暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3   作:dwwyakata@2024

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フィルフサを潰した事で、後顧の憂いがなくなりました。

いよいよ殴り込み開始です。

敵本拠に殴り込むために、最後の調整と準備をしていくことになります。


2、最後の準備に向けて

空間操作爆弾を、手投げ弾にするまでにかなり試行錯誤し。

 

その中に四つの最大火力爆弾。アストローズ、ラヴィネージュ、グランツァイト、ヒンメルフェザーを取り込む。

 

これらが最大の火力を発動できるように、全てが同時に。なおかつ、全て空間の壁の中の最大距離を保った地点で爆発するように仕込む。

 

殺意を全力でねじ込む。

 

これを叩き込めば、どんな相手でも殺す事ができる。作っているのは、そういう爆弾なのだ。

 

破壊力を上げる、という観点だけなら、もっと上げられる。

 

既に世界の最小要素についての解析は終えている。

 

確かにそれを全て熱量に変えれば、とんでもない破壊力を作り出す事が可能だろう。だが、下手をすると世界そのものを砕いてしまう。

 

やる意味がないのだ、それは。

 

冬の時代は恐らくこれによって引き起こされたのだろうが、愚行を繰り返すつもりはない。

 

それに発動時にまき散らされる毒物も洒落にならない。

 

こんなもの、一体誰が考えたのやら。考えた奴は、助走をつけてぶん殴りにいかないといけないだろう。

 

いずれにしても、あたしの作り出せる最強の。後に毒を撒かず、範囲内の相手を確殺する爆弾は。

 

何度かの検証の末に、どうにか完成させる事ができた。

 

一応コアクリスタルに格納もできるが、今のあたしでもフルパワー状態から魔力の大半を持って行かれるだろう。

 

これは予備を作って置いて、戦闘で都度消費するしかない。

 

手投げ弾のサイズにできただけでも、可とするべきだ。

 

広範囲を無差別殺傷するような兵器を使う時代は終わりにする。

 

そんなものは、人間の愚かさの見本だ。

 

その究極が冬の時代を作り出したものであり、或いはフィルフサだろう。

 

だからあたしは、それとは別の道を行くだけだ。

 

「とりあえずこれで一つ……」

 

呟く。

 

鍵の方は、既に大丈夫だ。既に完成している。後は座標さえ分かれば、星図とあわせて別世界にでも門を開けるだろう。

 

だが、その座標を極限まで精査しないと危ない。

 

どんな場所につながるか、知れたものではないからである。

 

だから、それについては任せる。

 

次だ。

 

パティとクリフォードさんが持ち帰ってきた機械類を確認する。一つずつ調べて。エーテルで溶かして機能を調べていく。

 

殆どは土木用の機械だ。

 

効率よく運んだり、土を掘ったり、木を切ったり。そういうものである。

 

使い方によっては、どれも基本的に悪用されるものじゃない。

 

テクノロジーそのものは、特にこういう基本的なものは悪ではないのだ。順番にマニュアルを起こして、使えるものはそうしておく。

 

使えないものは、回収してしまう。

 

エーテルに溶かしてジェムにするか、もしくはハイチタニウムまで分解してしまう。

 

これらの中には、今はそうとは思えないが、武器もあったのだ。

 

邪魔になる獣を殺傷したりするためのものだったのだろう。

 

使っている時はそうはとても見えなかっただろうが。あまりにも技術体系がオーリムのものとは違い過ぎるから。

 

これが恐らく炎の牙だな。

 

そう思って、道具の一つを見る。

 

棒につけて使うようだ。超高熱の炎を指向性を持って噴き出す道具。それが炎の牙のように見えたのだろう。

 

こっちは光の剣か。

 

これは世界の最小構成要素を超高熱に熱して、それを棒状に固定する装置だ。文字通り熱で焼き切る。

 

凄まじい熱を出すので、それが剣としても使える。

 

ただこれは、本来は炎の牙と同じで、金属などを斬ったりするためのものだ。

 

あくまで加工用の道具だったものを、それらしく武器にしつらえたのだろう。

 

やはり神代の錬金術師は万能なんかじゃなかったんだな。

 

あたしでも正体を知れば、それは違うと分かるものばかり。

 

本来の用途で使えば、殺戮用の武器なんかにはならなかったもので。むしろ工作用の道具だったのだ。

 

考えて見れば、旅の人は全てに慈愛をと考えるような人だった。無償の愛を与える事ができる人だった。

 

作られた存在だったから、それが可能だったのだろうが。

 

だからこそ、殺戮兵器の類は作らなかったのだろう。

 

それに、フィルフサや超ド級を神代の錬金術師が作ったのも、何となく分かってきた気がする。

 

旅の人は、個人携帯できるような殺戮兵器は作らなかったのだ。

 

だから、その技術を略奪した神代の錬金術師達は、悪用をすることしかできなかった。

 

その結果が光の剣やら炎の牙だった。

 

それでは物足りないから、フィルフサや超ド級を作り出した。これも本来は、もっと違う目的の技術だったのを、悪用したのだろう。

 

ふと気付く。元は医療技術だったのか。

 

フェンリル型は、あの紅蓮の劣化コピーだという。

 

多分ただの狼だった紅蓮を知性化し、旅の人のパートナーとした技術を悪用した結果がフェンリル型だ。

 

それに悪魔もどきも、人間をベースにしていた。あれらも医療技術を悪用した結果、誕生した可能性が高い。

 

どこまでも腐る事ができるんだな。どうしようもない。

 

あたしは機械を一つずつ検証しながら、何度も溜息が出ていた。

 

時間が過ぎる。

 

三日ほど掛けて、全ての機械を修復、或いは廃棄。

 

オーレン族を集めて、一つずつ説明していく。

 

炎の牙と光の剣については、実際に使ってみせる。カラさんが、あっと叫んでいた。

 

「それじゃそれじゃ! 全てを切り裂き焼き尽くしておった!」

 

「これは本来、金属を加工するために使っていた道具なんです。 それを武器にしつらえたに過ぎません。 威しには良かったんでしょうね」

 

「道理で。 連中の技量があまりにも拙劣だったから、初見殺しにしかならなかったわ」

 

こんなものを振り回して、強くなったつもりになっていたのなら。

 

それはオーレン族に負けるわ。

 

あたしは呆れつつも、他の道具類についても説明していく。タオがマニュアルを書いて、それをオーレン族に渡していく。

 

これらは、オーレン族の復興に使って欲しいと思ったからだ。

 

「これは押すだけで地面をならしてくれるのか。 動力は生体魔力で充分だと」

 

「はい。 なんなら大気中の魔力を吸収して、少しずつ動力を蓄えても行きます」

 

「こんな道具があって、どうしてそれ以上を望むのか。 私にはわからん」

 

オーレン族の戦士がぼやく。

 

そうだな。あたしも同意見だ。

 

他にも使えそうな道具は、全て譲渡する。

 

あたしはいらない。

 

というか、全部覚えた。その気になればいつでも作り出せるので、今更現物は必要ないのだ。

 

もう神代の錬金術師の底は見えている。

 

これらの道具は、いずれも旅の人がもたらした技術の劣化コピーか、彼等が下に見ていた下級錬金術師が考案したものばかり。

 

奪ったもので偉そうにしているような連中は。

 

それを更に発展させて、新しいものなんか作り出せない。

 

或いは最初の頃は違ったのかも知れない。

 

だがこんな凄い道具があるのが当たり前の生活で慣れきったら、上を目指そうと考えないだろう。

 

それどころか、肥大化させた欲望を振り回して、周りに更に迷惑を掛けるだけ。

 

ともかく、もうこれらに用はない。

 

後は、研究が仕上がるのを待つだけだ。

 

タオ達も、全力で資料を精査してくれている。今回のこの遺物の山からも、幾つか資料が見つかったらしいし。

 

それらが分かれば。奴らの根拠地。

 

万象の大典への道も、開くはずである。

 

あたしは戻ると、薬を増やしておく。

 

オーレン族に渡しておく分もあるし。あたし達がこれから決戦で消耗する分も踏まえて、多めに作っておく。

 

時々セリさんに頼んで、薬草を補給。

 

セリさんが作り出してくれる薬草は、それこそ素材としてどれだけでもいる。

 

セリさんも、浄化用の植物を彼方此方に植えて回って忙しいようだが。それでもきちんと手伝ってくれた。

 

そして、研究が仕上がった。

 

 

 

皆が集まって。タオが咳払いする。

 

アンペルさんが、少し誇らしげだ。クリフォードさんは、疲れきったと顔に書いている。ともかく円を作って座って、皆で話を順番に聞いていく。

 

「結論からいうと、座標に使われていた数字の羅列は、完全に解析ができたよ」

 

「おおっ!」

 

「統計にはデータが10万はいるとかいってたよな。 よく集まったな……」

 

ボオスがタオに呆れ気味にいう。

 

タオは10万は集まらなかったが、1万ほどのデータは揃えられたとさらりととんでもない事をいった。

 

此処で研究を始めてから、彼方此方で。クーケン島近辺、サルドニカ、東の地、フォウレ、などなどにて。更に細かく座標を集めて回ったらしい。とにかくそれで、充分なデータは揃ったらしかった。

 

それで編み出した数字について説明されるが。

 

主に世界の北端からの距離。

 

水面と想定される一定の地点からの高度。

 

最も近い竜脈からの距離。

 

指定されている区域。

 

指定されている世界。

 

他にも幾つかの情報が、座標には込められているらしかった。

 

「それで、クーケン島の石碑に刻まれていた座標は、あれで正しかったのか」

 

「結論からいうと罠だった」

 

「!」

 

「あの座標をそのまま開けると、深海行きだね。 何人かの彼処に誘われた錬金術師は、恐らく……」

 

下劣な連中だ。

 

ともかく、そうなると正しい座標は分かったと言うことなのだろうか。

 

タオは咳払いして、順番に説明する。

 

まず、あの石碑の座標は一つだけ数字が間違っている。その数字に関しては、特定の方法が今までなかった。

 

その数字とは、世界の指定だ。

 

例えばあたし達の世界は63、オーリムは19で指定されていたらしい。それを聞いて、クラウディアが小首を傾げる。

 

「それはつまり、神代の錬金術師は最低でも63の世界に足を運んでいたの?」

 

「いい質問だね。 多分それはないと思う」

 

「詳しく聞かせて」

 

「この数字は、あくまで観測された数字に過ぎないんだ。 神代の根拠地である万象の大典は、此処とは隔離された別の世界で、旅の人が作りあげた拠点だ。 其処からは、恐らく多くの世界が観測出来た筈だ。 それらの数なんだと思う」

 

それならば、最悪の可能性。

 

神代の錬金術師が、オーリムの次は別の世界に攻めこんで、やりたい放題をしている可能性は低くなったか。

 

咳払いして、タオが本を取りだす。

 

それは、神代の錬金術師が書いた自記らしい。

 

「ヒントはこれにあった。 神代の遺跡で仕事をしていた一人の錬金術師の自記だ。 自分が如何に偉いか、周囲の人間よりも如何に優れているか。 錬金術師以外の人間は人間ではないとか。 そんな事を延々と書き綴ってるろくでもない本だ」

 

「燃やせよそんなの」

 

レントが明らかに苛立つが。

 

タオも頷いて、だけれどもと続けた。

 

「オーレン族と開戦すると、この自記を書いた錬金術師は思ってもいなかったらしくてね。 滑稽なほど動揺して、自記は半端に終わってる。 だから、これも放り捨てて逃げてきたようなんだ」

 

「つまり機密をそのままにって事か」

 

「その通り。 そして此処に記載があった。 我等が住まう0なる完全の世界……って」

 

つまり、である。

 

石碑に書かれていた数字には、世界を指定する数字に63が記載されていた。これを0に切り替える。

 

それで、奴らの所に乗り込めると言う訳だ。

 

あたしは星図を調べる。

 

待ってとタオが声を掛けて来た。

 

「恐らくだけれども、神代の錬金術師はオーリムから追い出されてから、群島の仕組みを作ったはずだよ。 同時に、自分達の所に乗り込もうとする存在を防ぐためのトラップもね。 特にオーレン族に対しては、絶対には入れないように処置をしたはず」

 

「つまりオーリムからはもう乗り込めぬというわけじゃな」

 

「そうなります」

 

カラさんはしっかり話についてきている。

 

要するにだ。

 

あの群島の、あの門で。

 

この座標に対して、門を開けなければならないということだ。

 

そうなると、やはり気になる。

 

「タオ。 神代の錬金術師は、一体何を目論んでいると思う? あたし達の事を劣等血統とか抜かしていた連中が、自分達の高尚な城にそんな存在を意味もなく招くとはとても思えない。 奴隷でも欲しいなら、それはそれで普通に超ド級でもフェンリルでも使って、かき集めれば良かったはずだよ」

 

「それは僕も気になるんだ。 悪魔もどき達の話を聞く限り、どうも錬金術師……それも才能のある錬金術師をどうしてか目をつけて、それを集めようとしている節があるんだよね。 でも神代の錬金術師は異常な血統主義者だった事が分かってる。 在野の人材なんて欲しがるとは思えない」

 

タオも此処は分からないか。

 

ともかく、そうなると。

 

いよいよ奴らの根拠地に乗り込まないといけないか。

 

タオは咳払いすると、更に幾つかの資料を見せてくれる。

 

実は0の世界って言葉は他にも記載があったらしい。だけれども、あくまで比喩表現だと思っていたのだそうだ。

 

だけれども、63の世界とか、19の猿とか、そういう記述を見つけてそれで確信したという。

 

今まで見つけた資料……群島にあった資料にすら、それらの表現は出てくるという。

 

つまりそれらの表現は、意図的に神代の錬金術師達は残していたと言う事なのである。それは恐らく、何らかの目的で、獲物を誘いこむためだったのだろう。

 

良いだろう。

 

罠のつもりだろうが、全部喰い破るつもりだったのだ。

 

いずれにしても、これで情報は揃った。

 

奴らの根拠地に乗り込む準備は全部できたと言える。後は、準備を完全に整えておく必要があるだろう。

 

あたしは、手を叩いて注目を集める。

 

そして立ち上がっていた。

 

「これから、神代の錬金術師の本拠地、万象の大典に乗り込む最終作戦を始動する」

 

「いよいよか……」

 

「決戦ですね」

 

ボオスとパティがそれぞれにいう。

 

今まで消極的だった面子も、今は好戦的な意見に変わっている。

 

それはそうだろう。

 

ウィンドルで奴らの蛮行。

 

奴らがそのまま好き放題していたら、世界がどうされてしまったのか。それらが全て、露骨過ぎる程に分かったのだから。

 

世界の敵だ、神代の錬金術師は。

 

世界を慈愛で包んだ旅の人を貶め奪い、その全てを否定して、エゴだけで世界を好き勝手に弄くり回そうとした。

 

しかもそれを部分的に成功させ、オーリムはフィルフサが跋扈する魔郷にまで変わってしまった。

 

それどころか、その思想は千年以上経った今も、世界中に悪影響を与えている。

 

百年少し前に王都で錬金術師達が全滅する事件があったが。それがなければ、今でもオーリムから資源を搾取しようとか考える阿呆が、未だに世界にはいたことが疑いないだろう。

 

「神代の錬金術師は千三百年姿を見せていない。 別の世界に行ったのか、それとも万象の大典に閉じこもっているのか、それも分からない。 だけれども、あたしは万象の大典をまずは制圧する。 その後、もしも神代の錬金術師が別の世界に迷惑を掛けているようなら滅ぼす。 万象の大典にいるようなら滅ぼす。 世界の敵を、今討つときだよ」

 

誰もそれに対して何もいわない。

 

怒りは共通していても。

 

あたしの苛烈すぎるやり方には、フェデリーカも恐怖していることは知っている。

 

手を下すのはあたしだけでいい。

 

抵抗するようなら、相手が誰だろうと抹殺する。

 

それくらいの覚悟がないと、二つの世界にずっと悪影響を及ぼし続けた世界の癌を切除できないのだ。

 

「あたしは見た。 あたしは知った。 神代の錬金術師は、全てをねじ曲げ奪った。 旅の人から無償の愛と技術を。 紅蓮から旅の人を。 数多の生物兵器から本来の生き方と生命としてのあり方を。 錬金術師から人を救うという思想を。 関わった世界から資源を。 フィルフサからも、静かな生活を。 ウィンドルからは平和を。 全て奴らは奪った。 そして今も、世界に身勝手なエゴで作りあげた魔物をばらまいた悪影響を残している。 その全てを、此処で断ちきらなければならない!」

 

今までにない口調であたしが吠える。

 

それに対しても、誰もなにもいわない。

 

誰かがやらなければならないのだ。

 

冬の時代を経て、世界は一度灰燼に帰している。世界の半分は、まだ人が住む事ができる土地では無い。

 

それなのに神代から古代クリント王国にかけて、人間は愚行を繰り返し続けているのだ。呆れ果てた事に。

 

これ以上、人間が万物の霊長を気取り、愚行を犯す事があってはならない。

 

その思想の象徴である神代の錬金術師ども。その根拠である万象の大典は。

 

万象一切灰燼に帰す。

 

あたしの手で。

 

「皆、手を貸して欲しい。 明日の世界のために!」

 

頷いてくれる皆。

 

よし、これで全ての準備は終わったな。

 

後は、それぞれやる事があるだろう。

 

「ウィンドルの出立は明日にします。 皆休むなり、それぞれやるべき事をするなり、それぞれで動いてください。 あたしもちょっと疲れたので、少なくとも一日は休みを入れる予定です。 解散!」

 

あたしが声を掛ける。

 

これが最後の戦略に関するミーティングだろう。

 

これで、今回の冒険の最後となる戦いが始まる。これに負ける事は許されない。負ければ世界は終わる。

 

神代の錬金術師の思想は、幾らでも世界に資源があるのなら、許されるものである可能性も百万歩譲ってあるかも知れない。

 

だが、この荒れ果てた世界で。

 

更には、他の世界に侵略をしなければなり立たないような思想である。

 

許してはならないものだ。

 

あたしは、流石に疲れたので、ベッドに潜り込むことにする。ここ最近、ずっと疲れた。

 

一気に眠気が来る。

 

多分次の朝までは起きないだろうな。

 

そう思って、あたしはベッドの中で、深い睡りに落ちていった。

 

 

 

翌朝。

 

荷物を一旦引き上げて、小妖精の森のアトリエに移る。先にレント達が見てきてくれたが、群島のアトリエは無事で、荒らされてもいないそうだ。

 

それにあの宮殿もそのまま。

 

ならば、今焦る必要もない。

 

体をしっかり動かして、朝の体操をしておく。これがなかなかバカにならないのだ。

 

すっきり眠ったから、体も良く動く。

 

後は魔力も練り上げておく。

 

寿命を放棄したからだろう。

 

また魔力が伸び始めているのが分かる。

 

爆発的に伸びる事はないだろうが。その内、現在三万が限界の熱槍展開が、十万にも二十万にもなるかもしれない。

 

旅の人は、身を守ることをもっと意識していればな。

 

魔力を練りながら、そんな事を思う。

 

人間を信じるなんて愚行を犯した。だが、それは旅の人が悪いのではない。助けて貰っていながら、金のなる木としか考えなかった周囲のカスが悪い。

 

誰か、旅の人を本気で守ろうと思わなかったのだろうか。

 

思わなかったのだ。

 

その結果が、神代の錬金術師の跋扈だったのだから。

 

朝のルーチンを終えて、朝食を取る。

 

クーケン島に顔を出す。

 

そういえば。

 

パミラさんが、来るようにいっていたな。

 

あの人も……いや人かどうか疑わしいが。いずれにしても、恐らくはこの件に関与しているとみて良いだろう。

 

会いに行くか。

 

クーケン島は身内しかいない。家族には、わざわざ会いに行かなくても良いだろう。

 

最後の夜を家でとも思ったが、別に其処までするほどの悲壮感はない。

 

神代の錬金術師のテクノロジーの底が見えていること。

 

旅の人のテクノロジーはまだ底が見えないが、そもそもそれは戦闘で相手を殺戮するためのものではないこと。

 

それらもあって、今は精神的にある程度余裕が出来ていた。

 

差し違えてでも滅ぼす。

 

一度はそうとまで思ったが。今は恐らくは勝てるだろうと考えている。これは、楽観ではない。

 

連中の技術を見た上での客観だ。

 

クーケン島に船で辿りつく。見ると、ザムエルさんが若手の護り手達に、稽古をつけているではないか。

 

もう酒も入っていないようである。

 

ちょっと驚いた。

 

「ライザ、帰っていたんだね」

 

父さんだ。

 

頷くと、一緒に訓練をするザムエルさんを見る。心なしか、少しだけ表情も柔らかくなった気がする。

 

昔の話をしてくれる。

 

ザムエルさんは、寡黙だったけれど。常に戦闘では最前衛に立ったのだそうだ。

 

少しでも他の被害を減らすため。

 

そういう人だったのだという。

 

レントにあの人がした事は許されない。それはあたしだって分かっている。

 

それでも、あの人は償いを始めている。

 

自分の持つ剣の技を、次の世代に継承しようとしている。

 

目を細めていた。

 

こうあれば良かったのに。そうとさえ思う。ザムエルさんを狂わせたのも、人間だ。それを思うとやりきれない。

 

「その様子だと、今回も決着が近いんだね」

 

「うん。 何もかも、全て終わらせてくるよ」

 

「そうか。 今のライザなら、何が相手でも勝てるだろうね。 私も随分前に戦いを止めたが、それでもひりつくような強さが伝わってくる。 だけれども、油断だけはしてはダメだよ」

 

「有難う父さん。 今日の昼だけ、家に寄るよ」

 

手を振って、その場を離れる。

 

さて、最後の戦いに備えて。

 

皆がそれぞれ動いているように。あたしも、それ相応の事をしなければならなかった。

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