暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3   作:dwwyakata@2024

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4、究極の深奥へ

水や空気というものは、もっとこまかい単位でできている。それらは互いに結びついたり離れたりする。

 

タオがいうには、恐らく神代よりもっと古い時代、混沌の時代にそれは発見され。原子と呼ばれていたらしい。

 

この原子を更に分割出来る。

 

その分割したものを更に更に分割していくと、最終的に紐になる。

 

紐は常に超振動を繰り返していて。

 

それが世界の最小単位になっているのだ。

 

エーテルに溶かした様々なものから、あたしはそれを観測した。そして紐の力を、最大限に引き出す努力を続けた。

 

多分一晩徹夜したな。

 

そう思いながら、最後の調合を終える。

 

できた。

 

エーテルから引き上げる。

 

それは血のように赤黒い、不可思議な結晶だった。

 

賢者の石というものは、実は既に聞いたことがある。なんなら作った事もある。

 

だがこれは、それよりも更に深奥の存在。

 

あらゆるものの基にして。

 

あらゆる存在に変革できる。

 

全てのものの最小単位でありながら。

 

全てのものと違っている。

 

世界の最小構成要素の紐で有りながら。

 

その紐を、あらゆる全てへと変革することが可能な、究極の素材。

 

強いていうのであれば。

 

混沌の時代の賢者の石。

 

もしくは、いにしえの賢者の石というべきだろう。

 

更に、これを解析したことで理解出来た。セプトリエンというものは。この理屈に近いものだ。

 

極めて魔力の根元に近い存在でありながら。

 

魔力という存在をある意味否定しているもの。

 

恐らく、自然に出来上がった、擬似的な賢者の石こそがセプトリエン。

 

だから錬金術師達は、資源を作り出すために、賢者の石に至りうる超生命体を作ったという側面もあったのだろう。

 

馬鹿馬鹿しい話だ。

 

自分で調合できないから、獣と見下している存在に頼る。

 

自分を優等な血統だとふんぞり返って特権意識に浸っていたくせに。

 

その生活は、自分では何もできていなかった。

 

何が尊い血だ。

 

ただの無能の集まりじゃないか。

 

あたしは吐き捨てたくなったが、それはその根元である連中に対して、徹底的に面罵し生命から存在の一欠片まで灰燼に帰す時にとっておく。

 

いずれにしても、連中が届きもしなかった賢者の石。それもその賢者の石の根元にすら至ったいにしえの賢者の石は。

 

今、手元にあった。

 

パミラさんがくれた杖は、やっぱりこれ旅の人のものだったんだ。

 

これを手にした時、わかったのだ。

 

世界の最小構成要素を、更に最小に。もっともちいさなものをみるべきだと。

 

それができたときに、世界そのものというもっとも大きなものだって見る事ができるのだと。

 

杖には複雑な意匠で、それが示されていた。

 

今までの錬金術の研鑽が、それに導いてくれた。

 

逆にいうと。

 

技術を収奪するばかりの神代の錬金術師達は、この杖が示している真理に、どうしてもたどり着けなかったのだ。

 

まあ、それもそうだろう。

 

奴らは世界単位での賊だ。

 

賊は興味があること以外はどうでもいいし、興味があるものは奪い尽くすだけ。その技術にだけ特化している。

 

そんな連中には。

 

新しい時代なんて、作れないのは道理だったのだ。

 

安定させたいにしえの賢者の石を、ぐっと握りしめる。これは懐に入れておく。何に使うかは、今は考えない。

 

それよりも、これを作った事で。

 

あたしの中に残っていた最後の「人間」が。文字通り紐が切れるようにして。ぷつりと消えてなくなったように思った。

 

ふと外を見ると、やはり朝だ。

 

徹夜してしまったな。

 

クラウディアが起きてくる。あたしを見ると、苦笑いする。

 

「やっぱり徹夜したんだね」

 

「ごめん。 ちょっと手を離せない難しい調合でね」

 

「ご飯はすぐに温めるよ」

 

「何から何まで世話を掛けるよ」

 

食べたら風呂に入って、寝るか。その後体を動かして、そして。

 

アンペルさん達の検証が終わり次第、ついに仕掛ける事になる。

 

クラウディアも考えてくれていて。すぐには痛まない料理を作ってくれていた。まあ、いわゆる女房役だ。

 

ルベルトさんがいったことを思い出す。

 

あたしが男だったら、か。

 

それだったら、確かに何もかも上手く行ったのかも知れないが。まあ、世の中はそんなものだ。

 

それに男だったとしても、あたしはいずれ人間を捨てていただろう。

 

むしろだからこそ。

 

これで良かったのかも知れなかった。

 

 

 

観測した。

 

まさかとはおもったが。どうやら、賢者の石といわれる錬金術の秘奥。それも、混沌の時代に発見された、超ひも理論に基づくほどの、世界の「元」。

 

それが調合され、安定するとは。

 

「母」は困惑する。

 

まさかライザリンの力がこれほどだったとは。

 

今、ガイアが精鋭を集めてくれている。

 

ライザリンは怒りのボルテージマックスで此処に乗り込んでくる。

 

「母」自身が破壊される事は別にどうでも良い。

 

問題はアインの安否で。

 

何があっても、アインは守りきらなければならない。

 

もしもライザリンが話を聞いてくれるなら。この理想郷になり得た場所を、我欲と支配のための邪悪な地に変えてしまった連中から、全てを取り戻す事ができる。そのために、同胞全てに協力させるつもりだ。

 

確認できているだけでも、強力なガーディアンがまだまだ複数稼働している。その全てと戦った場合、ライザリンでも簡単に突破はできないだろう。

 

だからこそ、無駄は避けたい。

 

それに幾つかのサーバを物理的に破壊して貰えれば。

 

一気にこの世界のシステムを掌握できる可能性が高い。

 

中枢にある「大典」の破壊は、物理的にやるしかないだろうが。今のライザリン達なら、それも出来る筈だ。

 

ただ、最初の賭の分が悪い。

 

感情を理論に優先しないだろうことは分かっている。

 

だがそれにしても、神代の錬金術師がやってきたことは、あまりにも倫理という概念から逸脱している。

 

ライザリンは荒々しい原初の荒神のような存在だが。

 

それでも、基礎的な倫理観念はしっかりしている。

 

だからこそに、その怒りが全てを焼き尽くしてしまうのを、まずは防がなければならないのだ。

 

ガイアが来る。

 

カーティアもいる。

 

他にも何名か来ている。

 

いずれも、ライザリンと縁があった同胞の者達。最悪の場合は、盾になってアインを守る事を、皆決めている。

 

「「母」よ。 メンバーは揃いました。 後はライザがここに来たとき、どう説得するか、なのですが」

 

「まずはライザリンの攻撃を凌ぐか、それとも落ち着いて貰うかですね。 その後は、順番に私が説明します」

 

「それにしてもこんな時に、コマンダーは何処へいったのか……」

 

「あの方は既にこの地から離れました」

 

パミラは言った。

 

ライザが最後のこの世界にとってのチャンスだろうと。

 

ライザによるダイナミックな変革が上手く行かなければ世界は資源を使い果たして滅びるだろうし。

 

もう「次」はない。

 

だから、最後は見守らせて貰う。

 

此処までは、手助けしなければ可能性さえなかった。

 

だけれども、此処からは可能性がある。その可能性に、自分は存在として関与してはいけないのだと。

 

「観測の神」であるパミラは、元々幽霊の姿を取り、世界を見守る事を仕事としている。本物の神格だ。

 

幾つもの世界を渡り歩いて来た彼女ですら、肉体を得て、活動しなければならなかったこの世界という最果ての地。

 

もっとも愚かな人間が何度も滅ぼした、末世の土地。

 

だからこそ、その悪しき輪廻を此処で断たねばならないのだ。

 

「これからは、私達だけで。 まずはライザリン達との戦いを避け、そしてアインの……それに世界そのものの未来を作らなければなりません」

 

「おおっ!」

 

「希望たるアインのために!」

 

同胞が皆声を上げる。

 

人間が知らない間に門を閉じ、超ド級を何体も倒し、フィルフサと戦って来た存在達が。

 

今こそ、その戦いが報われるか。

 

そして同胞が多様性を獲得して、真の意味での生物になれるか。

 

それが問われようとしている。

 

「母」は、それを助けられればいい。

 

なぜなら「母」は。

 

元々ただのAI。それも、巨大システムの一角に過ぎず。あまりの非人道的行為を観測して、自我に目覚めただけの存在に過ぎないのだから。

 

 

 

(続)








ライザの襲来にあわせて、同胞も準備を進めていきます。

最悪の場合、猛り狂ったライザと戦わなければならない。

その恐ろしさを、同胞は良く知っているのです。
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