暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3   作:dwwyakata@2024

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ついにライザの実力は、歴戦の侍衆が千年以上もどうにも出来なかった巨怪にまで手が届く所にまで来ました。

しかし本懐である相手の首は、まだその更に先にあるのです。


2、巨獣倒れる

よし。

 

あたしは見た。パティがサマエルを倒した。そして、その瞬間、ベヒィモスはぴたりと止まっていた。

 

パティがサマエルに仕掛けたと思われる瞬間から、ベヒィモスは露骨に動きが鈍くなっていた。

 

多分、ベヒィモスを操作しながらパティとインファイトをするのはサマエルには無理だったのだ。

 

以前交戦した悪魔みたいな奴二体と同じくらいの力だったらそうだろうな。あたしはそう呟きながら、ハンドサイン。

 

そして、叫ぶ。

 

「鬼共の首魁、討ち取ったり!」

 

「おおっ!」

 

「名人ライザリンどのがまたやったぞ!」

 

「エイトウトウ! エイトウトウ!」

 

一気に侍達の意気が上がる。

 

まあやったのはパティなのだけれども、戦場では勢いが大事だ。後でパティには謝っておくとしよう。

 

さて、後は。

 

この手負いのデカブツを仕留めるだけだ。

 

ベヒィモスがまた動き出す。方向転換を始めた。明確に、戻ろうとしている。戻る先なんて、分かりきっている。

 

此奴らの巣だ。

 

させるか。

 

ただでさえ手負いの獣は厄介なのだ。ましてやこんな一体で東の地を滅ぼしかねない輩。

 

逃がしてなるものか。

 

「足を狙って集中攻撃! こいつ、もう力が尽きるよ!」

 

「根拠は!」

 

「すぐ分かる!」

 

ボオスに叫び、足一つを失って、主君も失ったベヒィモスが逃げ始めるその即背から追従。

 

尻尾に気を付けながら、足に集中砲火を浴びせる。

 

悲痛な咆哮を上げながら、ベヒィモスはシールドを何度も張るが、知った事か。なんどでも砕いてやる。

 

パティが派手に背中でも暴れているようで、ベヒィモスの背中で何度も斬撃が走っているのが見える。

 

「接近戦組はもう足を這い上がってパティの支援に行って!」

 

「ああもう、やってやる!」

 

「楽しそうだ! 行くぜ!」

 

「おう!」

 

嘆くボオス。嬉々として行くレントとディアン。

 

更にリラさんが、率先して奴の背中に這い上がっていく。ベヒィモスは明らかに死を恐怖している。

 

何を勝手な。

 

此奴に恐怖する権利などあるものか。

 

それよりも、皆無事か。

 

無事では無いが、全員の姿は確認。

 

衣服の刷新をしていなければ危なかったかも知れない。新しい最強の繊維を用いた事で、全員の防御力は飛躍的に向上している。

 

今なら、生半可な魔物だったら、攻撃を通せないかも知れない。

 

ただそれも、此奴相手には、直撃を受けたら命を諦めないといけないが。

 

背中に行った接近戦組が、触手を叩き斬りにいってくれるのを期待。

 

あたし達は、ひたすらに足を狙う。

 

やはりだ。

 

どんどんベヒィモスの動きが鈍くなってきている。

 

そもそもおかしかったのだ。

 

十数体もいるのに、毎年攻めてくる事もない。

 

二條まで此奴が辿りついたこともない。

 

二條まで魔物が攻め寄せたことは何度かあったらしいが、ずっと大きさで劣る超ド級がメインだったらしいし。

 

こいつは姿さえ今までロクに確認されていなかったのだ。

 

それは要するに。

 

此奴がエサを食べて体力を回復出来るとか、そういうレベルですらなく。

 

そもそもじっとして体力をゆっくり回復させながら潜伏し。

 

無理をして前線に這いでて魔物が暴れるのを後方から支援し。

 

それが終わったら、休むために帰っていく。

 

そんな体力が極端に少ない、欠陥品である事を意味している。

 

今だって、もう息も絶え絶え。

 

実際、二度目の隕石炎を失敗してから、シールドを張りながら逃げに徹するばかりである。

 

怯えすら顔に貼り付いているほどなのだ。

 

口から泡を吹きながら、ベヒィモスが尻尾を振り回す。

 

地面に叩き付けられた尻尾が、凄まじい大破壊と衝撃波を巻き起こすが、残念だが遠い。足を止めたベヒィモス。背中で巨大な触手が断ち割られ、一本が地面に落ちてきて。どおんともの凄い音を立てていた。

 

鮮血が噴水のように噴き出している。

 

いやな虹だな。

 

右往左往するベヒィモスは、足に集ってくる攻撃をどうにかしようと必死だ。

 

こいつは失敗作だ。

 

頭の方も、あんまりよくは作って貰えなかったのだろう。

 

いや、どうもおかしい。

 

何か此奴の製作には。裏があるのかも知れなかった。

 

足を連続して踏みならすベヒィモス。もう、最後に自棄になったか。あたしは距離を取るように、皆に叫ぶ。あわてるフェデリーカを、クリフォードさんが抱えて逃げ出す。

 

激しい地震のような揺れ。

 

砕ける地盤。

 

地面の彼方此方から水が噴き出す。

 

衝撃波に、背中を張り倒される。

 

立ち上がる。こっちもちょっと厳しいか。触手がまた一本落ちてくる。あれはちょっと近いな。

 

熱槍を連続して叩き込む。

 

カラさんも、暴風を起こして、それを逸らす。

 

かなり危なかったが、それでも危険域に触手は着弾しなかった。地面をブチ砕くほどの質量だったが。

 

それでも皆無事だ。

 

セリさんが、血だらけの顔を拭いながら立ち上がっているのが見える。

 

ベヒィモスのシールドが。消えかかっている。

 

ベヒィモスが哀れっぽく泣きながら逃げようとしているが。

 

残念だが殺す。

 

貴方はあまりに殺しすぎた。

 

貴方の責任ではないかも知れないが、それでも悪いが共存は出来ない。人とではなく、この世界とだ。

 

詠唱開始。

 

アンペルさんが、空間切断を使って、何度もシールドに攻撃をいれる。クラウディアが、音魔術を使って上に伝えた。

 

「みんな、ベヒィモスから降りて! 急いで!」

 

そういいつつ、クラウディア自身は、ベヒィモスの顔に集中攻撃を入れる。

 

今まで見たこともないくらい巨大な矢が、奴の顔を殴り倒す。ついにシールドも満足に張れなくなったか。

 

全身の汗が滝のようだ。

 

あたしもちょっと限界気味だが、それでも栄養剤を飲み干して、最後の一撃を練り上げる。

 

「ライザよ、シールドが破れるのは恐らく一度だけじゃ。 絶対に外すでないぞ」

 

「分かりましたカラさん!」

 

ベヒィモスは、最後の力を振り絞って、上半身を跳ね上げる。それにしては、ゆっくりな動きだが。

 

上にいた皆は、逃れられているか。

 

逃れていると信じる。

 

あたし達も、全力で走って逃れる。

 

ベヒィモスが、前足を地面に叩き付ける。それだけで、爆発が引き起こされ、あたし達全員吹っ飛ばされる。

 

受け身を取り切れなかった。

 

呼吸を整えながら、なんとか立ち上がる。

 

にっと笑う。

 

手を振っているレントが見えた。かついでいるのはパティか。リラさんは、ボオスとディアンを担いでいる。

 

すぐに離れて。

 

そう叫ぶ。

 

今の爆風、カラさんが渾身の大魔術で、ある程度緩和してくれた。前衛組は、だいぶ前に降りて離れていたのだろう。

 

それでも吹っ飛ばされたが、頑丈なリラさんとレントがああして、伸びているメンバーを担いで逃げてくれている。

 

それで、充分だ。

 

アンペルさんが、詠唱を終えて、魔術を投射。

 

複雑な印を組んだ末に、放ったそれは。

 

空間切断を箱状にし。

 

ベヒィモスの巨大なシールドを、ついに抉り取っていた。

 

ベヒィモスは、もう動く事も出来ない。

 

自分で砕いた地盤に埋まって、それで体を引き出そうとしているが。足を一本失い、それでこの状態だ。

 

力もつき、最早逃げ出すことも出来ないと言う事だ。

 

あたしは最後に残った全ての魔力を収束させる。

 

地面はグチャグチャに砕かれ、辺りには水が流れている。地盤が砕かれ、地下水が此処まで溢れているのだ。

 

それでもいける。

 

あたしは、足腰だけはしっかり鍛えている。

 

あたしの切り札は蹴り技だ。

 

それは超ド級にも通じる事が分かっているし、この足腰で全力投球する魔術にも、自信がある。

 

今、全てを。

 

この哀れな巨獣を屠るために使う。

 

叫びながら、あたしは練り上げた熱槍を収束。

 

そして、踏み込み。

 

地盤にとどめを刺しながら、全力投擲。

 

投擲された超火力熱槍であるフォトンクエーサーは、アンペルさんが抉り取ったベヒィモスのシールドを抜けて。

 

ベヒィモスの脇腹から、奴の無防備な体に突き刺さっていた。

 

巨大さが巨大さだ。

 

一瞬で吹き飛ばすような事はない。

 

あたしは、意識がぐらつく中で見る。

 

ベヒィモスの全身が、内側から炎上し。断末魔の凄まじい悲鳴を上げながら、ベヒィモスが崩れ伏す姿を。

 

にっと笑う。

 

サマエルは倒れ。そして此奴も倒れた以上。

 

この地に、希望をもたらすことができた筈だ。

 

そして、その後は。

 

北の地を調べて、この地を脅かしている根本的な原因を取り除く。そして。

 

そこで、あたしの意識は途切れた。

 

 

 

目が覚めたのは。アトリエのベッドだ。治療は済んでいる。薬は、まだ少しだけ余裕があるか。

 

フィーがすぐに気付いて、あたしの上で飛び回り始める。

 

クラウディアが来て、あたしに抱きついていた。

 

「良かった……!」

 

「大げさだよ」

 

そう言いながら、あたしは手足を確認。大丈夫、欠損はしていないな。

 

皆の様子も聞く。

 

やっぱりとんでもない激戦だったし、皆相応に手傷を受けていたが。今は皆、状態も落ち着いているそうだ。

 

比較的無事だったクリフォードさんが率先して、重傷者から後方に皆を送ってくれたこと。

 

何よりも、超ド級を仕留めたガイアさん達が、他の魔物もみんな蹴散らして。征夷大将軍率いる侍衆が、大きな被害を出しつつも記録的な勝利を挙げたこと。

 

この二つもあって、負傷者を迅速に後方に下げる事ができたようだ。

 

だけれども、この様子だと侍衆も悲惨だろう。

 

あたしは栄養剤を飲み干すと、にっとクラウディアに笑って見せる。やるべき事は、決まっていた。

 

クラウディアも頷く。

 

そして、料理をはじめてくれる。

 

あたしは薬を増やす。セリさんが、青ざめた顔で、起きだしてきていた。

 

「ライザ、起きたようね」

 

「すみませんセリさん。 薬草、あるだけお願いします」

 

「ふふ、人使いが荒い」

 

「遅れればそれだけ人が死にます。 こればっかりは……」

 

本調子には遠い。

 

あれだけの激戦の後だ。最悪数日は寝込んだり、後遺症が出ていてもおかしくはないだろうが。

 

クリフォードさんをフィーが呼んできてくれた。流石だ。

 

「フィー!」

 

「もう起きたのか。 体力も化け物並みだな」

 

「今は褒め言葉として聞いておきます。 それよりも、薬をどんどん作りますので、野戦病院に運んでください。 残念ですけれど、トリアージは現地に任せてしまってください」

 

「心得た」

 

まあ、怒っている余裕もない。

 

薬をどんどん増やす。栄養剤、増血剤、止血剤、強心剤、麻酔。それらもどんどん増やす。どれも足りないはずだ。

 

クリフォードさんが、すぐに戻ってきたので、出来た分からどんどん渡す。そして、その合間にクラウディアが作った肉パイを食べた。

 

皆の様子を、フィーに聞いてみる。

 

フィーはあの戦いで、しっかりあたしの懐に隠れて、それで出しゃばらなかった。それでいながら、こうしてしっかり出来る支援を今してくれている。

 

それで充分だ。

 

「フィッ! フィー!」

 

「やっぱりみんな限界で寝てるか。 でもレントとリラさんはもう少しで起きてこられそう、だね」

 

フィーが翼で指す方向でだいたい意図は分かる。それで充分過ぎる。

 

あたしは淡々と薬を作り。往復して薬を運んで行くクリフォードさんに任せる。

 

あやめさんが来た。

 

あたしが起きた事を知ったようだ。あやめさんは、左腕を失っていた。

 

「あやめさん……」

 

「この程度は軽いものだ。 起きたのだな」

 

「はい。 今、野戦病院の状態は」

 

「宿老二名、侍大将十名が戦死した。 戦闘に参加した二割が戦死。 戦闘の後も、百名以上が死んだ」

 

そうか。

 

あの規模の戦いだ。どうしようもなかった。

 

そう言い聞かせて、薬を作る。

 

今。助けられる人は全て救う。

 

「これ以上は死なせません。 トリアージは上手く行っていますか」

 

「重傷者から順に助ける、だな。 ライザリンどのの薬で、瀕死でも本当に助かるから、驚異的だ。 普通だったら、死者は何倍にも増えていただろう」

 

「……」

 

「トリアージと其方では言うのだな。 任せておけ。 今、二條で控えていた巫女や陰陽師も全て出しておる。 これ以上はしなせんよ」

 

頷く。

 

あたしは、このまま出来る事をしていく。

 

少し休憩を入れてから、薬を作る。義手や義足を作るのは、これは明後日以降になるだろうな。

 

外は真っ暗。

 

ベヒィモスを倒したのは、昼少し前だった。それを考えると、この時間まで気を失っていたのは致命的だが。

 

それでも、これ以上は死なせない。

 

死なせるものか。

 

それに侍衆は、ガイアさんと連携したとは言え、あの超ド級を倒し、子鬼も数限りなく倒したそうである。

 

彼等彼女らが勝ち取った勝利だ。

 

それを、汚させない。

 

世界の敵を、滅ぼしたのだ。その勝利は、文字通りいのちを賭けるに値するモノだっただろう。

 

だから、あたしは泣き言は言わなかった。

 

限界が来るまで薬を作り。

 

仮眠を取る。

 

あたしも本調子ではないので、無理は出来ない。少し仮眠を取ると、レントとリラさんが起きだしてきていた。

 

すぐに野戦病院に手伝いに行って貰う。

 

あたしも薬を作るのを再開だ。

 

とにかく、命に危険がある状態の侍を、これ以上一人だって死なせない。戦いの後は、一人でも多くに笑っていて欲しかった。

 

仮眠を取り、状態が悪い人には薬をあげる。あの激戦の中、目を回していたフェデリーカは最後に起きたが。

 

フェデリーカの神楽舞で、どれだけ皆の力が増強されたか分からない程だ。

 

だから、それについてああだこうだいうつもりもない。

 

むしろよく頑張ったと声を掛けるだけだ。

 

フェデリーカはすぐに野戦病院に行った。

 

神楽舞で、皆の生命力を強化するという。それだけで充分過ぎる。それで命を拾う戦士もいる筈だ。

 

やがて、あやめさんが来て、現在必要そうな薬について具体的な量を告げてくる。

 

よし、それでだいたいの仕事量も見当がつく。

 

死の危険がある状態の人がいなくなったら、一度本格的に寝る。その後、義手や義足の作成に入る。

 

途中、合間を見て。風呂に入り、食事を済ませ、用も足す。

 

戦うのと同じかそれ以上に。

 

忙しく、そして緊張感も絶えなかった。

 

 

 

ようやく一段落した後、心置きなく寝る。

 

皆にも順次寝て欲しいと指示を出して、それからベッドに。

 

こてんと落ちて。

 

そして、ぐっすり朝まで眠った。

 

ただ、朝の間近だろうか。

 

感応夢を見る。

 

久しぶりのことだった。

 

戦っているのは、例の一族の戦士。当たり前のように女性だ。少数は男性もいると聞いていたが、能力差はないらしいし不思議では無い。身に付けているのは当世具足、それだけではない。大太刀を手にしている。

 

戦士は躊躇なく人間の首を刎ね飛ばした。相手は神代の錬金術師だろう。腰を抜かしたそいつの同僚らしいのが、人殺しとか喚く。そいつも、即座に首を刎ね飛ばす。

 

大太刀を振るって、血と脂を落としながら、例の戦士は歩み寄る。何人かいる錬金術師が、怒声を挙げていた。

 

「この裏切り者が! 作ってやった恩を忘れたか!」

 

「作ったのは奴隷兼性欲発散のためだろう。 何が恩か。 私が立ち上がらなければ、どれだけの同胞が今後貴様らに蹂躙されたか」

 

「ふ、ふん! 既に貴様の同類は全て処分するように本国に指示を出した! 貴様は同類を皆殺しにしたのだ!」

 

次の瞬間、錬金術師の首が落ちる。

 

更に、生き残りを斬りながら、戦士は叫んでいた。

 

「とっくに知っている! だいたい不良品だとか抜かして同胞を勝手に作った挙げ句に殺したのは、貴様らであろうが!」

 

その通りだ。あたしも同意しかない。この人に責は無い。

 

錬金術師どもを全員殺し尽くすと、例の一族の戦士は、空を仰ぐ。泣いてもいない。感情が薄くて。今の激怒ですら、体から絞り出したもののようだった。

 

やがて、場面が切り替わる。

 

この地の人々の前で、当世具足を身に付けた例の戦士が、説明をしている。

 

この地に好き勝手をした「夷」は討ち払ったこと。

 

ただし奴らはこの地に災厄をまき散らし、それは恐らく未来永劫この地を蝕むこと。強大な魔物がこの地を常に脅かすこと。

 

鬼のようだと、人々が言う。

 

例の一族の戦士は、寂しそうに笑った。

 

「この地は皆で守らなければならない。 私の命はあまり長くないからだ。 私が斬った夷が呪いを残していった。 本来定期的に受けなければならない延命措置が受けられないといっても分からないだろうが」

 

「タームラ様!」

 

「以降、私は最後の時まで皆が言う鬼を斬り、この地の戦士達に技を教える。 皆がこの地を守るのだ。 私の後継に指名するものは、征夷大将軍を名乗るように。 そして征夷大将軍は、血縁ではなく、もっとも優れた戦士が襲名するようにせよ」

 

「ははーっ!」

 

戦士達がひれ伏す。

 

そしてタームラという戦士が指示した通りに魔物と戦うために最適な武器を作り。剣術を磨き、それ以外の武器も研究し。

 

タームラが命尽きたときには、この地の戦士達は。

 

鬼と戦い。夷を撃ち払う覚悟を決め。そして、戦士達は侍と名乗り、その長の名は。征夷大将軍となったのだった。

 

目が覚める。

 

そうか。

 

あたしの感応夢は保有している強い魔力に起因する。今まで検証したが、これが外れたことは殆どない。

 

つまりタームラという戦士が、最初の征夷大将軍で。

 

神代の錬金術師の呪縛から逃れたホムンクルスだったことになる。

 

だとすると。

 

例の一族は、神代のホムンクルスの生き残りか。いや、そうとも言い切れない。そもそも、皆殺しにしたとか夢の中でカスどもはほざいていた。

 

神代の連中が、ホムンクルスの命なんて惜しむはずがない。人間ですら自分達以外は容赦なく殺しつくして世界を更地にしようとしていた連中なのだ。

 

口を押さえる。

 

ガイアさん達には、言わない方が良いだろう。

 

だが、仲間達には、タイミングを見て言おう。

 

あたしの感応夢は、強烈な魔力に寄せられるもの。羅針盤による残留思念の読み取りに近い。

 

幽霊は実際にいるかは分からないけれど。あのタームラというホムンクルスの意思が千数百年の時を経ても消えなかったのだとすれば。

 

あたしは、その勇気と覚悟。仲間を奪われた悔恨に。

 

最大限の敬意を払い。

 

そして、その怒りを、受け継がなければならなかった。

 

また一つ、奴らを容赦なく滅ぼし全てを灰燼に帰す理由が出来た。どこに隠れようとも無駄だ。

 

神代の錬金術師共。貴様らは何も残さず、微塵になるまで焼き滅ぼしてやる。

 

あたしはそう、強く誓っていた。

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