暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3 作:dwwyakata@2024
本作ではパティとフェデリーカは原作以上に親密です。
原作でも周囲が仲良くさせようとしていたり、一緒に菓子を作ったりしていましたが、そこまで親密になれたようには見えませんでしたので……
せっかくですので、色々と親密イベントを追加してみました。
会議が終わってぐったりしているフェデリーカに、パティは持って来た栄養剤を渡す。とにかく飲みにくいこれだが、効果はてきめんである。
しばし泣きそうな顔をしていたフェデリーカだが。
やがて目尻を何度か拭っていた。
「すみません。 私が不甲斐なくて、会議は長引くし、戦闘だって」
「フェデリーカはよくやれています。 私が初陣の時なんて、目の前で走鳥に戦士が丸呑みにされそうになって、それをお父様が助けて。 それがずっと怖くて、足が震えたのを覚えています」
これについては事実だ。
ライザさんと散々意味がわからない危険な魔物とやりあって、随分肝も据わったと思うけれども。
誰もがそうなれるとは、パティだって思っていない。
フェデリーカはむしろ頑張っている方だ。
普通の戦士だったら、とっくにトラウマで家から出られなくなっているだろう。
或いはだけれども。
幼い頃から薄汚い大人の権力闘争と。
醜いエゴのぶつかり合いを見ていたから、耐性が出来ているのかもしれなかった。
「愚痴とか、言っても良いですよ」
「ごめんなさい。 今は……ただ一人にしてほしいです」
「分かりました。 ただ……」
「分かっています」
やる事がある。
ライザさんが、サルドニカを発つ前に、二つこなす事がある。
一つは、前回修復しきれなかった大型機械類の修復。彼方此方にある巨大歯車の整備である。
あれらの機械は、元々古代クリント王国時代の工場をそのまま分解して使っているらしくて。
溶鉱炉に使っていたり。
或いは大規模な動力が必要な場所に配置したりもしているそうである。
ただし錆が酷いように、そろそろ壊れる。
サルドニカにとっては、大問題だった。
修理の際には、当然だが機械を止める必要だってある。それらも含めて、調整がいるのだ。
ライザさんは、幸い実績については、既にサルドニカでは魔神のように怖れられるほどに上げている。
だから、話を通すのは簡単だろうが。
それでも、今は大事な時期だ。出来るだけ穏便にやらなければならない。
それともう一つが。
百年祭の肝となる、ドゥエット溶液の改良である。
前回と同品質のものは、既にライザさんが追加納入してくれた。それはパティも確認している。
だか最高位の職人は、それでもまだ満足していない。
だから、その要望に応える必要もある。
何より、サルドニカの危険を除くためにも。あの溜まりを調査するのは、必須なのである。
外で待っていたボオスさんと、軽く相談する。
此処はアンナさんも巻き込むべきか。
アンナさんが、事務をしているが。ゼッテルが発火しそうな勢いで筆を走らせている。いや、これは本当に発火しかねないな。
苦笑いが浮かびそうになるが。
手を残像を作りながら動かして、まるで四~五本手が見えるような状態で事務仕事をしながら、アンナさんは此方を見ずに話しかけてくる。
「相談事ですか」
「……ギルド長の負担が想像以上に大きいので、協力を申し出たく」
「ふむ。 ドゥエット溶液は其方でないとどうにも出来ませんが、他については相談に乗りましょう」
話している間にも、次々と書類が積み上がっていく。
うちのメイド長もこんな感じで事務書類を仕上げているんだろうなと、パティはちょっと口の端を引きつらせる。
武芸では三回に一回一本を取れるようになったが。
流石にこれは真似できない。
「問題は大規模機械の修復でして。 ライザさんが一度見る事、それと機械を止めること、それぞれの時間調整をお願い出来ますか」
「ふむ、前回の逗留時にライザさんは小型の機械はあらかた直してくれました。 大型も出来るのですね」
「何度もライザさんと冒険を共にしてきた私にも、あの人の底は正直見えていません。 しかし、恐らくは出来ると思います」
「……分かりました。 三日後以降にセッティングします」
三日後か。
ライザさんは、時間は出来るだけ短縮したいと思っているようだが。溜まりの調査。座標の収集。
それに溜まりにある遺跡の調査も含めて、残り二日でいけるかどうか。
いや、いける。
パティが見ても、とんでもないスペシャリストの集まりだ。それに、溜まりにいた超ド級の魔物は片付けたし、何よりあの溜まりの大きさからして、遺跡の規模もだいたい神代鉱山と同じくらいだと判断できる。
まだ神代鎧がいるかも知れないが、あれらが外に出て来ていたのは、遺跡の内部での戦闘が不利だからではないのか。
だとすれば、更に狭い可能性もある。タオさんとクリフォードさん、アンペルさんが総力を挙げれば。
それほど解析に時間は掛からないはずだ。
ましてやライザさんは、もう少し資料があればどうにかなるとドゥエット溶液の改良について話していた。
あの人は、根拠なしにそういう事は言わない。
何度も目の前で奇蹟を見た。
というか、ライザさんと一緒に戦っていなければ、もう手の指は何本も欠損している状態だ。内臓だって幾つか潰れている。
今生きてもいないだろう。
「此方でもライザさんにその旨伝えます」
「よろしくお願いします。 会議では助力ありがとうござました。 ギルド長だけだったら、倍は時間が掛かっていたでしょう」
この人。
フェデリーカに愛情はないのかな。
そんな風に思う。
今の冷徹な物言い、明らかに客観的視点という観点を超えてしまっている。まるで道具として見ているような。
フェデリーカさんの孤独が分かった気がした。
パティも親しみを込めて、フェデリーカと頑張って呼ぶようにしているが。それでも時々さんをつけて呼んでしまう。
フェデリーカの孤独は、パティの想像以上なのかも知れない。
幼い頃に婚約者もなくしたと聞いている。
お父様も早い段階でなくしたようだし。
それでいながら、アンナさんがこれでは、確かに孤独にもなるか。
顔を上げる。
だったら、ライザさんが促してくれたように、パティが友達になれば良い。
サルドニカの指導者と仲良くなると言う利害の点でもそれは有益だが。
今は、孤独で震えている一人の女の子の力になりたい。
こういう考えは、騎士としてのありかたをお父様に叩き込まれたからだろうか。別にそれはどうでもいい。
パティが。人間として。
神代の錬金術師のような愚劣な人達では無い存在になる為に。
必要だと思って、やるべき事だった。
(続)
人間を止め始めているライザと違い。
パティは人間として出来る事をやろうと頑張っています。