暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3 作:dwwyakata@2024
相変わらず因習村っぷりが酷いフォウレの里。
原作ライザシリーズは歴代アトリエシリーズとしては珍しく、因習要素をかなり丁寧に描写しています。
初代からして毒親パラダイスとかクーケン島は呼ばれていましたしね。
本作ではその持ち味を 忠 実 に 生かしています。
リラさんとカラさんと一緒に、ネメドの森をしばらく見て回る。
大河には相変わらずあの穏やかそうな超ド級がいて、水浴びをしていた。暴れ出すと危険らしいが、今の時点では特に問題は無い。
こっちにも気付いているようだが、手を出そうというつもりもないようだった。
あれは恐らく、神代にとっては失敗作だったのだろうな。そう思う。
ベヒィモスのような、存在そのものが失敗作だった超ド級はたくさんいた。事実東の地で見てきた。
幼体の時点で失敗作だったのだろう。
だからいらないと放置されたわけだ。
他に害を及ぼすかどうか何て、考えもしなかったのだろう。
幸いあの超ド級は穏やかな性質で、害を為すような存在ではなかったけれど。あまりにも身勝手すぎる思想が透けていて、腹立たしい。
ともかく、密林を確認。
魔物はいるが、あたし達の敵になるようなのはいないな。それでも毒をもつような奴はいるし、油断もしない。
リラさんが、毒蛇をひょいと掴むと、遠くに放り投げていた。
あたしも気付いていたが、熱に反応して見境なく噛みついて来る奴だから。近付いて来たら焼くつもりだった。
そうさせないように、リラさんは慈悲を掛けたのかも知れない。
「大物はおらんのう」
「大きな気配は幾つかありますが、敵対的ではありませんね」
「ただ、それでも危険な動物が何種もいる。 総長老も油断為されませんように」
「わーっておる。 若い衆は口うるさくてかなわんな」
カラさんから見れば、数百年生きているリラさんも若い衆か。オーレン族はつくづくすごい種族だな。
周囲には魔物もいるが、あたしが根こそぎ大物を潰したのをどこかで見ていたのかも知れない。
少なくとももう近付いて来たり、攻撃を狙って来る奴はいない。
そう考えると、前の大掃除は意味があったのだ。
開けた場所に出る。
この辺りは、少し前に雷が落ちたな。それで大きめの木が倒れて、空き地になったんだ。
今は、大量の若木が先を争って空を目指している。
密林は激しい競争の土地だ。
ただし、こういう競争だったらまだいいのだろう。
一応、跳躍して周囲を確認しておく。
得に問題はないな。
先に行くべし。
城も見に行く。
既に許可は出ているので、問題は無い。途中で種拾いの戦士達にあったので、軽く話をする。
この辺りが安全になったと喜ばれた。
あの巨大マンドレイクに脅かされていた頃は、種拾いさえ出来なかった。
そう言われると、あたしとしても少し嬉しいか。
指揮をしていたデアドラさんが、気を抜かないように皆にいうと。戦士達はそそくさと種拾いに戻った。
種は一度集めてから、処置をして壊れにくくする。
機器についても改良型が今では作られている。
どうやらあたしとアンペルさんの苦労は無駄ではなかったらしい。戦士達は、少なくとも感謝してくれていた。
城の中にも同道させて貰う。
幸い危険な魔物はいないが、種拾いの戦士達はある一線以上は絶対に進もうとしない。これは因習だが。
今はオーリムと関わるのはまだ得策ではないだろう。
だから、それで良いのかも知れない。
この奧には稼働中の門がある。
それを知られるのは、あまり良い事とも思えなかったし。
万が一ウィンドルのオーレン族達が不覚を取った場合。
この門から、フィルフサが溢れてくる事になる。それだけは、なんとしても避けなければならない。
最悪の場合、この城を水没させないといけないが。
その時には、フォウレの里は産業を失う。
ただ、提案としてはしておくべきだ。
あたしは、種拾いの戦士達の仕事を視察だけすると、一度フォウレの里に戻っていた。
こっちは空気が良くないな。
子供達は引っ越しをすると聞いて喜んでいるようだが、老人にはやっぱりあたし達に敵意を向けてきているのがいる。
意味のある風習や伝統ならそれも良いだろう。
だが、ただこの土地に固執することだけが伝統ではないだろうに。
竜風が確定で直撃する事。
此処にいたら誰も助からない事。
それを説明した今。
それでも此処に留まりたいというのは、ただの自殺だ。
自殺したい人間だけが留まるなら兎も角、里全部の人間をそれに巻き込むのは論外と言える。
あたしとしても、あまり優しい目で見る事は出来なかった。
「それでライザ。 これからどう視察する」
「農村と港町をちょっと見に行きます」
「そうか」
「まあ、一日でいけるでしょう」
カラさんは空飛ぶ絨毯みたいなのを使っているし。
リラさんはずっとオーリムでフィルフサと孤独な戦いを続けた健脚な戦士だ。これくらいの行脚はなんでもないだろう。
そのまま移動を続けて。
彼方此方を見て回る。
農村の方は、血の入れ替えを確実にしているようで、今度は漁村から輿入れを受けていたようだ。
以前輿入れを護衛した夫婦は上手くやれているようで、良かったと思うが。
相変わらず畑などを魔物が荒らす状態は変わらず。
それについては、農村の戦士達も苦労しているようである。
村長に話を聞いて、幾つかの問題点をピックアップしておく。それと、義手義足が必要な人を調べてもらう。
出来るようになったのだ。
出来る人は、救えるだけ救っておく。
別に単に考え無しに善行を行っている訳では無い。
未来への投資である。
漁村でも状態を見に行く。
こっちはかなり景気が良さそうだ。
というのも、あたし達が東の地で強力な魔物をあらかた始末したという話が伝わっているらしい。
戦争だけに何もかもリソースを回さなければならなかった時代が終わる。
東の地で商機が見つかるかも知れない。
そう考えた商人が、東の地に渡る話をしているようである。
クラウディアが、そういう商人に声を掛けている。バレンツで説明会をするらしい。
フェデリーカはその手伝いをするようだ。
まあ、あたしはいなくてもいいだろう。
漁村の西に。
あらかたインフラが回復している。この辺りでも、魔物をだいぶ駆逐した。
これならば、禁足地に足を運ぶ事も出来るだろう。
手をかざしてみてみるが。
確かに遠くに何かしらの建築物らしいものがある。
クーケン島から見えた「塔」よりもだいぶ大きそうだ。
古代クリント王国の時代は模倣の時代。
神代の建築物だとすると、更にスケールが大きくても不思議では無い。
ただ禁足地だ。
強力な魔物が多数いても不思議では無い。この辺りの魔物だって、決して弱くはないのだから。
漁村の西にはそれなりに大きめの水場があるが、この辺りはまだまだ強い魔物がいる。
此処に引っ越すのはちょっと安直か。
ただ此処の北には、魔物に滅ぼされた集落が存在しているとも聞いている。それも複数である。
いずれにしても、大掃除が必要なのは事実だ。
一度フォウレの里に戻る。
リラさんが疲れたと言って、ソファで猫になる。
解読を続けていたクリフォードさんが、声を掛けて来た。
「ライザ、ちょっと気になった記述を見つけてな」
「聞かせてください」
「あの遺跡にあった資料を見る限り、神代の錬金術師にも明確に序列があったらしいんだが、それを見る限りどう考えても二十人程度くらいしか最高位の錬金術師はいなかったようなんだよな」
「二十人程度」
それも、オーレン族が攻め込んだ奴らの本拠には、最高位かそれに近い錬金術師くらいしか立ち入りが許されなかったらしい。
厳重に封じられていた手記で、そんな記載があったようだ。
恐らく書いたのは、その最高位錬金術師の一人。
あたしが感応夢でみた、タームラさんに殺された奴の一人だろう。
感応夢でタームラさんが殺した最高位錬金術師が何人だったのか分からないが、あの時いた錬金術師は、皆同格に思えた。
だとすると、五人くらいは殺していた。
それは神代の錬金術師に取って、極めて大きな損害だったのではあるまいか。
「カラさん。 神代の本拠地に攻めこんだ時、どれくらいの人数が迎撃に出て来たか覚えていますか?」
「五十人程度であったかのう。 それ以外は殆ど逃げ惑うばかりであったよ」
「最高位の錬金術師以外に、神代の秘奥と言える武具の利用が許可されていたとは思えない。 戦時だったから急遽それ以外の錬金術師にも武具の使用を許可したとしても……ひょっとして神代の錬金術師達は、カラさん達との戦いでマンパワーという観点で致命傷を受けたのかも?」
「それは楽観であろうよ。 だが……」
カラさんは言う。
オーリムでやりたい放題をしていた連中の顔は、首を刎ねた中に殆ど確認できていたという。
門の実験や、フィルフサの作成。
更にはエンシェントドラゴンの生態研究などは、間違いなく最高位の錬金術師がやっていたはず。
こういう資料を見ると、やはり少なからぬダメージが神代に入ったのは間違いなさそうである。
「それを否定するような記述はありますか?」
「なんともいえねえな。 もう少し調べて見るわ」
「お願いします」
クラウディアが戻って来た。かなり美味しそうなフルーツをたくさん持って来ている。あたしも笑顔になる。
色々とろくでもない話ばかりを聞いていたし、美味しいものを食べてリフレッシュするのは大事だ。
一旦アンペルさんも作業を切り上げて、クラウディアがパティとフェデリーカと一緒に作ってくれたフルーツタルトを大喜びでがっつき始める。ただ無表情で食べているので、パティが呆れる。
「本当に糖分補給って感じですね……」
「いや、うまいと思っているぞ。 ドーナツだったらもっといいのだがな。 砂糖の質もとてもいい」
「農村で栽培しているサトウキビが良い感じで仕上がっているそうです」
「なるほどな。 それなら納得も行く」
サトウキビか。
あたしも聞いているが、最高効率で砂糖が取れる作物らしい。
ちょっとサンプルが欲しいが、かなり栽培が難しいそうで、たくさんは出回らないとか。
ちなみに、農村を窮地から救ったあたし達だからという理由で分けてくれたそうである。以降バレンツで販路にも乗せるそうだが。
あたしもフルーツタルトをいただく。
ほっぺが落ちそうだ。
これは実に美味しい。
この辺りはリンゴも名産で、蜜がたっぷり入ったとても美味しいリンゴが彼方此方の木になっている。
それとの組み合わせが最強に近い。
「欲は少なくなってきているけれど、これは本当に美味しいね」
「もっと食べる?」
「いや、みんなに分けてあげて。 あたしはちょっと色々と研究をしておきたいし」
実際、これを独り占めするのはちょっと気分が悪い。昔はもっと遠慮なくおかしをがっついていた気がするのだが。
大人になったと言うよりも。
際限なく欲望を肥大化させた人間の醜さを、嫌と言うほどみてきたから、なのだろうと思う。
夕食まで少し時間があるので、幾つか回収してきた素材を錬金釜に放り込んで、調査をしておく。
タルトを食べ終えたパティが、話を振ってくる。
「ライザさん、忘れていないと思いますが、この地の金属で興味深いものがあるとか」
「うん、覚えてる。 ただ、一旦は禁足地の調査が先かな。 ドラゴンがいて、それが危険な個体なら、対処の優先度も上がるしね」
「確かに古代クリント王国ですらドラゴンを操作する力があったという話ですし、神代となったら何をしてくるか」
「最悪、ドラゴンを材料にした生物兵器が出てくるだろうし」
実際、それはある。
あの王都近郊で戦ったフィルフサの王種だって、今思えばそうだったのだろうし。
やがて皆が戻ってきたので、夕食にする。
みんなフルーツタルトはおいしいおいしいと喜んでいた。甘いのが苦手な人には、ちゃんと砂糖を抑えた味付けにしてクラウディアも出している。この辺りは、もの凄くしっかりしている。
最初に話を始めたのは、ボオスだった。
「禁足地に入るのに反対している老人共がいる。 ただ老人が喚いているだけなら問題はないんだがな……」
「何かあったんだね」
「ああ。 竜の災いがあるに違いないって言っていた」
「それって竜風と違うの?」
違うらしいと、ボオスは苦労したと顔に書きながら、話をしてくれる。
フォウレの禁足地は幾つかある。
種拾いに使っている城。元々フォウレの里の先祖が住んでいた城のことだ。これは基本的に禁足地で有り、まあ確かに他人を入れられないのも納得だ。
そして密林の中に、墓があるそうである。
この墓は機具の墓場で、使い終わった機具をまとめて収めに行くそうだ。人間向けの墓ではない。
此処は単純に危険らしく、「幽霊が出る」と言われているらしいが。
そもそもとして、歴代の験者の内、何人も此処に向かって戻っていないらしい。何かしらの危険な存在が住み着いているのはほぼ確定と言う事だ。
そしてもう一つが北西の城。
彼方此方を流浪してきたフォウレの民だが、それでも伝承を失っていなかったのだという。
大いなる災い、北西に城を構えし。
竜の災い、それに使役される。
そういう内容だそうだ。
「験者から調査の許可は取ってある。 験者もそもそも、フォウレの里に蔓延する因習には、いい加減頭に来ていたらしくてな」
「問題は本当に竜が目撃されていることだね」
「そうなる」
ボオスがタオにそう答える。
王都で四年弱一緒だっただけあり、すっかり二人はもう息があっている。まあボオスも、元から性根が腐っていたわけではなくて、帝王教育が歪んだ形で出ていただけだ。
ま、いいだろう。
「ドラゴンも会話が出来る個体もいる。 もしもやり合う場合は、被害が出る前に片付けた方が良い。 どっちにしても、調査には行くよ。 ただ……」
「ただ、なんだ」
「ドラゴンがあたし達不在の間に、フォウレの里とか他の集落を襲撃する事態は避けたい」
「そうだな。 そういうのを聞いて安心した」
ボオスは更に言う。
竜の災いは、一定の地域に入ると発動するらしい。なんでも北西の禁足地にある集落が滅ぼされたのは。
そこにいた連中が、城に不用意に近付いて、ドラゴンの怒りを買ったのが原因だとか。
まあなんともあたしには言えないけれども。
ドラゴンが縄張りにしている場所に、地元の人間が無警戒に足を運ぶかという疑問がある。
ただでさえこの辺りは強力な魔物の巣窟なのだ。
そんな事をするお馬鹿ちゃんは、早々に魔物の胃袋に直行しているのではないかと思うのだが。
「よし、決めた。 先に作戦を練っておこう。 ドラゴンが目撃されているのは事実だし、恐らく城が縄張りになっていると思う。 それなら、ドラゴンを撃墜するための準備をしておこう」
「ドラゴンを撃墜か」
「まあ、ライザなら今更驚かないよ」
頬を引きつらせるボオスに、タオはそう肩をすくめる。
フェデリーカはドラゴンと聞いて青ざめていたが、あたしがぽんと肩を叩く。
勿論フェデリーカにも協力して貰う。
「赤い肌のドラゴンだって話だし、多分火竜の系統だろうね。 だったら好都合。 とっくにラヴィネージュの実戦投入は終わってる」
「ライザの得意な投擲で行くの?」
「んーん。 飽和攻撃で行く」
クラウディアだ撃つのは。
撃墜してそれで倒せれば言う事はないのだが。まあ無理だろう。普通のドラゴンだとは思えないし。
まずは、堂々と城に向かう。
それで、相手の動きを見ながら、もしも何処かに向かうそぶりを見せるなら叩き落とす。そういう戦略で行く。
空を自在に飛ぶドラゴンだったら、そもそも叩き落とさないと戦闘にすらならないという事情もあるのだが。
幾つか打ち合わせをしておく。
とにかく最初に最大の脅威を排除する。
これがまあ、当たり前だろう。
それにそもそも、空間渡りをするドラゴンは、最高位個体は空間魔術を超ド級と同等かそれ以上に使いこなす可能性が高い。時間魔術も使うかも知れない。
バシリスク辺りの亜種とは文字通りレベル違いだ。
考えて見れば、神代が大量に作った超ド級がどいつもこいつも時間空間に関連する魔術を使ってきたのも、ドラゴン由来の魔術だった可能性もある。
いずれにしても、最初に叩き落とさなければならないのだ。相手の性質によっては、だが。
打ち合わせが終わると、ディアンが挙手する。
「それでライザ姉、北西の城の調査が終わったら、行きたいところがあるんだ」
「ん、聞かせて」
「さっき墓の話が出ただろ。 そこ」
「何か理由があるんだね」
ディアンは頷く。
験者に言われたらしい。
今度、もう駄目になった機具を収めに行くと言う。本来は験者の仕事だったらしいのだけれども。
ディアンに行って欲しい、というのだ。
あたし達とともに。
「験者様は、あの墓場で多くの里の戦士が死んでいるのを悲しんでるんだ。 魔物がこんなに増えたのも、そういう無駄な犠牲の結果だって思ってる。 老人の中には、必要な犠牲だとか、大事な生け贄とかいうのもいるけど、俺はそんなのみとめねえ。 だって、犠牲になった一人は……」
まだ幼い頃で殆ど記憶は無いが。
とても優しい人だったと、ディアンは言う。
そして顔を上げていた。
「験者様に許可貰ってる。 墓場に、前に話した金属があるんだ。 ライザ姉の役に立つなら、持って言って良いって」
「!」
「金属は……機具の材料なんだよ。 機具を廃棄した後、金属だけは回収して持ち帰るのが一連の仕事なんだ。 この金属は、鉱山から取ってくるのを独自の分量で調合して作るらしくって、とにかく粘り強い。 機具はどうしても傷むけど、中枢にある金属だけは壊れない」
そっか。
確かに粘り強さが加われば、更に鍵を強化出来る。その結果、世界間の壁を軽く飛び越えるかも知れない。
ただ、一つ疑念がある。
「カラさん、神代の根拠地って、かなり巨大だったんですよね」
「ああ。 あれは一世代やそこらで作れるものではなかったのう」
「……嫌な予感がします」
未だにまったく正体が分からない旅の人も。その存在を、神代の錬金術師達が腫れ物扱いしていたこともある。
我欲の塊みたいな連中が、何故アンタッチャブルとして扱ったのか。
腕組みして、しばし考えた後。
あたしはディアンに答えていた。
「よし。 お城のドラゴンを対応したあと、そっちのお墓の対処もしよう」
「やってくれるのかライザ姉!」
「うん。 必ずしも風習とか因習ってのは、根拠がないわけでもないし、全てが悪って訳でもない。 でも、何かしらの危険な存在がいるのに、それを排除もせずに、儀式だけ続けるのは論外だよ。 今後同じ事をするのに、安全を確保できるようにするのが最低限必要なことだね」
「助かる!」
ディアンはすっと正座すると。
ばしっと音を立てて、綺麗に土下座をしていた。
ちょっと困るけれども。
これがディアンが、東の地で学んだ最高位の敬意の示し方なんだって、あたしは悟った。だから止めさせない。
「偉大なる錬金術師であり、悪を倒し因習を滅ぼし、それでいながら弱者に手をさしのべるライザ姉。 フォウレの里の問題を解決してくれるために、命を何度も張ってくれた事、村の全員に代わって俺がこうして礼を言わせて貰う。 不動明王の権化であるライザ姉に、俺が出来る精一杯の誠意だ。 受け取って欲しい」
「ありがとうディアン。 でも、戦士として戦ってくれるのが、あたしとしては一番嬉しいかな」
「もちろんだ。 これからも、全力で戦わせて貰う!」
これでいい。これでいいんだ。
顔を上げたディアンは、誰に聞いたやり方ですかとパティに言われて。十河さんだと正直に答えていた。
でも、あの人も、余計な事を教えたな。
今の口上だって、何度も練習したんだろうな。
そう思うと、背負っているものの重さと。
絶対に負けられない事実を、あたしは再確認するのだった。