暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3   作:dwwyakata@2024

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ベヒィモス戦です。

ベヒィモスはまあ色々な意味で有名な魔ですよね。自分は別の作品でも同じ名前の生物兵器との戦闘を書いたことがありますが、まあ巨大な相手との戦闘は書いていてとても楽しいです。

本作でのベヒィモスは、文字通りの動く山ですが……明確な欠点も抱えています。


1、あまりにも巨大すぎるもの

山が動いている。

 

フォウレ近辺で交戦した超ド級も、丘が動いていると思わされるほどだった。だが、それは。

 

文字通り、本当に山が動いているとしか言いようがなかった。

 

全身からつきだした大量の触手。

 

遠くからでもビリビリと感じる凄まじい魔力。

 

全身がひりつく。

 

これは、王都近郊の門の先で戦ったフィルフサ王種に匹敵する敵だ。彼奴は凄まじい相手だったが。

 

恐らくそれに匹敵するか、それ以上。

 

見えてくる。

 

雑魚魔物を踏み砕きながら進んでくるそれは、多数の足を有し、ゆったり進んでくる。顔は平べったく、多分草食獣のものだが。全身は緑色で、山そのものに見える。いや、実際に土を被り、其処には木々がある。

 

なるほど、発見されないわけだ。

 

此奴がベヒィモスか。顔だけは目撃例があったらしいが、全容が分からない訳である。そして此奴は。

 

「総員さがれ! 奴の攻撃が来るぞ!」

 

ベヒィモスが、全身を竿立ちに立ち上がる。それだけで、辺り一帯が影に覆われる程である。

 

でかすぎる、

 

あたしは、全力で後方に逃れる。

 

今まで魔物を押しに押していた侍衆も、全力で逃げ出す。だって、この後何をするか、分かりきっていたから。

 

ベヒィモスが、思い切り上半身を地面に叩き付ける。

 

文字通り山が降ってきたのと同じだ。

 

地面が粉砕され、辺りから水が噴き出す。衝撃波が辺りを蹂躙し、逃げ遅れたモノを容赦なく薙ぎ払っていた。

 

化け物だ。

 

さがれ。さがれ。

 

今まで勝ちに奢っていた侍衆が逃げ出す。

 

それだけじゃない。

 

他の超ド級すらも、あわてて逃げ出す有様だ。その内一体は、ガイアさん達に猛攻を受けて瀕死だったからだろうか。

 

ベヒィモスが、逃げるところをあまりにも巨大な触手でばちんと弾く。

 

そうすると、吹っ飛んでバラバラに散らばってしまった。

 

瀕死だったとは言え超ド級を、ひと薙ぎで。

 

これはちょっととんでもない相手だ。あたしは走りながら詠唱。熱槍を千ずつ束ねて、連続で投射する。

 

炸裂するが、爆発したところでベヒィモスはうるさがるだけ。四発目からは、シールドで防ぎに来る。

 

シールドが分厚すぎて、熱槍千を収束しただけでは、文字通りじゅっとなるだけだった。

 

サマエルというあの悪魔野郎が、ベヒィモスに着地するのが見えた。

 

奴は、指さす。

 

その先には北の砦。

 

更には二條の街。

 

側に来たのは、パティだ。タオも。足が速い仲間から、順に集まってくる。

 

フェデリーカは完全に白目を剥きそうな様子だが、セリさんが植物魔術で引っ張って来ていた。

 

此奴をそのまま行かせたら、全てが蹂躙される。

 

フィルフサの群れが、まとめて解き放たれたようなものだ。この地の戦士達だって、あの一族の戦士達だって、どうにもならない。

 

「此処でどうにかしないといけないね」

 

「どうやって! 本当に山そのものだぞ!」

 

「……考える。 とにかく、遠距離魔術がある人は、少しでも浴びせて」

 

「分かった!」

 

最初に気合を取り戻したのはクラウディアだ。

 

音魔術でバリスタみたいな矢を次々と射出しつつ、走る。狙撃手は常に移動した方が良い。

 

続けてカラさんが、大魔術を次々にぶっ放す。

 

あたしが服を作り直してから、魔力量が更に増えたようだ。天焦がす炎の渦が、ベヒィモスに浴びせられるが。

 

どう見ても牛か何かを、ろうそくで炙っているようにしか見えない。ベヒィモスも、体を揺すっただけでカラさんの魔術を消し飛ばしていた。

 

びゅん。

 

音がすると同時に、天が落ちてくる。

 

奴の触手が一本、こっちに振り下ろされたのだ。即応したあたしが、熱槍八千をまとめて叩き付けて、爆発させ。

 

稼いだ時間で、総員散開。

 

今まであたしがいた地点を、崖崩れが押し潰すかのように、触手が抉っていた。

 

ちょっとこれは、冗談じゃないぞ。

 

神代の魔物とはやり合ってきたが、これほどの奴がいるとは。どうにもできなかったというのは、確かに頷ける話だ。というか此奴と同格が十数体もいるのか。

 

だとしたら妙だ。

 

此奴を進めるだけで、東の地は滅ぶはず。今まで千数百年も、どうしてそうしてこなかった。

 

サマエルというあの悪魔っぽい奴は、作り手である神代に忠実な言動を取っていた。だとすると。

 

何か、からくりがある。

 

あたしは、熱槍を連射しながら叫ぶ。

 

「多分此奴、あんまり多くは移動出来ない! 何かしらの理由で、行動に限界があって、しかもそれが非常にカツカツなんだ!」

 

「それでどうすればいい!」

 

「接近戦組は動いていない部分を狙って! 主に足! 遠距離戦組はずっと攻撃を集中! あたしが隙を作る!」

 

取りだすのは、ラヴィネージュだ。

 

持ち込んでいる最後の一つであるが、此処で使わずいつ使うか。ベヒィモスが、立て続けに浴びせられるバリスタ矢と雷撃魔術、それに飛んでくるセリさんの植物魔術によるつぶてを鬱陶しがって、三人に向け触手を振るい上げる。

 

ゆっくりに見えるが、元が山みたいな大きさなのだ。

 

見た目よりも、ずっと早いし。加速が着いてから振り下ろされる触手は避けられる代物じゃない。その上地面を吹っ飛ばして、破壊規模も凄まじい。だから先に触手を集中攻撃して動きを遅らせ、その間に狙われている三人が逃げる事しか出来ない。逃げても、地面を直撃した触手が、凄まじい破壊を引き起こし。地面との接触点では起爆さえしていた。多分運動エネルギーとかが異常すぎて、熱爆発すら引き起こすほどだと言う事だ。

 

侍達の中にいる術者も、こっちに遠距離魔術を飛ばして援護してくれるが、ベヒィモスは五月蠅いとばかりにシールドで防ぐ。

 

その分厚さ、多分フォトンクエーサーの一点収束投擲型でも突破出来そうにもない。だが、あたしの読みが正しければ。

 

走りながら、熱槍を浴びせる。ベヒィモスの体の横が地滑りを起こし、其処に多数の目が生じる。

 

やっぱり体の横にも目があるか。

 

他の超ド級と同じだ。

 

足を振るい上げるベヒィモス。あたしはバックステップを連打して、距離を取る。距離を取りながら、推進力代わりに熱槍を叩き込みながら、ベヒィモスの後方に回り込むが。奴の足踏みは想像以上に強烈だった。

 

地面が砕けて、衝撃波が辺りを薙ぎ払う。

 

足踏みだけで、である。

 

あたしもガードしながら全力で後方に跳ぶが、それでも吹っ飛ばされて、地面に転がされる。

 

既によくしたもので、やばすぎると判断したのだろう。

 

他の魔物は寄ってこないが。

 

ベヒィモスが凄まじい雄叫びを上げると、ぶわっと辺りに台風みたいな風が吹き荒れて。そして、その生臭い風を受けると、ベヒィモスを大きく迂回しながら。魔物の群れが、侍衆とガイアさん達に襲いかかる。

 

あっちは、あっちで任せるしかない。超ド級が一体いるが、それでもどうにかしてもらうしかない。

 

今回此奴を仕留めれば、あたしの読みを証明できる。

 

皆足下に攻撃しているが、相手がでかすぎて有効打を与えられていない。山を攻撃しているのと同じだ。

 

こんなサイズの相手。

 

立ち上がると、更に熱槍を叩き込みながら、後ろに。

 

サマエルが手にしている三つ叉の槍を振り上げる。

 

槍にしても剣にしてもそうだが、ギミックがあればある程使用難易度は高くなる。あれが使いこなせているとは思えない。

 

あたしは熱槍を連射しながら、更にベヒィモスの後ろに。真後ろには立たない。長大な尻尾が見えているからだ。

 

尻尾は筋肉の塊だ。

 

あんな巨大なのだと、破壊力も容易に想像できる。後ろに回るだけでも、相当に走らなければならないのだ。

 

よし、此処だ。

 

足を止める。

 

また足踏みの体勢に入るベヒィモスの視界を確認。良い具合に、クラウディアが大量の矢で、飽和攻撃してくれている。カラさんも、同時に大魔術で奴に雷を落としてくれていた。サマエルは鬱陶しそうに追い払え、とばかりの動作をしているが。

 

この圧倒的過ぎる巨体が。

 

むしろ弱点だ。

 

熱槍を束ねて、連続で多数ベヒィモスに叩き込む。

 

分厚いシールドに防がれる。

 

そして、奴が足を踏み降ろした瞬間。

 

熱槍の影に放り込んでいたラヴィネージュが、炸裂。

 

奴の足の一つを、極限の冷気で瞬間冷凍していた。そして巨体であるが故に奴は微細な動きを出来ず。

 

凍った足を、自分の重量で粉砕していたのだ。

 

凄まじい攻撃だ。

 

巨大な氷の山が砕けて、大量に氷が飛び散り。何より膨大な冷気が、余波として吹き付けてくる。

 

悲痛な悲鳴だけでも、山崩れが起きそうだ。ベヒィモスが全身を揺する。なんでこんな酷い事をされるのか。そう訴えているようだが。

 

お前が踏みつぶしてきた者達の怒りだ。

 

足一本を完全に失い、凄まじい量の血を流しているベヒィモスに、あたしは飛び離れると、全力で詠唱を開始。

 

サマエルが、叱咤しているのが分かる。

 

緩慢に、あたしに振り返ろうとしているベヒィモス。その分厚すぎるシールドは、皆の攻撃を一切寄せ付けないし。何よりちょっと動くだけでとんでもない衝撃波を発生させるから、接近戦組も迂闊に近づけない。

 

あたしは踏み込むと。

 

熱槍三万を束ねたフォトンクエーサーを、全力で投擲する。

 

若干斜め向きであまり良くないが、それでもこれは、必要な一手である。ベヒィモスが、五月蠅そうに分厚いシールドを張る。

 

今までの超ド級とは別次元のシールドであり、破れる気がしない。

 

だが、フォトンクエーサーはシールドに食らいつき、その半ばまでを撃ち抜く。シールドそのものに、大きく罅が入る。

 

もう叫び声が、なんだか分からない。形容しようもない。

 

足を踏みならすベヒィモス。

 

触手を振るう。

 

それだけで、もの凄い風圧が生じるし。

 

ディアンもパティも、風に翻弄されている。

 

体重が軽かったり小さかったりすると、文字通り吹き飛ばされてしまうし。衝撃波を浴びただけで、全身傷だらけだ。

 

あたしだってそう。

 

血を吐き捨てながら、更に詠唱を続け、こっちに向きつつあるベヒィモスの背後に回る動きをする。

 

ベヒィモスにその間も、熱槍を叩き込む。

 

壊れかけのシールドと、ベヒィモスが自力で粉砕してしまった足を狙うようにして。頭に血を上らせろ。そう呟きながら。

 

ベヒィモスが触手を空に向けて、うおんうおんと回し始める。

 

呪文詠唱か。

 

此奴ほどの超ド級が全力詠唱をするとなると、それこそ何が起きてもおかしくない。

 

空が瞬時に曇る。

 

そして、とんでもない規模の火球が出現すると、炸裂して。辺りに降り注いでいた。

 

地獄と化す。

 

走りながら、爆発をどうにか凌ぐしかない。

 

直撃を避けるのが精一杯だ。回避に専念して。そう叫びながら、ハンドサインを出す。ベヒィモスはあたしに直撃しない隕石炎に苛立ったのか、大きな口を開けて吠え猛る。口から噴き出しているよだれだけで、湖が出来そうな量だ。

 

ちょっとあたしとしても限界が近いが。

 

絶対にやってくれると信じている。

 

熱槍を叩き込み、ベヒィモスのシールドを更に削る。クラウディアもカラさんも、遠距離から熱烈な火力投射を続けているし。

 

セリさんが、大量の覇王樹で、奴の足を拘束に掛かる。だが、ベヒィモスは足を揺らして、それを一瞬で爆ぜ飛ばせる。

 

パワーが違い過ぎるが。

 

だが、もう弱点は見えている。

 

魔力は無尽蔵だが、さっきから垂らしているよだれがどんどん増えている。体から流れ落ちているのは、あれは汗だ。

 

予想通りの弱点だ。

 

こいつや同規模の魔物が、東の地を滅ぼせなかった訳である。此奴が前進するだけで滅ぼせたのに。

 

そもそも前進なんか、できっこなかったのだ。

 

もう1丁。

 

かなり無理をしながらだが、フォトンクエーサー投擲型を叩き込む。傷ついているシールドがついにそれで砕け散った。

 

熱の余波が奴を焦がし、悲鳴を上げながらも、ベヒィモスはシールドを再展開。まったくさっきまでと規模が変わらない。

 

傷ついている奴の足に、クリフォードさんが渾身のブーメランを叩き込んでいたが、それも大して傷を拡大できない。

 

再生能力がそれほどあるとは思えないが、ベヒィモスの足から、もう血は流れておらず。傷も塞がっているようだ。

 

それでも失った足を生やすほどの再生力はないんだろう。

 

こいつも千数百年も、バカみたいな破壊行為だけに繰り出されていた哀れな奴だ。

 

テラフォーミング用生体兵器だったか。

 

神代の連中がしたり顔で作りあげた、身勝手極まりない理屈の産物。その、明らかに失敗作の一つ。

 

終わりにしてやるべきだろう。

 

猛り狂っているベヒィモスが、また触手を天に伸ばして、揺らし始める。また隕石火球をぶっ放す気か。

 

あれを何発もやられたら、遠くで魔物の大軍勢とやりあっている侍衆にもガイアさん達にも被害の余波が及ぶ。

 

ただでさえさえあっちは、まだ健在な超ド級一体を相手にしている。これ以上、負担は掛けられない。

 

そろそろいけるか。

 

あたしは、ぐっと顔を上げながら、熱槍をベヒィモスに更に連射して叩き込む。魔力の枯渇は、無理矢理薬で抑え込みながら。

 

 

 

パティは駆け上がる。

 

ライザさんが連続攻撃で作ってくれた隙だ。他の皆も、陽動で全力で隙を作ってくれた。

 

だから、ベヒィモスに取りついて、這い上がることが出来はじめたのだ。

 

これだけでかくて全身に目があっても、これほどの飽和攻撃が続いていると、とてもではないが体に人間が取りついたことに気付けはしないらしい。

 

それにだ。

 

落下事故を起こしてから、パティは色々と修練した。

 

メイド長に教わって、壁を這い上がったり、着衣泳をして。危機に命を守る方法を、ずっと学んできた。

 

今も壁のような奴の足を這い上がり。目を避けながら、足を上がりきり。山のような奴の胴体に到達。

 

後は、サリエルを狙って、駆け上がるだけだ。

 

ライザさんは、パティに全幅の信頼を置いてくれた。ハンドサインはパティに直に見えなかったが。皆が経由して、つないでくれた。

 

皆のリレーで、パティは作戦に乗れた。

 

ライザさんは、苛烈すぎるし。その恐ろしい戦いには時々身震いもさせられるけれども。神代に対する怒りはパティだって共有しているし。

 

何よりもこんな化け物を人間にけしかけるなんて、あの悪魔もどきは絶対に許せない。それも千年以上もずっと。

 

万死に値する。

 

勾配が楽になってきた。

 

パティだって衝撃波と隕石雨の余波を浴びながら戦っていたから、決して無傷ではない。ライザさんが作ってくれた装飾品の支援がなければ、今頃真っ黒焦げだし、もう動けないだろう。

 

今も体力が微量に回復し続けているのが分かるが。

 

体の彼方此方にある火傷は、どうにもできない。

 

走る。

 

森の中だ。本当にそう。

 

ベヒィモスはまるで山が動いているように見えたけれど、本当に土が被さっていて、木がたくさん生えている。

 

それが動いているのだ。

 

足を踏みならすだけで、あれだけ無茶苦茶な破壊が起きるのも、当然と言えた。

 

あれだけ非常識なシールドを展開出来るのも、だ。

 

これが十数体いる。

 

そんな絶望の中、千数百年も戦い続けたこの地の人達は、本当に凄いと思う。何度か武芸を余裕のある時に見てもらったが。

 

達人達はみんな隠し技を持っているらしく。

 

時々全然知らない観点からアドバイスもしてくれた。それが更にパティの力になる。それを引き継いで、パティは走る。

 

見えた。

 

偉そうにふんぞり返って、ベヒィモスを使役してるサマエル。そいつが気付く前に、間合いに入り込む。

 

気付いたサマエル。

 

此奴は他の悪魔もどきと同じなら。

 

脳を弄くられ。

 

神代の錬金術師の思想を植え付けられ。

 

体も人間の要素がたくさんはいっているとか。

 

だが、容赦する理由にはならない。

 

此奴が殺してきた人々の数がどれほどになるのか、パティには想像もできない。だから、迷いは無い。

 

刃に全ての技を乗せる。

 

首を刎ね飛ばすつもりだったが、流石に甘いか。

 

三つ叉の槍でとっさに防いでくるサマエル。だが、その槍を一撃で斬り飛ばし、首にも浅く切り傷を入れる。

 

二の太刀。

 

踏み込みながら、切り上げる。

 

サマエルは全力で後退。なるほど、ライザさんに聞いた瞬間移動の正体がこれか。サマエルは、恐らく加速の魔術を使っている。初速がとんでもない。だから、消えたように見える。

 

空に逃れようとして、サマエルが舌打ち。

 

ひっきりなしにクラウディアさんの猛攻が飛んできている。

 

これは空はダメだと思ったのだろう。

 

クラウディアさんの腕なら、ダメージを受けたサマエルを射落とすのは、鴨撃ちのように容易いはず。

 

ならばシールドで守られている、ベヒィモスの背中が安全なはずだ。

 

パティは上段の構えを取ると、名乗る。

 

「パティ=アーベルハイムです。 これより貴方を討ちます」

 

「……サマエルだ。 ライザリンというあの錬金術師を主の元へ届けるのが本来の我の役割だ。 それがいつの間にか、もう一つの役割だけを主に果たすようになっていた。 貴様を殺せば、ライザリンは主の元へ辿りつくだろうか」

 

「ライザさんは、そんな事は関係無く、邪悪な者達を討ちに行くでしょう」

 

距離を詰める。

 

サマエルは避けつつ、半分になった槍で応戦してくるが、悪いがその大道芸は見切らせて貰った。

 

速さだったらパティだって負けていないし。負けるつもりもない。

 

タオさんが墨付きをくれた速度。

 

ライザさんが切り札になるハイチタニウムの刃をくれた今の剣腕。

 

こいつを、ここで逃してなるものか。

 

槍を更に断ち割ると、横に逃れようとするサマエルの足を斬り飛ばす。サマエルはそれでも臆することなく逃げつつ、大量の魔術を展開。無茶苦茶に放ってくる。

 

かまわない。

 

それでベヒィモスの操作を並行できるとは思えないからだ。

 

ジグザグに避け、時に飛んでくる火焔だったり雷撃だったりを斬り払う。

 

刀にエンチャントしているから出来る技だ。

 

そのまま、接近。サマエルが、顔を恐怖に歪めるのが分かった。

 

逃れようとするが、パティも加速。

 

加速しながら、大太刀を鞘に収める。

 

「貴様本当に人間か!」

 

「貴方だって人間の要素が多分に入っているでしょうが!」

 

「そんな、そんな我は……!」

 

「貴方の主は神様なんかじゃありません! 貴方が悪魔なんかじゃないように!」

 

激高して、とびきり巨大な魔術を放とうとするサマエル。

 

だが、サタナエルがライザさんに放とうとした強烈な魔力砲の事をパティは知っている。此奴らも、一体で王都くらい灰に出来る破壊力を持っていることもだ。

 

だから、動揺などしない。

 

怯え始めたサマエルに、正面から突貫し。

 

奴が大魔術を練り上げる前に、抜き打ちを叩き込む。

 

ざくりと通り抜け様に胸板を切り裂くと。

 

動きを止めたサマエルに、背後からハイチタニウムの大太刀で腹を貫き。更に真下から、頭をたたき割る。

 

致命傷を受けたサマエルが倒れる方向をみやりながら、全力で逃れる。ハイチタニウムの大太刀は、回収する余裕がなかった。

 

魔術が暴発。

 

大爆発を引き起こし、サマエルのしがいを木っ端みじんに吹き飛ばす。

 

伏せて爆発をやり過ごしながら。

 

パティは呼吸を整え、ライザさんに謝らないといけないなと考えながら。抜き打ちの直後に放り捨てた、愛刀を拾い上げ。

 

そして、どうベヒィモスの背中から脱出するか、考えていた。

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