暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3   作:dwwyakata@2024

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休息を終えれば最後の遺跡の探索です。

此処で情報を集めきり。

神代の根拠地に殴り込むための情報を揃えなければいけないのです。


2、束の間の休息を終えて

百年祭は数日続くのだが、参加は自由とする事を、朝のミーティングで説明しておく。

 

一日は自由行動だ。

 

今日までは、タオ達が最低限は欲しいとも言っていた。だから、今日までは自由行動とする。

 

少し焦りはあるが、それは抑え込む。

 

あたしは皆に話を聞いて、それぞれの装備を調整しておく。薬も増やしておく。

 

サルドニカの両ギルド長が面会を申し込んできたので、会っておく。アルベルタさんの長男がそろそろ職人になるらしく、いいハンマーを作りたいらしい。あたしは素材を聞くと、その場で作って渡す。

 

魔石細工には工具が必須だ。

 

このうちノミは門外比出であるらしい。まあそれもそうで、繊細極まりない細工をしなければならないのだ。

 

他人には見せられないだろう。

 

ハンマーはそうでもなく、大工が使うような大きめのものではなく、かなり細長いものを使うようだが。

 

それくらいなら、ちょちょいで作れる。

 

長く使えるもののがいいだろう。

 

持ち手は木で作るが、長持ちするようにコーティングしておく。その場で渡されたアルベルタさんは、大喜びで受け取ってくれた。

 

「これは素晴らしい。 頼んで正解だった」

 

「次代のギルド長はその子ですか?」

 

「いや、あれは職人としてはそこまでの才能は無い。 私の血縁はギルド長には皆なれないだろうな。 次のギルド長は、実直な若いのがいる。 それに任せるつもりだ」

 

素晴らしい。

 

それでいいと思う。

 

職人が世襲で継がれるようになると、質も確定で落ちる。

 

だから、そうやっていけばいい。

 

テクノロジーに政治を挟んではいけない。

 

テクノロジーというのは作り出すのはとても難しく、失われるのは簡単なのだから。

 

「俺もちょっと頼みたいものがある」

 

「サヴェリオさんもですか」

 

「ああ。 こういうものを作れるか」

 

頼まれたのは、硝子細工用の筒だ。

 

硝子は飴状に溶けた塊を取りだすと、其処に筒で空気を吹き込んで膨らませる行程を持つものがある。

 

これがなかなかの職人芸を必要とする。

 

あたしも実際に見せてもらったが、間違って吸ったら肺を一瞬で焼いてしまうし、色々と難しい。

 

そこで、空気が逆流しないようにし。

 

なおかつ空気を効率よく届けられる内部構造の筒を考えたいらしい。

 

今まで色々とやってきたらしいのだが、どうしても満足がいくものはできなかったと、サヴェリオさんは言う。

 

なるほど、少し考えてから、あたしはインゴットを取りだす。

 

グランツオルゲンでなくてもいいだろう。

 

幾つかのインゴットで合金を作り、錬金釜で調整する。

 

内部に返しを作る仕組みなのだが、その返しを柔軟にする。この柔らかい返しを維持したまま筒にするのは難しい。

 

しかも硝子細工用の筒というのは、大きさが様々。今求められているのは、指が入るか入らないかの筒だ。

 

それにそういった仕掛けを作るのは大変だし。

 

作った場合に、洗うのもまた大変である。

 

だから、途中で幾つかのスライドして開ける窓の部分を作り。其処に返しを仕込む。窓はロックもできるようにする。

 

やがてできる。

 

ライザ式の硝子細工用筒だ。

 

渡してみると、サヴェリオさんは素晴らしいと感激していた。

 

この筒なら、溶けた硝子の熱にも耐えられる。そしてメンテナンスも容易。

 

ギミックがついた道具はとても脆くなりやすいのだが、これについてはそれも心配はない。

 

「ありがとう。 魔石ギルドには、ライザ殿の事をサルドニカの救世主として長く語り継ぐつもりだ」

 

「硝子ギルドも同じだ。 これからも頼むぜ」

 

二人と握手を交わす。

 

まだギルドを構成する職人までこうやって仲良く行動するのは不可能だろうが。それでも、少しずつ前に進めてはいる。

 

後はおかしいのが入り込まないように注意しなければいけないが。

 

それは、アルベルタさんやサヴェリオさんの仕事だ。

 

薬などの調整をしておく。

 

誰にも言わないが、これには体質に合わせた、ボオスとキロさんのための薬もある。もう二人がああいう関係になった以上。いつ必要になってもおかしくないからだ。

 

淡々と薬を作っていると、二日酔い気味のカラさんが、ウィンドルに戻っていく。

 

セリさんが、その背中を見送る。

 

「面白いものね。 人間もオーレン族も祭りで酒を飲むのは同じだわ」

 

「オーレン族もやはりそうだったんですね」

 

「酒は造るのに手間が掛かるの。 まあ口食み酒なんて原始的なものもあるけれど、そんなものは飲みたくないでしょう? 祭りの時……ウィンドルの場合は、フィルフサに対して大きな戦果を上げて、余裕があるときくらいだったわね。 私が覚えているだけでも、数回程度しかなかったけれど」

 

まあ、そうだろうな。

 

カラさんだって、そう何度も祭りに出て、酒を飲めた訳でも無さそうだ。

 

なら、多少は仕方がないか。

 

集中して調合をする。

 

そして、その日は終わった。

 

 

 

翌日。

 

サルドニカのアトリエは一度鍵を掛けて、ウィンドルのアトリエに拠点を戻す。タオ達に朝の内に成果を聞いておく。

 

クリフォードさんが、幾つか取りこぼしていた話があったと言って、細かい説明をしてくれる。

 

「致命的なものはなかったが、技術的には使えるかもしれねえ。 ライザ、渡しておくぜ」

 

「ありがとうございます」

 

見せてもらうが、レシピだ。

 

なるほどね。

 

幾つかの病と、それに対する特効薬。

 

あまりにもさらっと記載されていたので、忙しくチェックする中で取りこぼしたり。

 

頁が巧妙にのり付けされていて、気付けなかったり。

 

そういう以上で、皆が取りこぼしたものであったらしい。

 

他にも幾つかのレシピがある。

 

今究極型のツヴァイレゾナンスの調合が大詰めなのだが、空間操作を爆弾に込める技術に応用できるかも知れない。

 

空間に対する観測と操作の方程式だ。

 

なるほど、こういう計算で空間に対しての干渉を理論的に説明できるのか。

 

アンペルさんが空間魔術を使うが。それもあまり強力に使いこなせてはいない。空間への干渉力が落ちるからだ。

 

アンペルさんにも話は振っておく。

 

「アンペルさん、これはどうですか。 魔術の強化に使えませんか?」

 

「私の魔力だとちょっと無理だな。 ライザは空間操作魔術の使い手ではないし……」

 

「ならば爆弾で利用します。 どうしても究極爆弾の破壊力全てを生かすのに、課題がありましたから」

 

これをぶち込めば確定で殺せる。

 

しかも被害は指定範囲の内部だけ。

 

そういう爆弾を作ろうと四苦八苦していたのだが、どうしても進捗が遅かったのである。

 

この方程式を用いれば、恐らくだがあたしも空間魔術を用いる事ができるだろう。爆弾を介してだが。

 

それによって、爆弾の破壊力を跳ね上げる事ができる。

 

神代の錬金術師は最早恐るるに足りないが、奴らが旅の人から搾取したテクノロジーは侮りがたい。

 

こういう技術は、どうしても必要だ。

 

タオが挙手。

 

資料の解析の結果、どうもフィルフサの研究施設は二つあったらしい。

 

恐らく一つは、あたし達がウィンドルに最初に来た時に潰した洞窟の遺跡だ。彼処はまあ、色々と動かぬ証拠があったし。

 

もう一つが恐らく、もう一つの。

 

隠されている遺跡だろう。

 

元は巨獣の墓場だったようだし。色々と、資料も集めやすかったのかも知れない。

 

「朗報があるよ。 神代鎧と思われる兵器を、オーレン族との戦いで神代の錬金術師は「しぶしぶ」運び込んだって記録がある。 ただし激戦地だけに配置するって記載もしてる」

 

「そうなると、戦闘が想定されていない場所には、配置していないって事か」

 

「まず間違いなくそうだろうね。 そもそも配置する時間的な余裕すらなかったんだろうし」

 

神代の錬金術師には滑稽な身分制度があり、下の身分であった錬金術師達は本拠である「万象の大典」にも足を運ぶ事もできず、作りあげた道具類も軽視されていた。

 

あたしが戦った感じでは、神代鎧は傑作兵器という代物で、制御が難しい上にあらゆる意味で道を踏み外しているフィルフサなどの生物兵器よりも余程優れていると思うのだけれども。

 

テクノロジーに最悪の意味での政治を持ち込んだ神代の錬金術師は。

 

そうやって、自分の首を絞めたというわけだ。

 

しかもあの悪魔もどき。ルシファーがいなくなった以上、フィルフサが異常行動をするとは思えない。

 

まずは場所からだ。

 

「今、風羽の戦士を何人か向かわせておる。 この辺りのフィルフサが密度が薄くなったこともあり、偵察は容易なはずよ」

 

「ありがとうございます。 場所を特定し次第仕掛けます。 ウィンドルの戦士達は……」

 

「この数日の休みで持ち直しておる。 かなり温存されている群れといえど、今まで散々小競り合いはして消耗はしている筈よ。 其処に大雨も加えれば、打ち破る事は不可能ではあるまい」

 

「見えてきましたね、全ての解決が」

 

此処で。

 

神代本拠、万象の大典への道が開ければ、それで一気になだれ込む事ができる。

 

その時には奏波氏族の精鋭にも増援を頼みたい。

 

とにかく、最後の情報収集のためにも遺跡は抑え。

 

内容を確認し次第、ぶっ潰してやる。

 

あたしが立ち上がると、皆の空気が変わる。

 

ウィンドルの戦いは、此処が最後の佳境だ。

 

「ウィンドルでばらまかれ、繁殖したフィルフサは数も知れない。 だけれども、フィルフサには雨ともう一つ、明確な弱点がある。 それが狂気の源泉。 今まで王種には全てそれがつけられていたことが分かってる。 狂気の源泉の劣化コピーは前に解析したけれど、本家のものはまだ無事な状態では見つけていない。 これを見つければ、フィルフサの全駆除……いや違うね。 歪められた生物を、まとめて元に戻すことが可能になる可能性が高い」

 

「おおっ!」

 

「東の地で、千三百年続いた戦いを終わらせたライザさんの言葉です。 重みが違いますね……」

 

ディアンが昂奮した声で喜びの喚声を挙げ。

 

パティがちょっと引き気味に言う。

 

フィルフサとの交戦経験者であれば、あたしの今の発言がどれだけの大きな価値を持っているかは、よく分かるのだろう。

 

「フィルフサはオーレン族には許せない敵だって事も分かる。 でも大本では、フィルフサもただの被害者で、本来はごくごくちいさな寄生生物に過ぎない。 そんなフィルフサを元に戻す。 それはきっと、全てを焼き滅ぼすより困難で、だけれども価値がある事だと思う」

 

セリさんも頷く。

 

狂気の源泉は、どう考えても何らかの動力で動いており、それは恐らく竜脈に起因している。

 

つまり竜脈をコントロールする技術のうち、フィルフサ王種に命令を与えているものを解析できれば。

 

大雨を降らし。

 

手練れが必死に将軍を倒し。

 

そして辿りついた王種を、激戦の末に倒すなんて面倒な過程を経ずとも、それで大きな犠牲を出すこともなくなる。

 

ただしこれを解析されたら、フィルフサの兵器としての価値がゼロになる。

 

神代の錬金術師共も絶対にこれだけは丁寧に隠している。オーレン族が千三百年も発見できなかった遺跡。

 

それこそ、隠されている場所に間違いないだろう。

 

ミーティングを終えて、すぐにあたしも出る。

 

ここからが正念場だ。

 

 

 

風羽氏族の戦士が何名か戻って来て、カラさんが頷く。

 

タオ達は、ギリギリまで資料の調査を続けて欲しい。そう告げてあたし達は出て来ているのだが。

 

クラウディアの音魔術とカラさんの探知魔術でも。

 

問題の墓場らしき場所が分からないのである。

 

いや、近くまで来ているのはほぼ確実なのだが、それ以上が進めていない。これはちょっと。

 

いや、覚えがある。

 

「セリさん、これひょっとして……」

 

「ええ、間違いないわ」

 

王都近郊にあった迷いの森。

 

更には、フィルフサを封じ込めていたギミック。

 

あれの強化版か。

 

いや、違う。

 

迷いの森のものが劣化版だったのだ。

 

風羽氏族の戦士達は、世界最高のスカウトの一族と言っていいが、彼等が揃ってある程度までしか進めないと報告してくるわけである。

 

セリさんが植物魔術を展開。

 

山間の土地に、わっと植物の蔓を拡げていくが、それが途中でぐにゃりと曲がって。うねうねと動き出す。

 

明らかに見えている光景が現実と違っている。

 

それだけじゃない。

 

植物操作の魔術も狂わされているようである。かなり強力な、幻惑の壁が張られているとみて良かった。

 

なるほど、タオが解析した資料も納得だ。

 

これでは入りようがない。

 

ただし迷いの森と違って、どこかしら入れる場所は作っていたはずだ。それも錬金術師にしか分からない方法で。

 

風羽の戦士達には引き上げて貰う。

 

深入りすると、それこそ生きて戻れなくなる。

 

幻惑の仕組みも、迷いの森にあった複数の感覚混乱システムとはまた違っている可能性が高い。

 

だとすれば、下手に踏み込むのは自殺行為だ。

 

一度戻る。

 

クラウディアも、首を横に振る。

 

「音が滅茶苦茶に乱されているわ。 ひょっとすると、空間が乱されているのかも」

 

「空から行くのはリスクが高すぎるか……」

 

「ライザ姉、俺がまっすぐ突っ込んで見ようか?」

 

「止めとけ。 死ぬぞ」

 

ディアンの提案を、ボオスが即座に却下。

 

ボオスも王都近郊の件で、支援要員をしていたのだ。迷いの森の危険さは、聞いて理解しているのである。

 

一度戻り、対策を練る。

 

タオ達にも話をしておく。

 

結局此処も足を踏み入れるまでが大事か。分かりやすく幻惑解除装置みたいなのがあれば良いのだが。

 

そう上手くはいかない。

 

しかも音魔術が狂っていたと言う事は、多分魔術そのものが狂わされると判断して良いだろう。

 

文字通りの絶対防御と言う訳だ。

 

しかし引き下がるのも論外である。この先にある遺跡は、最後の情報があるとみて良いのだから。

 

「幾つか試験をしてみよう。 ライザ、私も行く。 空間魔術を試してみる」

 

「空間魔術か……あたしもちょっと試してみます」

 

早速だが。

 

クリフォードさんが見つけたものを、試してみる。

 

勿論即時で開発できるものではない。アンペルさんには、先にいって貰う。護衛は奏波氏族の戦士達と皆がいる。

 

念の為に雷神の石も渡しているので、大物のフィルフサに襲われても大丈夫だろう。

 

この辺りのフィルフサはあらかた片付けてはあるが、それでも念には念を入れて、である。

 

アンペルさんが出るのを見送ると、あたしは空間干渉に関する爆弾を作り始める。

 

空間を切断するというのは、今までたくさん色々な魔物がやってきているのを見ているので、別に難しいとは感じない。

 

ただ、空間を消滅させるのは禁忌だろう。

 

方程式を見る限り、この世界の空間というのは、存在して安定しているものだが。空間を消滅させると、恐らく消滅状態が周囲にとんでもない速度で波及するはずだ。あたし達の世界なんて、それこそ瞬く間に消滅するほどの。

 

空間を斬るのは、あくまで一時的に接続を解除しているだけのこと。

 

ケーキを斬っているのと同じである。

 

ケーキにしても、食べた所で全て無くなる訳でもない。色々形を変えて、最終的には土に帰る。

 

この方程式を見る限り、空間操作とはそういうものなのだと理解出来る。

 

爆弾を組む。

 

まずは空間の乱れを一定にするもの。

 

考えて見れば、前の迷いの森は、あらゆる感覚器官を狂わせるものであって。誰もを拒絶するものだった。侵攻を続けていた古代クリントにテクノロジーを渡さないための拒絶の壁。

 

今回は恐らく違う。

 

門を開ける事ができる神代の錬金術師……いや違う。

 

門を開ける事が自在にできるようになった神代の錬金術師は、新しく覚えた言葉を子供が大喜びで使って回るように。

 

どんな迷惑が掛かるかもどうでもいいと考えていた連中らしく。

 

そのテクノロジーを用いて、遊んだのではあるまいか。

 

爆弾を調整しているうちに、アンペルさんが戻ってくる。

 

空間切断で、一瞬だけ奧の光景が見えたという。クラウディアの音魔術も一瞬だけ通ったそうだ。

 

「やはり間違いないな。 空間が好き放題にねじられている」

 

「門の技術の延長線上であろうな。 人の世界で本当に好き放題をしてくれたものよ……」

 

「空間のねじれに穴は無いのかな」

 

「ないだろうな」

 

カラさんが、かなり広域に魔術での探査をしているが、ある一点からおかしくなる。谷にあるその土地は、空は勿論、地面の下までおかしくなっているという。

 

何度かアンペルさんの空間切断を使って見た感じでは、空間の捻れが展開されている範囲は幅五十歩ほどもあるそうで。

 

それが球体状に恐らくは遺跡と思われる地点を守っているそうである。

 

アンペルさんが空間切断を使える範囲も連射速度も限られている。

 

水に指でも突っ込むように、切断しても即座に戻るだけだ。

 

突破するには短距離での門でも開くか。

 

或いは、空間を安定させるしかないだろう。

 

「ライザ、作っている爆弾はどんな様子だ」

 

「今作っているのは、空間を固定化する爆弾です」

 

「空間を固定化」

 

「固定化することで、内部でのなにものも漏れないようにします。 アンペルさんの使う大魔術と原理では似ていますね」

 

アンペルさんは空間を箱状に削り取ることで、ベヒィモスが張っていたおぞましい厚さの魔術シールドをブチ抜く貢献をしてくれた。

 

あれと原理的には似ている。

 

今回は箱状に抉り取るのではなく、筒城に抉り取って安定させる。つまり、色々試す過程でできる試作品。

 

つまりはプロトタイプだ。

 

最終的には、空間操作魔術を使い。殲滅対象の相手を、短時間閉じ込める爆弾に仕上げる。そして閉じ込めた空間内で、四つの爆弾。火、氷、風、雷撃。この最大のものを炸裂させる仕様にするつもりだ。

 

これによって、爆弾を炸裂させて範囲内に閉じ込めれば、相手が何であろうと確定で殺せる爆弾に仕上がる。

 

その過程も兼ねて、今は調整をしている。

 

「最早私はライザの師匠を名乗るのが恥ずかしくなってきたよ」

 

「いいんですよ得意分野が違うだけだし。 それに才能依存の錬金術は、逆にいうと見いだされるまでは何もできません。 多分アンペルさんに会わなかったら、今のあたしは腕が多少良いだけの戦士に過ぎませんでしたし、もう誰かと結婚させられて子供も産んでたんじゃないのかな。 そうすると世界に対するダイナミックな関与なんてできなかったでしょうね」

 

それ以前にクーケン島近辺からあふれ出したフィルフサで、人類が滅んでいた可能性も高いが。

 

それについては、わざわざ今言う事でもない。

 

いずれにしても、この爆弾は後一日くらいはかかる。試作品はもっと早く作れるが、試作品ではダメなのだこれは。

 

皆には、頼む事がある。

 

「遺跡周辺のフィルフサを全て駆除して、踏み込む時のために備えてくれますか」

 

「分かった。 わしらでどうにかしておこう」

 

「しかしそうなると、王種をはじめとした群れが、谷の狭い範囲に閉じ込められているんですかね……」

 

パティが疑問を口にするが。

 

だが、あっと呟いて口をつぐむ。

 

そうだ。

 

先に潰した遺跡。

 

あの最深部にて、花の面倒を見るだけの装置にされていた王種。あれを思い出したのだろう。

 

本当にフィルフサは、神代の錬金術師に取っての粘土遊びの道具に過ぎなかった。フィルフサだけでは無く、人間も当然含む全ての生物がそうだったのだ。

 

すぐに行きましょうとパティがいって、皆それに続く。

 

フェデリーカは、大きくため息をついていた。

 

「ライザさん。 あの遺跡の奧にいた、花の面倒だけを見る王種。 きっとあれは、作った錬金術師は職人だと自負していたんだと思います」

 

「……どうしてそう思うの?」

 

「歪んだ職人意識を感じたからです。 サルドニカも、一歩間違ったらああなっていたんだと思います」

 

「そうだね……」

 

悲しい話だ。

 

神代の錬金術師は、今では少なくともこの世界にはいないだろう。

 

だが、その精神性は、人間の中で根付いているのだ。

 

奴らはそういう意味では、今でもこの世界でゲラゲラ笑いながら、全てを見下している訳である。

 

人間全ての中に、つまり心に住んでいるのだから。

 

フェデリーカも行く。神楽舞による支援は何よりも大事だ。

 

では、あたしはあたしだけに出来る事。

 

今までに無い程頑強な空間の壁をブチ抜くために。

 

爆弾を仕上げる。

 

神代の連中は、どうやって通っていたのかはそれこそどうでもいい。今はそれは大事ではない。出入りのために、爆弾は二つ作らなければならないし。手間が惜しい。

 

ただ、一つ。連中の作った「正解」なんてどうでもいい。

 

あたしは、奴らを凌いだことを、力で見せるだけだ。








歪んだ意識によるテラフォーミングは、その土地に対する冒涜も同じ。

テラフォーミングという言葉が有名になっていますが、だからこそそれは肝に銘じなければならないと思います。
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