暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3   作:dwwyakata@2024

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一度目に来た時より、ライザの力はあらゆる意味で上昇しています。

王都でやったように。

サルドニカの問題は、此処であらかた片付けてしまいます。


2、二度めのサルドニカ出立

巨大な歯車を、セリさんの巨大な植物の蔓が支え、レントとディアンも協力して、ゆっくりと地面に落とす。

 

此処は溶鉱炉に関与している、サルドニカの最重要工場だ。

 

機械類は既に直しているのだが、この巨大な歯車は、他の工場ともちょっと次元が違っている。

 

多分だけれども、こういう巨大金属塊を加工する専門の機械が。古代クリント王国時代まではあったのだろう。

 

錬金術師が修復して使ったのか、作り出したのか。それとも神代のものをそのまま利用したのか。

 

いずれにしてもそれは古代クリント王国破綻のタイミングで失われてしまい。

 

今はこうして、苦労しながら修理をしなければならないわけだが。

 

「よし、降ろして!」

 

「畜生、重え!」

 

「降ろすとき気を付けろ! 曲がったら取り返しがつかん!」

 

ディアンにレントが叫ぶ。

 

まあその通りだ。あたしは数十に分割した歯車の部品を一つずつ作り、何度も此処に運び込む。

 

基本的に組み合わせる形だが、このサイズだとそれでも不安があるので、接着も行う。他の歯車でもやっていたが、この歯車の場合は接着に使う薬剤の性能を更に強化してある。

 

この巨大な歯車は、今までのもの以上にボロボロだ。

 

巨大さも倍もある。

 

セリさんを呼んできて正解だった。地面に降ろした後は、覇王樹と巨大な蔓を上手に使って、セリさんが工場の脇にどけてしまう。歯車はこの工場でも数が多く、これほど巨大なものほどではないが。

 

他も再現するのに一苦労だった。

 

アンナさんは今日は朝一から来ている。

 

昨日の作業が昼で片付いて、今日は事前に部品を作って持ち込んで準備も進めていたのだが。

 

今日中にこれが終わるかかなり怪しい所だ。

 

工場の人員も溶鉱炉を止めて、遠巻きに見ている。

 

此処は毒ガスも出るので、それを中和する設備も手を入れたい。機械類を直したときにある程度自動でやってくれるようにはしてあるのだが。それでもどうしても、工場全部は直しきれないのだ。

 

歯車の組み合わせ終わり。

 

接着については、しっかり組み合ったことを確認してから行う。これは建築用接着剤と同じだ。

 

多数の蔓で歯車を持ち上げて、あたしが熱魔術で念入りに凹凸や溝の様子を確認。よし、問題なし。

 

接着。

 

ワードを唱えて、高精度の超強力接着剤を硬化させる。

 

他の大型歯車も、順番に仕上げていく。

 

七割ほどが仕上がった所で、昼の差し入れが来た。ありがたくいただく。アンナさんが隣で、無言でぱくついている。

 

タオが、少し食事の手をとめた。

 

「合間に調べたんだけれど、この巨大歯車ね。 古代クリント王国の廃墟から持ち出して、此処に設置する際に事故が起きて、くみ上げる最中に人が何人も死んだんだって。 だから街の象徴であると同時に、慰霊の歯車なんて呼ばれているらしいよ」

 

「そっか。 それなら修理もきっちりして、予備部品として使えるようにしておかないとね」

 

「うん。 此処で大事なのは、怪談話の一種だって事じゃなくて、サルドニカにとってとても重要な設備であるってことだからね」

 

食事を終える。

 

流石にレントもディアンも疲れが見え始めている。出来れば今日中に歯車の組み立てはやっておきたい。

 

セリさんも、連日大規模な植物魔術を行使しているから、いつも以上に口数が少なくなっている。

 

セリさんが呼び出す巨大植物だって、無尽蔵なわけでもないだろう。

 

それは疲れるはずだ。

 

淡々と作業をする。巨大歯車を配置して、他の歯車も一つずつセットしていく。その作業をしながら、タオが指示を出して、少しずつ微調整。かちっと噛み合う瞬間が、非常に美しいが。動かして見ると、人間の主観なんてそんなものだと笑っているかのように、歯車が動きが悪かったりする。

 

微調整を何度も繰り返して、タオの指示通りに歯車を噛み合わせる。

 

既に夜になっていた。

 

かなり予備の時間を取っていたのに。

 

心配してクラウディアが見に来た。夜食も持ち込んでくれている。

 

「ライザ、大丈夫? 明日の夜には出港の手配はしてあるけれど、出られそう?」

 

「問題ない。 それよりも、手が開いてるようならリラさんにも来て欲しいかな」

 

「分かった、呼んでくるね」

 

夜食を皆で食べておく。

 

その間にリラさんを呼んできて貰って。その後、ラストスパートを掛ける。

 

最後の歯車をセットして、きっちり動き始めたときは、おっと声が上がったほどである。それほど感動的な光景だ。

 

車軸も全部作り直した。

 

溶鉱炉の動力を、これでよりパワフルに。

 

より繊細に伝える事が可能だ。

 

機械類をタオが調整。

 

ばっちりだという。

 

「エラーはなし、オールグリーンだ。 古い歯車のせいで出ていたエラーも、全部解消されてるよ!」

 

「よし、ギリギリ間に合ったね!」

 

「ライザさん!」

 

フェデリーカが来る。

 

そして、歯車を見て、しばし止まった後。

 

ばしっと頭を下げる。

 

「サルドニカの民を代表して感謝します。 街周辺の脅威の完全排除だけではなく、これだけの事もしてくれて。 前の逗留の時にもしてくれた事もですが、サルドニカの中興にライザさんは本当に欠かせない存在です」

 

「大げさだよ。 それと……こう言う作業を自力で出来るようにサルドニカでは目指して」

 

「はい!」

 

フェデリーカの様子を見て、感心するばかりだった工場長も、同じようにして頭を下げていた。

 

これで百年祭の時には、さび付いた歯車ではなく。

 

白銀に輝き、錆びることもない美しい歯車を見る事が出来るだろう。

 

それは新しいサルドニカの名物になる。

 

細工物だけでは無理がある。

 

いずれ金属加工でも、サルドニカは大きな存在感を示して欲しいものだ。

 

ともかく、アトリエに戻る。

 

ディアンは寝台に直行。

 

前から思っていたが、ディアンは疲れ果てると文字通り電池が切れるらしい。あんな風になる。

 

そういう所は子供っぽいなと思って、あたしは苦笑。

 

タオが念の為、今までの工場の稼働状況を見てきてくれるらしいので、それを待ってから、今日は終わりにする。

 

予備日はどうやら、休む事に使えそうだ。

 

やがてタオが戻ってくる。

 

機械類のログも確認してきたと先に言うので、ちょっと緊張したが。

 

しかし、結論を聞いて、待っていた皆の顔が明るくなる。

 

「可能な限り完璧な仕上がりだよ。 恐らくは、戦乱にでも巻き込まれない限りは、千年以上はあの設備は動き続けると思う」

 

「凄い!」

 

「流石に千年の時を超えるのは凄まじいのう。 神代の愚か者共は、どうしてそういう建設的な方向に、技術と力を使えなかったのであろうな」

 

カラさんが、少し寂しげに言った。

 

これで、とりあえず思い残すことは無い。

 

サルドニカでの作業は終わりだ。

 

後は、百年祭にあわせて、門を通ってサルドニカにまた来れば良い。約一月後ということだが。

 

その程度では、まだ神代の本拠には殴り込めないだろう。

 

ちゃんと来る機会はあるはずだ。

 

その前に。

 

解散前に、渡しておく。

 

今日の朝、アルベルタさんとサヴェリオさんが来た。二人の合作であるらしかった。

 

「はいフェデリーカ」

 

「これは……」

 

それはネックレスだ。

 

ちいさな宝飾品だが、小さい中にも魔石と硝子が組み合わされ。それぞれの象徴となるものを象って交差させている。

 

ドゥエット溶液改を用いて作った、最高の職人による最高の品だ。

 

「既にこれから更なる激戦地に赴く話は二人にしてある。 だから、基本的にはコンテナに入れて置いて。 これはギルド長に代々引き継いだ方が良いだろうね」

 

「はい。 まさかこんな日が来てくれるなんて……」

 

両手で顔を覆うフェデリーカ。

 

フェデリーカのお父さんの頃からの悲願が叶ったのは。一目で分かる。

 

ついにサルドニカは。

 

くだらない利権争いを終えて、

 

一つにまとまることが出来た。

 

少なくとも、街を割りかねなかった硝子ギルドと魔石ギルドの対立は、これで片付いたのは明白なことだった。

 

フィーが喜んで、フェデリーカの周りを飛んでいる。

 

フィーにも良い事だと分かったようだった。

 

 

 

ぐっすり一眠りをした後、ギルド本部に顔を出す。

 

確認しておくことが幾つかあるからだ。

 

東の地に出向くのは、船で四日ほどかかる。サルドニカでは、東の地の血を引く人が多いが。

 

それはそれだけ、地理的に近いからだ。

 

フェデリーカにも東の地の人の血が入っているように、である。

 

当世具足や大太刀も、東の地から入ってきた技術だ。それらはいずれもが、とても貴重なものなのである。

 

アンナさんに、東の地の資料を見せてもらう。

 

もう目を通したが、最終確認だ。

 

東の地で一番偉い人は「征夷大将軍」というらしい。これは侵略者と戦うアーミーの一番偉い人、くらいの意味だそうだ。

 

一応ロテスヴァッサに形式的には属しているが、ほぼ形式だけ。何か押しつけてくるようならば、即座に追い出すくらいの勢いらしく。古くから非常に独立傾向が強い場所だそうである。

 

ただ、言葉は普通に通じるそうだ。

 

これについては謎が多い。神代の頃に一度世界言語的なものが作られて、それが全土で定着したのか。

 

それとも別の理由かはよく分からない。

 

或いはもっと昔の話か。

 

「東の地では、今ベヒィモスという極めて危険な魔物が暴れています」

 

「それはあたし達が倒した奴以上と言う事ですか」

 

「ええ。 恐らく、地上で最強の魔物の一画でしょう。 実力はエンシェントドラゴンや精霊王に比肩するかと思われます」

 

そうなると、王都近郊で戦った、フィルフサのあの王種くらいはありそうだな。

 

あいつもとんでもない強さだった。

 

あれ以降、彼奴を超えるフィルフサとは遭遇していない。

 

今回も、準備をしていかないといけないだろう。そう感じる。

 

姿については、まったく分かっていないという。

 

というのも、遭遇したら生きて帰れないとかで。そうなると、なおさら危険だ。手札が分からないのだから。

 

「ともかくお気をつけを。 サルドニカに千年分の発展をもたらしてくれた貴方という偉人が失われることは悲しく思いますので」

 

「大丈夫、勝ちますよ」

 

「武運を祈ります」

 

握手。

 

アンナさんは、例の一族の人だ。この人が此処まで言う相手だ。

 

油断は絶対に出来ない。

 

アトリエに鍵を掛ける。物理的なものだけではなく、魔術的なものもだ。これはチンピラや与太者、ゴロツキの類がちらほら見られるからだ。

 

傭兵を雇ったことにより、サルドニカは軍事を見直してきている。

 

その過程で、そういうのが入り込んでいるという事である。

 

これはある程度は仕方がない。

 

そうしないと、鉱山などは守りきれないからだ。

 

アトリエの側の畑も片しておく。

 

どうやら警備でそこそこ偉い人らしい、騎士崩れの戦士が来る。毛並みは良さそうだが、実力はそこまでじゃないと一目で分かる。

 

「サルドニカで貴方を雇いたいくらいでしたが、行ってしまわれるのですな」

 

「はい。 大きな目的がありますので」

 

「いつでもお越しください。 サルドニカはいつでも貴方を歓迎します」

 

「はい。 百年祭には顔を出せると思います」

 

敬礼。戦士として実力は足りなくても、相応に敬意は払ってくれたし、それでいい。

 

後は荷車二つに荷物を分乗して、アトリエを離れる。

 

鉱山で回収したトロッコは、小妖精の森にあるアトリエに移しておいた。彼処は基本的に今後も基点になる。

 

このため、拡張についても考えるつもりだ。

 

流石にこの人数でずっと行動するとはあたしも考えていないが。

 

前に比べて、手狭に感じる事も、確かに増えてきているからである。

 

港まで歩く途中で、手を振って送ってくれる人を時々見かける。サルドニカを見ると、白銀に生まれ変わった大きな歯車が、陽光を反射して軽やかに回っているのが見えた。

 

サルドニカは良い方向に変わりつつある。

 

これは、王都も負けていられないし、下手をすると追い越されるだろう。

 

「王都に戻ったら、忙しくなりそうだね、パティ」

 

「はい。 無能な既得権益層は一掃しましたが、お父様もまだまだ苦労をしている筈です。 時々進捗を手紙に書いて送っていますが、この件が終わったらライザさんも王都に来てください。 頼みたい事が幾つもありますので」

 

「おっけい。 でも、分かってるね」

 

「はい。 アーベルハイムで利益を独占するつもりはありません。 この世界に住む全ての人のためです」

 

第三都市、第四都市も状況が悪いと聞いているし。

 

それらへの対策は、バレンツとアーベルハイムの後ろ盾有りでやった方が良いだろう。

 

レントからもそれらの都市の話は聞いているが。

 

無能な連中が仕切っていて、裏路地なんかは無法地帯も良いところだそうである。

 

それじゃあ、魔物に人間が押され放題になるのも納得である。

 

こんな状態なのに、人間同士で蹴落としあい奪いあいをしているのだから。魔物にして見れば、エサが勝手に食べ頃に熟してくれているようなものである。

 

腐敗は権力の常だなんて言葉を前に聞いたが。

 

馬鹿馬鹿しい。

 

そうやって堕落や腐敗を肯定しているから、あっと言う間に人間の作る全てのもの、特に国家はダメになるのだ。

 

個人のエゴと欲望を全肯定していた神代の所業を知っている今となっては。

 

賢しらに悪徳を肯定する輩に対しては、あたしは頭を蹴り砕く以外の言葉が出てこない状態である。

 

港に到着。

 

バレンツも使う大型商船だが、例のメイドの一族の戦士が何人か乗っている。いずれも歴戦の雰囲気である。

 

これは、東の地は余程の状況であるらしい。

 

先に荷物を載せて、船室に入る。錬金釜を設置した後、軽く皆と話をしておく。

 

「クラウディア、東の地の一番偉い人。 征夷大将軍という人とアクセスする事は可能かな」

 

「大丈夫、手配はしてあるよ。 バレンツは元々東の地に色々な金属資源を売っていて、その中にはライザのインゴットもあるの。 ライザのインゴットは凄くいい大太刀をうてるって評判らしいから、其処にグランツオルゲンと大太刀を持ち込めば、絶対に話を聞いてくれると思う」

 

「よし……」

 

ならば、まずは最初にやる事は決まっている。

 

問題になっているベヒィモスなる巨怪の駆除だ。

 

相手はフィルフサの王種並みの化け物。

 

ほぼ間違いなく、神代の生物兵器だ。そんな強さの化け物は、エンシェントドラゴン以外には自然発生しないし。

 

エンシェントドラゴンにしても、そもそも別世界からこの世界に来ている事が分かったのだから。

 

ちなみに東の地からは、良質な絹が出るらしい。他にも木材資源なども有用なものがある事は聞いている。

 

これらの品と金属資源を交換している、と言う訳だ。

 

「東の地の魔術師はどう? 腕が良い人もいるの?」

 

「うん。 フェデリーカが使う巫術ってものが浸透しているんだって。 女性の優れた魔術師が多いらしいけれど、他にも陰陽師……だったかな。 そういう男性の魔術師もいるそうだよ」

 

「ふーん、文化が全く違うんだな」

 

「東の地以外は、だいたい現地の独特な用語以外は、普通に話が通じるからね」

 

ディアンに、クラウディアが苦笑する。

 

挙手したのはタオだ。

 

「船で移動する最中、僕とクリフォードさん、後アンペルさんにも手伝って貰って手元にある資料全てを解読しておくよ。 それで少しは神代の本丸に関する情報が得られるかも知れない」

 

「お願いね。 あたしはお薬を増やしておくとして、後はそうだな。 トラベルボトルはいつでも使えるようにしておくから、体が鈍る人は使って。 かなり手強いのが出るから、一人で入るのは禁止ね」

 

「少しは休もうと思わないんですか……」

 

絶句気味のフェデリーカ。

 

まあ、充分にあたしとしては休めているので、これ以上は別に体が鈍るかな、という感じである。

 

他のみんながどうかは分からない。

 

その他には、海上での移動について。

 

カラさんも体調が戻ってきたらしいので、大魔術で追い風を吹かせてくれるという。まあ確かに助かるのだが。

 

クラウディアが注文を入れる。

 

「この船は翌日に航路に乗ってきた二隻と合流する予定なので、合流が済んでからでお願いします」

 

「ふむ、色々と大変なのだな」

 

「海上では魔物の実力も段違いで、自衛のために商船も苦労しているんです」

 

「分かった。 翌日に合流後じゃな」

 

とりあえず、大まかな話し合いは終わる。

 

後は夜まで自由行動とする。

 

船は停泊中でも結構揺れる。調合は今のうちから色々と試しておく。今までも船に揺られながらの調合はしているが、精密作業は避けたい印象だ。

 

船の治安は、問題は無い。

 

例のメイドの一族の人が、いかにもなチンピラに絡まれたようだが、命知らずにも程がある。

 

チンピラが放り捨てられて、海にドボン。

 

沖合に放り捨てられたら即死だったろうが、上手に沿岸に投げたようで、泣きながらチンピラは魔物に追われながらも砂浜に逃げていった。

 

しばらくすると、何人か見送りに来る。

 

一人は女医さんだった。

 

あれから手足を失ったり内臓をやられた人のために色々と処置をした。義手義足を作ったり、内臓の補助道具を作ったりもした。

 

それで現時点では恐らくもう大丈夫、ということだ。

 

軽く話をする。

 

義手や義足は人にあわせて作るものなので、今後のために予備を作っておく事は出来ない。

 

義足を作った女戦士は、体を鍛え直して最前線に復帰するつもりらしいと知らせてくれたが。

 

その後で、苦笑いした。

 

「いつでもきてくれな。 アンタのおかげで、更に病院も拡大できそうだ。 人も雇えそうだよ」

 

「予算が下りたんですね」

 

「ああ。 薬に関してもバレンツから定期的に購入することが決まった。 これからも、助けてくれな」

 

「勿論です」

 

あたしの薬で助かる人がいるなら。

 

なんぼでも薬は作る。

 

他にも、見送りに来てくれた人はいた。アルベルタさんとサヴェリオさんは、もう来ない。

 

昼ご飯は、船上で。

 

この船にはトイレもしっかりついているので、この人数くらいなら生活が可能だ。今回は東の地に向かう傭兵が多かったが。

 

レントはかなり名が知られているらしく。

 

レントの連れと言うだけで、ゴロツキがほぼ近寄ってこなくなった。

 

まあ、レントも色々あったのだ。

 

ボオスはまだ船酔いが苦手なので。ギリギリの時間まで船外で過ごすつもりのようだ。タオはというと、既に航路図を見ながら、座標を集めるスケジュールも組んでいるようだ。そうしないと解読作業に気を取られて忘れてしまうから、らしかった。

 

夜、出港の汽笛が鳴る。

 

汽笛と言っても、音魔術を使ったり、大きめの笛を吹いたりするものだが。この大型商船は、音魔術の使い手を雇っているようだ。

 

クラウディアほどの使い手ではないようだが、音魔術の使い手はかなりレアだ。警笛役に雇われる他にも、色々出来る。例えば船の早期警戒とか。そういう意味では、どこでも食べていけるだろう。

 

ボオスが乗り込むのを確認。

 

その時には、結構人が送りに来ていた。

 

あの鉱山での襲撃で、あたし達が助けた人が主のようだった。手を振って来るので、手を振り返す。

 

行ってきます。

 

そう、あたしは、歓声を送ってくれる人達に返していた。

 

サルドニカでやるべき事は終わった。百年祭で成果は確認したいが、それはまた少し先の事だ。

 

これからまず、東の地に出向く。それで、東の地でやるべき事をする。

 

苛烈な戦闘。

 

神代の遺跡の調査。

 

座標の収集。

 

そして出来る事なら、神代の根拠地の情報を集める。

 

それに東の地を脅かす魔物どもも、できる限り叩き潰したい。やるべき事は多いが。出来るのなら、やらなければならなかった。

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