暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3   作:dwwyakata@2024

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4、サルドニカへの旅路

船が海原に出て、そして風を受けて帆がふくらむ。一気に速度が上がり。

 

見る間に港が遠ざかっていく。

 

潮風がとても特徴的で。こればっかりは海はどこも変わらない。何となく、クーケン島を思い出してリラックス出来る。汽水湖も外洋も、潮風はあまり変わらないものなのだと、それで知る。

 

そして、数日を経て。

 

サルドニカ近郊の港についていた。

 

道中も、皆とこれからの打ち合わせをし。

 

トラベルボトルに潜ってフィーの体調の調整をしたり。或いは物資を補給したりしていたので。

 

あっと言う間に時間が過ぎてしまった。

 

途中、フェデリーカさんは殆ど口を利かなかった。

 

ずっと監視役の二人が、側についていたから、なのかもしれない。

 

兎も角陸だ。

 

ボオスは後から追いついてくる。タオも、それから遅れて追いついてくるだろう。だから、比較的のんびりと、サルドニカを目指す事にする。

 

ともかく、ようやく一段落はしたので。

 

あたしはそれで、伸びをして。周囲を見回していた。

 

まずは、現地を知る事からである。

 

知識として知っているのと、肌で知るのとでは、やはりだいぶ違う。

 

そこそこに開けたいい港だ。

 

王都近郊の港よりも人が多くて活気もある。

 

街道もそれなりに広いが。

 

ただ、やはりというか。

 

看板が出ていて、商会の護衛を常に募集しているようだった。

 

「やっぱり魔物がいるか……」

 

「この辺りは俺も何度か来たが、魔物の数そのものは王都近郊よりはすくなめだぜ。 その代わり、質が少し高い」

 

クリフォードさんがそういう話をしてくれる。

 

彼方此方調べて回っているだけあって、色々知っていると言う事だ。

 

とにかく、タオが合流するまでは遺跡関連の知識はクリフォードさんが頼みだ。それに、タオとボオスがいない状態。

 

その分の穴埋めを、現在の面子でやらなければならない。

 

「遺跡もやっぱりある感じですか?」

 

「王都近郊ほどのヤバイのは殆ど無くて、この辺りにあるのは廃集落だな。 一部の廃集落は、奪還に成功しているらしいが。 それも限定的って話だ」

 

「おお、流石だな。 詳しくて助かるぜ」

 

「王都に腰を落ち着けた今だが、それまでは世界中の人が多い場所はあらかた回ったからな。 逆に言うと、それが出来るくらい、この世界は狭いって事だ」

 

正確に言うと。

 

人がいる場所が狭いと言う事だ。

 

それ以外は、魔物の巣窟になってしまっている。

 

今後はそういう場所に出かけて、門を閉じることを考えなければならないのだろう。そう思うと、いつ開いてもおかしくない門がある事も踏まえて。今後も暇な日なんて来ないだろうし。

 

最悪此方の世界に定着しつつあるフィルフサを、どうにかあたし達だけで粉砕して、王種を仕留めなければならない事態も考えないといけない。

 

港にあったバレンツの支部に、クラウディアが出向いていて。

 

戻ってくる。

 

あたしがどう、と聞くと。首を横に振られた。

 

「ダメね。 アンペルさんとリラさんは、手紙にアクセスしていないみたい」

 

「そろそろ何かあったと考えるべきなんじゃないのか」

 

「うん。 もう少し待ってみて、ダメだったら足取りを追ってみよう」

 

「分かった。 バレンツの方でも、ちょっと調べて見る」

 

クラウディアは頼りになる。

 

色々とフェデリーカさんの方でも打ち合わせをしていたが、やがて話し込んでいたあたし達の方に来る。

 

「みなさん、ちょっとよろしいでしょうか」

 

「面倒ごとですか」

 

「……はい。 街道近くに大きめの魔物の群れがいて、かなり手を焼いています。 王都で武名を馳せたみなさんの力を見たいという意見が出ていまして」

 

「了解。 場所とだいたいの概要をお願いします」

 

ノリノリのあたし達を見て、フェデリーカさんはすんと鼻を鳴らす。

 

嫌がっているとか馬鹿にしているとかではなくて、多分癖なんだと思う。

 

この子は何というか、素の自分を見せていない。

 

パティは非常に強く自分を律していて。最終的に爆発していたけれども。

 

この子の場合は、普段から抑圧されていて。

 

本当の自分が何処にあるのか、まったく分かっていない印象だ。

 

それはそれとして。

 

すんと鼻を鳴らすのは、多分癖なのだろう。

 

船の上でも、何度かそうしているのを見た。

 

「宿はとっておきます。 場所は……」

 

「地図はある。 これで示してくれるか」

 

「用意が良いですね。 昨日出現が確認されたのがここで、この辺り一帯で活動をしているようです。 敵の種族はエレメンタルが中心ですね」

 

「了解」

 

この辺りにもエレメンタルがいるんだな。

 

精霊王や星の都の事を考えると複雑だが、それもまた仕方が無い。精霊王も、下級の「星の民」の事は何も思っていないようだし。

 

恐らくだが、人をもして作られただけで。

 

特に仲間意識的なものはないのだろう。

 

人間から似た生物に見える場合はあるが。

 

それがまったく生物として違う事がある。タオが言っていたが。そういうケースなのかもしれない。

 

いずれにしても精霊王は人間と考え方がだいぶ違っている。

 

そう考えてもおかしくない。

 

すぐに指定があった地点に出向く。

 

目付役の代わりに、現地の戦士数人がついてくる。監視役兼、加勢というところか。

 

すぐにエレメンタルが見える。

 

街道に群れていて、我が物顔だ。

 

「大した数じゃないね」

 

「ただこの辺りにいる奴は、王都近郊のより質が高い。 魔術も高レベルのを使ってくるから気を付けろ」

 

「そう。 じゃあ容赦なく行くわ」

 

後は、ただ襲いかかるだけだ。

 

徹底的に叩き潰す。

 

街道もダメージを受けるが、途中で戦闘を想定して、建築用接着剤は相応に持って来ている。

 

気にせず、大暴れする事が出来た。

 

 

 

この地方に、監視対象の錬金術師ライザリン、通称ライザが来ている。

 

それを聞いた「同胞」の一人エンテは、様子を見に来ていた。普段はサルドニカの自治防衛隊の隊員をしている。この部隊も、隊長は同胞の一人である。

 

ガイアなどの古株の防衛隊は、人間が放棄した地域の門を監視していて、フィルフサの動向を見張っている。

 

今までにそういう地域にある門からフィルフサが溢れそうになったことが何度かあり。

 

その度に同胞が大きな被害を出して、フィルフサの王種を仕留めてきた。

 

最古参の同胞であるガイアは現在隻眼だが。

 

そういう戦いの一つで。

 

王種相手に受けた傷が原因で隻眼になった。

 

もっとも本人は、隻眼になってから却って鋭くなったと言っていて。再生手術を受けるつもりはないらしい。

 

多様性を全くもてない同胞で。それは明確な欠点だが。

 

事実上寿命が無い事と。

 

体のパーツにカスタマイズが効く事は、明確な長所だ。

 

手をかざし、時には遠めがねを使って確認。

 

硝子技術の里であるサルドニカは、工芸品だけではなく、硝子全般のテクノロジーがかなり高いレベルで保存されている。

 

これには理由があるのだが、それはまあいい。

 

遠めがねも、なんと地力で作り出す事が出来ている。

 

機械類でなく手作業なので、全てがオーダーメイドになるのだが。

 

これはテクノロジーが衰える一方の人間の社会において。

 

壮挙と言っても言い事だろうともエンテは思うのだった。

 

遠めがねを降ろす。

 

鼻を鳴らしていた。

 

一方的だな。

 

話に聞いている通り、凄まじい強さだ。神代の錬金術師と比較しても全く劣らないどころか、地力で辿りついた境地としては驚異的、という話は聞いていたが。それどころか、戦闘力が素で高い。

 

神代の連中はどいつも資料で見る限りモヤシ同然だったようだから(錬金術による身体強化に頼り切っていた)、素で魔物を蹴り殺せるパワーを持ったライザが、装飾品による強化を経ていればそれは強いのは分かる。

 

多数の熱槍を連射して、防御しようと魔術で防壁を展開するエレメンタルを、真っ正面から粉砕するライザ。

 

壁に穴が開いたところにクラウディアが矢を叩き込み。

 

さらにクリフォードのブーメランが叩き込まれる。

 

レントが右に左にエレメンタルを斬り伏せ。背後に回ろうとするエレメンタルを、地面を突き破って出現した食虫植物が、ばくんと一口にかみ砕いていた。セリというオーレン族の魔術だ。

 

ライザの仲間の名前、メンバーの構成は既に同胞の間にて共有されている。

 

何人か足りないようだが。

 

それについては戦死では無く、用事で外しているだけだろう。

 

いずれにしても、これは道中の魔物は足止めにもならないだろうなと判断。

 

問題は、サルドニカ近辺で今暴れ回っている巨大狼。

 

通称フェンリル。

 

本来は神代の更に古い時代の神話に登場する神殺しの狼の固有名だが。

 

今ではそれが忘れ去られ、すっかり魔物の種族名となり果ててしまった。ともかく、神話の狼とは関係無い、強力な狼の魔物の退治を頼まれる事になりそうだなと、エンテは思った。

 

愛用の薙刀を手にする。

 

エンテが身に付けているのは東の国の技術で作られた鎧で、皮と木、それに一部金属を用いた一種の軽鎧だ。

 

軽鎧でも対人用では充分な性能を持ち、サルドニカでは使う人間も多い。

 

兜も被ると、先制で動く。

 

此方を狙っていた魔物の群れがいたから、蹴散らしに出向いたのだ。

 

不意を突かれたラプトルの群れは、たちまちに薙刀のエジキになる。

 

大柄なボスが組み伏せようと躍りかかってくるが。

 

残像を蹴爪が抉るだけ。

 

通り抜け様に数体の首をボスのも含めて刎ね飛ばす。

 

大量の鮮血が噴水のように注ぐと。

 

ラプトルの群れは、戦い利あらずと逃げだそうとするが。

 

そのまま走って余裕で追いつくと、一匹残らず仕留めた。

 

口笛を吹くと、後輩が何人か来る。

 

激戦地と呼ばれる東の地では、門関連でなくとも年に同胞が何名か戦死するのだが。母がそれ以上のペースで同胞を作り出している。

 

その中でも経験がまだ浅い同胞は、王都かサルドニカ近辺で経験を積む。

 

同胞の違いは経験しかないので。

 

それで、すぐにみんな一人前になる。

 

エンテは、ここでは小隊長的な役割をして。

 

後輩の指導をしていた。

 

ただ上下の関係ではない。

 

皆同じなので、覚えも同じ。

 

覚えたら、すぐに各地に再配属されていく。

 

「呼びましたかエンテ」

 

「ええ。 すぐに捌いて、それぞれの部位を分別。 肉は燻製に。 血抜きを忘れないように」

 

「了」

 

さっと散る後輩達。

 

自分もああだったな。そう思いながら、薙刀を振るって血を落とし。

 

そして、遠めがねでの監視に戻る。

 

ライザ達も勝利していたようだ。大きめのエレメンタルがいたが。それももうライザ達の相手では無かった。

 

コマンダーの話通りの強さだ。

 

これはもしも排除の指示が出た場合、サルドニカに赴任している同胞が全滅する覚悟で仕掛けないといけないだろうな。

 

そう思って、エンテは嘆息する。

 

いずれにしても、サルドニカでの監視任務の主軸を担うのはエンテだ。

 

これから、色々と準備しなければならなかった。

 

 

 

(続)







サルドニカでも「同胞」はばっちり活動しています。

というか、活動していなかったらとっくに空中分解して破綻していたのです。
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