暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3 作:dwwyakata@2024
北の砦に引き上げる。
エイトウトウ。エイトウトウ。
ずっと勝ち鬨が上がっている。
ガイアさん達も、一体超ド級を倒したようだ。これで三体の超ド級が一度の戦闘で倒れた。
そして牛鬼が倒れたことで、敵は戦線を下げた。
今、二條から来た増援部隊が、戦場の後片付けをしている。
侍も当然何名も戦死した。
そう思うと、あたしの力がまだ足りなかったのだと、休みながら後悔する。少し休んでから、すぐに治療に入る。やはり大けがをしている侍は多いし。そういう人達を少しでも救わなければならない。
アトリエに戻り、お薬を増やす。
セリさんはちょっと限界っぽいので、アトリエに今日は泊まるそうだ。リラさんは更に状態が悪く、治療した後今日はもう寝ると言って寝台に消えた。リラさんは牛鬼相手の決定打を叩き込んでくれたし、セリさんは薬草をたくさん出してくれたので、それだけで充分。お薬を補填。爆弾を補填するのは、ちょっと厳しいかも知れない。
それに、同じ手が通じるとは、思えなかった。
空間操作、時間操作、使ってくる奴は幾らでもいる。
あの後の戦いで、かなりの数の子鬼を倒したが、当たり前のようにそれらを使って来ていた。
超ド級ほどの火力はなかったが、いずれも厄介極まりなく。倒すのが遅れ。それだけ被害も出た。
例の一族の戦士も、一人が戦死したようだ。
あれだけの激戦だったのだ。
ガイアさんは嘆いてくれるな。あの者は、奴らを倒せて喜んでいる。そう言ってくれた。それでも、たくさんの戦死者が帰ってくるわけじゃない。
分かってる。
あたしは万能でも無敵でもない。
そんな風に考えた時点で、神代のクズ共と同じになる。
あたしは単に技術を使える才能をたまたま持っただけ。
別に偉いわけでもないし、ましてや神では無い。魔王たらんとは考えているが、それはまだまだ先の話だ。
心を殺しながら薬を作り。
砦に戻る。
あやめさんがいて、あたしに気付くと近付いて来た。この人も乱戦の中で、しっかり生き残ったのだ。
顔も隠しているからどんな人かもよく分からないが。
ただ、少し態度は柔らかくなったように思う。
「負傷者の容体はまとめておいた。 それと、敵の様子も探ってきた」
「ありがとうございます。 北の地への撤退をしてくれそうですか」
「いや、北の地の境にて恐らくあれは後続を待っている。 合流を許せば、此方の消耗もある。 また押し出してくるだろうな」
そうか。
戦いの中で、織田さんも大けがをしていて。左手を根元から食い千切られた。
あたしが義手を作ったが、体力の消耗が激しく、しばらくは動けないだろう。その代わりに、姉小路さんという宿老が来た。代わりにこの人が作戦の指揮を執るという事だった。
「ライザリンどの。 凄まじき活躍、戦史に残る戦果ぞ。 将軍様より、褒美を預かっておる」
「ありがとうございます」
姉小路さんは人が良さそうな老人で、戦士には余り向いていなさそうだ。ちなみに昔は大牛の姉小路と言われたらしく、豪腕で知られる腕利きの侍だったとか。引退間際であるらしいが。
まあ、織田さんの代わりだ。
相応に出来る人だと信じよう。
褒美というのは、古文書だ。北の地に潜入した忍びの部隊が、壊滅しつつも持ち帰った情報らしい。
征夷大将軍と話して、金とか土地とかはいらないから、報償は情報……それも北の地のものがいいと言っておいたのだ。
古文書でも充分にありがたいと言える。
「タオに分析して貰います。 ちょっとあたしには達筆すぎて読めません」
「そうかそうか。 それにしてもライザリンどのは、侍としてこの地に根付いてくれぬだろうか」
「ごめんなさい。 この地だけではなく、あの鬼の親玉……貴方方がいう夷、神代は世界全土にてまだまだ大きな爪痕を残しています。 全てはそれを叩き潰してからです」
「そうかそうか。 残念だのう」
まあ、気持ちはわかる。
ただあたしは結婚する気もないし、それに子供も産める体じゃない。それについては、話をしておく必要があるかも知れなかった。
状況を整えてから、北の地付近にいる敵の残党を潰すための作戦に入る。
それが終わったら、北の地に乗り込む。
タオに古文書を任せる。
あたしは元気が出てから、負傷者の手当てに入る。また、後方の砦には、話を聞いて手足をなくした侍が何名か来ているそうだ。その人達の義手義足を作ってあげたい所ではある。
いずれにしても、まだまだこの修羅の地での戦いは。
終わってなどいないのである。
(続)
ライザですら大苦戦を免れない魔郷、東の地。
此処がこんな魔郷になったのには理由があります。
この戦いの中で、それも分かり行くのです。