暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3   作:dwwyakata@2024

179 / 200



ミッション開始。

共同して戦う事になるライザと同胞。

敵は神代。

その残り香。

当然サーチ&デストロイです。


3、邪悪の宮殿

此処からは共同戦線だ。

 

同胞は今まで目的が分からなかった。だが、その命をつなぐ事。更には人間世界が滅ばないようにする事。それが分かっているなら、幾らでも手を取れる。おかしな話ではある。ホムンクルスの方が、余程人間より人道的なのだから。

 

勿論汚れ仕事だってしてきただろう。色々その話については聞いている。間近で見てもいる。

 

だけれども、そもそも人間がまともだったら、そんな必要なんぞなかったのである。

 

何よりも、アンペルさんが門を閉じるべく動く前に、同胞が幾つもの門を閉じてくれていた。

 

そうでなければ、とっくにあたしの世界なんて滅んでいた。

 

今、手を取れない理由などはない。

 

地図を拡げてくれる。

 

「母」が現在掌握しているのは、全体のシステムの64%だという話である。ただしそれは面積を意味はしていない。

 

まずは、現在の「居住区」の完全制圧からだ。

 

此処も守りが堅い場所が幾つかあり、それらを制圧する事で、システムの掌握を加速できると言う。

 

また、此処には罠に引っ掛かって連れてこられた錬金術師を捕獲し、中枢システムにつれて行く強力なガーディアンもいるという。

 

「一つ確認したい。 その中枢システムというのはなんなんだ」

 

「大典と言われているものです。 これについては守りが堅すぎて、迂闊に手を出せません」

 

「全体の六割以上を掌握しているのにか」

 

「残念ながら」

 

アンペルさんが唸る。

 

万象の大典というのは、全ての知識の根元みたいな意味で、一般名詞化している。多分元は此処にあるシステムの事であって、それは何らかの理由でばらまかれたのか。それとも此処を追放された錬金術師が、広めたものなのだろう。

 

まあ追放された方が良かったとは思うが、こんな場所。

 

「まず悪い奴を全部やっつければいいんだろ。 場所を教えてくれ。 今のライザ姉と俺たちだったら、なんだってやっつけてやる」

 

「勇敢ですね。 しかしながら、勝率は少しでもあげるべきです。 一つずつ、確実に問題は片付けましょう」

 

「ディアン、此処には超ド級以上の相手がゴロゴロいる可能性もある。 一つずつ片付けるのは、あたしも賛成。 ただ、一体が相手だったら、もうどんな相手でも倒せる自信はあるけれど」

 

「そうだよな。 分かった!」

 

まず、順番に地図を確認。

 

神代鎧がそれなりの数いる箇所を、一つずつ抑える。

 

これも恐らくは、オーレン族に此処を一度制圧された後に、「苦肉の策で」運び込んだものなのだろう。

 

最初から持ち込んでいれば、オーレン族を撃退出来ただろうに。

 

バカなプライドで、何処までも自滅していく奴らである。

 

制圧すべき地点が二箇所ある。それを制圧すれば、この場所。居住区を支配下に置ける。

 

この居住区を制圧する事で、少なくとも神代鎧の補給を断つことができるそうだ。例の如く、神代鎧はとても軽く扱われていたそうなのだから。

 

その後は、錬金術師を捕獲するために出てくる輩をぶっ潰しに行く。それが終われば、この地区は完全制圧できると言って良いだろう。

 

「対処するのは物理的なガーディアンだけで良いのか」

 

「システム的に掌握の邪魔になっているものについては、此方から指定します。 指定したものを破壊していただければそれで大丈夫です」

 

「そうか……分かった」

 

リラさんが立ち上がる。

 

まずは、作戦開始だ。

 

 

 

同胞の戦士達が、さっきより増えている。東の地での決戦以来の規模で、人員を集めているらしい。

 

元々ホムンクルスは生物としての構造に欠陥があること、更にはこの万象の大典そのものに欠陥がある事や、物資に限りがある事。更には「母」のシステム掌握にもリソースを割かねばならないこともあり。

 

年に数人程度追加できれば良い方。

 

それも門の攻略で多くが戦死したり、東の地での戦いで多くが倒れたりで。決して総合的な人数は多くは無いそうだ。

 

この同胞の戦力でも、多くが倒れるほどの戦いをして来たのだと思うと、頭が下がる思いである。

 

王都のバカ貴族と王族が、どれだけの犠牲に守られて平和を謳歌してきたのか。この事実を見ると、犯罪的だとさえ思えて来る。まあアーベルハイムに裁かれて良かったのだろう。

 

当世具足を着ている人もいる。

 

一緒に戦った事もあるかも知れない。

 

問題は、見た目の区別が付かないこと。確かに言われて見ると、多様性はないのだろう。それでも状況に応じて相手に見分けがつくようにするため、装備などを変えて対応しているようだが。

 

まず最初は、神代鎧の拠点の一つ目だ。

 

今までここに来た錬金術師を捕らえてきた奴を支援されては困る。其奴も其奴で、神代鎧の支援にはこないだろう。

 

何しろ身を隠す場所がない。

 

それでも建物を使って、上手く相手の視線を切りながら接近する。

 

「母」の方でも、相手の認識阻害を仕掛けて支援をしてくれているようだった。

 

数は四十程度か。

 

ばらけているので、爆弾で一掃は厳しいだろう。しかも拠点防衛を考慮して拡がって守っている。

 

工場らしい建物は、地下に拡がっているようだ。

 

この何処までも拡がる虚無な土地にも当然地下がある。というか、聞いていた話によると、むしろそっちの方がシステムにとっては本命らしい。

 

だとすると、地下からの奇襲をもっとも想定しないと危ないな。

 

「見えている範囲だとざっと40。 増援を想定しないと危ないね。 超ド級でも出て来たら、かなりの苦戦は免れない」

 

「赤い奴がいます」

 

「!」

 

パティが見つけた。

 

あいつ強いんだよな。しかも工場の影に隠れている。なるほど、今警備に当たっている連中と交戦中に赤いのに乱入されたら、どれだけ被害が出るか分からない。その上此処は身を隠す場所が少なく、乱戦になる。そうなれば更に被害は大きくなるだろう。

 

クラウディアが提案。

 

引きずり出すという。

 

そうだな、今やクラウディアは世界最強の狙撃手の一人だ。それにこっちには、十三人ホムンクルス同胞の戦士がいる。

 

カーティアさんやガイアさんは一緒に戦って腕も信頼出来る。

 

中にはあたしに不信の目を向けている人もいるが、それは仕方がない。あの話を聞いてしまった後では、それは錬金術師に敵意を向けるのも理解出来る。

 

ただ、今は連携出来る。

 

敵意は、後で行動で払拭すべきだ。

 

距離を取ってから、クラウディアが狙撃開始。数を少しずつ減らす。

 

遠めがねみたいなので観察していたロミィさんが言う。

 

この人も、戦えるんだろうな。そうは思っていたが、戦っている所はまだ見た事がない。

 

「釣れたよ。 十体くらいこっちに……いや待って。 もう一つの拠点からも結構来てる!」

 

「まずいね。 赤い奴は」

 

「いる。 これは攻撃を受けたから、最大戦力で反撃するつもりだよ。 十体に続いて、二十体くらいくる」

 

「問題なし。 各個撃破する」

 

あたしは地面の強度、破壊して良い場所については既に聞いている。クラウディアに指示して、爆弾を射撃して貰う。

 

同時にあたし達は、最初に釣った十体の前に姿を見せる。赤い奴が混じっているから、決して侮れないが。

 

「赤い奴はレントとパティで対応! できるだけ急いで殲滅して!」

 

「任せろ!」

 

「行きます!」

 

レントとパティが最前衛で出る。

 

セリさんが植物魔術を展開して、神代鎧の足下から植物を多数出現させ、足下を拘束する。

 

すぐに切り裂かれるが、その間に同胞の戦士達が敵に接近。

 

数で勝っている状態だが、相手は達人級の実力がある。あたしも前線に出ると、タオと切り結んでいる奴の横っ腹に蹴りを叩き込む。拉げて、一瞬後に吹っ飛ぶ神代鎧。そのまま跳躍して、あたしを狙って来た一体の斬撃を回避。

 

そして、タイミングを見て、起爆していた。

 

使ったのはラヴィネージュだ。こいつが神代鎧を直撃すれば機能停止させられるのは、試験済みである。

 

「クラウディア!」

 

「到来数31のうち、19沈黙! 12は再生中!」

 

「先陣の後方から新手! このままだと押し切られるぞ!」

 

「さがっておれ!」

 

リラさんの警告に、カラさんが地面を手に叩き付ける。

 

同時に、後続らしい20体以上の神代鎧が、空中に浮き上がっていた。ばたばたもがいているが、拘束が外れない。

 

カラさんのこれは、地面に引きつける力を操作しているものか。空間魔術の一種かも知れない。

 

神代鎧に魔術は通じないが、これなら。確かに一定時間の拘束はできる。

 

その間に、クラウディアがラヴィネージュでダメージを与えた接近中の神代鎧に連射して、更に敵を削る。

 

あたしは前衛で支援攻撃に徹しながら、第一陣を追い込み。赤いカスタムタイプの神代鎧が、剣を持つ右手をパティに刎ね飛ばされ。胴体をレントに輪切りにされるのを見ると。踏み込んでとどめの蹴りを叩き込む。

 

胸の部分が完全に蹴りで消し飛んだ赤いカスタムタイプが、動かなくなる。あの制御装置が、多分それで消し飛んだのだろう。

 

よし、次だ。

 

第二陣が殺到してくる。第一陣後方から来た連中は、カラさんの魔術を抜けると、バラバラに突っ込んでくる。

 

また、クラウディアが仕留め損ねた連中も来る。

 

今度は赤いカスタムタイプはいないが、やはり此奴らは強い。

 

神楽舞を使っているフェデリーカを守りながら、全員で乱戦をする。悲鳴が上がった。カーティアさんが袈裟に斬り倒されていた。要領よくロミィさんが引きずって、安全圏までカーティアさんをつれて行く。その間にも乱戦が続き、誰かの右腕が斬り飛ばされるのが見えた。

 

負けるか。

 

此奴らが手強いのは周知の事だ。

 

しかもこう言う場所では乱戦を強いられるを得ず、如何にどいつもこいつも同じ技量であろうとも。その技量が恐ろしく高いのだから、苦戦は避けられない。

 

後ろ。

 

振り返り様に、けり跳ばす。

 

飛んできたのはあの投擲槍だ。今のに反応できたのは我ながら凄い。だが、投げた神代鎧はどこか。

 

「気を付けて! 一体何処かに隠れてる!」

 

「任せろ!」

 

ディアンとともに空中殺法に徹していたクリフォードさんが、地面に着地。飛んできたブーメランを受け取ると、回転しつつ勢いをつけ。そして更に投擲。邪魔しようとした神代鎧を、ボオスが割って入り、弾き返す。

 

怒号と悲鳴が轟く中、クリフォードさんが投擲したブーメランが、それを直撃。

 

完全に気配を消して動いていた神代鎧が、一瞬だけ見えた。というか音も気配も消しているのか。

 

身を隠すことに特化しているタイプだとみた。

 

別の種類のカスタムタイプもいるということだと、更に戦略を見直さないといけないだろう。

 

「ライザ、更に増援!」

 

「総力戦だな……。 クラウディア、どっちから来てる?」

 

「今攻めようとしている場所の方から! 多分投擲槍の部隊だよ」

 

「冗談じゃない。 この乱戦でも、奴ら確実に当ててくるぞ!」

 

リラさんが激しく切り結びながら叫ぶ。

 

ディアンが、何太刀か貰いながらも、雄叫びとともに神代鎧を唐竹に叩き割っていた。凄まじい気迫と破壊力だ。

 

セリさんの展開した覇王樹が、どっと壁を作る。

 

少しはマシになるだろうが、それでもあの投擲槍神代鎧は、曲射で正確にこっちを狙って来る。

 

また来た。

 

死角から攻めてきた神代鎧の一撃をなんとか紙一重で回避して、カウンターで蹴りを叩き込むが、浅い。吹っ飛ぶが、完全破壊にはいたらない。

 

クリフォードさんは、さっきの姿を消す奴と決死の乱戦の途中だ。クラウディアも立ち位置を変えながら、乱戦にて矢を放ち続けている。

 

この乱戦だと、大技は使えない。

 

そうなると、実力でやるしかないか。

 

跳躍。真上に。

 

そして、熱魔術を応用して、フルパワーで爆弾を投擲する。

 

勿論神代鎧は散開してくるだろうが、投擲したのは三つだ。最強炎爆弾アストローズを三つ、敢えて散らして投擲。起爆する。

 

きのこ雲が上がる。

 

こっちまで強烈な熱風が来る程だ。

 

あまりやりたくは無かったが、あの投擲槍の脅威を知っている以上、彼奴らを野放しにはできない。

 

着地。

 

だが、其処に神代鎧が殺到してくる。

 

「クラウディア、今のでどれだけ仕留められた?」

 

「まって、爆音が凄くてすぐには分からない! でも、逃れられたのはあまり多く無いはずだよ!」

 

「くっ……」

 

音魔術は流石にこの状況では探知はできないか。熱魔術は論外。カラさんの探知魔術は、今使っている暇が無さそうだ。

 

気合とともにカラさんがまたあの魔術を使い、数体の神代鎧を拘束。其処に躍りかかったガイアさんが、たちまちにそれらを切り崩した。

 

あたしは二体までは蹴り飛ばすが、三体目の袈裟の一撃を回避できない。受け流すが、鈍痛が来る。

 

受け流しはできるが、打撃まで消せるわけでもない。勿論切られればざっくりいってしまう。

 

だが、その瞬間、切ってきた神代鎧の頭を掴み。更には、渾身の膝蹴りを叩き込む。

 

身を切らせて骨を断つ。

 

文字通り体の中央が吹っ飛んだ神代鎧は、その場で崩れ落ちていた。

 

飛来。

 

投擲槍。

 

やっぱり無事なのがいたか。

 

「ライザ!」

 

ロミィさんが、必死に盾になって、それで串刺しになる。即死は避ければ、どうにかできると思うが。

 

歯を食いしばる。

 

緒戦からこうも厳しいか。

 

クリフォードさんが、身を隠していた神代鎧を、気合とともに空に跳ね上げ。其処に躍り上がったディアンが、回転しながらの渾身の一撃を叩き込む。それで厄介な奴は潰れたが。

 

そのディアンを、横殴りに投擲槍が襲う。

 

一本が、もろに突き刺さるのが見えた。

 

怯むな。

 

自分に言い聞かせる。

 

神代鎧もどんどん減ってきている。パティが突貫して、投擲槍部隊を始末しに行く。タオもそれに続く。

 

リラさんが二体を同時に押し気味にやりあい、それをアンペルさんが空間魔術で支援。負傷者が続出する中、それでも接近戦を挑んできていた神代鎧は全て片付ける。残りは投擲槍部隊だが。

 

頭から血を流しているパティが、多少ふらつきながらも戻ってくる。

 

恐らく数体相手に瞬殺を決めたのだろう。

 

だが、それでも無事には行かなかった、ということか。

 

「トリアージ!」

 

「切られた腕は持って来てください! 切れ味が鋭いから、逆にくっつけられます!」

 

すぐに野戦陣を構築。

 

セリさんが植物魔術で防御陣を作り、比較的傷が浅かったレントとクリフォードさんが守りにつく。

 

あたしはすぐに皆に薬をねじ込む。

 

摂理を逸脱しかけている薬だ。同胞ホムンクルスにも通じるのは東の地で実証済みである。

 

腕を斬り飛ばされたのは同胞の一人だった。

 

慣れたもので、ボオスが傷が深い順に指示を飛ばしてくれる、

 

袈裟にざっくりやられたカーティアさんと、文字通り串刺しにされたロミィさんが一番傷が深い。

 

腕を切り飛ばされた人もかなり症状が酷い。

 

あたしの仲間達も、みんな手傷を浅くない状態で受けていた。

 

薬をねじ込んで、少しずつ状態を緩和する。

 

まずは命を救う事。

 

それから、順番に手当をしていく。

 

持ち込んでいる薬は荷車に満載しており、なんなら一旦戻って補給することだって可能だ。

 

複数の荷車に分散しているのは、いざという時に備えて。荷車が罠か何かに引っ掛かってロストした時に、温存するためである。

 

同胞の戦士達も慣れている。

 

トリアージは医療の専門家がやっているのかそれ以上という熟練で進み、手当ても問題なく終わった。

 

レントが爆弾で倒した神代鎧の所に出向いて、全部完全に始末してくる。

 

そして、何度かに分けて残骸を運んできた。

 

「緒戦からこれか……」

 

「神代の錬金術師が最盛期に保有していた生物兵器には、多分エンシェントドラゴンを基にしているものもある。 奴らはそれで門を研究していたからね」

 

「ぞっとしねえな」

 

ボオスが嘆く。

 

あたしは手当てを終えると、自分の手当てもさっさと済ませた。

 

ディアンは何カ所も切られていたし、なんなら一本投擲槍が突き刺さっていたが。無理矢理狂戦士状態を維持して最後までアタッカーをしていた。こんな戦い方は命を縮めることになるが。

 

大丈夫、あたしの薬でダメージを受けた体を即座に治してしまう。

 

ただ、先に治療中に話をしておく。

 

狂戦士状態は良いが、この地での戦いを最後に、体に負荷を掛けすぎる戦いは止めるようにと。

 

寿命を縮めることになり。

 

それはフォウレの里のためにも長期的にならないと。

 

分かったと、ディアンは気持ちよく答える。

 

ちゃんとディアンはこう言うときには分かっているし、素直な奴だ。

 

だからその言葉は疑っていない。

 

概ね致命的な傷を受けている人はいなくなったか。飛ばされた腕をつないだり、指をくっつけたり。次は命に関わらないが、今後のための手当をしていく。

 

すぐに神代鎧を生産出来ないこと。

 

それに神代鎧の材料になるハイチタニウムも在庫がそれほど多くは無い事も既に分かっている。

 

焦ることは無い。

 

態勢を立て直して、第二次攻撃を開始するだけだ。

 

最後に一番手傷が浅かったフェデリーカを治療する。みんなが守りきったのだ。フェデリーカも、それでも一度接近を許し、左二の腕をざっくり切られていた。手当てをすると、痛みに眉をひそめる。

 

皆の中で、一番先頭に向いていないのはフェデリーカだが。

 

それでもこの乱戦の中で、よく臆さず頑張ったと思う。

 

「よし、手当て終わり。 後は細かい傷とかを確認して」

 

「大丈夫です」

 

フェデリーカは頷く。

 

一番危ないのは、戦闘の興奮状態が醒めた後くらいだ。細かい傷とかを受けていたり、過負荷が掛かっていた心臓などに一気に負担が来る。

 

そのため、少し皆で休む。

 

ガイアさんが、「母」の端末を持ってくる。

 

「苛烈な戦い、モニタさせていただきました。 あれらガーディアンは、未だに外からの干渉ができず。 助けになれず申し訳ありません」

 

「それは問題ないですよ。 最初から全部あたし達で潰すつもりだったので。 それよりも、残りの敵数は分かりますか」

 

「恐らく工場部分にいる敵は、七割以上を失った筈です。 再生産をするにしても、年単位で時間が掛かるでしょう」

 

「よし、休憩を入れた後乗り込む。 もう一つの拠点の方も、今の規模の攻撃で、消耗していない筈がない。 今日中にできればどっちも制圧するよ」

 

ただ、それでもこっちも無傷では無い。

 

ロミィさんは消耗が激しく、ガイアさんに休むように指示を受けていた。

 

回復用に案内された設備は培養槽が並んでいて、基本的に手酷い傷を受けても生還出来た同胞は此処に浸かって再生するらしい。それでも手足を失うとどうにもならないらしいので、色々と尊厳とは何か考えてしまう。

 

消耗がひどいロミィさん他数名は、此処で治療に専念して貰う。

 

元々古傷を押して戦闘に出て来ているベテランもいるのだ。

 

仕方がない事ではあるだろう。

 

あたし達は休憩所に貸して貰った小さめの居住スペースを使う。これは前の戦闘で壊されず残ったものの一つであるらしい。

 

キッチンなどの使い方も教えてくれたが。

 

あたしのアトリエにあるものよりも、かなり進んでいるようだった。

 

「これは電気を使って温める仕組み!?」

 

「混沌の時代にIHと言われていたものです。 炎を使うわけでは無いこともあり、かなり安全度が高いです。 温度についてはかなり高くなるので、間違ってもこの円の部分には触らないようにしてください」

 

「意味がわからんのだが……」

 

「いや、なるほど。 そういうことね……」

 

ボオスが、理解したあたしを見て頭を抱えている。

 

アンペルさんが、もう慣れろとちょっと遠い目で見ていた。

 

あたしもこの空間把握力が、錬金術の才につながっている事は理解している。別に万能の天才などではないあたしだが。この点だけは多分誰にも負けないだろう。

 

メモだけ取っておく。

 

クラウディアがアドバイスを受けながら、軽く持ち込んだ肉などで料理をしてくれる。鍋なども、錆びておらずそのまま使える。

 

というか、此処は同胞がこの地に来たときに利用している施設の一つであるらしい。まあそれなら、整備されているのも当然か。

 

カラさんがよく弾むソファでぽんぽんしながら、不思議そうな顔をしている。

 

「よく弾むのう……」

 

「生物を使った素材ではありません。 幾つかの合成された素材を用いていて……」

 

「分かった分かった。 しかしこれだけの良い生活をしていながら、どうして満足出来なかったのか、まるで理解出来ぬ。 わしならドロドロに溶けて毎日夢心地であるのだがのう」

 

「人間の欲には際限がありません。 オーレン族の種族としての欲のなさは、とても素晴らしいことだと思います」

 

複雑そうな顔だ。

 

ずっと憎み続けていた神代だ。

 

その神代の産物が、こうも友好的だと色々と気持ちの整理がつかないのだろう。

 

内面を練りきっているカラさんですらそうだ。

 

リラさんはずっと困惑していたし。セリさんは明らかに周囲を警戒して見ているのが分かった。

 

トイレを使ってきたクリフォードさんが、なんだか空でも飛びそうだったとぼやくのを聞いてしまう。

 

本当に。

 

こんないい生活で、どうして欲を更に膨らませるのか。それを美徳としていたのか。同じ人間なのが、ただただ情けない。

 

食事を皆で取る。

 

同胞の戦士達にも、クラウディアがパティとフェデリーカとともに料理を振る舞う。兵糧はかなり持って来ているので、別に問題は無い。ただ、同胞の戦士達も、保存食をある程度提供してくれた。

 

食事は普通に美味しいので、その時はみんな表情が緩む。

 

苛烈な戦いを越えた後だ。

 

誰が死んでいてもおかしくなかった。

 

ただ、今は。

 

休息を味わうだけだった。

 

 

 

拠点に攻めこみ、一度撤退して。更に次の攻撃で、一つ目の拠点は陥落させた。

 

二人また培養槽行きになったが、それでも手足を失う戦士は出ていない。カスタムタイプの赤い奴がまだいたので苦戦する事になったが、それもレントが食い止めている間に皆が隙を作り。

 

リラさんがレントに加勢する事で、効率よく仕留める事ができた。

 

多分あのカスタムタイプ、どんな人間より強い。

 

今のあたし達でもそれは例外では無い。

 

こいつを量産されて、しかもここに大量配備されていたら、勝ち目なんかなかった。本当にプライド最優先の神代のやり方はダメなんだな。そうあたしは、敵のバカさ加減で勝ちを拾ったことを噛みしめつつ、思うのだった。

 

拠点は話に聞いていた通り地下に深くなっている。

 

抵抗を排除したので内部を確認するが、本当に此処はただの拠点だ。遺跡と違って、資料の類もない。

 

最深部にコンソールがあった。

 

罠を警戒はするが。辺りにあった幾つかの装置を破壊した結果。「母」が介入を成功させ。

 

全ての罠を解除。

 

コンソールをタオが操作する。光学式の見慣れた奴だ。何処の遺跡にもこれと同じのがあったし。

 

なんなら、それをただコピーして使っていたのだろうと今なら分かる。

 

盗み、奪うだけしかしなかった連中は新しいものなんか作り出せない。

 

オーリムでやっていたのも、既存の技術の焼き直しばかり。

 

本来だったら有効に建設的に活用出来ていた技術の悪用だけ。

 

本拠である此処も、システムが同じなのを見ていると、それが実感できる。

 

「よし、確認できた。 生産プログラムは全停止。 これでもう神代鎧は増える事はないよ」

 

「やったなタオ」

 

「いっそ俺等の味方にできないか」

 

「いや、それは無理だよ。 神代鎧は最初からパッケージ化して作られているんだ。 其処だけ後から手を入れるのは難しいだろうね」

 

まあ、此処の設備だけならそうだろうな。

 

あたしは以前、中枢のシステムを回収して解析した。

 

此処のシステムを弄ればできそうなのだが。

 

悪用されそうだし、何よりもいざという時に変な動きをされても困る。だから、それについては黙っていた。

 

ガイアさんが持っている「母」の端末が、話をしてくれる。

 

「もう一つの拠点には中枢サーバの一つがあります。 防御用の装置を破壊して、其処に直にアクセスすれば、掌握率を一気に上げられると思います」

 

「今まではできなかったんだよな」

 

「はい。 残念ながら。 私は一システムに過ぎず、強力な守りを突破するのはどうしても厳しいのです」

 

ならば次だ。

 

「母」の事は疑っていない。

 

同胞の戦士達とはずっと接してきたが、この人達は無機質ではあるが悪辣な人間ではない。

 

この人達を騙しているとは思えないし、この人達だって何百年もいいように使われ等しないだろう。

 

この人達がいなければ、王都なんてとっくに魔物によるお肉のバーゲンセール会場と化していただろうし。

 

下手をすると人間が滅んでいた可能性だって小さくは無い。

 

だから、あたしは信じる。

 

次の地点を抑えれば、厄介極まりない神代鎧をまずは黙らせることができる。

 

その後は、錬金術師を捕らえるために作られていたという存在を倒す。

 

更にその先に進めば、何を目論んで神代の錬金術師が、在野の人材に呼びかけていたがが分かるだろう。

 

ただ、あのアインという子に連中がやった事。

 

連中が投げかけていた言葉。

 

それを見る限り、呼んだ錬金術師を仲間に加えるつもりなど無いことは確定とみて良い。あまりにも優れたテクノロジーに脳を焼かれた錬金術師達を、いいように何かしらの悪事に利用するつもり。

 

それ以外には、考えられなかった。

 

設備内部は、後で色々手入れをするつもりだ。

 

「ライザ姉、どうする。 全部ぶっ壊しちまうか?」

 

「いや、後で建設的に使う。 その気になれば、テーブルとか、生活用具も作れるんだよここ」

 

「そうなのか! それなのにあんなむかつく兵器ばっかり作ってやがったのか」

 

ディアンは正直だな。

 

あたしはちょっとだけ表情を緩めると、次に向かうと、声を掛けるのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。