暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3 作:dwwyakata@2024
朝、ミーティングをする。このミーティングには、ボオスも参加して貰っている。状況の共有に必要だからだ。
ただ、朝がかなり早いので、ボオスは難儀しているようだが。
「ライザ、もう少し時間を後ろに移せないか」
「ダメだよ。 探索の開始時間が遅くなるでしょ」
「確かにそれはそうだけどな……」
「あんなばかでかい群島が人工物なんだよ。 何があるかわかったもんじゃない。 とりあえず、目星はつけておかないと」
ぐうの音もでない。
ボオスはそういう雰囲気で嘆息して、引き下がってくれた。
ともかく、すぐに皆で準備を整えて、宮殿がある島に向かう。残念だが、まだ噴水の再起動などは、先の話になるだろう。
エアドロップの中で、軽く作戦会議をする。
挙手して、提案してくるのはクリフォードさんだ。
「余裕があったら、帰りに寄り道をしたいんだがいいか」
「うん、どうしたんですか?」
「少し大きめの船を見つけてな。 それも難破船だ」
「ああ……」
何人かが、あたしと同じ声を上げる。
クリフォードさんは、自慢げである。
ロマンか。
クリフォードさんのいつもの奴である。
ちなみに、沈没船や難破船の宝は、個人で自由にして良いことが決まっている。もっとも、そんなもの、滅多に拾い上げられないが。
ただでさえ人類が生存圏を縮小する一方の今。
漁ですら命がけなのだ。
沈んだ船を引き上げるなんて、夢のまた夢である。
今回は、レアケース中のレアケースだ。
「クリフォードさん、仮に宝があっても、それを自慢はしないでください」
「わかってるぜクラウディア。 此処に与太者の類が押し寄せる可能性があるからな」
「分かっているならばそれでいいんですけれど」
「魔物をまとめて片付けた事が仇になって、与太者が来たらそれはそれで本末転倒だしな……」
レントがぼやく。
去年より更に戦歴を積んだレントだが。
聞いた話によると、やはり対人戦。賊の駆除なども、かなりの回数行ったという事である。
中には人を食うような匪賊の類もいたそうで。
だからこそ、人間との戦闘が如何に厄介か、思い知ったのだろう。
他の島を無視して、宮殿のある島に急ぐ。
その甲斐あって、あまり時間も掛けずに目的の島に到達。
上陸して、それで展開する。
セリさんが張ってくれた植物が丁度良い滑り止めになって、迅速に上がる事が出来る。だけれども、タオがちょっと複雑な顔をした。
「セリさん、いざという時はこの植物を引っ込めることを頼むと思います」
「分かっているわ」
「お願いします」
まあ、ここを遺跡として見た場合、この植物は邪魔だ。
だが、此処の足場の悪さをどうにかしないと、そもそも戦闘で大きな被害を出す可能性がある。
それは本末転倒である。
彼方此方にある魚やらの死体は干涸らびつつある。
無言でそれらを横目に奧に。
宮殿が見えてきた。
岩などの構造体……恐らくはそれすらも後から作ったものなのだろうが。それらが、上手に宮殿を隠している。
島に上陸してからも、宮殿は見えにくいほどだ。
其処に、張りぼての木々や草なども加わるのである。
徹底的に隠蔽されている。
陰湿なほどだ。
要塞として機能しているとも思えない。ともかく、近付く。
「これは……」
「ちょっと見た事がない様式だな」
タオとクリフォードさんが口々に言う。
タオが眼鏡に指を掛けた。
「何方向かから確認したい。 護衛、頼めるかな」
「いいよ。 ともかく中に入るまでに、無駄な危険は可能な限り排除しないとまずいもんね」
「しっかり背後は守っておくから、しっかり調査してくれ」
「心得た」
タオがメモを取り始める。
凄い勢いでメモを取っているのを見て、あたしは周囲の警戒に徹する。
今のタオは、図書館に篭もって二次資料ばっかりみているような学者と違って。各地の遺跡で現物を見て来ているバリバリのフィールドワーカーとしての側面も持つ。
恐らく総合的に見て、現在随一の学者ではないだろうか。
タオで分からないなら、多分王都に持ち込んでも誰も分からないだろうし。
今、この幸運を噛みしめながら。
その調査の結果を、ただ待つ。
無言で待っていると、タオは腕組みして考え込む。
「出張所を作った島にある塔とも形式が違う。 意図的に混乱させるかのように作ってるみたいだ」
「ふうん……」
とりあえず、真正面に立つと宮殿の外観は見える。
かなり広めに作ってあって。あの塔と同じように、海に沈んでいたにもかかわらず白磁の壁。
床も同じ。
魚の死体とかもまったく見かけられない。
これは魔術的なシールドか何かが働いていた可能性が高い。
島の彼方此方に、ちいさな竜脈があったのも気になる。
ドラゴンが様子を見に来たくらいだ。
「入っても問題は無さそう?」
「今俺が調べてる。 多分トラップの類は無いとは思うが……」
「最悪の場合は、俺が血路を開く」
「頼むよレント」
もう少し調べてから、それから奧に。
入口には扉すらなく、開きっぱなし。
どうぞどうぞ。
わかるものなら入ってこい。
そういうような、妙に苛立つ構造だ。
あたしと同じ印象を抱いたようで、レントが呟く。
「気にくわねえなこの宮殿の造り。 内部が死地になってるわけでもなく、客を歓迎しようっていう雰囲気でもない。 なんというか、自分達の事を見せつけて自慢しているかのようだぜ」
「そうだね。 私も何だか、たまに貴族に歓迎されることがあって、自慢話を散々されることがあるんだけれど。 その時と同じ空気だわ」
クラウディアも同じ意見か。
あたしは、足を止める。
殆ど同時に、クリフォードさんも足を止めていた。
あたしは魔力で。
クリフォードさんは勘で、それに気付いたと言う事だ。
何もないところから、それがせり上がってくる。
形状は、ほとんど古代クリント王国時代の幽霊鎧だ。だが。全体的に非常に強化されているのが分かる。
手にしている大剣は折れ掛かっているが。それでも直撃を貰えば、人間なんて木っ端みじんだろう。
分かる。
これ、多分百年前に来た奴の置き土産だ。
不自然に古いし、何より彼方此方が色々と造りがおかしい。ツギハギになっていて、手に入れたものを無理に継ぎ足したような造りだ。
「かなりデカイが、それでも骨董品だよ。 叩き潰す!」
「宮殿は壊さないようにね!」
「手加減できる相手だったら善処する!」
さっと全員が展開する。
あたしはバックステップしながら詠唱開始。詠唱しながら、爆弾を投擲する。
普通のフラムだが。
それでまずは充分だ。
炸裂するフラムが。若干動きがたどたどしい巨大幽霊鎧の顔面に炸裂する。足を止めた其処に、クリフォードさんのブーメランが叩き込まれ。巨体が揺らぐ。
側面に回り込んだレントが、脛に大剣をフルスイングして叩き込むが、それで倒れるほど柔でもない。
踏みとどまると、幽霊鎧から妙な音が漏れる。
呪文詠唱か。
セリさんが、地面に手を突いて、植物を大量に出現させる。それらが巨大幽霊鎧に絡みつく。
だが、金属対植物だ。
パワー勝負だと、どうしても分が悪い。
戒めを解こうとする幽霊鎧に、クラウディアが速射速射速射。傷んでいる鎧に、次々に凄まじい音とともに巨大な矢が炸裂する。
まずは、これでいいか。
あたしは詠唱を短時間で切り上げると、熱槍200を一点にまとめ。
踏み込みながら、投擲していた。
幽霊鎧の胸に、超熱量が炸裂する。
大穴が開く。
だが、中身は当然のようにがらんどう。そこに、立て続けに冷気の槍を叩き込む。ばきんと、凄い音がして。
更に穴が拡がるのが見えた。
だが、それでも幽霊鎧は止まらない。
接近を試みたタオを、大剣を振るって追い払う。
更に詠唱を完成させると、周囲に光の矢を放つ幽霊鎧。あたしも飛び退き、避けるが。ホーミングして来る。
杖を振るって、弾き返す。
爆発するが、どうにか致命傷は避ける。
身に付けている装飾品が作り出しているシールド。
それにあたしがとっさに魔力で張ったシールドによる防御もある。
だが、吹っ飛ばされて、床でバウンド。受け身を取って、そのまま勢いを利用して跳ね起きる。
この程度、大した事も無い。
「みんな無事!?」
「大丈夫!」
「やってくれたわね」
セリさんが、ぱんと両手を胸の前で合わせる。
同時に巨大な覇王樹が出現して、幽霊鎧を背中から突き飛ばしていた。
頭が吹っ飛ぶ。
だが、其処にあるべきものが当然ない。頭がなくなっても、普通に動いている。
レントが気合いを入れて躍りかかる。大剣で迎撃しようとするが、クリフォードさんがそれをブーメランで大きく弾く。
それでも、大剣を手から離さないのは立派だ。
更に詠唱をしている。あのホーミング魔術弾を連発されると、流石に面白くない。
「おらあっ!」
レントが、大剣で幽霊鎧を斬り下げる。胸から腹の辺りまで、一気にだ。
あたしの背丈の五倍はある巨体だが。
今のレントのパワーだったら、痛んだ金属くらいだったらこの通り。だが、それでも幽霊鎧は動く。
遅すぎた音声での警告が入る。
しわがれた男の声。
それも、恨みがましい声だ。
「退去しろ。 ここは私のものだ!」
「お断り! そもそもこんな危険な遺跡、放置しておけないっての!」
レントが飛び退く。
あたしが熱魔術も利用して、全力で加速したのを見たからだろう。クラウディアが、総力での射撃を叩き込む。
タオが跳躍。
幽霊鎧の大剣を握る腕を、完璧な太刀筋で、断ち割っていた。
手首から先がもげ落ちて、ドンと地面で大きな音を立てる。それでも抵抗しようとする幽霊鎧。
あたしは裂帛の気合とともに、炎の塊になって突っ込むと。
跳躍して。
蹴りを叩き込んでいた。
貫く。
床を滑りながら、振り返る。
あたしに大穴を開けられた幽霊鎧が、軋みを挙げながら、地面に倒れる。
セリさんが魔術での植物操作を解除したので、それで余計に倒れる速度が上がったようだった。
ふうと、息を吐く。
どうやら、この巨大幽霊鎧の他に、雑魚はいないらしい。
周囲から、少なくとも戦意はなくなっていた。
幽霊鎧の残骸を外に持ち出す。使えそうな金属塊は分別し。それ以外は、砕いてしまう。
中枢にはコアがあったのだが、腰の辺りにあった。
なるほど、攻撃しても平気な訳だ。
どうしても生物急所を狙って動いてしまう。
それを意識して、頭や胸では無く、腰にコアを入れたのだろう。
百年前にここに来たらしい人間の声も出していた。
本来はあれで警告し。
それでも出ていかないなら、実力行使という設計だったのだろうが。
この幽霊鎧は、技術的にも衰退が始まっていた時期に。過去のテクノロジーを組み合わせて作ったものだ。
上手く動かなかったのは、仕方が無いのかも知れない。
ただコアは、これは恐らく神代のものだ。
これでも、相当に頑張って作ったモノだったのだろうと思う。
コアは回収しておく。
多分、何かの役に立つ筈だ。
「大剣はどうする?」
「そのまま持って帰るのは難しそうだね。 刀身が無事そうな所を残して、後は折っておいて」
「分かった」
レントがばきんと音を立てて、大剣を蹴り折る。そして、何個かに分けて、荷車に積み込んでいく。
その間にタオとクリフォードさんが、宮殿を調べて行く。
一階はまるごと踊り場になっていて。
二つの曲がった階段が、二階につながっている。
非実用的な階段だ。
転んだときに、一気に下まで落ちてしまう。踊り場の一つでも作ればいいものを。
二階はちいさなバルコニーがあり、ベランダ状になっていて下を見下ろせる作りになっているが。
問題は奧だ。
窓がないのに、光が入っているのも気になる。
更に言うと、柱も殆ど見当たらない。
つまりこの宮殿は、外側の構造体だけで、建物を支えていると言う事だ。石造りの家でも、柱になる岩をどこかしらからか見つけて来て、加工して使うのである。此処はちょっと、技術レベルが違う。
そしてそれを見せつけている。
やっぱり気にくわないな、この建物。
例えば、王都にあった貴族の邸宅は、そもそも元々が邸宅ではなかった。アレは恐らく、高級宿泊施設だったものだ。それがいつの間にか、貴族の邸宅になってしまったものだった。
これはそれとは違って、ホストが客に自慢をするためだけに作られた建物だと判断していい。
それだけじゃない。
上から、試してやるというような意図がビリビリ感じさせられる。
優れた教養をもつ我々が招待してやった。
お前程度に、此処の素晴らしさが理解出来るか。
そういう悪意だ。
あの「蝕みの女王」にも通じる。
非常に嫌な気分になったので、壁をさわさわして調べているクリフォードさんに話を振る。
一番近くにいたからである。
「どうですか、クリフォードさん」
「ずっと沈んでいた筈なのに、まるでずっと外にあったようだ。 海水の影響はまったくないな」
「トラップはどうです」
「懸念はしていたが、嫌な予感はしねえ。 この辺りからはな」
そうか。
そうなると、嫌な予感の原因は奧か。
タオも頷く。
手を叩いて、皆を集める。そして、曲がっている階段を上がって二階に。
「ずっと沈んでいた割りには、すべらねえな」
「うん。 海水をどうやってか防いでいたのかもね」
「僕が見た神代の遺跡のどれよりもこれは古いよ。 此処が群島の中枢なのは確定だろうと思うけれど、コントロールルームはどこにあるんだろう……」
二階。
一階を見下ろすが、ちょっと光景が歪んでいるようだ。
多分この宮殿の中には、錬金術だけではなく、それ以外にも今より遙かに進んだテクノロジーが満たされている。
これを突破するのは骨だぞ。
そう思いながら、奧を見る。
其処にあったのは。
ばかでっかい扉だった。
回廊が続いている。
宮殿としても、何としても、あり得ない形状。
その先に扉があって。其処の奧に明らかに部屋がある。
石碑みたいなのもある。
タオがすぐに駆け寄って、石碑の内容を写し取り始める。石碑、でいいのかすらも分からない。
あたしは分からなかったが。タオは知っているようだ。
「これ、多分ハイパーセラミックだ」
「セラミックって焼き物の事だよね」
「基本的にはそうだよ。 だけれども、このハイパーセラミックは、そもそも今の焼き物とは技術レベルの次元が違うものなんだ……」
「焼き物ねえ……」
レントがこんこんと、その石碑みたいなのを叩くが。
これは、確かに凄まじい。
何を焼いたらこうなるのか、解析しないと分からない。クリフォードさんは、厳重に周囲を警戒してくれている。
クラウディアは音魔術を全開に。
どこで何が起きても、対応できるように備えてくれていた。
あたしは扉を見上げる。
なんだろうなこれ。
変な模様がある。
竜みたいな模様だ。
竜。
エンシェントドラゴンの西さんの事を思い出す。残留思念とちょっとだけ話しただけなのに。
一瞬で、大きな影響を受けた相手。
色々な事を、その会話で知る事が出来た相手。
ドラゴンは人間にはあまり分かっていない事が多いが。自然門を作りあげたのは、十中八九あの西さんだとみて良い。
あらゆる状況証拠が、それを証明している。
「フィッ……!」
「ライザ」
「!」
懐から顔を出していたフィーが、珍しく毛を逆立てて警戒している。それくらい危ない相手、ということだ。
いや、何か嫌なものを感じ取っているというのだろう。セリさんが促してくれたので、それに気付けた。
「フィー、この扉に何かいやなものを感じるの?」
「フィー!」
「そうか……」
ふむ。
この扉がどっちにしても重要か。
タオの方に視線を向ける。
タオも、必死にメモをしている状態だ。これは、まだ何か分かる状況ではないとみて良いだろう。
「タオ、ちょっといい」
「うん?」
「この扉の模様、メモを取っておいてくれる?」
「ああ、当然だよ。 それがどうかしたの?」
一応念の為だ。
アンペルさんに情報を共有する際に、この模様について調べておくべきだと判断した。それだけだ。
アンペルさんは、錬金術ではあたしがもう上で。学者としてはタオが上みたいな事をいうけれど。
やっぱり百年の経験から来る知略は、まだまだ充分にあたし達より凄いと思う。
だから、何か知っているかも知れない。
それと、だ。
百年前に来た錬金術師が恐らく残しただろう、あの幽霊鎧の事もある。
何かしら、知っている事があるかも知れない。
「よし、石碑のメモは終わり」
「……この鍵、どうなんだろうね」
「ああ、例の奴だよな」
「うん」
懐から、鍵を取り出してみる。
まだ分からない事が多い鍵だが。どうにもこいつは不完全な代物だと、あたしは感じていた。
竜脈にかざすと、力を吸収して変質する。
その力を放出することで、色々と出来そうなのだが。
無言で鍵を向けてみるが、扉はまったく反応しない。
ふむ。
多分だけれども、これでは「まだ」ダメだと言う事だ。いずれにしても、この扉が宮殿の要とみて良いだろう。
「ダメだね。 少なくとも今はまだ」
「今はってことは、何か当てがあるの?」
「うん。 この鍵、未完成だと思うんだよね。 この鍵の正確な力を調べる事も、試されているんだと思う」
巫山戯た話だと、あたしは壁に毒づく。
此処には悪意しか感じない。
なんというか、誘蛾灯のように錬金術師を引きつけているような、そういうものを感じるのだ。
一旦、戻る事にする。
既に幽霊鎧の残骸は回収し終わっているので、何度か運んで、出張所のアトリエに格納しておく。
その過程で、クリフォードさんがいっていた難破船も確認する。
エアドロップを横付けすると、浅瀬に完全に乗り上げている。腐食が酷く、内部には白骨化した人骨も散見された。酷く痛んでいる臭い。
あの群島の一番大きな島の、魚のたくさんの死体を思い出す。
あたしは口を押さえながら、クリフォードさんの調査に協力する。クリフォードさんが、まもなく宝箱を見つけて来た。内部には金貨やら宝石やらが入っていたが。見つけてしまえば、もう興味は無いようだった。あたしもあまり興味が無いので、欲しい人は、と聞く。クラウディアが引き取ると言うので、引き渡した。それで終わりだ。
其処で休憩。まだ昼少し先だ。昼食を取ってからでも、戻るのは遅くないだろう。
一度此処に寄ったときに、クラウディアがコンテナにサンドイッチを入れていた。ちょっと冷えてパンが硬くなっているが、まあそれは仕方が無い。新鮮な食材を挟んでいるので、普通に美味しい。
食べ終えると、クラウディアがお菓子も出してくる。
これは頭に糖分を入れるためだ。
セリさんが、お茶を淹れてくれる。最近はハーブティを勉強しているらしい。こっちの人間の文化には殆ど興味が無いらしいが。ハーブティはそれなりに好きなようだ。
「はあ。 生き返るな……」
「それでタオ、どうよ」
「……そろそろ僕は王都に一度戻るから、先にちょっと言っておくね。 これは神代でも、更に古い時代の文字だね。 全ては解読出来なかった」
「タオでも解読出来ないのかよ」
レントが驚くが。
タオは苦笑い。
知識が増えれば増えるほど、自分が賢者などでは無い事を知ると言う。
「ただ、一つだけ解読出来たことがあって、それが気になるんだ」
「聞かせて」
「うん。 「万象の大典に至れ」。 これって物事の本質、真実みたいな意味の言葉として伝わっているものなんだけれども……」
「あたしもそれは聞いた事がある」
だけれども、何というか。
やはり悪質な誘導を感じる。腕組みして、考え込んでしまう。
「とにかく気を付けてライザ。 あの宮殿、色々と悪いものを感じるんだ。 アガーテ姉さんにも警告はしておくよ。 ともかく誰も近づけないようにって」
「分かった、頼むよ」
既にタオは、王都で学者になるという話がクーケン島でも広まっている。
それを聞くと、タオの両親はどっちも舌打ちして、恨みがましい目で話をしているものを見ている。
大人の現実なんて、そんなものだ。
ともかく、あたしも気を付けて、備えなければならなかった。