暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3   作:dwwyakata@2024

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もはや空間操作の魔術が当たり前のように飛び交う魔郷……

それでも対応できるライザ達。

既に戦闘は、神域に踏み込んでいます。


1、第一の関門を越えて

最初に仕掛けたパティの斬撃が、虚空を斬る。やはり空間魔術使いだ。クリフォードさんが跳びさがりながら、パティに叫ぶ。

 

「お嬢、跳べ!」

 

「!」

 

パティが跳躍。

 

そのいた地点を、空間魔術と思われるものが抉り取っていた。

 

セリさんが植物魔術を展開。全域に、ばっと蔓を張り巡らせる。更に前後左右に、覇王樹も林立させる。

 

空中に出現する神代鎧。

 

「抵抗は無意味です。 さっさと投降し……」

 

言葉は途中で途切れた。

 

完璧なタイミングで、跳躍していたあたしが、横殴りに蹴りを叩き込んだからである。

 

巨体が拉げて、吹っ飛ぶ。

 

地面に直撃する瞬間、またかき消える。

 

クラウディアが狙撃。

 

かなり離れた地点に出現した神代鎧の全身に、多数の巨大矢が直撃する。困惑するように蹈鞴を踏む神代鎧。

 

どうしてか分からない。

 

そういう風情だ。

 

種は簡単である。

 

セリさんによる植物魔術で空間魔術による転移を阻害。転移は何かものがある地点には簡単にはできないのだ。空間魔術も万能ではないし、何よりこうも張り巡らされた蔓と覇王樹だ。無理に突っ切って出現すれば大きな音がするし、それらを避ければ出現できる位置は限られる。

 

「エラー! 何が起きているか解析できません!」

 

「ポンコツ野郎! 一生やってろ!」

 

また空間を跳んだ神代鎧に、ボオスが即応。ハルバードで受けようとする神代鎧だが、凄まじいラッシュを受けて、ハルバードの柄にダメージが入る。

 

装甲そのものはハイチタニウムか。

 

だったら大いに隙がある。

 

空間を跳んで逃れ、その度に誰かが即応する。フェデリーカを狙いに行く神代鎧だが、即座にパティが抜き打ちを叩き込み、ハルバードを弾き返す。そして、神代鎧の頭に、ディアンが回転しながら斧での一撃を叩き込んでいた。

 

破砕音が、人間が出したものだとは思えない程だ。カラさんが感嘆していた。

 

「凄まじいな」

 

「遅れるな! 続け!」

 

ガイアさんが叫ぶ。

 

同胞の戦士達が、動きが止まった神代鎧に一斉に仕掛ける。だが、魔力によるものだろう。神代鎧は強烈な斥力で、近くにいた全員を吹っ飛ばす。

 

そして体を動かして、形態を変える。

 

がちゃがちゃと音がして、彼方此方が変形していく。

 

空間魔術はやめか。

 

「戦闘形態に移行。 此処にいる猿の群れを危険存在と認識。 排除します」

 

「なーにが猿だ!」

 

神代の錬金術師は、他の人間全てを猿と呼んでいたようだが。

 

猿と交配できるのだったら、自分だって猿だろうに。

 

都合がいい自分達だけが優秀理論に足首を掴まれているから、そんな事も理解出来ない。そしてこのポンコツは、その思想を植え付けられてしまっている。

 

ある意味犠牲者だな。

 

そう思いながら、奴に熱槍を叩き込む。

 

魔術は効かないことは分かっている。

 

目くらましだ。

 

体が僅かにそれ、神代鎧の胸部から放たれた光が、遠くまで飛んで行く。あれが擦っただけで即死だろう事は、熱量で分かった。空気が連続して爆発している。それくらいの熱量と言う事だ。

 

「高出力レーザーです。 放たれたら回避は不可能です」

 

「撃たせなければいいんでしょう!」

 

あたしは、支援の声を飛ばしてくる母に叫び返す。

 

足を止めた神代鎧は、多数の飛翔体を飛ばしてくる。今度は小型ミサイルというらしいが。即座にカラさんの魔術とクラウディアの狙撃で、全弾叩き落とす。爆発が連鎖するなか、あたしは突貫。

 

レーザーとかを放とうとしていた奴の足下を、蹴り倒していた。

 

機動を捨てた神代鎧が、ぐらっと上を向く。

 

だが、肩辺りが展開して、凄い風を噴きだし、態勢を立て直す。スラスターという装備であるらしい。

 

更に両腕を向けてくる。

 

クリフォードさんが避けろと叫ぶが、その前にあたしがレヘルンを投擲。氷結させる。

 

拳が爆発して、神代鎧が悲鳴じみた軋みを挙げていた。

 

「エラー! グレネード暴発!」

 

「畳みかけろ!」

 

ガイアさんが、大太刀を振るって肩から斬り下げる。同胞の戦士達も、一斉に猛攻を仕掛けた。

 

あたしは嫌な予感がしたので、さがる。

 

さがって。そう叫ぶと同時に、セリさんが多数の覇王樹で、神代鎧を包み込んでいた。炸裂。

 

同胞の戦士達がかなり巻き込まれたが、覇王樹による防御支援で爆発のダメージをある程度緩和する。

 

あたしも吹っ飛んだ一人だ。

 

頭を振りながら、立ち上がる。神代鎧は両腕を失いつつも、全身が一回り小柄になっていた。

 

装甲を内側から吹っ飛ばしたのか。

 

「排除モードに移行。 手段を選ばず排除する」

 

「言葉遣いが変わったな」

 

「排除、殺戮、排除、殺戮」

 

アンペルさんが放った空間切断が、虚空を抉る。

 

神代鎧が、小型のと同等か、或いは赤いカスタムタイプ並みの速度で跳躍したのである。両足が鋭い杭のようになっていて、アンペルさんを襲うが。

 

気迫と共にレントが踏み込むと、裂帛の一撃でそれをパリィして弾き返していた。

 

驚愕の声があがるが。

 

レントはあらゆる攻撃をこうして弾いてきたのだ。

 

即座に回避に移ろうとする神代鎧だが、させるか。

 

フェデリーカがその時には舞いを変えていた。春夏秋冬の季節を一気に叩き付ける大技。完璧なタイミングで発動させていた。

 

神代鎧が、まともに寒暖差を受けて動きが一瞬だけ止まる。

 

それで、充分だった。

 

パティが至近で、納刀から。

 

多段斬りを叩き込みつつ、跳躍。

 

神代鎧の全身のパーツが吹っ飛ぶ。

 

着地しながら、斬り下げるパティ。肩口から、巨体が大きく抉り取られていた。

 

スパークしている神代鎧に対して、あたしが接近。

 

足を振るって、刃を向けてこようと悪あがきする神代鎧に、リラさんとディアンが完璧なタイミングで一撃を叩き込む。

 

殺戮殲滅と呟き続けているがらくたが、ぐらりと揺れ。

 

更に、アンペルさんの空間魔術が今度こそ突き刺さる。

 

一瞬、完全に無防備になった其処に。

 

あたしが、奴の頭部を足で掴んでいた。

 

裂帛の気合とともに、あたしは叫ぶ。

 

「フォトン……」

 

技名を叫ぶのは、気迫を込めるためだ。

 

フォトンクエーサーを活用出来ない場面も多いから、どうしても爆弾と体術が必要になってくる。

 

体術は技術と鍛錬がものを言うのだが。

 

しかしながら、精神力で威力は一割も上がらない。

 

だが、その一割が。

 

今は欲しいのだ。

 

「パイルブレイク!」

 

捻りながら、相手を投げる。神代鎧はもはや回避もできず、地面に全力で突っ込み。その構造体が、一瞬後に全て粉砕されていた。

 

地面にクレーターができている。

 

着地したクリフォードさん。

 

空中から、ずっと支援の声を掛けてくれていた。いちいち即応出来たのも、そのおかげである。

 

「東の地でも何度か見たが、完全に蹴り技の領域を越えているな……」

 

ガイアさんが褒めてくれる。

 

ボオスは呆れていたが。

 

「人間離れしているのを喜ぶのは俺にはやっぱり分からん」

 

「今のボオスも、既に並みの戦士から見れば人間じゃないぞ」

 

「そうなのか!?」

 

レントの言葉に、ボオスが本気でショックを受けている。

 

あたしは嘆息すると、手を叩いて負傷者に呼びかける。大丈夫。斥力による吹き飛ばしでダメージはあったが。

 

誰も空間魔術も。

 

不意打ちでのハルバードの一撃も。貰ってはいなかった。

 

だから、手当てはそれほど難しく無かった。

 

 

 

完全に居住区の安全はこれで確保された。

 

まずは手当てを終えて、それで栄養も補給する。今回は同胞の戦士達が、此方に来る途中に持ち込んでくれた結構良い牛肉をいただく。

 

調理は今日は同胞の戦士達がやってくれた。

 

まあパティの所でメイド長している人もいる。フロディアさんが見事に料理をしてくれているのも見ている。

 

この人達に、料理はお手のものなのだろう。

 

食事をいただいて、体力を回復してから話をする。

 

あの神代鎧の台詞とか、分かった事を整理するためだ。

 

同胞と連携するためにも、様々な知識を共有し、状況の認識もそうする必要がある。戦いでは、些細な事での連携のずれが、致命的な結果を招くからである。

 

「招いてやった。 最低限の知能は持っている。 全てを捧げろ。 そんな事をほざいていたね、アレ」

 

「ああ、俺も聞いたぜ」

 

「予想はしていたけれど、やはり何かしら搾取するつもりだったことが確定したね。 それも錬金術師以外は全部殺す気だった」

 

錬金術師でなければ人に非ずか。

 

猿とも露骨に口にしていた。なんなら、自分達以外の錬金術師も猿扱いだったのだろう。反吐が出る。

 

問題は、その先だ。

 

「ただ、何を捧げさせるつもりだったんだ?」

 

「知恵とかかな」

 

「これだけあるのにか? しかも此処の事を奴らは万象の大典とか抜かしていたんだろう? それは全て知恵は持っているって自負では無いのか?」

 

ボオスの指摘はもっともだ。

 

確かに知恵なんか、猿呼ばわりしている相手に捧げさせるとも思えない。

 

何を搾取することを目論んでいた。

 

アインが殺された時の映像を見る限り、此処の錬金術師は他の人間に触る事すら嫌悪していたようだ。

 

確かに相手を上か下かでしか見られない輩は、そういう反応をすることを見た事もあたしもある。

 

講師をしていた相手に調子づいていたガキ大将がいて、そんな行動をしていたので、一度思い切りぶちのめした事があった。

 

戦いがトラウマになる程徹底的に叩きのめして。

 

恐怖を叩き込み、逆恨みも出来ないようにした。

 

それでやっと負の成功体験を潰す事ができて、結果としてまともな子供になった。結論と言えば親の教育も周囲の接し方も悪く、無駄に大きなガタイもあって大人を舐めていたのだ。それを叩き直したことでまともになった。だが、此処にいる連中に、そんな経験を積む機会があったとは思えない。

 

触るのも嫌な相手をどうして招く。

 

そんな程度の思考力しかないのに、何故なのか。

 

「考えられる事としては、メインシステムを失った彼等が、一種のカルトに走ったのかもしれません」

 

「説明された信仰が歪んだ末に登場したものですね。 それも確かに考えられるんですが……」

 

「ライザリン、貴方の考えをもっと聞かせてください。 私は自我を持って千二百年以上、彼等がどうして此処までエゴに満ちた思想を持つようになり、自己肯定化できるのか理解出来ませんでした。 人間のデータを見てもなお。 貴方は別の視点から、理解出来るのではありませんか?」

 

「あたしだって人の世界全てを知っている訳ではないです。 ただ言えるのは、此処にいたアホどもと同じような邪悪は、誰の心にもいるということ。 それだけですね」

 

勿論それはあたし自身だって例外では無い。

 

咳払いすると、とにかく他にも意見を募る。

 

幸いだが、フィルフサによる破滅的な侵攻の可能性もなくなっている。メインシステムが機能停止している今、此処から何かしら世界に破滅的な干渉が行われる可能性もゼロと判断して良い。

 

時間はある。

 

ならば拙速を避けて、巧緻で行くべきだ。

 

「次の区画への道を整備する間に、できるだけの事をしよう。 タオ、アンペルさん、クリフォードさん、何かしらの資料がないか調べて」

 

「了解。 本は文字通りなんでもある。 一部は持ち帰ってもいいかな」

 

「いいけれど、技術書はダメだよ。 此処にある技術は、残念だけれど今の人間が持つには早すぎる。 万が一流出して実用化でもされたら、世界はまた冬の時代を迎えかねないからね」

 

「そうだね。 それは同感だ」

 

三人がすぐに見つけてある図書館に向かう。

 

あたしはまずは同胞と連携しながら、再稼働すると問題があるものなどを処理していく。

 

完全に停止している神代鎧も、全て破壊しておく。破壊した後はとかしてハイチタニウムのインゴットに変えてしまう。

 

それで何かしらの理由でシステムの制御が奪い返されて。

 

それらから奇襲されることもなくなる。

 

赤いカスタムタイプの神代鎧に触るときはちょっと緊張したが、それも動かなくなってしまえばただの木偶だ。

 

同胞にはその間に今までの戦闘で大きな負傷をして、手足を失っている人員を集めて貰う。

 

義手や義足を整備するためだ。

 

中には両足を失って、車いすで生活している同胞もいた。今までの経験もあって、車いすでもやれる状態だったのだ。

 

それでも足はまた欲しい。

 

そう言われたので、義足を作る。

 

既に同胞の義手義足、なんなら義眼だって本来のものと変わらない性能を持つものを作れている。

 

皆の治療を進めると同時に、攻略作戦の再開をするまでは、一度皆には戻って貰う事にした。

 

順番に治療をしていく。

 

また培養槽も見せてもらう。

 

以前も超ド級などの培養をしている巨大なのを見た事があったが、あれはあくまで生命維持装置だった。

 

多少の快復力は有しているが、ただそれだけだ。

 

これでは根本的な治療なんかできない。

 

仮に錬金術師がまだいたとしても、近親交配でもう身動きもできないくらい弱体化しているのではあるまいか。

 

どんなに原始的な生活を選んでいる集落だって、余所から新しい血を入れることで、近親交配による弱体化を防ぐ。

 

要は古代人でも知っているだろう事を、偉ぶったくせに忘れているなんて。

 

そう思いながら、あたしは培養槽のチェックを終えていた。

 

「アインが入っているのもこれと同じなんですね」

 

「一部カスタマイズしましたが、概ねは同じです。 アインは細胞の休眠機能を使って、起きている時以外は生体時間が進んでいない状態にあります」

 

「それを此処の錬金術師が使っている可能性はありますか?」

 

「いえ、ないとみて良いでしょう。 途中から彼等は、持っている技術を組み合わせる事をしても、新しいものを産み出すと言う事はしなくなりました。 フィルフサの技術だって、元からあった魔物の強化カスタムの技術を組み合わせただけのものなのです」

 

だとすると、コレを使って休眠している可能性もないか。

 

いずれにしても、アインが使っている培養槽も見てみたいが、制圧している生産区画の一部にあるらしく。

 

色々なシステムが噛んでいるらしく、こっちで同じものを即座に作る事はできないらしい。

 

ただ百年ほど掛ければ、完全に掌握した此方でも同じものを作れると言われたので苦笑い。

 

確かにあたしも時を捨てたけれど。

 

これから人間を止める予定のクラウディアとオーレン族の人達以外は、その時はたぶん誰も生きていない。

 

そうなると、此処の攻略は不可能だ。

 

他にも色々と見せてもらう。

 

食糧の生産施設がある。

 

どうも細かい生物を繁殖させて、それを加工して食べ物にするらしい。あらゆる栄養を作り出す事が可能であるようなのだが。

 

既に停止していた。

 

かなり大きなシステムだが、この広さの区画にしては物足りない大きさである。人間がそれなりに住む事ができる広さなのだが。

 

それでもこれでは、賄いきれないだろう。

 

「これは此処にしかないんですか?」

 

「いえ、ありますが、稼働している形跡がありません」

 

「……おかしいな」

 

「はい。 保存されている食料もあるにはあるのですが、それらも消費されている形跡がないのです」

 

それは異常だ。

 

神代の連中は何を食べて生きている。

 

ともかく奴らはまだいるようだし、調べないといけないか。ともかく、他も見せてもらう事にする。

 

手の内は全て知っておかなければならない。

 

ちなみに今の装置は、再稼働は可能だが。此処がどう動力を確保しているのかしっかり確認してからでないと、止めた方が良いだろう。

 

オーリムにあった遺跡みたいに、無尽蔵に竜脈から搾取なんてしていたら、それこそうっかり再稼働で世界が滅びかねないのだ。

 

「ライザさん!」

 

パティが手を振って来る。

 

すぐに出向くと、フェデリーカが困惑していた。其処には、隠されるようにして、巨大な神代鎧が横にされていた。

 

動く気配はない。

 

「これは危険だね。 すぐに壊しておこう」

 

「味方として使えれば心強いんですが……」

 

「ダメだよ。 彼奴らに絶対服従の仕組みが仕込まれてる。 神代鎧相手なら戦ってくれるかも知れないけれど、いざという時に後ろから襲われたら話にならない」

 

「これの存在は知っていたんですか?」

 

フェデリーカが母に聞く。

 

ちょっと咎めるような口調だが、まあこいつの実力を知っているし、仕方がない事ではあるのだろう。

 

ちなみに今母は、同胞の一人。まだ幼い姿をしたサルドニカであった子が、板を持ち歩いていて。そこから話してくれている。

 

「知ってはいましたが、順番に危険な問題から対処していました。 無力化は確認できていましたので」

 

「なるほど。 いずれにしても壊します」

 

頷くと、フェデリーカが神楽舞を始め。

 

それで力を増したパティが、スパスパと巨大な神代鎧をスライスしてしまう。

 

動きが完全に止まっているなら、如何にハイチタニウムの装甲でもこんなものだ。パティ曰く、妖剣の類に踏み込んでいる大太刀の性能もあるのだろうが。それ以上にパティの技量が神話に出てくるレベルにまでもう上昇しているのも大きい。それをフェデリーカの神楽舞が強化しているのだからなおさらだ。

 

レントとディアンを呼んで、壊した神代鎧を運んで行く。

 

後で更に細かくして、あたしのアトリエでインゴットに変えてしまうのである。

 

ちょっと往復が大変だが、それは同胞が手伝ってくれる。

 

タオ達の調査が終わるまで、あたし達はこうして、この区画の完全な安全を確保していくのだ。

 

ただ、解せないこともある。

 

カラさんが、彼方此方にあるわずかに残った住居跡を見ながらぼやく。

 

「綺麗にはされておるが、生活の痕跡がないのう。 わしらが落としたあと、此処には奴らは戻らなかったのか?」

 

「この区画は一度放棄した後に再度掌握はしましたが、戻る気はなかったようです。 いつまた攻めこまれるか分からなかったのだと思います。 幾つかの会話のログを見る限り、それらの裏付けとなる言葉を彼等が交わしています」

 

「しかし他で生活するのは困難であったのだろう。 どうやっていたのだ」

 

「制圧した領域は広くなく、特に中枢である管理区は殆ど手をつけられていません。 図面すら入手できておらず、監視カメラなどから情報を作っている状態で……」

 

「そうか、そなたに怒っても仕方がない。 身も無いのに良く此処までやってくれたとしかわしからは言えぬ」

 

カラさんも、母にはそれほど悪印象はないようだ。

 

リラさんが呆れた様子で、家屋を見つめている。

 

やっぱり、こんな良い生活をしていて、どうして。

 

そうとしか思えないのだろう。

 

セリさんが今度は呼びに来る。

 

調べた所、植物の種が大量に保管されていたという。一緒に様子を見に行く。

 

これはすごい。

 

数十万種はあるとみて良いだろう。

 

地下空間で、ひんやりしている。

 

此処には休眠状態の種が、恐らく全世界の植物のものが、あると見て良かった。

 

「これは凄い……」

 

「恐らく冬の時代の前からあったものを移したのだろう事は分かっています。 旅の人が発見し、此処に回収したのでしょう」

 

「そうか、世界の再生には此処を利用していたんだ……」

 

「既に私が自我に目覚めたときにはかの存在はいませんでした。 だから恐らくはそうだろうとしか言えません」

 

今も世界の半分は人が入れない土地だ。人どころか、誰も住まない荒野になっている。

 

此処は、利用しよう。

 

あたしはそう決めていた。

 

居住区をこれでほぼ網羅した。その過程で三日掛かった。

 

彼方此方に配置されていた神代鎧も全てかたがついた。

 

それでは、次だ。

 

まずはアインの安全を完全に確保するために。アインが眠っている培養槽を完全に確保したい。

 

次は生産区に攻めこむ。

 

あたしの方でも、準備は終わっている。

 

同胞も、既に失った手足などを取り戻した戦士が複数戦線に復帰し、あたし達の手助けをしてくれると言ってくれていた。

 

話していると、多少無機質ではあっても、人と同じだ。

 

そして、奴らの被害者であるという点で、あたし達は団結も共闘もできるのだった。

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