暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3 作:dwwyakata@2024
幽霊の正体見たり枯れ尾花とよくいいますが。まあ幻惑というのはそういうものです。
余談ですが、ライザ達に本格的に立ちはだかる観測者の名前には法則性があります。
今回のもそう。
まあ、名前を見えれば概ね分かると思いますが。
それにもきちんと意味があったりします。
ドラゴンの幻覚は、禁足地にある城から発せられていた。
それがはっきりして、ようやくフォウレの里や周辺は落ち着いていた。あの悪魔もどきの死体を見て、一番ショックを受けたのはフォウレの里の老人衆だった。取り乱すものや、古い呪いを唱えて神に許しを請う者も多かった。
験者はそれらを見て、悲しそうにしていた。
恐怖がその者達の原動力であり。
あくまでお気持ちで動いていて、人命すらそれに優先すると思い込んでしまっている。それが悲しくてならないのだろう。
出来るだけ決着は急がないとまずい。
そもそもディアンが提案してくれた墓の問題だってある。
引っ越し先は、以前の逗留の際に、あたし達でどうにかした。だから、里の人間だけでどうにでも出来る筈だ。
それよりも里の聖地である禁足地の城と、更には密林の中の墓場。
これを早急にどうにかしなければならないのだ。
禁足地は昨日よりも格段に楽に進める。常に警戒しているのは、悪魔もどきがいなくなった結果、守備の魔物の統制が外れている可能性があるからだ。
錯乱して城を出て来て、麓を襲ったりしたらどれだけ被害が出るかわかったものではない。
特に超ド級なんか、単騎でこの地方の人間を簡単に殺し尽くすだろう。
密林にそんなのが三体もいたという時点で、この地方の異常さが良く分かるというものである。
急勾配を上がり、危険な崖を行く。
兎に角奇襲に注意を告げながら、道を進み。午前中には、七百年前だかのアーミーが駐屯していた場所に出た。
この辺りも後で何かないか調べておきたいが。
優先度は城に劣る。
まずは、城の外で探査魔術を展開する。
ふむ、なるほど。
どうやら、内部の魔物は存在を隠すつもりがないらしい。
フェンリルが二体はいる。一体ずつはそれぞれ離れているが、既にこの地点で、相手がこっちに敵意を向けているのが分かる。
彼奴らは危険な魔物だ。
今までの二度の交戦でも、どっちでも死者が出てもおかしくは無かった。
だからさっさと各個撃破する。
幸い超ド級の姿はないようだが、城の内部には神代鎧がかなりいるようである。今までにない数だ。
これは厄介だ。
超ド級の随伴にいるよりはマシだが、フェンリルと同時に相手にするのは避けたい。
それどころか、かなり大きな神代鎧の気配もある。
それはいるよな。
今まで遭遇しなかったのがおかしいくらいだ。
神代以降の時代には、その模倣品がどんどん劣化しつつ作られたようだが。
その中には、巨人みたいな大きさのが少なくない数いたのである。
だとしたら、いても不思議では無いだろう。
ともかくこの三体が排除すべき相手。
ついでに城のシステムもだろう。
ドラゴンはどうだろう。
ちょっと今の時点ではなんとも言えないが。ただ、城の奧には何かしら深い縦穴があるようである。
タオが、ざっと探査魔術の結果から、地図を作る。
城は空中回廊みたいなのがお洒落に作られていて、要塞なのだろうが……なんというか不思議な場所だ。
或いは技術を誇示したかったのかも知れない。
神代がやりそうなことだ。
「この回廊で神代鎧と戦うのはありだけれども、ライザ、レント、特に気を付けてね」
「相手を引きずり出して交戦しようよ。 相手の庭で戦うよりもそっちのが絶対に良いよ」
「出来れば良いんだけれどね……」
軽く話をして、方針を決める。
そして、まずはクリフォードさんが城門を潜り。
早速歓迎を受けた。
さがれ。
クリフォードさんが叫ぶと同時に、多数の投擲槍が飛んでくる。さっと城門から離れ、さがる。
避けきれないものは、パリィの名手であるレントが弾き返した。
それでも、えぐい火花が散る。
こっちは改良を続けているグランツオルゲン主体の刃なんだが。
わっと出てくる神代鎧。数は少なくない。
此奴らは、探知魔術に引っ掛からなかった。つまり、あのオプティカルカモフラージュだとかが城全域に張り巡らされている可能性が高い。
そんな必要性は感じられない事から考えて。
やっぱり技術を誇示したいのだろう。
ハイチタニウムの研究者が低い地位に留め置かれたという話もある。技術の高さ=価値があるものとされていた。それが神代の事実だったのだろう。
その高い技術も、ブラックボックスをたくさん抱えていた上に。
回りくどいやり方で継承していくうちに、どんどん劣化していったと。
そんな事をしていた連中が、何が劣等血統だのと、他人を馬鹿にしていたのか。愚かしすぎて言葉もない。
乱戦が始まる。
神代鎧は何度も何度もやりあってきたが、基本的に簡単に倒せる相手では無い。動きが分かっていても、達人そのものだからだ。
しかも今回は数が多い。
この地に攻め寄せた七百年前のアーミーが、此奴らにいいように蹂躙されたのは、なんとなく分かる。
城門からさがりつつ、相手を迎え撃つ。
それは相手の陣列を伸ばす為もあるが。
城門の外に展開する事で、投げ槍による支援を防ぎつつ、相手を半包囲するためだ。
これだけの性能である。
生半可な人間だったら、相手にもならないだろう。
事実数千のアーミーが蹴散らされたのだ。
だがこっちは十人ちょっとでも、「生半可な人間」ではない。
覚悟して貰おう。
魔術は効きにくいが、それでも熱そのものは通る。乱戦の中、蹴りや拳と一緒に、大熱量を叩き込んでやる。
ハイチタニウムでも熱で劣化はするし。
その瞬間砕けば、簡単には再生出来ない。
神代鎧との初遭遇時は大苦戦してた皆も、今は其処までの衝撃は受けていない。激しい戦いの中次々負傷者は出るが、その都度下げて、すぐにあたしが治療する。
ディアンが一体を放り投げ、それが壁にぶつかってぐしゃっと潰れた。
だが、次の瞬間袈裟に斬られる。
吐血するのを見て、まずいと思ったが。
すぐにレントがカバーに入り、連続して二体の神代鎧を大剣の一撃で薙ぎ払う。壊されても半端な破壊ではすぐに再生してくるが、それでも時間は稼げる。
ディアンを引きずって戻り、薬をねじ込む。
かなり危険な状態だが、この薬の回復量はそれを凌ぐ。
フェデリーカに迫る神代鎧を、クラウディアの矢が側面から貫くのが見えた。フェデリーカも、鉄扇で神代鎧を弾き返す。凄い金属音がぶつかり合うが、少なくとも吹っ飛んだのは神代鎧だった。
「ぐ、ううっ!」
「少し休んでいなさい。 しっかし数が多い!」
「まだ増援来るよ!」
「想定よりだいぶ多いようだのう」
飛来した多数の投擲槍を、カラさんが何かの魔術で防ぐ。
不意に空中で静止した投擲槍が、ばらばらと地面に落ちた。あれは、投擲槍の運動する力を前後左右に散らしたのか。凄い魔術だが、そう何度も使えないだろう。
即座にクリフォードさんがブーメランを放ち、次の槍を投擲しようとしている神代鎧を襲う。
あたしがさがってと皆に叫ぶと、爆弾を投擲。
ラヴィネージュの極悪な冷気が、城門付近に集まってきていた神代鎧を、まとめて氷漬けにする。
こいつは更に範囲を絞り、代わりに範囲内の神代鎧を絶対に機能停止させるように組んだ品だ。
あたしだってどんどん爆弾を改良しているのである。
それで、数の差が逆転。
氷の塊に阻まれた神代鎧の援軍も、その場で動けなくなる。後は数にものを言わせて押し潰す。
氷が溶けた頃には、既に分断し突出していた神代鎧は全滅していた。
負傷者がかなり出ている。タオも右手首から先を切りおとされていたので、すぐに薬でつなぐ。
リラさんも右目を抉るように切り裂かれていたので、すぐに薬を入れる。
普通だったら治りようがないが。
あたしの今の薬は神薬そのもの。
これで治る。
ただし体力まではそうもいかない。栄養剤を飲んで貰って、体勢を立て直して貰う。クラウディアが警告してくる。
「まだ来る……!」
「一度さがろう」
「ああ、これだけ減らせば第一次攻撃としては充分だ」
凍らせた分も含めて、五十体は行動不能にした。それでもまだまだ敵には余力があるようだ。
これはいわゆる攻城戦だな。
人間同士の戦争があった頃、要塞化している町や、要塞そのものを落とすために、色々な手段が用いられた。
この地でも、フォウレの里の先祖を、神代が攻めた跡が残っている。
一旦、駐屯地の辺りまでさがる。
敵は追撃してこなかった。
全員の手傷を回復させたあと、第二次攻撃に移る。城門付近でラヴィネージュに巻き込んだ神代鎧は、もう完全に動かなくなっている。
これは好機だ。
あれだけあれば、ひょっとすると稼働の仕組みを解析できるものがあるかも知れない。
問題は、まだまだ神代鎧がいて、戦う気が満々だと言う事だ。
これは数千のアーミーが蹴散らされるわけだ。
彼奴ら一体だけでも、達人級の戦士に匹敵する動きが出来て、魔術も殆ど効かないのである。
更に装備している剣も槍も極めて鋭利で破壊力も大きい。
時代が降ったアーミーの配備していた幽霊鎧やゴーレムでは、手も足も出なかっただろう。
この城は、まだまだ生きている。
防御システムが、と言う意味でである。
他の遺跡は、守りを固める必要を感じなかったのだとみて良いが。
しかし、どうしてこの城はこうも兵力を配備しているのか。
いずれにしても、此処に不用意に誰かが足を踏み入れたら、まず生きて帰る事はできないだろう。
そうならないように、駆除を進めなければならないのだ。
クラウディアが、まずは矢を連続して叩き込む。
さっき倒し切れなかった神代鎧も含め、わっと押し出してくる。それなりの数がいるが、今回は準備済。
地雷として、アストローズを敷設しておいたのだ。
次の瞬間、押し出してきた神代鎧達が、文字通り地面の下から消し飛ばされていた。こっちも熱量を調節して、範囲内の相手は絶対に焼き潰せるようにしたのである。成果が出ている。
それでも、攻撃から逃れた奴が来る。
レントとタオ、ボオスとリラさんが、それらに殺到。
更にパティとあたしが、後衛の投擲槍部隊に向かう。
フェデリーカを狙わせるとまずい。
ディアンは負傷がひどいので、フェデリーカの防御に回って貰う。
前衛が敵の突撃を受け止めると。
中衛を含めての乱戦が始まる。
セリさんがけしかけた食虫植物を、神代鎧が瞬時に斬り伏せるのを見ると、流石と言う他無い。
これくらいの魔術の使い手は、七百年前のアーミーにいたのかも知れない。オーレン族の戦士はみんな優秀だが、それでも人間と絶対的な差があるわけではないのだ。
だが、それでも黙っていないのはセリさんも同じだ。
覇王樹を立て続けに生やして、相手の進軍を邪魔する。
その間に、各個撃破を続けるのを横目に、あたしとパティは敵後衛の至近に躍り出ていた。
即座に狙いをこっちに切り替えようとする神代鎧を、パティが立て続けに三体斬り捨てる。
凄まじい手際だが、やっぱり人間と同じようには殺せない。
だからあたしがとどめを刺す。
全て蹴り砕いて、構造体を完全破壊する。今のあたしには、それだけの蹴りを放てる力がある。
後ろ。
回り込んでいた神代鎧。
総毛立つ程の鋭利な剣筋。
切り上げてくる。
伏せて回避。だが髪の毛を数本散らされる。
跳びさがるが、追いついてくる。立て続けの連撃。ざっくり腹から胸に掛けて斬られたと思ったが、浅い。
いや、改良した服の効果だ。
ハイチタニウムの鋭利な刃の攻撃を、受け流したとはいえ防いだか。
逆に、その隙を突いて、あたしは奴の手を蹴り上げて、剣を空中に投げ出させ。立て続けの蹴りを胴体に叩き込む。
ぼっと、奴の体の中枢が消し飛ぶように砕けた。
かなり危なかった。それだけあたしも、渾身で蹴りを入れていたと言うことだ。
乱戦が収束しつつある。
おびき出した神代鎧は、あらかた片付いたが。しかし、疲弊も激しい。アーミーの駐屯地まで戻り、交代で見張りを立てながら休憩を入れる。
敵は今の時点ではまだ様子見のつもりだろう。
これはまだまだ兵力を出し惜しみしているし、なんならこっちの戦力を計っているとみて良い。
危険だ。あの城、幻覚を出すシステムだけじゃない。
今までとは全く別次元に、神代鎧を制御する仕組みと。狡猾な戦術を使う仕組みがあるのではないのか。
その上まだフェンリルと巨大神代鎧も控えている。
これは、ちょっと一日二日では攻略できないな。
あたしもそれを悟って、苦笑いせざるを得なかった。
食事と休憩を済ませてから、一旦倒した神代鎧の残骸を回収しておく。神代鎧は城から出てこない。
出て戦うのは不利と判断したか。
しかし、城の中には恐らくまだまだわんさかいるとみて良い。
城門近くで、ラヴィネージュで機能停止させた神代鎧の残骸も回収しておく。稼働させるための仕組みが生きている残骸があるといいのだが。
とにかく破片が鋭利なので気を付ける。
そして、回収した残骸を運んで、アトリエにピストン輸送する。
二度の会戦に勝利はしたが。
今日はそこまでしか進めなかった。
アトリエに神代鎧の残骸を回収、調査する。今までより綺麗に残った神代鎧の残骸である。調べて行くと、それなりに意味があった。
まず此奴らの残骸だが、内部構造はやはりコアから接続されている。今までは徹底的に破壊しなければならなかったし。何より機能停止すると、それらの仕組みも自壊するように設定されていたようなのだ。
今回のラヴィネージュで、はじめて瞬間的な冷却かつ、相手の構造を破壊しない機能停止が出来た。
これは大きな成果だと言えるだろう。
そして、注意深く調べて行くと。
なるほど。
仕組みが分かってきた。
「こんなにちいさなものだったんだ……」
「うん? どういうこと?」
「見てクラウディア」
エーテル内で再構築して取りだして見せたのは、小指の爪ほどもないちいさな部品である。
しかも神代鎧の装甲の中に埋まっていた。
これが、神代鎧を動かしていた中核部品だ。
「これが神代鎧の頭だよ」
「こんなに小さいの!」
「うん。 ただこの部品、量産品なんだよね。 錬金術というよりも、テクノロジーで生産されたものなのかも」
これは恐らくだが、工場で量産されたものだ。
調べて見ると、まだ完全ではないのだが、それでも分かってくる。
この中には、自動で判断する仕組みがあるのだ。
強いていうなら、作った知能とでも言うべきか。
「神代鎧はこれに命令されて動いていたんだ。 達人並みの動きも、それがみんな同じなのも納得。 これは量産されていて、神代鎧に埋め込まれていた。 神代鎧そのものが量産型兵器だからね……」
「こんなちいさな頭脳が、あれだけの動きを生み出せるとは」
「多分これ、神代の錬金術師が自分で作り出した技術じゃないよ。 例のブラックボックスじゃないの」
「可能性はあるね」
タオも、修復して見せた部品を見て、うんうんと頷く。
ボオスは、別方向に興味を持ったようだった。
「それをまとめて動かないようにはできないのか」
「出来るとは思うけれど、解析に時間が掛かるよ。 というか、これ、時々見かける光学コンソールと同等か、それ以上の情報量が詰め込まれているんだ」
「おいおい、尋常じゃねえな……」
「或いは世界を最初に焼き滅ぼした「冬」を引き起こした、混沌の時代から伝わったものだったりしてね」
世界の最小単位を熱変換する、か。
あたしもその話を聞いてちょっと試してみたのだ。
やれないことはない。
だが、その過程でとんでもない毒素が周囲に放出されるわ、発生する熱量が人間が制御出来る代物ではないわと、すぐに使って良いものではない事が分かった。ほんの僅かな量を熱変換しただけで、人間を殺し尽くすどころか、この世界を消し飛ばす事が可能だろう。
あたしはわずか一個だけ最小単位を熱変換して、その結果を見てそう判断したほどである。
神代はこれをやらなかったのか。
或いは、再現出来なかっただけの可能性もあるが。
「とにかく、一歩前進だ。 回収した神代鎧の材料だって、貴重なんだろ」
「そうだね。 これだけの数は再生産はできないだろうね。 明日も様子を見ながら、削って行くしかない」
「しんどいなあ。 未だに結構大きめの傷貰うんだよね……」
タオがぼやく。
事実、手首から切りおとされたのである。
油断すれば首だって飛ばされるだろう。
それくらい危険な相手なのだから。
それと、先に皆に報告しておく。
今配備している服。
これで受け流す事を意識すれば、ハイチタニウムの剣撃を防げると。
皆驚く。
そしてあたしは、皆に装備を配る。
例えばリラさんはどうしようもないが、今まで指を飛ばされたパティには手袋を。腕を飛ばされたタオには腕輪を。それぞれ作って渡しておく。
これらで受け流す事を意識して欲しいと告げる。
事実あたしは、受け流す事で耐え抜いたのだから。
ほらと、腹から服をめくって見せてあげる。
薬を入れていないのに、傷はできていない。まあ打撲傷はあったが、それならもう治したし。
「ライザ、頼むから恥じらいを持って!」
「なんでクラウディアが真っ赤になってるの」
「いいから!」
クラウディアが泣きそうになっているので、あたしはしぶしぶ服を降ろす。
今更子供を作るつもりもないし、そもそもできないだろうし。別に気にしなくてもいいと思うのだが。
ともかく、それで皆に服を配備。
また、当世具足もこれで強化改良しておく。
これによって、鎧が。
今までは存在する意味がなかった鎧が、大きな意味を持ってくる。パティの胸当てにも、改良を施しておく。
この胸当ては国宝級だから、まあ気を付けなければならないが。
同じ国宝でも、やはり百戦を乗り切れるものの方が良いだろう。
「リラさんはどうしましょうか」
「腕輪と足輪を頼む。 それぞれでガードすることを意識できれば、あの人形共との戦いがかなり楽になる」
「了解。 ディアンはどうする?」
「俺はおっきいの貰っちまうしなあ、回避は苦手だよ……」
悲しげに言うディアン。
どうしても体力と頑強さで押すから、ああいう相手は苦手か。魔物の攻撃は結構避けられているのだけれども。
少し考えてから、靴を作る。
ディアン用に戦闘用の靴は作っておきたかったのだが。それの改良型だ。
これは更に速度を上げる靴で、ディアン特有の身のこなしを更に強化する。それだけではなく、頭の回転も早くする。
ディアンは決して頭が悪い訳では無い。戦闘適性の高さを見ていても分かるが、戦闘に頭を割り振っているだけだ。
ただ攻めは得意でも回避は苦手なようだから、弱点を補完する。他の皆はできるだろう受け流しが、どうしてもできないだろうし。
それで、多少は回避が得意になる筈だ。
下手をすると、今後は擦っただけで死ぬような局面にディアンが晒される。今までは、火力とパワーでのフィニッシャーとしての役割が期待されていたが。
それでも、ある程度は避ける事が前衛の条件になる。
頑丈なのは良い事なのだが。
それでも、避けられる攻撃は避けるべきであろうから。
それを説明すると、素直にディアンは分かったと言ってくれる。それと少し考えてから、パティとリラさんに後で回避を教えてくれと頼んでいた。この辺り、ディアンが元悪童ではあっても真面目だと思える所だ。元悪童と言う点ではあたしと同じとも言える。
ちょっとおかしくなってくすくすと笑ってしまったが、まあそれはいい。
明日も苛烈な戦いになる。
準備をしっかりして、仕掛けないといけない。
あのテリオンが作り出したドラゴンは偽物だったが、その仕組みもまだちょっと分かっていないし。
遺跡そのものに、あの幻覚を作り出す仕組みがあったりしたら、また面倒な事になりかねないのだから。