暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3 作:dwwyakata@2024
翌日すぐにウィンドルに向かおうかと思ったのだが、朝にアンペルさんから待ったが掛かった。
見つかった書類の中に、ちょっと看過できないものがあるという。
分析に一日欲しい。
そう言われた。
それもタオとクリフォードさんの手も借りたいらしい。そうなると、ウィンドルに出向くのは良いとして。
全戦力で対フィルフサはいきなりは無理か。
それに、ウィンドルに出向いて、いきなりフィルフサとの戦闘になる可能性も否定はできない。
そこであたしは、折衷案を出す。
「それでは、まずはウィンドルに出向いて、それで世界間の門を開けられるかの試験をしましょう」
「続けてくれ」
「まずウィンドルに出向いて、フィルフサの攻勢などが起きていないかを確認し、奏波氏族のみなさんの無事が確認出来次第、あたしは門を開くこと、アンペルさんは解読作業に全力を注いでください」
「なるほど、確かにそれが良さそうだな」
アンペルさんも納得してくれる。
しかし、笑顔でクラウディアも挙手。
「ライザ、ごめん。 ちょっとバレンツの方で、幾つか処理しないといけない案件ができてて」
「それ急ぎ?」
「急ぎ」
「音魔術の使い手がいないと、周囲の探知能力が落ちるのう」
カラさんが嘆息。
じゃあ、仕方がないか。
分かった、やむを得ない。
「了解、一日出立は遅らせよう。 その間に色々やっておく事を、各自処理しておくようにお願いね」
「それはいいが、此方は調査を始めると確定で数日はかかるぞ」
「そんなに重要度が高いんですか」
「高いな。 何しろパスワードについてのマニュアルだ」
今まで神代の遺跡はどこもガバガバセキュリティだったが、流石に本拠はそうもいかないらしい。
つまるところ、座標を探し当てても、パスワードがわからないと弾かれる可能性があるわけか。
それは確かにありそうだ。
そもそもオーレン族に敗れて、一度敗走しているのである。
そうなると、一日だけ出立は待つとして、ウィンドルでしばらく待ちぼうけを食うことになるか。
ただ、一日だけだ出立を遅らせるのは。
ウィンドルの奏波氏族がそうそうフィルフサに遅れを取るとは思えない。全員リラさんに近い実力者なのだ。
だが、それでも絶対は無いのだから。
「それと、僕の方でもちょっと興味深い資料を見つけているんだ」
「タオもか。 どういう資料?」
「うん。 実はね、その座標図。 完成すると、ひょっとすると現在存在する門全てを表示できるかも知れない」
「!」
それは、大きい。
今までの座標データに加え、全ての門が表示された場合。
当然、奴らの本拠の門を特定出来る可能性が更に高まる。
座標が分かってもかなり賭けになる可能性があったのだが。これは失敗の可能性を減らせる。
分かった。
ならば、やむを得ないだろう。
「いいよ、仕方がない。 ごめんねカラさん。 戻るの一日遅れる」
「いや、かまわぬ。 今までの旅、充分堪能しておる。 ウィンドルの皆に持ち帰る土産も土産話も多いでな」
「たのしんでますね」
「この年でも、まだ新鮮な楽しみを得られるとは思っておらんかったわ。 それに、我等の怒りを理解してくれて助かる」
そうだな。
あたしの怒りは、カラさんのそれと同調しているかも知れない。
オーレン族にとっては、世界を丸ごと滅ぼした不倶戴天の相手だ。
あたし達にとってもあらゆる災厄の根元だ。
それに、旅の人の話が紅蓮の主観抜きに全て本当だったとすると。
その邪悪は、人間として看過できるものをとっくに越えている。
「じゃ、解散。 各自、それぞれ好きなように過ごして」
「ライザ姉、実は立ち会ってほしい事があるんだ」
「うん?」
「験者様に呼ばれてる。 他に誰か立ち会ってくれないか」
ディアンも用事があったのか。
だったら言えば良かったのに。
変な所で遠慮を覚えるというのは、良くないと思うが。いずれにしても、用事はだいたい分かっている。
「分かった、出向くよ」
「それなら私も行きます」
パティが挙手。
戦士として、フォウレの里の民にもパティの手腕は知られている。ディアンとフェデリーカがが稽古をつけて貰っているのを見て、他の種拾いの戦士もそれに加わっていたらしい。
それにパティは、今後女王……かは分からないが、指導者になる立場だ。
残念ながらいきなりタオが言うような民主制なんて無理だろうし、当面はアーベルハイムが指導者になるはず。
ヴォルカーさんの後を継ぐのは現時点でパティしかいない。
指導者候補としては、今のうちにやっておくべき事は幾らでもあるだろう。
経験を積むのもその一つ。
パティは、恐らくディアンの用事について、勘付いていると見て良かった。
さて、行くか。
ディアンも多分、いい用事である事は分かっているのだろう。心なしか、うきうきしているように見えた。
微笑ましくもあるが。
同時に勝ち取った正当な喜びでもある。
フォウレの周辺にあった問題は、あらかた片付いた。簡単な問題ばかりではなかったが。此処でも根本的な問題は片付いたのだ。
フォウレの里も、竜風の直撃を受けない場所への引っ越しが、始まろうとしている。
先祖の墓ですら引っ越したのだ。
流石に老人達ももう拒まないだろう。
フォウレの里の未来は明るいのだ。その代表が、ディアンと言っても良かった。
(続)
まだまだ問題はありますが、その解決が見え始めているフォウレの里。
それを背負うディアンも、ただの暴れ者から大きく育とうとしているのでした。