暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3 作:dwwyakata@2024
早速神代の残り香の歓迎です。
ライザ達の今の戦力でも油断出来ない相手ですが。
同胞との共同戦線です。
突破できない筈がない……!
序、攻略作戦開始
アインが明らかに怯えているのを、ガイアは分かっていた。それはそうだ。ライザはあまりにも生物としてのあり方が違う。
アインは同胞の元となったホムンクルスのテクノロジーが使われている。それで体を再生させ。エーテルの技術を用いて魂までも回収して再生した。それでやっと形を為す事ができた存在だ。
培養槽から出るのも散々苦労した。
寿命についても、培養槽での調整中は加齢などを一切止めている。それもあって、実際の年齢は十歳にも満たないと母に聞かされている。そしてホムンクルスと違って、年齢相応の姿形をしていた。
その年になれば、どうしても殺された時のことを思い出すのだろう。
その時の映像と音声はガイアも見て知っている。
人間だけに限らず、子供を虐待する生物は珍しく無い。ある種の蟹は卵を放流するのだが、その先から食べてしまう。子供の生存力が低い生物ほど大量に子供を産むのだが、それはそれとして親も極めて子供に無頓着になる傾向がある。
だが、人間は哺乳類だ。
子供を丁寧に群れ単位で保護する習性がある存在。ましてや知的生命体を名乗るのなら、なおさら家族を守るのが当たり前だろう。
それすらしなかった外道。
外道による暴虐の記憶。
錬金術師。
それらに加え、もはや戦神と化しているライザの気迫を目の当たりにしたら、それは怯えるのも無理はない。
一度ライザは戻った。
それで同胞で集まって現在会議をしている。アインに関する懸念は、ガイア以外も持っているようだった。
「ライザは恐らくアイン様に対して危害を加えないだろう。 それは見ていて分かった。 しかしアイン様が明らかにライザに対して恐怖心を抱いている。 どうにかライザの方でも歩み寄りをして貰う必要がある」
そうずばり言ったのはカーティアである。
王都の方をだいたい任されているだけあって、重要な立場の同胞だ。忙しい中来て貰っているのは、今の状況が非常に難しいから、というのもある。ライザとの連携がなければ、この地……万象の大典の攻略は厳しい。
本来は理想郷になるはずだった場所は、エゴの怪物である神代の錬金術師どものせいで伏魔殿と化している。
強力なガーディアンを多数倒すには、同胞だけでは戦力が不足しているし。
ライザがもし敗れでもしたら、この先同胞にもアイン様にも、何よりも人類全てにもう未来は無いだろう。
「難しい立場に我々はある。 ライザに譲歩を頼めるだろうか」
「確かにライザの戦力は圧倒的だ。 間近で見たが、ライザとその随伴の戦力は、記録にあるどの錬金術師よりも上とみて良い。 対応できるのは旅の人だけだろうが、かの存在は既にない」
「とはいっても、そのテクノロジーをツギハギしただけとは言え、此処のガーディアンは侮れぬ」
皆がそれぞれ話をしている中。
ガイアは咳払いした。
もうコマンダーは助力してくれない。であれば、同胞だけでどうにかしなければならないのだ。
あの方は、既に同胞への綿密な連携を一旦切った。しばらくは様子見だけをすると言っていた。
ならば同胞が主体的に動き。
アイン様をもり立て。
ライザとも上手くやっていかなければならないのだ。
「まずは此方から譲歩しよう。 アイン様が生きていくために、ライザに診断などもしてもらわねばならぬ。 アイン様には、私が話をする」
「ガイア殿、しかしアイン様はまだまだ体がお弱い。 それにあれほどの残虐な記憶に向き合わせるのは酷であろう」
「図体が大きな大人でも、心には傷を負うしそれで立ち直れなくなることもある。 ましてやあの記憶は……」
「奴らとライザは違う。 それを知って貰う必要があるだろうな」
難しい提案だ。ガイアは自分で言っていてもそう思う。
ライザを良く知っている同胞は。
フロディア。一瞥すると、フロディアは咳払いしていた。
「私もライザとは接しましたが、元々豪傑肌の人間で、ダイナミックに周囲を牽引する力を持つ存在でしたね。 繊細な子供が接するのは、相性がとても悪いように感じます」
「何かしら良い手はないだろうか」
「……難しいですね」
そうか。
フロディアは四年間ライザと接しているが、確かにそれほど親密だった訳でもないだろう。
だとすると。
ロミィを見る。槍で串刺しにされたばかりだが、もう復帰してきている。神代の錬金術師の作る薬より、ライザの薬の方が万倍も効いている。それはそうだが、その効果はちょっと凄まじすぎる。
「ええと……ロミィさんとしても、錬金術に関わった後のライザが急激に変わっていくのを見ているので、今はどうとはいえないですね」
「昔とかなり違うのか」
「昔は良くも悪くもガキ大将でしたよ。 錬金術に関わり始めてから、急激に人間離れしていきましたけど。 なんでも本当に凄い錬金術師って、その傾向があるとかないとか」
ロミィが誰に聞いたか怪しいような理屈を口にしたが、まあそれはいいだろう。
とにかく、である。
「何か方法はないか」
「ライザってあれで子供は嫌いじゃないんですよ。 クーケン島でも講師みたいなことしてますし」
「言う事聞かない子供を殺したりしていないか」
「いやいや、そもそも初見で逆らったら殺されるって子供も悟るみたいで。 ライザが講師をしている時は、子供が滅茶苦茶静からしいですよ」
ちょっと頭が痛い話だ。
あの娘、本当に脳筋なんだな。
そう思うとまあなんというか。とりあえず、方法を変えるしかないかなともちょっと思う。
挙手したのは新人の同胞だ。
同胞はみんなスペックが同じ。
希に生まれてくる生殖能力がない男性型も、実はスペックが同じである。
ちなみに生殖能力がない理由は不完全だからという説が強かったのだが。なんでも女錬金術師に取って性行為だけを楽しむにはそれが都合が良いからとかいう話がどこかで見つかったとか。
まあ、それはいい。
経験だけが足りない新人の同胞は、それでも臆することはなかった。
「むしろ順番を変えてみては如何ですか」
「順番?」
「ライザというあの錬金術師、話を聞く限り相手の心を掴んで手元に引き寄せる術は優れているようです。 怖れているかどうかは別として」
「一種のストックホルム症候群かな?」
混沌の時代にあったらしい言葉だが。
まあその由来は知らないし、どうでもいい。
続きを促す。
「心配せず、アイン様を預けてみては。 ライザとしても非道に怒れるぶん、自分を怖れるアイン様に非道はしないでしょう」
「確かにそれはそうだが……危険過ぎはしないか」
「いや、そもそも母とライザが連携するには、此方の譲歩が必要になる。 歪められた旅の人の思想とこの土地を元に戻せるのは錬金術師だけ。 それに相応しい才能を持つのはライザ以降出ない可能性が高い」
そうか、それが安牌か。
分かった。
咳払いすると、ガイアは自身で説得してみると告げる。
アイン様に対する愛情は、同胞全員が共有している。危険な目にあわせたくないという意見も皆同じだ。
だが、それで過保護になっていてはいけない。
温室の蘭ではいけないのだ。
母が、話を聞いていて、やがて結論を出した。
「アインをライザリンに預けるべきだというのですね」
「は。 アイン様に人として生きていただくためには、多少の劇薬も必須かと思われます」
「……分かりました。 ただし、側で監視を常にしてください。 ライザリンとの折衝は、私が行います」
「御意」
とりあえず、会議は一旦終わり。
更に増員を掛けたが、それだけ各地に展開している同胞は減る。
ライザと連携しても、此処を崩すのにどれだけ時間が掛かるか分からない。それに、時間が掛かれば掛かるほど各地でそれだけ悪党が跋扈し、同胞が手をとられるほど魔物の被害だって増える。
出来るだけ、無駄は避けなければならない。
万象の大典に出向く。アトリエで休んだから、物資も補給は完了している。あたしは周囲を見回して、すぐにガイアさんらが来るのを確認していた。
皆も展開する。
昨日神代鎧の拠点を潰したからと言って、今日も楽にやれるかは話が別。これから、四つあるという区画の一つ。
今いる居住区。
そのガーディアンとの交戦が待っている。
今までここに来た錬金術師は、誰もがそれに抗し得なかったらしい。まるで虫でも摘むようにして捕獲していったとか。
だが、あたしもそれと同じに片付けられると思って貰っては困る。
「来てくれたか。 まずは万全を期すために、作戦会議を行いたい」
「望むところです。 しかし、連携してくれるんですか。 システム掌握とは関係無く、ガーディアンが相手になりますが」
「問題ない。 今までここに来た錬金術師は神代の連中の同類だった。 だが貴殿とは肩を並べて戦った。 ともに世界の癌を除けると判断している。 此処でのシステムを掌握する事は、世界の癌を取り除く事だ」
ガイアさんの言葉は嬉しい。
あたしも頷くと、まずは作戦会議を行う野戦陣地に向かう。
その途中、円筒形の「ロボット」や、武装していない神代鎧が活発に物資を輸送しているのが見えた。
あれは母による作業で、支配地域を拡大した結果、できる事が増えたのだと言う。
タオが咳払い。
「ところで此処の動力炉は」
「私には分からないが、竜脈に関係しているらしいとだけ聞いている。 ただ……」
「ただ?」
「現時点で此処の出力は旅の人が想定していたものの1%程度しか使っておらず、世界に悪影響を与える可能性はないそうだ」
1%か。
確かに神代の錬金術師の姿が見えないと聞く。
しかも殆ど活動していないとなると、それはほぼ眠っているような状態とみて良いのだろう。
あのウィンドルの遺跡のような空間魔術で壁を常時展開するような使い方をしなければ。どこから吸い上げているか知らないが、いずれにしても世界中の竜脈を枯渇させるようなことはないだろう。。
竜脈は星の命そのものだ。
それを吸い上げきる事を懸念していたのだが、その恐れは無さそうである。
「現時点でも稼働はしているとなると。 全盛期はどれほどの稼働をしていたんでしょうね、此処」
「わしが前に来た時は、星空が降りて来たように瞬いておったぞ」
「そういえば貴方が以前此処に攻めこんできたオーレン族の」
「ああ、奏波氏族の長をしておる」
ガイアさんも、カラさんには流石に敬意を払う。ホムンクルス達よりも遙かに年上なのだから当然だろう。
ともかく、一度先に休ませて貰った場所へ移動。
これも家屋だったようなのだが、王都の貴族の屋敷なんぞよりずっと大きい。そもそもあれも元は屋敷ではなかったようだし、こういう所でも技術の劣化を痛感させられてしまうばかりだ。
先は休むだけに使ったから、あまり広さは実感できなかったのだが。
色々見せてもらうと、確かにパティがいた屋敷と全然違う。
造りが広くて開放的だ。
なるほど、こんなのに住んでいるから勘違いするんだな。あたしはそう思う。
「王都の貴族が自慢している家屋なんて、コレに比べると兎小屋ですよ」
「いいんだよそれで。 その兎小屋ですら、住んでいる奴らがどれだけ勘違いしていたか覚えているでしょ」
「確かに。 王都の屋敷ですらあれだけ勘違いするんですし、これは明らかに過剰ですね……」
仮にここに住むとしても。
これらの住居は必要ないな。生活スペースだけ使って、それ以外は倉庫などにしてしまうか。
軽く見て回ってから、会議をする。
配膳をまたロボットがやってくれる。クラウディアがうずうずしているようだが、まあ力は今は温存して貰おう。
「ガーディアンについて、どのような相手か大まかにだけでも分かりませんか?」
「区画ごとに一体ずつ強力なガーディアンが存在している事が分かっています。 この居住区画には、貴方方が言う神代鎧の最高位カスタムが配置されています」
「!」
「大きさは今の単位で言うと高さは十五歩程度。 遺跡などで交戦した事がありませんか」
ある。
それより少し小さかったが。紅蓮がいた遺跡で、巨大な神代鎧と交戦。空間魔術の使い手だった。
それを説明すると、ガイアさんが呻く。
「それを倒したのか」
「いえ、神代鎧の強さは対人戦に特化した、数と質の両立にあるとみています。 あれは大きいだけで、超ド級と大差はありませんでした」
「いや、超ド級とライザ殿が呼んでいる生物兵器ですら、我等には多数の犠牲覚悟で挑む相手なのだがな」
「あたしだって空間魔術を貰ったら一撃即死の覚悟で挑んでいます。 ただ、それを十全に使わせはしないというだけです」
確かに理外の存在に見えるかも知れないが。
アンペルさんだって空間魔術は使っている。
あたしも自分で再現はできないが。
爆弾を使って再現はできた。
それを説明すると、ガイアさんは黙り込む。初めて僅かな恐れが浮かんだようにすら見えていた。
「いずれにしても、気を付けるべきは空間魔術による不意打ちです。 それさえ凌げば、勝機は出て来ます」
「そうか……そうだな」
「クリフォードさん、前衛で警戒を。 まずはどんな空間魔術を使うか見極めて、それからです。 喰らったら即死すると考えてください。 どれだけ凶悪な相手であっても常に動き回って、見切ってしまえば……」
サルドニカで最初に交戦したフェンリルは、攻防走全てに空間魔術を使ってきた。
だが奴も、それ全てを同時に使う事はできなかった。
アンペルさんだって長時間の詠唱を用いなければ、空間魔術で相手を抉り取るなんて事はできないし。
あたしだって爆弾に仕組みを組み込むのがやっとだった。
つまりバカの一つ覚えに組み込まれている空間魔術も。
無敵でも万能でもないのだ。
「分かりました。 実績のある者の言葉であれば、信じざるを得ませんね」
「我等は東の地でも何処でも、空間魔術使いを討ち取るには、本当に大きな犠牲を出していたのにな……」
「今が好機だ。 それらを多数倒して来た者が来てくれている。 あれは乱発されていいものではない。 まして人間が乱用していいものでもないんだ」
同胞の戦士達も、意見が割れている。
体は多様性がなくても、経験である程度多様性が生じてくる。それは嘘では無い筈だ。
母によって為された、神代の錬金術師によるホムンクルスへの軛からの解放は、完全ではないにしてもある程度上手くは行っている。そうあたしは見た。
それだけで、どれだけ尊いかも分からない。
「それでは、監視映像などから錬金術師が捕らえられた地点を指定します。 既に神代鎧と貴方方が呼んでいる対人兵器の増援は断ちました。 この区画にいる生き残りも、既に稼働を停止させています。 この世界のためにも、勝ってくださいますか」
「確実にとは言いませんが、最良は尽くします」
この母という存在は。
からくりかも知れないが。敬意を払うに値するからくりだ。
だからあたしは敬意を払う。
全員で出る。
一万歩四方なんて、大した距離じゃない。本来はここに来た錬金術師は音声ガイドで誘導され。
そいつに捕まえられていたらしいのだが。
今ではそれも母が切ってしまっている。
しばらく歩くと、すっとクリフォードさんが手を横に。それだけで、全員が意図を悟る。
「同胞の方々は、散開してください。 空間魔術をまともにくらったら、あたしの薬でも助けられません」
「分かった!」
「錬金術師の言葉通りに戦う日が来るとはな。 だが、神代の者とは違うと分かった。 せいぜい世界の癌を除くために、共闘してやるさ!」
同胞の戦士達が口々に言いながら散る。
ボオスが、ため息をついていた。
「クーケン島の老人共より、よっぽど頭が柔らかいぜ。 無機質そうに見えていたのにな」
「そうだね。 どんなに改悪されたとしても、それでも母って主に軛を外して貰ったのが大きいんだろうね」
「今の時点で音魔術に反応はないよ」
「わしの魔術でも探知はできんな。 そうなると……」
クラウディアの音魔術でも、カラさんの探知魔術でもダメか。
そうなると。
あたしは頷くと、前に踏み出す。
何かいきなり時間でも切り取ったように、眼前にそれが現れていた。
神代鎧。
巨大で、そして手には大きなハルバードを持っている。
威圧的な姿で、更には全身にはギミックの役割を果たすらしい装備が色々とごてごてついていた。
此奴か。
あたしは見やる。
装備が破損している。此処で捕まえられた錬金術師達も、完全に無抵抗だったわけではなさそうだ。
「良くここまで来ましたね錬金術師。 偉大なる神祖の言葉を解析して来られたと言うことは、最低限の知能は持っているとみて良いでしょう」
「……」
「では不要なものは全て捨て、此方に来なさい。 貴方の全てを、偉大なる神祖に捧げるのです」
「断る!」
戦闘態勢。
あたしが叫ぶと、さっと皆が散る。
此奴は、出現直前まで姿がなかった。つまり間違いなく、空間を跳躍してきた。
前に紅蓮のいた城にて戦った奴と同じ、空間跳躍使いだ。だがそれも、既に見ている。負けるものか。
「招いていただいた存在に自由意思など必要ありません。 すぐに言う事を聞きなさい」
「本性現すのが早いね。 今までの雑魚と同じだと思うなよがらくた。 みんな、此奴をぶっ潰すよ!」
「おう!」
「巫山戯た事ばっかり言いやがって! 自由意思が必要ないなんて、何様のつもりだ!」
レントが叫ぶ。
あたしも同意見だ。
ガイアさんも、懸かれと叫ぶ。ハルバードを振り回すと、巨大神代鎧は、戦闘態勢に入っていた。