暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3   作:dwwyakata@2024

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フィルフサを簡単に始末する手段の確立。

これが他の群れにも効くか、確認しなければなりません。

現在進行形でオーリムは脅かされているからです。


1、長い長いトンネルを抜けて

アトリエに戻ると、まずは軽く作戦会議をする。

 

これからやる事についてだ。

 

カラさんは、今回は敢えて認識を一致させるために、結論が出るまでは一緒にいてもらう。

 

それに、他の群れに効くかも確認はしたいのだ。

 

ただボオスが焦ったから、もう風羽の戦士が飛び出しているかもしれない。崩壊せよというあの言葉については、皆に練習して貰ったから、大丈夫だとは思うが。

 

ちなみにフィルフサは野生化はしない。

 

というのも、狂気の源泉で無理矢理生物兵器化している寄生生物だからだ。野生化も何も、そもそも本来は動物ですらないのである。

 

故に狂気の源泉を黙らせ、王種を自壊させれば良い。

 

ただ、フィルフサは多数の群れがオーリム各地に健在だ。ウィンドルだけでは無く、グリムドルの近辺にもまだいる。キロさんの話によると、リラさんの故郷であるリヴドル他聖地も軒並みダメだそうだし。

 

つまり、いっそフィルフサを全部まとめて駆逐する方法もどうにか考えないといけないだろう。

 

「順番にやる事を決めます。 まず最初に、ウィンドル周囲を偵察。 残っているフィルフサの群れを片付けます」

 

「確か後群れは一つ。 少し遠めの群れがあった筈じゃ」

 

「ではそれをつかって検証をしましょう。 それが終わり次第、風羽氏族の戦士に、各地で抵抗している集落などにシンボルと対処法を届けて貰う事になるかと思います」

 

カラさんが頷く。

 

更に、まだ決める事がある。

 

「フィルフサの母胎はまだ残っているから、対処が必要だね。 セリさん、今後はどうしようか」

 

「緑羽の仲間が何人かいて、既に苗は引き渡してあるわ」

 

「それは……」

 

「最後まで一緒に行くわ。 これだけの事をしでかした連中には、相応の報いをくれてやらないといけないから」

 

セリさんが、ふっと笑う。

 

その笑みがいつになく好戦的だと思った。

 

セリさんは結構殺意を隠し秘める方だ。最近はそれが分かってきている。セリさんも激怒している。

 

まあ、神代の身勝手な思想と恩人すら養分にしてやりたい放題を尽くした悪鬼の所業を見ていれば。

 

怒るのが、本来は自然なのだろう。

 

人間は、いつしかそれすら忘れてしまった。

 

特に錬金術師は。

 

あたしは同じにはならない。

 

「ならば、周囲に浄化植物を増やすのはその人達に任せましょう。 フィルフサの群れに対処した後は何手かに別れます。 あたしはシンボルを充分な数作ります。 オーレン族の生存者全員分は作っておきます」

 

「それは助かるが……」

 

「次は恐らく奴らの本拠に乗り込むことになります。 最悪でも現状のフィルフサは元に戻せるだけの準備をしないと」

 

必ず勝つ気迫は整えてある。

 

だけれども、必ず勝つ結果があるとは限らない。

 

だから、こうしてやる事はやっておくのだ。

 

鍵については、既にパワーは充分である。座標さえ分かれば、奴らの根拠地。自称万象の大典に道を開くことも可能だろう。

 

だから、その座標について。

 

最後の調査がいる。

 

「タオ、座標を集められるだけ集めて」

 

「了解。 レント、ディアン、護衛を頼むね」

 

「任せろ」

 

「おう!」

 

タオはまず、座標集めを思う存分やって貰う。これはウィンドルだけではなく、門でいける範囲全てだ。

 

統計として充分な結果を出せるだけの数を集めたら、それで座標として用いている数値に、それなりの説得力を出せるのである。

 

次だ。

 

「アンペルさん、クリフォードさんは資料の解析をお願い。 タオも、座標を思う存分集めたら、そっちに加わって」

 

「よし。 とにかく残りの資料も徹底的に解析しておく」

 

「任せな。 これだけの資料があれば、恐らく奴らの本拠も割り出せるぜ。 奴らの遺跡には微塵もロマンを感じないが、これだけの情報の中から正解を割り出すのは。 くうう! 最高のロマンだぜ!」

 

クリフォードさんのいつもの病気だ。

 

まあ別に悪い病気ではないから、それでいい。

 

皆にもやって貰う事はいくらでもある。

 

「クラウディア、バレンツでの引き継ぎなどをよろしく。 門を使って良いから、全て済ませておいて」

 

「ええ、分かったわ」

 

「パティも。 最悪の場合に備えて、手を打っておいて。 神代の錬金術師に武芸で負けるとは思わない。 ただ、旅の人のテクノロジーは話が別。 何が出てくるか分からないから、最悪には常に備えよう」

 

「はい。 お父様に、今後の引き継ぎなどの情報を手紙にして送っておきます」

 

王都のアトリエとも門をつなげたかったが、それはこの案件が終わってからだな。

 

王都までは相応の距離があるし、あたしだってそれはどうにも出来ない。タオなら座標を分析して、王都辺りに門を開けられるかも知れないが。

 

これは過剰な力なのだ。

 

あまり安易に開けて使うべきではない。

 

ちなみに封じることも可能だ。

 

この一連の戦いが終わったら、アトリエは基本的に厳重に閉じて、今此処にいる関係者以外は立ち入り禁止とする。

 

門を悪人が悪用したら、どれだけの災厄が起きるか。

 

それは神代の錬金術師という実例があるのだ。古代クリント王国も。

 

だから、二度と再現させてはならないのである。

 

「あたしはシンボルを作り終えたら、爆弾と装備の最終調整に入る。 皆の武器と装飾品を、更に今できる範囲で最強にまで強化するよ」

 

「それは心強いですね」

 

パティが頷く。

 

パティの白い胸当ても、大太刀も。国宝クラスのものだが。それを更に実用的に強化しておく。

 

リバースエンジニアリングされて悪用されることが懸念点だが。

 

錬金術は才能の学問だ。

 

簡単にリバースエンジニアリングはされないだろう。

 

アンペルさんが、あたしは神代にもいないレベルの才能と太鼓判を押してくれた。つまり今まで何十倍も人間がいた古代クリント王国の時代でも、その前の神代全盛期でも。錬金術に触れる、あたし以上の才能の持ち主は出なかったことを意味する。

 

錬金術を使う人間を限定していけば、今後は簡単にリバースエンジニアリングはできないだろう。

 

問題はテクノロジーが発展した未来だが。

 

まだまだ人間は魔物に押され放題。

 

世界の半分は悲しい荒野だ。

 

それを考えると、復興作業には長い長い時間が必要になる。もしも人間がまた世界を滅ぼす力を手にするようなら。

 

その時は、あたしが仕置きをする。

 

それで良いだろう。

 

何度でも人間が愚行を繰り返す事はもう理解出来ている。

 

だから、人間という種族にはあたしは微塵も期待なんぞしていないのだ。

 

準備を整えたら、クーケン島の群島に向かい。

 

そして、門を開いて。

 

奴らの根拠地に乗り込む。

 

その方針を伝えると、解散と指示。

 

さっと皆が動き出す。あたしも頬を叩くと、まずは群れの駆除に向かうべく、外に出ていた。

 

 

 

パティは見る。最後に残った少し離れた群れも、同じように簡単に滅ぼす事ができた。

 

シンボルを見せるだけで動かなくなり、命令に従って崩れて行く王種。他のフィルフサも、冗談のようにぴたりと止まる。

 

今までフィルフサとの戦いは、毎回決死だった。

 

パティのいる世界に定着されたら、世界の終わりだった。

 

物量も凄まじく、とても正攻法でどうにかできる相手ではなかった。

 

大雨を起こして。

 

汚染された母胎を押し流して。

 

それでやっと勝負になっていた絶望の権化、フィルフサ。それがこうも簡単に。

 

原理はライザさんに聞いて知っている。

 

それでも、あまりにも凄まじすぎて、これが隔世の豪傑の力かと。パティは戦慄してしまうのだった。

 

国を私物化してやりたい放題したら首を貰う。

 

王都でいわれた言葉だ。

 

ライザさんはパティが未来に腐ったら、躊躇なくそれをやるだろう。分かってはいる。そんな場合は、パティの方が悪いことは。

 

それでも戦慄してしまう。

 

今ではライザさんは、もう確定で人間の摂理を飛び越えてしまっている。これは神代の錬金術師が後の時代の錬金術師に崇拝されたどころじゃない。

 

それはそうし向けるように神格化をした結果なのだろうが。

 

ライザさんの場合は、本当に人間を超越している。

 

あまりにも凄まじいので、時々怖くなるが。だが、ライザさんは正しい存在の側にはいてくれる。

 

邪悪は許さないが。

 

その過程で、何もかも巻き込んで焼き払うようなこともしない。

 

アトリエに戻る。

 

溶け崩れるフィルフサの群れを二度も見た事で、ちょっと動揺が隠せない。今まで散々前提条件を整えて、それでも大苦戦してやっと撃破した相手が、こうも簡単に。やはり心理的な動揺が大きい。

 

フェデリーカも泡を吹きそうな顔で、ベットで死んでいる。

 

パティも呻くと、何度か天井を見る。

 

フィーが顔を覗き込んできた。

 

心配してくれているのだろう。フィーに言葉が通じていることも、パティは分かっているから。

 

笑顔で話しかける事もできた。

 

「ありがとう。 心配してくれているんですね」

 

「フィー!」

 

「大丈夫です。 少し時間をおいたら、自分の仕事をします。 私もライザさんほどではないですが、大きなものを背負っていますから」

 

とっておいた甘い焼き菓子を食べる。

 

パティも人並みにこういうものは好きだ。ただ王都式の、味が濃いものを好んでしまう傾向があるが、それは仕方がない。

 

母は殆ど残してくれなかった。

 

メイド長が代わりに、色々なものを残してくれた。

 

料理もそう。

 

パティ自身はむしろ最近になって料理を始めた方なのだが。どうしても自分が慣れた味に沿って調理してしまう。

 

無頓着に高価な砂糖を使ってしまうことも多く、フェデリーカにえっという顔をされることもある。

 

そんな様子を見て、クラウディアさんに時々色々いわれる。

 

厳しい口調でいわれる訳では無いが。

 

ただ、大半の人は王都出身ではないし。

 

何より砂糖をたんまり入れたようなものばかり食べていると、王都の貴族みたいに酷い肥満体になったりする。

 

それは避けなければならないだろう。

 

しばし黙々と食べて、気持ちを切り替える。

 

そして、起きだすと。

 

自分がやるべき事をすることにした。

 

今の時点では、パティは遊撃だ。外に出ると、オーレン族の戦士達がああでもないこうでもないと話している。

 

会話が通じるのは助かる。

 

パティを見ると、一人が声を掛けて来る。

 

カラさんの孫であるらしい、事実上このウィンドルを回している二人のうちの一人、男性の方だ。

 

「強き剣士パトリツィアよ。 手が開いているなら手助けを願えるか」

 

「はい。 そのつもりで出ました」

 

「助かる。 実は風羽の戦士が、今まで入れなかった地点の探査中に、神代の遺物らしきものを見つけた。 我等ではどう触っていいものか、そもそも動かしていいものか、安全かすらも分からぬ。 それで手助け願いたい」

 

「分かりました。 少しお待ちください」

 

パティも即座にとんぼ返りして、ライザさんとタオさんに声を掛ける。

 

タオさんは今本に集中していて、代わりにクリフォードさんが立ち上がった。クリフォードさんは王都でずっとアーベルハイム専属の戦士として活躍してくれているから、お嬢とかいわれてちょっと気恥ずかしい。

 

「俺が手伝うぜ」

 

「頼みます。 此方では最終調整をしているので」

 

「ああ。 神代の連中がどんな兵器を繰り出すかしれたもんじゃねえからな。 それとアンペルの旦那がそろそろ発表してくれるぜ。 また一つ、悪い意味で大きな事が分かったからな」

 

クリフォードさんはロマン狂だが。

 

最近は神代への怒りをどんどん隠さなくなってきている。

 

パティもその怒りはよく分かるし、それについては別に何もいわない。ただ、パティの場合。

 

そういう風にならないように、具体的に人々を導かなければならない当事者だ。

 

だから、今から一番荷が重いかも知れない。

 

外に出て、オーレン族の戦士達と現地に出向く。

 

本当にフィルフサが影も形もない。

 

こんなにフィルフサの気配がないオーリムは初めて見るかも知れない。

 

今まで門付近まで迫っていたフィルフサを倒しても、それでも遠くには別の群れが居着いていたし。

 

何よりグリムドルでもそうだったから。

 

ただし、僅かな植物くらいしかないし。動物もろくにいない。

 

たまに鳥や小動物は見かける事はあるが。

 

環境が激変すると、大きな動物から滅ぶとタオさんが言っていた通り。大きな動物は、みなやられてしまったのだろう。

 

これが「弱肉強食」の果てか。

 

一部の愚かな人は、自然の摂理で弱者は淘汰されるとかいって、あらゆる蛮行を正当化する。

 

それはパティも見てきている。

 

だが、それを実際にやった結果がこれだ。正確にはフィルフサ塗れだったころのオーリムだろう。

 

今後、そんな寝言を口にする人間がいたら、全員王都から追放するつもりだ。特に立場のある人間だったらなおさらである。

 

それくらい、現実を見て、パティは怒りを覚えていた。

 

歩く。

 

オーレン族の戦士達はライザさんほどではないが健脚で、厳しい地形でも何の苦労もなく進む。

 

この地形も随分変わってしまったと、戦士の一人が嘆いているが。

 

他の戦士が、しかしフィルフサは失せたのだと、励ましている。

 

勿論オーリム全域で考えると、まだまだフィルフサは山ほど蠢いているが。あれだけ簡単に倒せるようになったのだ。

 

きっと、明るい未来がある筈だ。

 

現場に到達。

 

洞窟の中に、確かに廃棄場らしきものがある。うずたかく積もれたのは、遺物に違いないだろう。

 

クリフォードさんが、遺物を見て、即座に神代のものだと断定していた。

 

「全て破壊し尽くしましょうか」

 

「ダメだな。 俺もこれらを解析しないとなんだか分からん。 とんでもない爆弾とかの可能性もある。 荷車に積んで持ち出すぞ。 ライザに解析して貰って、それから廃棄する」

 

「了解した。 いずれにしても、これ以上危険を背負うわけには行かぬ」

 

クリフォードさんの指示に従って、廃棄場から大量の遺物を運び出す。

 

荷車の扱いも慣れたものだ。クリフォードさんが丁寧に指示しながら、まだ動くかも知れない遺物を気を付けて運び出す。

 

それにしても、これはなんだろう。

 

どれも全く用途が分からない。

 

「これが何なのか、見当くらいはつきませんか?」

 

「恐らくだが、兵器ではないな。 機械の類だろう。 それも遺跡を建てるために使ったような、だ」

 

「それにしては小さいですね」

 

「土木工事をするにしても、神代の錬金術師は錬金術である程度こなしていた。 これらは消耗品扱いされている所からしても、奴らからは下等な道具扱いのものだったんだろうぜ」

 

神代鎧と同じか。

 

とにかくとんでもなく重かったりするので、気を付けて運んで行く。

 

荷車をオーレン族の戦士がピストン輸送してくれるので、助かる。後でライザさんに全部確認して貰う事になる。

 

おっと、クリフォードさんが声を上げた。

 

書類を見つけたようだ。

 

さっと目を通すクリフォードさん。分厚いメモ帳を取りだすと、素早くめくっている。

 

「マニュアルだ。 わざとわかりにくく作っていやがる」

 

「また神代特有のやり方ですか」

 

「それもあるが、こういうのは作る集団によって独自のルールがあって、それに沿わないと理解出来ないような奴がいるんだ。 実際問題、書かれている事を一行も読めないような奴はいるだろ」

 

「そうですね。 そういう場合は絵で対応したりしていますが」

 

実際問題、共通の言葉が世界には溢れているが。それでも読み書きができない人は結構いる。

 

読めるが書けない人はまだ上澄みの方で。

 

読み書きが当たり前のようにできるだけで、多分国力は何倍にも上がるだろうし、悪党がのさばることだってだいぶ減るはずだ。全部いなくなることはないだろうが。

 

「このマニュアルは、神代の連中がしたり顔で作って、他では全く意味を為さないルールで書いてやがる。 だが意味は理解した。 馬鹿馬鹿しい迂遠な表現だらけだが、それでも使い方も分かる。 一部の機械は動くんじゃねえかな。 多分素材はハイチタニウムだろうしな」

 

「ライザさんの得意分野ですね」

 

「そうだ。 だからこそ、危険なんだが」

 

頷く。

 

ハイチタニウム製の神代鎧に、どれだけ危険な目にあわされたか。

 

この遺物の山から、奴らがまた飛び出してくるかも知れない。そう思うと、ひやひやさせられる。

 

ともかく、遺物を順番に運び出す。

 

乱暴に捨てられているものには破損しているものもあったが。

 

流石にハイチタニウム。

 

錆びたり傷んだりは、殆どしていなかった。

 

ウィンドルの集落まであらかた運び終えるまで、一日近く掛かる。何度か休憩を入れて運び続けて。

 

集落の一角に、山のように遺物が並べられていた。

 

神代のものを運び込むなんて。

 

そう露骨に憤慨するオーレン族もいるが。

 

パティが説得する。

 

「これらはどんな危険があるか分からないものです。 それを目が届かない場所においておく方が危ないんです」

 

「それはそうかも知れないが……」

 

「気持ちで行動するようになっては、自分にとって見ていて気持ちがいいものだけを残し、気にくわないものは全て滅ぼそうとした集団と同じです」

 

「……っ。 そうだな。 愚言であった」

 

パティの言葉に、自分の非を素直に認めてくれる。助かる。

 

オーレン族の戦士達はとても素直だ。

 

嘘を必要としない文化に生きてきているからだろう。勿論必要に応じて嘘はつくだろうが、それでもこういう風だったら話してとても楽だ。

 

後は、ライザさんに引き継ぐだけだが。

 

この様子だと、資料の解析も含めて、当面は動けないだろう。神代の遺跡が多数存在して。

 

フィルフサがまだまだ各地で残党として動いているかも知れないのだ。

 

勿論風羽の戦士達が、スカウトとして残党を探してくれている。パティの仕事は、まだ楽な方である。

 

タオさんがアトリエから出てくる。

 

ちょっと眠そうだが。それでも眼鏡を外して目を擦っていた。

 

「タオさん、研究は一段落ですか」

 

「うん、それもあるけれど、クリフォードさんに交代してきた。 ちょっとまた座標を集めに行きたいんだ。 護衛を頼めるかな」

 

「喜んで。 他に何人か声を掛けますか」

 

「既にディアンに声を掛けてあるよ」

 

ディアンが来る。

 

ディアンはすっかりオーレン族の戦士達と仲良しだ。ディアンが披露する空中殺法をオーレン族も大喜びしている。

 

そしてディアンもオーレン族の武技を貪欲に取り込んでもいる。

 

ディアンが数年後には、世界最強の戦士の一人になるのは、間違いないだろう。

 

ライザさんは別格だとしても。

 

「フィルフサがいなくなった事で、安全圏がまた拡がった。 最後のだめ押しに、座標を集めておきたいんだ。 頼むよ」

 

「任せてくれタオさん。 危なくなったら警告する!」

 

「足下が見えなくなりますものね……」

 

本当に集中するとタオさんは危ない。

 

だから、護衛をつけないといけない。

 

オーレン族の戦士達は、各地の調査偵察と、それにウィンドルの今まで手を出せていなかった部分の修復作業を始めている。

 

パティも、できる事を全力でやらなければならなかった。

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