暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3   作:dwwyakata@2024

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今までライザが交戦してきたフィルフサの群れは、操作する存在が王種しかいませんでした。

フィルフサを主体的に操作して攻撃してくる相手の出現。

しかもそれに加えて神代の兵器も出てきます。

加えて屋内。

水という最大の弱点で攻める事ができない最悪の条件で、ライザは戦いを強いられる事になります。


コキュートスの花園
序、難攻不落


あたし達の攻撃を退けた神代の遺跡に、フィルフサが入っていくのが見える。他の群れが侵入しているようである。

 

あり得ない事だ。

 

フィルフサは共食いをしない、それは既に確認している。これはそもそも甲殻が本体だからで、共食いをする意味がないからだ。

 

同時に共闘もしない。

 

これもそれぞれの群れが一体の王種に率いられているからだ。

 

中には二枚重ねの甲殻の将軍なんて変わり種もいたし、神代の錬金術師は粘土でもこねるように命を弄んだから、どんなフィルフサがいても不思議ではないが。

 

それにしても妙だ。

 

今まで見た事がない事例だと、奏波氏族の戦士達も証言する。

 

千年以上戦って来たフィルフサの生態だ。

 

それもこの遺跡に立てこもっている連中は、その千年の戦闘で生態をずっとみている筈である。

 

だとすれば異常事態。

 

疑う余地は無いだろう。

 

無言で状況を確認後、一度後退する。また敵が補充されたという事もある。二日間で火が出るように攻め立てたが、神代鎧が相当数まだ中にいるらしく、倒しても倒しても出てくる事。

 

更にはフィルフサが補充されているとなると。

 

この遺跡が呼んでいるのか。

 

或いは悪魔もどきか。

 

両方かも知れない。

 

ネメドの遺跡では、実際悪魔もどきがそのシステムを利用していたのだから。神の代理人だから許されているのだろう。巫山戯た話だ。

 

ともかく、距離をとって確認する。

 

遠めがねで確認していたタオが、あっと声を上げていた。

 

「王種だ。 西側に展開していた群れのものだと思う」

 

「遺跡に向かってる?」

 

「間違いなく」

 

「そうか、じゃあ危険を冒してでも倒す他無いね」

 

クラウディアに頷くと、雷神の石を打ち上げて貰う。

 

元々じとじとと雨が続いていたが。これで一気に土砂降りに変わる。辺り一帯が土砂降りで、フィルフサに取っては地獄だ。

 

仕掛ける。

 

王種二体が遺跡の中で待ち伏せていたら、流石に倒すのは厳しい。しかしながら、あたし達が先頭で仕掛けるのを待っていたように、高所から無数の狙撃が飛んでくる。上空に、飛行型のフィルフサ多数。

 

それが狙撃型のフィルフサを抱えている。

 

やっぱりこれはおかしい。

 

悪魔もどきが遺跡にいて、指揮をしているとみて良いだろう。

 

魔物を操作する能力を持っている相手だ。フィルフサも例外では無い。しかも此奴は、戦術的に使って来ている。

 

王種をおとりに、あたし達を死地に追い込むのはかなり考えたなと言いたいが。

 

あたしは踏みとどまる。

 

というのも、大雨だ。フィルフサは弱る一方。大雨に上空で晒されている飛行型は、無事ではすまない。

 

踏みとどまれ。

 

カラさんが叫ぶ。

 

風の魔術を起こし、飛行しているフィルフサを翻弄する。狙撃も上手く当たらない。それでも当てに来るが、レントやクラウディアが弾き返す。

 

ディアンが突貫。

 

パティと一緒に、敵を右に左に斬り倒す。

 

その間を抜けて、あたしが突入。

 

行く手を塞ごうとした重厚な体の将軍に前蹴りを叩き込み、のけぞった所にもう一撃を入れる。

 

着地。

 

浮き上がっている将軍に、踏み込みながらとどめの蹴りを入れる。完全に拉げていた将軍が、それで空中分解。

 

コアをついでに掴み、砕いた。

 

バラバラに砕けた将軍。

 

それを貫くようにして、超火力の魔術砲が飛んでくる。

 

王種による迎撃。

 

避ける暇はない。

 

全力で熱槍を展開、真正面からぶつける。

 

直撃し、苛烈な熱が辺りを蹂躙する。フィルフサですら溶けるほどの熱の中、あたしは一瞬の拮抗を作って、それで充分と判断。真上に跳躍。魔力砲が、地面を抉りながら地平まで飛んでいく。

 

其処から投擲。

 

投擲したのはリアプラジグ。

 

最大火力の雷撃爆弾だ。

 

効果範囲を絞っていなかったら、戦場にいた全員が即死していただろう。フィルフサの動きと布陣を見て、丁度指定範囲を雷撃が焼き尽くす。

 

多数のフィルフサが倒れ、その中には王種も混じっていた。

 

上空から襲いかかる。

 

それでも王種が無理矢理体を起こし、鎌で迎撃に来るが。それを爆破で更に加速して、蹴り。

 

気合の声とともに、ダメージを受けている王種の横っ腹に大穴を開けて、突き抜ける。

 

着地と同時に、地面が爆裂する。それくらい蹴りの威力が出ていた。

 

王種がしばらく棒立ちになり、それで倒れる。あたしは呼吸を整えながら歩み寄ると、コアを引き抜いて、握りつぶしていた。

 

これを資源にするか。

 

気が狂ってるな本当に。

 

周囲を見る。群れが壊滅して、そのまま離散していく。王種を先に仕留めると、将軍も崩れて行くようだ。

 

味方の被害は小さくない。とにかく、すぐに負傷者を引かせて、それで手当てに掛かる。

 

この辺りにいるフィルフサを、更にかき集めて防御に出かねないなこれは。

 

あたしは、酷い負傷をしているオーレン族の戦士を見ながら、呻く。

 

この惨状では。

 

迂闊に攻勢にも出られない。

 

 

 

負傷者の手当てを終えると、後は休む。

 

皆口数が減っている。この期に及んで敵の行動が不可解だし、なおかつ拠点が極めて堅固だ。

 

とにかくこれでは敵を攻め潰せない。

 

しかも遺跡の内部にはまだまだ神代鎧が控えているのだ。

 

悪魔もどきがいるとして。

 

今までとは違う、かなり厄介な相手とみた。

 

サタナエルみたいにプライドがある奴なのかは分からない。ただのアホだった悪魔もどきもいたが。

 

少なくとも今交戦している奴は、人間の戦い方を知っている。

 

一眠りしたが。

 

文字通り泥のように眠ってしまった。起きだしてから、体を動かす。カラさんが、起きて来ていた。

 

「ライザよ、相変わらず朝起きが早いな」

 

「まあ、農家の娘ですからね」

 

「農業はわしらもやるが、そなたの世界の方が技術的には進んでおるのう。 セリ=グロースも其方で学んだ事は多かったと言っておったわ」

 

「セリさんが……そうですか」

 

そうか、だとすれば良い事もあったんだな。

 

セリさんはあたし達の世界の事を良く思っていない。それを知っているから、複雑な気分である。

 

軽く話す。

 

やはり奏波氏族の状態は限界が近いようだ。

 

負傷者の疲弊も酷く、これ以上の攻勢は厳しいと断言された。

 

実際問題、これ以上損害を出すと、ウィンドルを守りきれなくなる可能性がある。

 

もしもウィンドルが陥落したら、それはそのままネメドにフィルフサが怒濤のように溢れることを意味もしている。

 

それは絶対にあってはならない事だ。

 

「今まで対戦してきた神代の錬金術師どもが作った遺跡とは訳が違うのう。 今まで監視に留めておったが、大正解であったわ」

 

「少し戦力が足りないですね。 あたし達だけで攻めるにしてもちょっとあの規模だと厳しいのが現実です」

 

「そうさな……」

 

「今回はフィルフサの増援を防ぎきれましたが、それもいつまで続くか。 悪魔もどきがあの中に潜んでいる場合、攻めるのを諦めたら反撃に出てくる可能性も極めて高いでしょうね」

 

そして悪魔もどきは。

 

あたしに鍵を与えた神代と連携している可能性が高い。

 

どういう意図なのかまだ分からないが、まあどうせろくでもない事を目論んでいるのは確定だし。

 

ともかく、共存は無理だ。

 

「次で少し無理をしてでも、地上部分は制圧します」

 

「勝算はあるのか」

 

「少数精鋭でどうにかします。 被害が出ても良い地点を今タオに割り出して貰っています」

 

遺跡を丸ごと無事なまま確保して調査したいのは山々なのだが。どうもそれでは限界が近そうなのである。

 

そこで、遺跡の中で破壊しても平気そうな場所を割り出し。

 

其処を中心に、神代鎧とフィルフサをまとめて爆弾で吹き飛ばす策でいく。

 

乱暴だが、これくらいしか手が残されていない。

 

ただ危険要素として遺跡のサイズからして、大型の神代鎧がいる可能性は低いが、人間サイズのカスタムモデルがいてもおかしくは無い。

 

特別に強く作られているタイプだ。

 

現在の達人級の技量で攻めてくる量産型も厄介だが。

 

それに更に面倒な能力が加わっていたら、手に負えない可能性が出てくる。

 

爆弾を使うにしても、こういうカスタムタイプがいた場合、能力で封じてくる可能性がある。

 

実際ネメドで交戦した大型の神代鎧は、空間魔術を使ってきた。小型でもカスタムタイプは、それができてもおかしくない。

 

遺跡には王種もまだ健在だ。

 

悪魔もどきの戦力そのものは、それほど危険視しないでいいのが救いだろうか。

 

「敵は恐らくそれも読んでいるのではあるまいか」

 

「……これがそもそも誘発された考えという可能性はあります」

 

カラさんの言う通りだ。

 

フィルフサは暴走するただの蹂躙者にすぎない。将軍や王種は戦術を使ってくる事もあるが、どうしてもそれは限定的である。

 

しかしながら今回は明らかに頭がついていて、それもかなり手強い。

 

これも読まれていて。

 

何かしらの策を取っていた場合、一か八かの勝負になりかねない。

 

実際にフィルフサの群れがあの遺跡周辺を固め、王種が遺跡に入りでもしたら、もう手に負えないのだ。

 

それを今までやらなかったということは。

 

幾つか可能性が考えられるが、一つは最近になってあの悪魔もどきがこっちに来たと言う事である。或いは眠っていたのが起きたのかも知れない。いずれにしても、元はオーレン族との戦いに興味なんかなかったんだろう。

 

仮に悪魔もどきが後からこっちの世界に来たとして。

 

門はまだあって悪魔もどきが使える状態なのか。

 

それともあたしみたいに鍵を教えた錬金術師がオーリムに来る事を想定していたのか。

 

それまでは分からないが。

 

「とにかく、やるのであれば策は十全に練るようにせよ。 わしは自身ではあの遺跡を攻略する術は思いつかぬ」

 

「……分かりました。 とにかく少数精鋭の電撃戦で行きます。 地上部分だけでも制圧すれば、ずっと話は変わってくると思いますので」

 

「策を練る時間も限られるのが厳しいのう」

 

「まったくです」

 

すぐに遺跡の側に行く。

 

その後はタオと連携しながら、音魔術、熱魔術、カラさんの探知魔術全部を用いて、遺跡の少なくとも上層部分に関する情報を全て収集する。

 

遺跡の強度についても、ある程度はわかっている。

 

今まで内部に侵入して、判明した構造なども全て盛り込む。

 

これだけ巨大な遺跡でも、建物の基本というのはしっかり守っているのが少しばかり面白い。

 

全ての探知魔術による調査の結果が、その結論を裏付けていた。

 

しばし作戦を練る。

 

やはりかなり強引だが。

 

それしかないと、結論は出ていた。

 

作戦を決めてから移動を開始。遺跡の周囲はウィンドルを見下ろせる高い位置にある。これは恐らくだが、そもそもウィンドルを攻略する事を視野に入れていたからなのだと思う。

 

高所に陣取る場合には水の手なども考えないといけないのだが。

 

この巨大遺跡くらいになると、そんなのは考えなくても問題ないくらいのテクノロジーがあるのだろう。

 

遺跡の周囲を確認。

 

既に周囲に出張ってきているフィルフサの斥候は、あらかた始末してある。敵も完全勝利しているわけではない。大きな被害を出し続けているのだ。

 

狙撃に警戒しながら移動。

 

遺跡後方にある丘に辿りつく。

 

ウィンドルは起伏が激しい地形で、彼方此方に谷や坂がある。こういう地形だったから、ドラゴンが多数羽を休めたのかも知れない。

 

丘は酷く荒らされていて木もほとんどないが。

 

これはフィルフサによるものだろう。

 

フィルフサを退治しないと、こういった惨状はどうにもならない。

 

自分に都合が良い動植物だけを残すような思考で、一度世界を更地にするためにフィルフサや超ド級、フェンリルなどは作られたのだ。ラプトルや走鳥もその可能性が高い。

 

奴らが世界を完全に好き勝手にしていたら。

 

この惨状が世界中に拡がったと言う事なのだろう。

 

「位置的には此処か……」

 

「本当にやるのかライザ」

 

「本気だよ。 レント、射出台はよろしく」

 

「俺もやるぜライザ姉!」

 

うむ、二人がかりなら更に成功率が上がりそうだ。

 

その間も確認を続ける。

 

遺跡の周囲には全て覗き窓がついていて、まだまだ狙撃ができるフィルフサがいるとみて良い。

 

狙撃だったら神代鎧でも良さそうだが。

 

あれはあくまでガーディアンだ。

 

神代鎧の投擲槍は極めて強力で、何度も苦杯を舐めさせられたが。

 

それも使い捨ての武器である以上、一定の条件が揃わない限りは使ってこないとみて良いだろう。

 

「よし、だいたい分かったよ。 タオくん、地図を見せて」

 

「わしもじゃ。 ふむ、予想通り水周りや柱は建物の基本通りにつくっておると見て良さそうだのう」

 

あたしの熱魔術でも同じ結論だ。

 

更に言うならば、地上部分に恐らく王種はいない。

 

何度かの突入で地下への入口も発見はしているのだが。

 

そこでも地下に強い気配があるとクリフォードさんが言っていたことからして、恐らく地上部分にいるのは神代鎧と雑魚フィルフサとみて良い。

 

雑魚と言っても手強い個体ばかりだが。

 

何度かタオが計算して、あたしの策通りにやるにはと、かなり細かい弾道計算を出してくれた。

 

よしよし、完璧。みなあたしも感心するレベルのスペシャリストだ。

 

いけるな。

 

奏波氏族の戦士達は、ウィンドルの守りを固めてくれている。

 

それでいい。

 

千三百年フィルフサの猛攻を防ぎ続けた一族だ。ちょっとやそっとでウィンドルを落とされはしない。

 

フィーはパティに預ける。

 

今回はちょっと激しい圧が体に掛かるからだ。それもフィーは耐えているが、多分今のフィーでもきついと思う。

 

体の中の魔力を練り上げる。

 

座禅を組んで、時間を掛けて練り上げて行く。

 

魔力増強の修行の時もやるが、それ以上に今回は全力で一撃をぶち込まなければならないからである。

 

あたしの固有魔術は熱。

 

今でもそれを磨いて、応用に使ってはいるけれども。

 

こう言うときは、熱を第一に用いる。

 

魔力を練り上げるのに相応の時間を費やし。

 

そして、立ち上がっていた。

 

息を吐き出す。

 

それを見て、フェデリーカが生唾を飲み込んでいた。

 

完全に集中している。タオが指定した通りの弾道が見える程である。体が、かつてない程の力を出せる。

 

タオが、レントとディアンに、撃ち出しの角度とタイミングについて指示を出している。何度か練習をする。

 

いけそうだな。

 

あたしは何度か体を動かして、練気を続ける。

 

そして、準備が整っていた。

 

「いくよ」

 

「ライザが突貫してから、総員で遺跡に攻めかかる。 爆弾が炸裂するのは、あくまで遺跡の中での事。 遺跡の外に被害は出ない。 突入は今までの遺跡の入口から」

 

カラさんが指揮を取る。

 

これはあたしが頼んだのだ。

 

さて、行くぞ。

 

あたしは頷くと。レントが大剣を構え、ディアンがそれに力を添えるように、身をぐっと低くした。

 

カタパルトの要領だ。

 

身軽に、レントが構えた大剣に乗る。

 

そうすると、レントが行くぞと叫んで、一気に大剣を振るう。ディアンは気合の声とともに、大剣の腹を全力で蹴り。

 

あたしはその遠心力とディアンのパワーを全て力に変えて、跳んでいた。

 

いや、もはや飛ぶのが正しいか。

 

加速。

 

途中で、何度か熱魔術で爆発を起こして、軌道修正。微調整。フィルフサが狙撃してこようとするが、先にクラウディアが矢で撃ち抜く。

 

裂帛の気合とともに、あたしは今までの蹴り技の集大成とともに。

 

遺跡を、斜めに。

 

文字通り貫いていた。







炸裂ライザキック(何)
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