暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3   作:dwwyakata@2024

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ライザらしい豪快な一撃より開始される城攻め。

例え条件が最悪でも、やらなければなりません。

神代をのさばらせれば、今後も悲劇が際限なく量産されるからです。


1、難攻不落は必ず落ちる

レントの大剣が振られるのと同時に、ライザが文字通り弾丸になり。途中で何度か熱魔術で軌道を修正。

 

そして、遺跡を貫通していた。

 

ライザの蹴り技の非常識ぶりは何度も見てきているリラだが、これはもう自分でも及ばないなと苦笑い。

 

弟子が師を越える事は誉れだ。

 

クーケン島で出会った弟子達は、既にリラを超えている。

 

数百年の研鑽を四年で凌駕された悔しさはあるが。

 

しかしながら、それもまた誉れと言う事だ。

 

突貫。

 

叫んで、一気に遺跡に向かう。クラウディアが乱射する矢が、次々に狙撃穴に飛び込む。そして小爆発が起きる。

 

どれもライザが調整した、威力を抑えている爆弾をつけていたのだ。

 

フィルフサに有効打になるかよりも。

 

フィルフサの動きを阻害することが大事なのである。

 

3,2,1。

 

炸裂。

 

遺跡を貫通したときに、ライザが残した爆弾が、遺跡の中で炸裂した。

 

皆で計算して、敵が集まっている、遺跡の書庫などがなく、中枢のシステムもない位置を特定。

 

其処を貫くと同時に爆破。

 

まとめて地上部分のフィルフサと神代鎧を粉砕したのだ。

 

だがそれでも、クラウディアは走りながら叫ぶ。

 

「まだかなりいるわ! 半減してもこんなにいるなんて」

 

「上等!」

 

「地下からの増援を予定通り塞ぐわ。 何が何でも地上部分を制圧するわよ」

 

遠隔から、セリ=グロースが植物魔術を展開。

 

地下からの地上への出口は分かっている。其処を覇王樹やらで徹底的に塞いでしまうのだ。

 

しかもそれは多分に水を含んでいる。

 

フィルフサが下手に傷をつければ、押し流される事になる。

 

ウィンドルでも覇王樹はかなりの数を見かける。

 

流石にフィルフサが多い場所ではもうなくなってしまっているが。水を蓄える覇王樹は、フィルフサもあまり手を出したくないのだろう。

 

ライザはもう遺跡の中に突入して、暴れ回っているようだ。

 

パティが続いて。タオとリラが殆ど同時に遺跡に突入する。遺跡に入るやいなや、神代鎧が斬りかかってくるが。

 

パティが弾き返し。

 

次の瞬間には、リラが蹴り砕いていた。

 

更にとんぼを切って、回転しながらの蹴り技で次々と神代鎧を打ち砕く。完全破壊はいい。

 

遅れて来る皆に任せる。

 

何度も突入して、一階の構造は理解している。

 

ライザと合流。

 

全身からとんでもない魔力を放出している。今の突貫による貫通の余波だ。あまり長くは継戦できないはず。

 

魔術に関しても、これはカラ総長老をもう凌ぐな。

 

装備込みだとしてもだ。

 

リラは舌を巻きながら、乱戦を続ける。半減しているとはいえ、こんな凄まじい奇襲がありながら。

 

神代鎧とフィルフサは決死の抵抗を見せている。

 

ボオスとクリフォード、クラウディアが遺跡の中に入ってくる。レントとディアンは少し遅れたが、それでも無事に到着した。

 

ライザが豪快な蹴りを叩き込み、文字通り神代鎧の上半身が抉り飛ぶように吹っ飛んでいた。

 

次。

 

ライザが叫ぶと、恐れを知らない筈のフィルフサが怖れるように退く。そこを、パティがたちまちに斬り倒す。

 

アンペルがフェデリーカとともに遺跡に入り、神楽舞をフェデリーカが開始。以降はフェデリーカを守りながら。地上部分の敵を一掃する。

 

まだまだ敵が二階以上の階層から降りてくる。

 

だが、クラウディアが、速射を続けながら叫ぶ。

 

「二階から上の敵は、全部こっちに向かっているよ!」

 

よし。

 

それは敵が焦っている証拠だ。

 

ライザの戦闘力はウィンドルに来てからの暴れっぷりで周知している筈だが。それでもこんな凄まじい蹴り技を使ってくるとは思わなかったのだろう。

 

蹴り技の究極で重量級の将軍を瞬殺したりしているのを見ても。

 

まさか彼処までの精度で、一点集中の超火力蹴り技を使い。しかも神代の建築物を貫通するなんて思ってもみなかったに違いない。

 

まあ、想像できないのが普通だ。

 

その普通でないことを、やらなければ此処は攻略できなかったのだが。

 

「地下からの攻撃が激しくなっているわ」

 

「クリフォードさん、地上部分の敵に強敵は」

 

「まだいるぜ。 今降りてくる!」

 

「よし……」

 

ボオスとディアンが残党の敵と渡り合い始める。アンペルの空間切断が。フィルフサのコアを撃ち抜いた。

 

まだまだ手強い奴がいるが、将軍も倒れ始めていて。それでフィルフサが逃げ散りはじめてもいる。

 

こればかりはどうにもならない。

 

そもそもフィルフサは「動物」ですらないのだから。

 

将軍と、赤い神代鎧が降りてくるのが見えた。

 

ライザが懸念していたカスタムタイプか。将軍もこの狭い所で戦う事に特化した小型のものだが、見るからに手強い。

 

パティが間合いを詰めて、カスタムタイプに斬りかかる。

 

神代鎧のカスタムタイプはパティの剣撃をいなした……ように見えたが。

 

態勢を低くしたパティが、抉りあげるように一撃を叩き込み。それをぐるんと剣を回して防ぐ。

 

がっと激しく火花が散り、両者がずり下がる。

 

実力は互角。

 

とんでもない性能の神代鎧だ。

 

なるほど、達人の技量を持つ神代鎧の中でも、性能を更に上げて、更に強力な頭を持たせてあるのか。

 

これはパティやレントなどの一部の達人以外には相手は無理だ。パティでも単騎でいくのは、差し違えるのを覚悟しないといけないだろう。インファイトでいうと、ライザ以上の実力とみて良い。

 

レントが前に出る。

 

「リラさん、みんなを任せる! 乱戦で彼奴を確実に倒せるのは、リラさんと俺とパティの誰か二人のタッグだけだろう。 だから俺とパティで今は対処する!」

 

「任された。 アレに勝てたら免許皆伝だ」

 

「おう!」

 

こっちはフィルフサの将軍を相手にする。

 

すり足で迫りつつ、相手の技を確認する。

 

小型の将軍は、不意に天井床に触手をのばし、体を固定する。更に、触手を振動させ始める。

 

詠唱か。

 

いや、これはまずい。

 

離れろ。

 

叫んで、リラは突貫。将軍に蹴りを叩き込むが、触手を展開した将軍がそれを受け止めて見せる。

 

蹴りは一発ではなく、回転しながらラッシュをぶちこむが。それでもその強大な壁を抜ききれない。

 

こいつ、できる。

 

更にこの詠唱、恐らくだが天井と床を伝って波及する。

 

どんな効果が出るかは知れたものではない。とにかく、此処で倒しきらなければならない。

 

全力で魔力を全身に通す。

 

精霊よ、力を貸せ。

 

四つの精霊を、体に順番に宿す。

 

とはいっても、それはあくまでイメージに過ぎない。精霊といっても、自然の力そのものなのだ。

 

だからそれを通すと言う事は。

 

すなわち魔力を制御して、強化魔術の深奥に至ることを意味しているだけである。

 

凄まじい機動でリラから逃れながら、将軍は詠唱を続ける。全身から伸ばした触手は自在に可変し、天井と床を用いて好き放題に動き回る。狭い所での戦闘に特化したフィルフサの将軍。

 

厄介極まりない相手だ。

 

だが。

 

四つの精霊を全て宿したリラは、大きく息を吐き出す。それを見て、将軍がぴたりと止まる。

 

いや、止まったように見えた。

 

乱戦の中、全速力で加速する。

 

ライザがやったように、生きた弾丸となって、敵に間合いを詰める。やたらゆっくりと将軍が動いている様に見える。

 

そうか、リラは此処まで強くなっていたのかと、苦笑する。

 

オーリムのリヴドルで戦っていた頃は、将軍と戦うのは自殺行為だった。優れた戦士である白牙の者が束になって、それでも倒せるか分からなかった。

 

今、水による弱体化がないフィルフサの将軍が。

 

精霊を四種全部宿した最高の集中状態であっても、ここまで遅く見えるというのは。

 

リラが、あの時からは比べものにならない程強く……ライザの装備がありきとはいえ、強くなっている事を意味している。

 

それは失った氏族の魂を背負っているとも言えるし。

 

此処で必ず勝たなければならないことも意味している。

 

詠唱発動までもう時間がないが。

 

届く。

 

至近で踏み込む。

 

必死に壁を作ろうとする将軍だが、その時にはリラの横殴りの蹴りが奴の装甲を捕らえていた。

 

重い。

 

だが、砕けぬほどの重さでもない。

 

蹴り抜く。

 

装甲が砕ける。

 

将軍は詠唱を全力で行い、発動しようとしているが、させない。コアを見つける。高速で将軍の体内を動いているが、今なら掴むのは容易だ。

 

にぎりつぶす。

 

将軍が、動かなくなる。

 

今の詠唱、発動していたら。高圧電流を見境なく流したり、或いは超がつくほどの冷気だったり。

 

いずれにしても全滅の危険があった。

 

「リラさん!」

 

「!」

 

ライザの声とともに体が動く。

 

跳躍して、天井を蹴る。

 

背後から斬りかかってきた神代鎧の一撃を避ける。今の虚脱の瞬間を狙われたか。

 

踵落としで、神代鎧を腰の辺りまで一気に押し潰して、更に倒れたそれを完全に踏み砕く。

 

まだまだだな自分も。

 

武の頂きは遠い。

 

リラはライザに助かったというと。まだまだ続く乱戦に身を投じる。

 

 

 

セリさんが警告を飛ばしてくる。

 

地下の恐らくフィルフサが、階段を猛攻撃していると。そう長くはもたないと。

 

パティとともにかろうじてカスタムタイプの神代鎧は倒した。二人がかりでやっとの相手だ。とんでも無い相手だったが、それでも勝ちは勝ちである。呼吸を整えると、レントは階段の方へ行く。

 

レントは皆の盾だ。

 

剣はパティがいるし、破城槌はディアンがいる。

 

レントがやるべきことは敵の浸透を遅らせ、攻撃を防ぐこと。

 

皆が育って来た今、やるべきは役割の徹底。

 

勿論その場その場では違う役割を果たす必要も出てくるが。

 

それでもレントのパリィの技術については、既に皆の中でも及ぶ者がいない。パティは回避に特化しているが、それでは自分以外は守れない。

 

ライザが作ってくれた装備で、防御も向上しているが。

 

それでもやはり、全身の傷はどうしても痛む。

 

だが、なおもそれでも壁になる。

 

どおん、どおんと激しく覇王樹や複雑に絡み合った植物の壁が、階段の下からたたかれている。

 

水が流し込まれているにもかかわらず、フィルフサの戦意は旺盛だ。

 

地上部分の敵は既に過半を失い、更に残りが半数を割り込もうとしているが。だから必死なのだろう。

 

させるか。

 

ついに覇王樹の壁が破られ、次々に小型のフィルフサが飛び出してくる。その凄まじい突貫は、神代鎧の投擲槍のごとく。

 

だが、抜かせない。

 

一匹目を真正面から大剣の一撃で叩き潰し。

 

二匹目を横殴りに消し飛ばす。

 

三体目が覇王樹に引っ掛かって、這い出そうとしてくる所に、大剣の突きを叩き込んで、更には蹴り落とす。

 

多数のフィルフサを巻き込みながら、其奴は落ちていくが。

 

覇王樹から、多数の槍が突きだしてくる。

 

槍状に尖ったフィルフサが、水を怖れず突貫してきたと言う事だ。それも相当数が。一瞬遅れていたら串刺しになっていたが、跳びさがって防ぐ。ただし、文字通り面制圧レベルで繰り出された槍で、何カ所も体を抉られていた。

 

いってえなあ。

 

戦場ではいつも手傷は受ける。

 

だが、それでもいたいとは感じる。

 

それは自然な事だ。

 

ライザの言葉ではないが、痛みは体の警告。痛みを完全に消してしまった場合は、ロクな結果にならない。

 

ダメージを受けている事に気付けないからだ。

 

痛みを我慢しろなんていうのは、カス以下の武人だ。

 

痛みが何処に出ているのかを正確に把握して、ダメージと相談しながら適切に次の手を打つ。

 

まるで戦うからくりだが。

 

戦闘の時は、それが一番敵の被害を増やし、味方の被害を減らすのである。

 

「レント!」

 

「大丈夫だ! それよりも、そっちは!」

 

「強いのが出て来た! だが……」

 

ボオスが吹っ飛ばされて、それでも受け身を取る。

 

周囲は神代鎧やフィルフサの甲殻が死屍累々と散らばっていて、転ぶだけでも大けがをしかねない。

 

覇王樹から槍が一斉に引っ込む。

 

これは引き抜かれた、という風情だ。

 

覇王樹が吹っ飛ばされる。

 

セリさんも、フィルフサ戦で全力投球状態で、こっちにまで手を回す余裕が無さそうである。

 

いや、セリさんをフィルフサが狙っているのか。

 

面倒な事をしやがる。

 

そう思いながら、大剣を構え直す。

 

階段から這い出してきたのは、重厚な体をした将軍だ。

 

ダンゴムシか何かのような形状だが、非常にパワフルな、しかもそれがコンパクトにまとまっている。

 

これは手強いな。

 

レントは舌打ちすると、指先で招く。

 

将軍も、レントの挑戦を理解したようで、体を持ち上げると、わっと触手を伸ばしていた。

 

これを器用に使って、槍状の小型を投擲して覇王樹にダメージを与え。

 

引っこ抜いた後は、自身で覇王樹をブチ抜いたというわけか。

 

セリさんの魔術で強化され、大量の水を含んでいる覇王樹を。それだけで、かなり厄介な相手だと分かるが。

 

引くわけには行かない。

 

後ろでは神代鎧のカスタムタイプ二体目が出て来ているようで、それの猛攻で疲弊した皆が阿鼻叫喚になっている。

 

彼処に将軍や、その後ろに続くフィルフサが加わったら、文字通り全滅するし。地上部分の敵を掃討してきた意味が一気になくなる。

 

地下にどれくらいの敵が残っているかは分からないが。

 

とにかく此奴は、レントが止めるしかない。

 

触手を天井床に貼り付けると、ダンゴムシが全力で回転を開始。球体になると、そのまま凄まじい勢いで突貫してくる。

 

大剣で防ぎに掛かるが、火花が散って、しかもとてつもなく重い。

 

歯を食いしばって、さがりつつもパリィで弾き返すが、床が。神代のよく分からない強力な素材で作られた床が、赤熱している。

 

全身に更に走る痛み。

 

だが、ダンゴムシは平然と触手による柔軟な防御でパリィで弾かれた衝撃をいなし。

 

まるで飛び回るようにして、壁を跳ね回って、第二撃を叩き込んでくる。

 

二度、三度、ぶつかり合い。

 

その度に、ライザが改良に改良を重ねてくれた大剣が悲鳴を上げる。レントの体そのものも。

 

雨というアドバンテージがなく。

 

しかも一対一。

 

それが、これほどフィルフサの力を上げているのか。

 

質としては、王都近郊で戦った群れよりは落ちるはずだ。ただ彼奴らは土砂降りの中でやりあった。

 

フィルフサは、本当に水で弱体化するんだな。

 

レントは、何度も激しくぶつかり合いながら。真の力を出して全力で攻めてくるフィルフサの恐ろしさに舌を巻く。

 

同時に、こんな奴らを相手に、戦い続けたリラさんやキロさん。そしてこのウィンドルの戦士達に敬意まで持った。

 

ぐっと、ダンゴムシが引く。

 

引くことで、力を充填しているようだ。

 

レントは踏み込むと、大剣を大上段……いや、更に大きく、剣先が地面につくほどに構える。

 

一撃必殺の構えである。

 

ダンゴムシも、フィルフサの将軍。

 

指揮をする将軍は、ある程度戦術を知っている節がある。

 

地面でガリガリと激しく回転して、赤熱させるフィルフサ将軍。ダンゴムシのあの触手、あれだけ回転しても平気なのは、魔術による接合だからだろうか、それとも。

 

いや、考えるのは生き残ってからだ。

 

ばつんと後ろに弾かれたダンゴムシが、触手を使ってその後退を力の充填に変え。

 

反発の勢いも使って、レントに最大加速してくる。

 

その凄まじさ、恐らく音を軽く超えている。

 

小型のフィルフサでありながら、精鋭フィルフサの将軍をしているだけはある。凄まじいプレッシャーだ。

 

踏み込む。

 

彼方此方赤熱し、砕け、半壊している床を。

 

踏み砕ける。

 

同時にレントは、渾身の一撃を。ひねり潰しに来たダンゴムシ将軍へと、叩き込んでいた。

 

信じろ。

 

ライザが作ってくれた大剣を。

 

もっと信じろ。

 

自分で磨き抜いてきた技を。

 

リラさんに教わって、以降は磨き上げてきた剣を。皆を守り抜いてきた剣を。

 

叫びながら、斬り下げる。

 

巨大なダンゴムシの体が、火花を散らしながら両断されていく。大剣も、負荷に悲鳴を上げている。

 

ダンゴムシは引かない。

 

ここで押し切れば、一気に戦局が変わると理解しているからだ。

 

そう分かる。

 

レントも引けない。

 

此処でダンゴムシに潰されれば、皆が一気にやられるからだ。

 

意地と意地のぶつかり合いは、一瞬の拮抗の後。

 

唐突に終わっていた。

 

ふっと、綺麗に力が抜ける。

 

同時に、レントは剣を斬り下げていた。

 

真っ二つに左右に別たれたダンゴムシ将軍が、レントの遙か後方、二箇所で壁に激突して砕ける。

 

そして大剣に、コアが接触し、砕けたのが分かった。

 

手強かったぜあんた。

 

相容れない相手ではあったがな。

 

呼吸を整えながらレントは思う。

 

今まで面倒だから必殺技の名前とか、考えた事はなかった。だが、今のぶつかり合いで、柔と剛の切り替えを理解出来た気がする。

 

これだけ戦闘を経験してきても、まだ学びがあるんだな。

 

そう思うと、剣というものの奥深さにいつも驚かされてしまう。

 

大股で、破られた階段に歩み寄る。

 

小物が上がってくるが、どれも死にかけだ。それを片っ端から始末して、セリさんに叫ぶ。

 

セリさんがどうにか余裕が出来たらしく、階段を再び塞ぐ。

 

後方を見る。

 

カスタムタイプ二体目に、パティとリラさんが勝利したようだった。背中から、パティの大太刀がカスタムタイプの神代鎧を貫いている。

 

次の瞬間に、縦横に切り裂かれたカスタムタイプの神代鎧が。

 

無念そうに、機能停止していた。

 

「被害報告!」

 

ボオスが叫ぶ。

 

地上部分の敵、制圧完了。ライザも蹴り砕いたフィルフサから離れて、薬を持ち出していた。

 

勝ったとはいえ、パティも左腕を大きく切り裂かれていて、派手に出血している。ボオスも腹をざっくりやられて、腸がはみ出しかけていた。

 

トリアージだ。

 

レントも急ぐ。

 

多分最後の激突で、腕を折られた。この状態だと、回復させるのがとにかく手間になってくる。

 

普通だったら、だ。

 

階段からの突破を、フィルフサが一度諦めたようで、時間は出来た。とにかく、手当てを進める。

 

「レント、腕折れてる?」

 

「最後に倒したフィルフサの将軍が強くてな。 大雨がなければ、「蝕みの女王」相手に勝ち目なんか万に一つもなかったんだろうな」

 

「それは言えてる」

 

タオが苦笑い。

 

タオも浅いが、左目を頭からざっくり切り裂かれて、顔が血だらけになっている。それでも命の別状は無いと判断して、眼鏡を珍しく外して他の人から傷を治すのに加わっている。眼鏡は当然破砕されてしまったようだが、そんなものはライザが幾らでも前以上の性能で直してくれる。既にいわゆる古式秘具さえ、ライザはそれ以上の性能にカスタムできるのだ。眼鏡なんか即座に直る。

 

ウィンドルもフィルフサの襲撃を受けているらしい。

 

だが、きっと皆耐えてくれているはずだ。

 

少しずつ手当てを進める。

 

此処はフィルフサの一大拠点。

 

此処を潰せば、一気にウィンドルは状況が楽になる。

 

やっとレントの番が来る。ライザにしても結構手傷を受けていたのに、顔色一つ変えずに手当てをしていた。

 

まあ、お互い人間をやめ掛けているな。

 

そう考えて、レントは苦笑が隠せず。

 

そして今更骨折の苛烈な痛みに襲われて。体にいい加減にしろと怒られたような気がした。

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