状況を説明する人間が必要になるからな」

 

ボオスが先にアトリエを出ていく。

 

皆も粥をがっついているが、やがてフェデリーカは顔を上げていた。

 

「い、行きます!」

 

「私、護衛についていきます」

 

「お願いパティ。 他のみなは、今のうちにきっちり食べて、一眠りして。 それから、さっきの戦場に戻るよ。 敵の残党の処理と、倒した魔物から残骸の回収。 しっかりやっておかないとね」

 

そう決めると、力も湧くというものだ。

 

とりあえずクラウディアも少しずつ余裕が出てきたらしく、次の粥は肉や味付けもだいぶしっかりしていた。

 

みんなでがっついて力にする。寝る余裕が出来た人間から寝台に向かう。あたしも最後の粥を片付けると、寝台に。

 

一刻くらい寝ただろうか。

 

フィーはずっと心配してあたしを見ていたらしく。目が覚めて、フィーが見ているのに気付くと、少しだけ安心した。

 

起きだしてから、風呂に入る。

 

ディアンはもう起きだしていて、湯をこの時に備えて沸かしていてくれた。まずはすっきりさせてもらい。

 

皆が起きてくる間に、カラさんの新しい服を仕上げる。エーテルに溶かして修復するだけだが。

 

カラさんの服は、オーリムにいる蜘蛛の糸を繊維として使っているようである。確か前にオーリムで回収した分があったはず。ちょっと増やして、これで服を作って見るかと思うくらいに頑強な繊維だ。

 

蜘蛛の糸は、同じ太さなら鋼鉄よりも強いのだ。ましてやオーリムの蜘蛛となると、更に繊維の強さに磨きが掛かると言う訳か。

 

次にオーリムに行くのはまだ先だ。その時に、ちょっと本格的に研究したい。

 

物理的な防御力はどうしても限界がある。だが、魔物にはアンペルさんの空間切断を防いでくる奴がいる。

 

こっちがあれを出来れば、多分戦闘では相当に優位に立てる筈だ。

 

カラさんが着ていた服には、あからさまに魔力の増幅効果があった。上手く利用すれば、魔物が張ってるような強烈なシールドを再現出来るかもしれない。

 

現時点では名人芸でレントが魔物と真っ正面からやりあってくれているが。それを名人芸ではなくても出来るようになる可能性もある。

 

それは是非とも、やってみたいものである。

 

薬も増やしていると、皆起きだしてきていた。

 

すぐに高地に上がる。途中、レントが高地の入口で不動の武神のように立っていて。警備の戦士達は、その姿で士気を保っているようだった。

 

あたし達が現れたのを見て、警備の戦士達が瞠目する。

 

「あ、あんなにボロボロになっていたのに……!」

 

「化け物か彼奴ら」

 

「おい!」

 

また、あのメイドの一族の人が咳払いすると、戦士達が背筋を伸ばす。

 

レントに、高地に行ってくることを告げる。

 

今回はパティもフェデリーカの支援に行っているから六人での登頂だが、まあ後処理だから大丈夫だろう。

 

辺りの戦闘跡は凄まじい。小型の魔物はまだ狩り損ねたのがいるが、すっかり怯えきってあたし達には近付いてこない。

 

巨獣の死骸にも、魔物が近寄った形跡はなかった。

 

遠くで潰されている神代鎧を確認する。脱出に成功した奴はいないようだ。

 

セリさんに頼んで、壊れるまで潰して貰う。クラウディアも、それに参加してくれるようだ。

 

一方的に遠距離からの攻撃で、粉々にするのをわざわざ見ていなくても良いだろう。

 

あたしは巨獣の解体を始めた。

 

全火力を叩き込んだフォトンクエーサーのエジキになったのだ。体内まで綺麗にこんがりだったが。

 

タオが、内部から出て来たものに瞠目していた。

 

「ライザ、これ!」

 

「お、タオとクリフォードさんの専門分野?」

 

「そうなるな。 こいつもやっぱり神代の手が入った魔物だった証拠だ。 ちょっと調べさせてくれ」

 

出て来たのは機械の塊だ。タオとクリフォードさんが、半ば焦げ付いているそれを調べてああでもないこうでもないと検証し始める。

 

あたしはそれは任せてしまって。後は巨獣の死骸の処理をしつつ。内臓を漁っていると、やがて見つけた。

 

セプトリエンだ。かなり大きい。

 

これが多分最大の収穫となるだろう。

 

カラさんが、セプトリエンを見て、目を細めた。

 

「ううむ、質はまだまだ良くないのう」

 

「やっぱりもっと成長するという事ですか」

 

「そうなるな。 そなたももっと質が良いセプトリエンを使って、装備を作りたいのであろう?」

 

「ええ。 まだまだ上を目指しますよ。 まだ完全でも頂点でもありませんので」

 

そうすることで、戦闘に勝ちやすくなる。

 

今回またセプトリエンを得た事で、更にグランツオルゲンを改良出来る可能性が高くなったと言える。

 

これは大苦戦の中の僥倖だ。

 

神代の錬金術師をあたしはクズだと考えているが、連中がもっている技術は本物だと思っているし、侮ってもいない。

 

だから本拠地に乗り込む時には。

 

奴らの手の内を知り尽くした上で。

 

完全封殺する気持ちで、徹底的に準備をしていくつもりだ。奴らがこういう魔物をばらまいていることは。

 

奴らの本拠には、もっと危険なガーディアンがいてもおかしくないのだから。

 

一通り巨獣の死骸の確認が終わると、後は使えそうな部位を除いて焼却。神代鎧の残骸も、全部回収する。

 

資料によるとハイチタニウムだが、貴重な鉱石が使われていたから。そのまま再利用が出来るし。

 

何よりハイチタニウムは、こういう野外にいる神代鎧を見る限り、錆びることはないようである。

 

完全に錆びないのかは分からない。だが少なくとも千三百年くらいは耐用年数があるということで、実に研究しがいがあると言える。

 

錆びない金属は金とか白金とか他にもあるのだが。

 

それらは強度に問題があるので、決して武器や装甲には実用的では無い。

 

ハイチタニウムを独占していた神代の錬金術師達は、少なくともグランツオルゲン込みの武装で強化していた相手以外には負け知らずだったのだろう。

 

驕るのも、なんとなく分かったし。

 

自分達が最高の存在になれないという負の情念についても、同調は出来ないが理解は出来た。

 

夕方近くまで、疲れきった体に鞭打って、回収を進める。

 

最後はマスクをつけて、溜まりに。

 

この辺りは、あの超ド級魔物がいて、ついでに神代鎧がいたこともあって、流石に魔物の姿がない。

 

セリさんに覇王樹をどかしてもらい、ぺしゃんこになった神代鎧を表に出すが。此奴ら、まだ動き出したので、その場で全員で粉砕した。とんでもない化け物だ。これをどう動かしているかの解析は、残念だがまだ出来ていない。

 

幸い遠距離武器持ちばかりだったのと、潰れていたので殆ど動けなかったのも幸いして、倒すのに苦労はなかった。

 

この残骸も積み込んでいる内に、タオとクリフォードさんが散って、周囲を調べてくれる。

 

ほどなく、クリフォードさんが手を振って来た。マスク越しだからか、普段とちょっと声の感じが違う。

 

或いはこの辺りに満ちている毒ガスも原因かも知れない。

 

前に下流を少し調べもしたのだが、その辺りは毒ガスも薄く、釣りも出来るくらい川の毒も弱かったのだが。

 

この辺りは、マスクなしだと絶対にろくなことにならない。

 

マスクが効いているだけで可とするべきだ。

 

「ライザ、来てくれ!」

 

「分かりました! みんな、集まって!」

 

「やれやれ、本当に忙しい一日だな。 ライザ、少し眠る時間を早く設定しよう」

 

「分かりました。 多分みな異存は無さそうですね」

 

リラさんの素敵な提案。あたしも大賛成だ。

 

寝ることがこんなに楽しみな日が他にあっただろうか。ただ寝るだけなのに。疲れがこう溜まっていると、最高のごちそうでご褒美にすら思えて来る。

 

クリフォードさんが見つけたのは、一見よく分からない塊だが。其処で塞がれている所に、明らかに埃などが積もっていない不可解な場所がある。

 

タオも加わって調べるが、しばししてやはりだ。

 

神代や古代クリント王国の遺跡でよく見つかる、スライドして探すコントロールパネルが出てくる。

 

この辺りは毒ガスも濃い。

 

だから、神代鎧が此処から出ていたとしても、遠くからは確認できなかったのだ。

 

「動力は生きてる。 多分扉、開くよ」

 

「明日以降にするよ」

 

「うん……悔しいけれど、時間切れだね」

 

タオも一旦引くことに同意。

 

既に夕陽が沈もうとしている。濛々と立ちこめる毒ガスの中から見る夕陽は。なんだか怪しくきらめいていて。

 

いつも見る夕陽と違って、妖艶というか、蠱惑的ですらある。

 

とにかく、みんな疲労が激しいし、この状態では不覚を取る可能性だって高い。一度戻るべきである。

 

そうあたしは判断した。

 

それにこの先、防衛用の神代鎧が出るかも知れない。この面子だけだと、あの対人殺傷力が高いガーディアンを、捌ききる自信はなかった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。