暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3   作:dwwyakata@2024

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ウィンドルにてフィルフサとの激戦が繰り広げられます。

しかしそれらフィルフサは、明らかに動きがおかしい集団でした。

背後に何かがいる。

それを感じつつも、ライザは歴戦の経験と培った力でねじ伏せていきます。


2、苛烈

昼までに要望者の義手義足の配布は終わった。誰もが満足してくれた。今までの手足と全く同じに使える。

 

そう言って、喜んでくれた。

 

手指くらいなら再生するオーレン族だからこそ、再生が追いつかないダメージを受ければ苦しいし。それから立ち直れれば嬉しいのだろう。

 

それについてはよく分かるので、何も言わない。

 

淡々と作業を進めて、アンペルさんの義手についても準備はしておく。アンペルさんには、答えは急がなくて良いと言ってあるので、別に聞くことはしない。

 

義手義足の配布が終わったタイミングでカラさんが戻ってくる。

 

決める事が多かったらしくて、少し疲れ気味だったが。

 

ただ、リラさんに話は聞いていたらしく、既に準備は万端。

 

奏波氏族の精鋭達も、いつでも戦える準備を整えているようだった。

 

カラさんに、ちょっと聞いておく。

 

「カラさんから提供を受けたこの服ですが、量産して皆に配りますか?」

 

「そうじゃな。 元々これはオーレン族の間でも貴重な品であったのだが」

 

それは分かる。

 

実際殆どのオーレン族は、皮鎧を身に付けている。それも体の要所だけを守るような造りだ。

 

強力な蜘蛛糸を紡ぐだけで手一杯だし。

 

更には複雑な加工をしないととてもではないが着られるようにはならないのだ。

 

わずかな人員にしか行き渡らないのも納得である。

 

「会戦を遅らせて、装備を充実させる手もありますよ」

 

「いや、まず西に来ている新しい群れは始末しよう。 風羽の偵察によると規模が大きく、放置していると数に任せて押し出して来かねん。 雨の準備もできておるのであろう?」

 

「まあ、いつでもいけます」

 

「それなら今のうちに仕掛けるぞ。 敵に体勢を立て直す余裕などは与えてはならぬ」

 

こういう所は、千三百年も奏波氏族の長を務めた精鋭戦士だ。

 

戦略的な判断力もあるし、決断力もある。

 

子供みたいに見えるけれど、実体は老練な戦士。

 

それがカラさんだ。

 

「先に戦地の下見をして来てくれ。 わしは氏族の精鋭を連れて後から向かう」

 

「分かりました」

 

頷くと、あたしはクラウディアにそれを渡す。

 

改良型の、雨を降らす道具。

 

名付けて雷神の石だ。

 

広範囲に雨雲を生じさせ、しかも飽和させて大雨を作り出す。

 

雲は埃などを核にしてできる。雲の中にある水が雪になり、それが落下する過程で雨になっていく。雨に溶けなかった場合が雪になる。この説明は聞いていたが。

 

何回か高山に登り。

 

そこで山にぶつかっている雲を実際に観察する事で、事実だと確認した。

 

まあ山では霧と認識する事も多いのだが。

 

それはそれとして、間近で見ると色々と違うものなのだ。

 

まずやるのは、それで下ごしらえ。

 

昔みたいに大量の水を持ってくる必要もない。雷神の石は幾つか作り溜めてある。水も、大きな湖から、雨を降らせるのに必要なぶんだけ拝借してある。

 

水質が違う水が降り注ぐと、その地に悪影響を与える可能性もあるのだが。

 

大丈夫。

 

水を集める装置は更に改良を加えていて、「水」だけを吸い上げている。

 

これはクーケン島で、水の味がどうのこうのと五月蠅く言われて、徹底的に研究した結果が生きている。

 

どんなことでも無駄にはならないのだ。

 

無駄だと思わない限りは。

 

クラウディアに、そんな雷神の石を三つ打ち上げて貰う。

 

大判振る舞いだが、これくらい打ち上げておけば、数日は大雨が続く。

 

此処に新しく来たフィルフサの群れとなると、これほどの大雨は経験がないだろう。各地で水を奪われているオーリムだ。

 

フィルフサにとっては、そうするように作られたとは言え。

 

我が物に闊歩できる土地だったのだから。

 

だが、それも今日までだ。

 

雲が見る間に広がっていく。

 

皆に振り向く。

 

前に来たときよりも、更に装備は改善してある。将軍を誘引して、一体ずつ倒して行く必要もないだろう。

 

ただし、それでも各個撃破と誘引策で確実に勝つ。

 

こんな所で、無駄な犠牲を出したいとは思わないからである。

 

カラさんが来る。

 

奏波氏族の精鋭戦士五十名とともに。

 

これは心強い。

 

侍衆と忍び衆と一緒に戦った事を思い出す。

 

カラさんが、その話を丁度していた。

 

「向こうの世界にも侍と忍びという驚くべき戦士達がおってな。 皆、オーレン族を思わせる手練れであった」

 

「おお……」

 

「それは素晴らしい話ですな」

 

「ただ、それは我等と同じように、あの錬金術師どもの災厄と闘い続けた結果であった。 フィルフサよりも数は劣るが質で勝る魔物を相手に戦い続け、負けないようにし続けた。 それが彼等の強さの理由であった」

 

ウィンドルも同じだ。

 

人間全てが絶対悪ではない。

 

人間の中にいる、神代の錬金術師のような連中。

 

無償の愛を提供した旅の人を食い物にし。

 

搾取するだけした挙げ句に踏みにじって、終いには自分達を神格化したクズの群れ。

 

そういうのが世界をダメにする。

 

そういうとは戦わなければならない。

 

「ライザは旅の過程で見てきたが、まさに熱の神。 悪に怒る現在の荒神よ。 皆、ライザに恥じる戦いはするな。 ライザとともに、この世界に邪悪を蔓延らせた邪神、神代の錬金術師共とそのばらまいた悪を討ち滅ぼす!」

 

「おおっ!」

 

オーレン族の戦士達が、勇壮に喚声を挙げる。

 

同時に、大雨が降り始めた。

 

あたしは先頭に立つと、此方に浸透してきているフィルフサの群れを見やる。小型は大雨に右往左往。

 

中型以上が脅威だが。

 

今まで潰して来たフィルフサの群れと比べて、それほど規模が巨大では無い。

 

特別に巨大な群れを構築していた「蝕みの女王」の群れの半分程度の規模。数は六十万ほどか。

 

将軍六十体を有する、無傷のフィルフサの群れ。

 

だが、この規模の群れとやりあったのも、あたしは初めてではない。

 

混乱している今が好機。

 

あたしは、声を張り上げていた。

 

「突貫!」

 

「突撃!」

 

「突撃せよ!」

 

わっと、怒濤のような喚声が上がる。フィルフサが大雨で混乱している中、あたし達は躍りかかると、当たるを幸いに蹴散らす。

 

魔術は通じない。

 

だが、フィルフサに取って猛毒に等しい雨の中だ。装甲は柔らかくなり、動きも鈍っている。

 

それでも危険だが。

 

針を高速で飛ばしてくる個体を発見。中型だが、かなり危険な相手だ。陣列を組んで、一斉射。しかも針は二の腕ほどもある。しかもフィルフサの甲殻でできているから、魔術も通じない。

 

散開。

 

叫びながら、あたしは跳ぶ。

 

そして空中で熱魔術による爆発を起こして、空中機動。敵の射撃が追撃してくるが、追い切れない。

 

敵の真ん中に。

 

蹴りを叩き込み、地盤ごと吹っ飛ばす。

 

即座に跳躍。

 

無数の火線が殺到。あたしに向けて集中砲火。

 

ふむ、ちょっとおかしいな。

 

クラウディアが、音魔術で戦況を届けてくる。

 

「ライザ、攻撃が不自然に集中してる!」

 

「どうやら何かありそうだね。 あの悪魔もどきの仕業だったりしてね」

 

「可能性はあるかも知れないね。 将軍の中にはかなりできる個体がいたけれど、それともちょっと違う気がする」

 

魔術はフィルフサも使うが。それだったら同等に捌ける。

 

あたしに熱で挑むのがどれだけ無謀か、思い知らせてやる。

 

飛来する大量の熱線だが、全て中途で撃墜する。熱槍を三千ほど出現させ、一斉投擲。空中爆発を起こし、火線が全部吹っ飛ぶ。

 

煙を吹き飛ばして、あたしが前に躍り出る。

 

やっぱりな。

 

数十体ずつまとまって、あたしに集中攻撃してきている。

 

将軍が指揮しているなら、それは別の行動を取ってくるはずだ。クラウディアに指示。とにかく、将軍を倒して欲しい。

 

此処は谷になっていて、敵はそれこそ地形を無視して進めず、それで進路が限定されている。

 

盛り上がった地形だと踏み砕いて来るのだが。

 

流石にこう言う地形では、味方を土台に進むくらいしかなく、別に湖でもないのにそれをする意味がない。

 

ただ、この大雨だ。

 

あまりもたついていると、この辺りは水没する可能性もある。

 

熱線を放っていた連中に、体勢を低くして突撃。

 

筒みたいな形状をした中型種だ。いずれもが、熱魔術による砲撃に特化しているようである。

 

第二射を放とうとした所に、距離をゼロに。

 

そのまま蹴り技で片っ端からなぎ倒す。

 

次。

 

上空から、多数の飛行型フィルフサが襲いかかってくる。

 

いいだろう。

 

全部ぶっ潰してやる。その分、他の皆がやりやすくなる。ただ、周りは全部フィルフサと言って良いほどだ。

 

あたしを孤立させて、確実に仕留めようというのだろうが。

 

あたしが此処で暴れれば暴れるほど、みながやりやすくなる。それならば、敢えて孤立して暴れてやる意味はあると言えた。

 

 

 

ライザが文字通り暴れ回っているのを見て、ボオスは舌を巻いていた。

 

ボオスもフィルフサ戦は初めてではない。最初はランバーといた所を襲われた。ランバーがあんなに強かったなんて、ボオスも知らなかった。

 

逃げ回ってキロに助けられて。

 

それで。

 

ともかく、今は当時とは違う。

 

雨による弱体化が掛かっているとは言え、フィルフサと臆することなく戦える。それにしても、レントとパティを主軸に戦う皆は凄まじい。

 

勝てないと明らかに分かるが。

 

それでも、ボオスはやれることをやるだけだ。

 

影。即応。

 

土砂降りの雨を蹴散らして、巨大な黒いフィルフサが飛びかかってきたのを、間一髪で回避。

 

間違いない。

 

将軍だ。

 

さっと皆が囲む。ライザが敵のうち、妙な動きをしているフィルフサを引きつけてくれている。

 

その間に、可能な限り将軍を削って、敵の戦力を割く。

 

王種と将軍はフィルフサという群体生物の核であり、これを潰す事で敵を著しく弱体化させる事が出来る。

 

しかし万のフィルフサを統率する将軍は雨に濡れていてなお強く。

 

その将軍を統率する王種の戦力はそれ以上だ。

 

黒光りしている巨体は、全身から鋭い足を伸ばして、辺りを滅多打ちに切り裂き始める。足の全てが鋭い長柄武器のようだ。

 

レントが激しくそれらと撃ちあいながら叫ぶ。

 

「接近戦組以外は距離を取れ! 全範囲に攻撃してくるぞ!」

 

「くそっ!」

 

振り下ろされた足を弾き返すが、その鋭さ重さにボオスは思わず悪態をつく。やはり強い、とてつもなく。

 

こんな化け物を相手に、ウィンドルの奏波氏族はよく持ち堪えてきたものだ。

 

パティも攻めあぐねている。

 

リラとセリは敵の大軍を相手に此方への浸透を防ぎ。

 

他の皆は押し寄せる雑魚を相手にするので精一杯だ。

 

行くしかない。

 

体が軽くなる。

 

精神的なものじゃない。フェデリーカの神楽舞の効果だ。

 

更に出力を上げたというか、要所と判断したからだろう。踏み込むと、スローに見える足を受け止めるのでは無く、紙一重で回避しながら前に。

 

黒い全身から無数の足を生やしている根元まで接近。

 

バカめ、やらせるか。

 

そう言うかのように、多数の足が振り下ろされる。そのままでいれば膾にされるだろうが、そうはいくか。

 

踏み込むと同時に、多数の剣を出現させる。

 

タオとボオスは同じ二刀の使い手だが。

 

速度、経験、全てでボオスではタオに勝てない。

 

長剣を主力に、短剣を補助に。そうやって戦って来たが、東の地で侍に稽古をつけて貰って実感したのだ。

 

ライザの装備で身体能力を跳ね上げているだけで、本当の天才には勝てないと。タオはあれは天才で、剣術についてもボオス以上。才能と言う点では対応しようがない。

 

ボオスは所詮にわか。流派をしっかり極めてきた努力の人にも勝てない。幾ら背伸びしても、その程度ということだ。

 

だったら、それ以外の手を使うしかない。

 

ボオスはライザと話しているうちに、気付いた事がある。

 

それが、マルチタスクへの適性だ。

 

この多数の剣は、ライザに作ってもらったいざという時に自在に展開出来る、隠し武器。東の地では暗器とか言ったか。

 

ライザが作ったのは、普段は腰の鞘に重ねて置いて。

 

ボオスが念じた瞬間に、大量展開、使い終わると即座に再格納という厄介なものなのだが。

 

グランツオルゲンで作ったこの刃は薄く軽く、その代わりに討ちあうのに向かない。

 

ただし。

 

ボオスは猛攻を仕掛ける。

 

剣を使っては斬り使っては斬り、膾にしようと振り下ろされた無数の足を、全て迎撃し、弾き返す。

 

なんだそれは。

 

驚愕に体を揺らす将軍に、多数の斬撃を叩き込む。

 

これぞ完成型の、カイザーエンフォース。

 

ボオスの奥義の集大成であり。

 

そのまま、気力が続く限りなんぼでも続けられる最強の連撃だ。

 

将軍があわてて、体を旋回させて、横薙ぎにボオスを吹っ飛ばそうとするが。

 

レントがさせじと大剣を奴にたたき込み動きを止め。

 

更にはいつの間にか上空に跳躍していたパティが大太刀を燃え上がらせていた。

 

パティの固有魔術はエンチャント。

 

武器の強化に普段は使っているが、大太刀を高熱にもできると言っていたか。

 

しかもライザの作った大太刀だ。

 

高熱程度へでもないだろう。

 

ボオスに気を取られて、注意を逸らしたことが敗因だ。

 

将軍は、文字通り裂帛の一撃で、左右に体を叩き割られる。そして、ボオスが露出したコアを砕くと、悲鳴を上げて散って行った。

 

周囲の小型中型が、どっと逃げ始める。逃げながらも、体が崩れて行く。

 

剣に格納を指示。

 

「すげえのを覚えたなボオス!」

 

「ちょっと使ったあと疲れるがな。 よし、次だ!」

 

まだまだこの程度なら平気だ。

 

ついでに言うとライザの装飾品のおかげで、体力もどんどん回復する。この程度で継戦能力は失わない。

 

雨で弱体化していなければどうだったかは分からないが、これが戦いというものだ。

 

それに。フィルフサだって、あんな生物兵器のまま訳も分からず全てを破壊していて良かったとも思えない。

 

次を潰す。

 

それに迷いは無い。

 

 

 

皆が将軍を次々に討ち取っているのが分かる。フィルフサの巨大な群れが大混乱を続けているからだ。

 

そんな中でも、やはりあたしへの集中攻撃は続いている。

 

「フィー!」

 

「!」

 

足下から、巨大な口があたしを丸呑みに来たが、間一髪跳躍して逃れる。

 

今のは気付けなかった。

 

姿を現したのは将軍だろう。背中が丸ごと口になっているタイプだ。似たような奴は他にも見た事がある。

 

着地。

 

即座に仕掛けるが、全身が分厚い丸いフィルフサが、複数壁になって防ぎに来る。

 

無言で蹴り砕いている間に、将軍がまた地面に潜り、全てを粉砕したときには地下に消えていた。

 

気配を此処まで完璧に消せるか。

 

クラウディアの通信が少なくなってきている。

 

クラウディアは高所に陣取って狙撃を続けてくれていて、かなり忙しいということだ。大雨の中とは言え、将軍を一人で相手にするのはちょっと気が進まないが。

 

だがこの気配を消す能力。

 

かなり強い将軍だ。倒しておけば、必ず優位に立てる。

 

来るか。

 

そう思った瞬間、横殴りに衝撃波が跳んでくる。

 

跳躍してかわしたところに、地面から躍り出てくる将軍。がっと口を開いて、かみ砕きに来るが。

 

熱魔術による爆破で空中機動。

 

そのまま回避しつつ、着地。

 

更に踏み込んで加速しつつ、蹴りを叩き込みに行くが、立て続けに衝撃波が飛んできて邪魔をされる。

 

厄介だな。

 

フィルフサには魔術は通じない。

 

それは今までの戦闘で嫌になる程思い知らされている事だ。そして、古代クリント王国が制御に失敗した後、手に負えなくなった理由もそれである。

 

衝撃波を放ってきた奴は。

 

全身が長い棒みたいになっているフィルフサだ。それが全身を高速で振るう事で、衝撃波を放つと。

 

変わり種だが、母胎と呼ばれる土に生物を取り込み、その要素をどんどん反映していくフィルフサだ。

 

どんな姿のがいても不思議じゃない。

 

とにかくアレは邪魔だ。

 

蹴散らしに行く。

 

だが、将軍と連動している以上、どうせ次がすぐに来て、初見殺しじみた攻撃をしてくるだろう。

 

衝撃波をかわしつつ、懐に飛び込むと、全てをなで切りに蹴り砕く。そのまま跳躍して、また下からかみ砕きに来た将軍をかわす。

 

かわしながら、上空に熱槍を多数たたき込み、飛来した槍を全て逸らす。魔術は効かなくても、爆破で攻撃の軌道はずらせる。それでも何本かが擦る。しかし、これが狙いだったのだ。

 

まだフィルフサの将軍は、地面に潜れていない。

 

ローを叩き込んで、装甲をブチ砕く。初めて痛打が入り、将軍が悲鳴を上げて逃げようとする。

 

巨大な口で食いつきに来るが、あたしはむしろ前に進むと、かみ砕こうとした寸前に熱魔術で爆破、空中に。更に爆破、地面に。

 

もの凄い負荷が掛かるが、これくらいはどうってこともない。

 

泥を盛大に吹っ飛ばしながら着地。

 

槍を投擲してきたフィルフサがなんだかは知らないが、次はまだだ。そしてあたしは、蜻蛉をきりながら、将軍を足で掴む。

 

終わりだ。死ね。

 

「フォトン……」

 

べきべきとフィルフサの雨で弱っている装甲が、捻り投げる過程で捻れ壊れるのが分かる。

 

そのまま旋回しつつ、あたしは地面に将軍を叩き込む。

 

「パイルブレイク!」

 

如何に気配を消して地面の下を泳げようが関係無い。

 

この速度で地面に叩き込まれれば、鉄の壁に全速力で突っ込むのと同じだ。

 

ましてや雨で弱った装甲なら、どうなるか。

 

将軍は瞬時に粉々になり、コアが見える。そのコアを、あたしは掴むと、握りつぶしていた。

 

更にとんぼを切って離れる。また飛来した槍。

 

ちょっと薬で手当てしたいが、まだまだ敵の初見殺し組が集まってくる。今将軍が倒れたことで小型中型が逃げ散り始めているが。

 

あれらのあたしを狙って来ている奴はどうも思考が別らしい。

 

いいだろう、関係無い。

 

全部蹂躙してやるだけだ。

 

後ろに恐らくあの悪魔もどきがいる。あれらの能力は、超ド級に及ばない程度でしかない。

 

一番強い個体でもそれは変わらないだろう。

 

あたしをどうするつもりかは分からないが、主君に忠実なのは事実だ。あたしを都合がいい道具に……主君にとっての。そういうものにしようとしている。今までの錬金術師は全てそうだったように。

 

そんなものになってやるものか。

 

槍を投擲していた連中を発見。大型の虫型だが、短時間で槍を作り出し、それを発射できるらしい。

 

全身が槍を発射するための構造体になっていて、生物としては無茶がありすぎる。

 

ただ、実の所色々な形で飛び道具を使う生物は人間以外にも存在している。そういう生物を、取り込んだのかも知れない。

 

間合いに入ってしまえば問題ない。

 

全部砕く。次。

 

更にフィルフサの群れが前進してきているが、まるで何かに急かされるようだ。谷には土砂降りで既に水が溜まり始めている。小型にはそれで致命的だ。その死体を踏み越え次々フィルフサが来る。

 

だが、来るだけ全部、最後にしてやる。

 

例え神代の錬金術師に全部無茶苦茶にされた存在だとしても。

 

いやだからこそ。

 

此処で終わりにしてやらなければならないだろう。

 

次はかなりの高速で疾走してくる群れだ。食肉目を思わせる機敏な動き。

 

面白い。

 

呼吸を整えると、あたしはぱんと胸の前で拳をあわせる。

 

あたしが積み重ねてきた戦闘経験を甘く見るなよ。ちょっとやそっとの初見殺しくらい、全て返り討ちにしてやるだけだ。

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