暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3   作:dwwyakata@2024

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4、希望の子

朝早く起きだして、それで体を動かしていると。

 

珍しくパティよりも先に、アンペルさんが起きだしてきた。

 

「おはようございます」

 

「ああ。 いつも早いな」

 

「体を動かすには、朝が一番良いんですよ」

 

「そうか……」

 

これは頭を動かすのも同じだが。まあそれはいい。

 

アンペルさんが、腰を下ろして考え込んでいる。まだパティは来ていないし、先に話をしておくか。

 

「アンペルさん、アンペルさんの体について分かった事があります」

 

「私についてか」

 

「ええ。 アンペルさんの御髪をもらってエーテルに溶かして解析して、はっきりしたんです」

 

「……続けてくれ」

 

アンペルさんは若作りしているが、もうかなりの高齢だ。

 

人間より長生きする体質とは言え、百数十年生きているというのは、それだけ厳しい事なのだ。

 

何故長生きなのか。

 

アンペルさんもそれを知らず苦労していたようだが。

 

全部分かった。

 

「アンペルさん、貴方は人間とオーレン族のハーフです」

 

「なんだと……」

 

「カラさんが、セリさんの他に人の世界に向かった変わり者の女性が一人いたと言っていました。 恐らくその人が母親だったのだと思います」

 

アンペルさんは、両親の事を殆ど覚えていないのだという。

 

オーレン族だったアンペルさんの母親は、ただでさえ考え方が違う。その上オーレン族は生まれるまで胎内で十年以上は掛かるらしい。

 

父親は最初は愛情があっても、すぐにそれも冷めて出ていくだろう。

 

その上研究して分かっている。

 

人間とオーレン族は子供を作れるが。

 

特に母胎に大きなダメージが出る。どっちが母親でもだ。

 

妊娠期間の違いがその理由で、人間が母親の場合はそれに耐えられない。人間が父親の場合、あまりにも子供が早く胎内で成長する事で、頑強なオーレン族でも大きな負荷を受ける。

 

結果、アンペルさんのお母さんは、寿命を縮めたのだ。

 

「なんてことだ……」

 

「アンペルさん、誰か気になっている女性はいますか?」

 

「何の話だ」

 

「相手が人間でもオーレン族でも、子供を作れば相手を不幸にしますので。 このままだと確実に」

 

さっきも言ったとおりの理由からだ。

 

アンペルさんは百数十年程度で老けていることからも、人間としての血の方が濃いのだろう。

 

それでも人間との間に子供を作れば異常に長い妊娠期間が母親の母胎にダメージを与えるし。

 

オーレン族が相手の場合は、早すぎる子供の成長が。

 

つまるところ、ほぼ確実に相手を死なせる。

 

「今は……いない」

 

「そうですか。 それでも、相手ができたら話をしてください。 相手の方に飲んで貰う薬を調合しますので」

 

「確か子供の成長を可変化させるものだったな」

 

「そうです。 母胎にダメージを与えないために。 アンペルさんの悲劇を繰り返さないためにも」

 

今のあたしなら、それくらいはできる。

 

研究も進めてきたのだ。

 

ボオスとキロさんの事もある。

 

ボオスはまだ求婚に踏み込めないようだが、今のボオスの様子からして、他の女性に興味は無いだろう。

 

キロさんがどう思うかが問題だが。

 

キロさんにしても、ボオスを嫌っているようには思えない。

 

あと、あたしから見てセリさんとクリフォードさんがそれほど仲が悪そうには見えないというのもある。

 

もし二人がくっついた場合には、同じ薬を調合する必要があった。

 

アンペルさんについても、実はリラさんとそういう関係を想定していたのだが。

 

今回の件で、アンペルさんがややこしい血縁だと言う事がわかったこともあり、余計に薬については考えなければならなくなった。

 

ただ、分かった事もある。

 

オーレン族の長命と強靭な肉体は、どちらかというと精鋭での少数生活に向いているもので。

 

結果として生物としては、人間よりも汎用性が狭いのだ。

 

確かに見ていると、オーレン族は似た顔の人が多い。

 

それは生物としての多様性が薄いことを意味してもいるのだろう。

 

仮にアンペルさんと他の誰かの間に子供が出来た場合。相手が人間の場合は、普通の子供が生まれてくる可能性さえある。

 

それくらい簡単に、オーレン族の血は薄まるのかも知れない。

 

「いずれにしても何かあったら話してください」

 

「分かった。 すまなかったな」

 

「いえ……」

 

アンペルさんが行くと、ちょっと出づらそうにしていたパティが出てくる。

 

もの凄い生々しい話を聞いたと、気まずそうだ。

 

パティにしても、この冒険が終わったら、時期は分からないが正式にタオと婚姻だろうに。タオも実績は充分に積んでいるし、ロテスヴァッサの既得権益層は片付いているし。なんなら気を利かせて二人だけの空間を作っても良いくらいなんだが。ちょっと初な話ではある。

 

既に戦士としてはこの世界最強の一人でも、こういう所はまだまだ可愛い。

 

「ライザさん、ちょっと生々しい話ですね……」

 

「パティはまあ心配ないよね」

 

「え、ええ。 まあそうですね。 強いていうなら、私のお母様が体が弱かったようなので、その……」

 

「どんな風な親の要素が子供に出るかは分からない。 ただ、研究を進めれば、生まれついての病気についても、いずれどうにか出来るかもしれない。 何か問題があったらあたしにいって。 手が及ぶ範囲で解決するから」

 

生まれついての障害を持って生まれてくる子供はいる。

 

だけれども、それらの子供に罪は無い。

 

オーレン族と人間の交配の研究をしていて、それらの子供をどうにかできるかもしれない研究も進んでいる。

 

いずれ、全ての障害に苦しむ人間に治療をと思うが。

 

ただ、それも不公平であってはならないか。

 

難しい話だ。

 

いずれにしても、キロさんが来た時に、ボオスにも同じ話はしておかなければならないか。

 

それにボオスがキロさんと結婚する場合、色々障害も多いだろう。

 

皆、大変な事だ。

 

ただ、あたしはもう結婚も繁殖もする気はないが。

 

他人にそれを強制するつもりもない。

 

 

 

(続)







色々な意味での希望の子らが、未来に生まれるかも知れません。

それらは祝福しなければならないでしょう。

そうできるのだから、不幸にしてはならないのです。
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