暗黒錬金術師伝説11 暗黒!ライザのアトリエ3   作:dwwyakata@2024

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少しずつ神代のずさん管理と実態が露わになっていきます。

そもそも此処では無い土地にあった神代の足跡でも、そのいい加減さは現れていたのですが。

本拠ともなれば、なお露骨にその様子が明らかになります。


2、使われない工場

門がある所に、全員で集結する。開けた瞬間、生物兵器がわっと出てくる可能性も否定出来ないからだ。

 

ただ、此処はアインも何度か通っている場所である。

 

居住区を完全制圧したことで、警戒度が上がっている可能性がある。そう母は言っていたが。

 

まあ、そこまでは心配はしなくてもいいだろう。

 

周囲には数多の戦いをともに戦い抜いたあたしの仲間達と。同胞十二名が一緒に来ている。

 

この面子がそうそう遅れを取るとも思えない。

 

門はそのまま通る事ができた。

 

短距離の空間転移は、あたしも利用している。ただ、母が今までは、使う度にエネルギーを消費して門を安定させていたらしい。

 

そこであたしが、鍵を用いて、門を常時強制開放状態にしておく。

 

既にあたしには、それが出来るようになっていた。

 

行き先の座標も分かっているので、簡単なことだ。

 

門が完全安定。

 

ガイアさんが持っている母が、安心したように言う。

 

「門の安定に使っていたエネルギーを他に回します。 やはり既に神代の錬金術師を遙かに凌いでいる技量ですね」

 

「おほん。 それはいいから、先に進みます。 皆、警戒して!」

 

踏み込む。

 

周囲はかなりごみごみしていて、居住区とだいぶ違う。床などの素材は同じようだし、空が虚空なのも同じだが。

 

彼方此方には巨大建造物が無事だ。

 

円筒形のロボットというのが行き交っているが、仕事をしているとは思えない。ただ、メンテナンスだけを必要な時だけしているのだろう。

 

「此処はまだまだアラームが生きています。 下手な所に足を踏み入れないように気をつけてください」

 

「我々が先導する。 危険な場所は熟知している」

 

「頼んだぜガイアさん」

 

「任せろ」

 

奥の方に見えているのは、あれはなんだ。

 

巨大な岩石の塊に見えるが、生物兵器だろうか。強い魔力を感じるし、ただの岩の塊ではないだろう。

 

「此処もあのデータセンタってのを見つければいいのか?」

 

「はい。 此処を管理しているデータセンタは奥にあるのですが……」

 

「何か問題があるんだな」

 

「はい。 セキュリティがかなり厳しく、下手に近付くと一斉にガーディアンが反応します」

 

あの大型神代鎧と違って、いずれもが生物兵器であるそうだが。どれも超ド級相当の実力はあるという。

 

彼方此方に大きな建物があって、内部に巨大な機械と建材などが見えている。

 

此処は、まだ未完成なのか。

 

それとも、此処で作ったものを何処かに持ち出しているのか。

 

二つの線が、ずっと何処までも延びているのを見つけた。

 

その周囲に柵が立てられている。

 

「なんだこれ」

 

「トロッコのレールに似ていますね……。 王都でも鉱山ではトロッコを使っていましたし、見た事があります。 ただこれは、ただ線が引かれているようにしかみえませんけれど」

 

「これはリニアのレールです。 電気と磁石を用いた乗り物と思ってください」

 

「電気と磁石。 乗り物」

 

くらっと来た様子のアンペルさん。母は掌握できていないらしく、しかも今は動いていないそうだ。

 

それは残念。

 

動くところが見られれば、解析できると思ったのだが。

 

なんでもそのリニアは、此処で作った建材を運び出したり。或いは材料を運んだりしていたらしい。

 

いずれにしても、今は稼働していないようだった。

 

「もしも稼働した場合、凄まじい速度で突っ込んでくる事になります。 轢かれたら絶対に助かりません。 急いで其処は渡ってしまってください」

 

「凄まじいって、どれくらい速いんだ」

 

「貴方たちの戦闘速度を見ましたが、それを遙かに凌ぎます。 超ド級と貴方たちが呼んでいる生物兵器と同等以上の重量物による轢殺です。 死体はそれこそ、肉片しか残らないでしょう」

 

ぞっとする言葉だ。

 

それを聞いて、皆震え上がるが。あたしはさっさと渡って、こっちに来るように皆に促す。

 

もっと桁外れな理外の存在とやりあってきたのだ。

 

今更その程度を怖れていても仕方がない。

 

空間を操作するような相手と比べたら、超高速で突っ込んでくる相手なんぞ、どうってこともないだろう。

 

区画は殆ど整備されていなくて、曲がりくねっている場所も多い。

 

それらを進みながら、幾つか説明を受ける。

 

どうあっても、ガーディアンを排除しなければデータセンタに踏み込む事はできない。此処のセキュリティは居住区に比べるとトラップ的なものは確認されておらず、警備のガーディアンくらいしかない。

 

「そのガーディアンを把握し切れていないのが極めて危険な要素となっています。 そこで、戦いやすい地点を指定しますので、そこに誘き寄せて殲滅してください。 最低でも超ド級のものが数体は来ますが、其処ならば時間差各個撃破ができる筈です。 無理と判断したら、退路を誘導します」

 

「分かった。 それにしても、随分と荒っぽいやり方をするんだね」

 

「……混沌の時代、こういったシステムの掌握というのは、殆どの場合内部に人間が潜り込んで、その手引きで行っていました。 システムをシステムの知識だけでねじ伏せる人間はハッカーと呼ばれていましたが、そういったハッカーの現実は、結局内部からの手引きによる侵入が殆どだったのです」

 

「つまりそれと変わらないって訳か」

 

レントが呆れた。

 

まあそれもそうだ。

 

古い時代、こんなオーバーテクノロジーが世界の何処にでもあっても。結局脆弱性は人間から生じていた。

 

そんな事が分かれば。それは呆れてしまうのも仕方がない。

 

広場に出る。

 

ロボットが行き交って、積まれている鋼材らしきものを手入れしているが、運び出すつもりもないようだ。

 

母が何かしらしたらしい。それらロボットが、全て去って行った。

 

「此処の広さであれば、充分に戦えると思います。 後は誘引をするだけですね」

 

「母。 私がやります」

 

「カーティア、危険ですが大丈夫ですか」

 

「お任せを。 ライザ殿達を消耗させるわけにはいきません」

 

捨て石になってくれる訳か。

 

その意気、立派だ。

 

受けさせて貰う。

 

セリさんが、即座に植物魔術を展開して、野戦陣地の構築準備を開始する。それと同時に、カーティアさんが指定された場所に向かう。

 

特定の地点でガーディアンを反応させる事で、時間差で敵を誘き寄せることが可能になるという。

 

最低でも四、最大で七程度の超ド級との連戦となるようだが。

 

それでも、全部に同時に襲われるよりはマシだ。

 

最悪の場合、魔力を消費してのコアクリスタルからの道具の使用も考えなければならないが。

 

今はそれはやらなくて良いだろう。

 

どすん、どすんと音がし始める。

 

母が警告を発した。

 

「カーティアが敵を反応させました。 一番間近にいるものが誘引されてきます。 他も反応してきています」

 

「よし、全部やっつけてやるぜ!」

 

ディアンが威勢良く啖呵を切る。

 

フェデリーカは奇襲に備えて、すぐに神楽舞を始めた。カーティアさんが、場に飛び込んでくる。

 

その背後から来たのを見て、タオとパティがうっと呻く。

 

それは巨大な蜘蛛にしかみえなかった。大きさは十歩以上はあるだろう。

 

それが凄まじい速度で足を動かして迫ってきている。しかし、それがグランツオルゲンで彼方此方を固めた、半生物体というべき存在なのも、今は一目で理解出来た。

 

跳躍して、襲いかかってくる。

 

多数の糸の塊を飛ばしてくる蜘蛛。蜘蛛の糸というのは腹の中では液体になっていて、それが空気に触れるなどの条件を満たすと硬化する。だから大きめの塊にして飛ばすというのもできるし、なんなら投網みたいに使う種も存在している。

 

セリさんが、さっと蔓を多数展開して、全てを防ぐ。その蔓をブチ抜きながら、巨大蜘蛛が襲いかかってきた。

 

「速攻だ! 一匹ずつ、速攻で始末する!」

 

「ライザ殿達はできるだけ温存を! まだまだ強い奴が来る!」

 

「分かりました! でも無理はしないでください!」

 

「ああ、皆で生きて帰ろう!」

 

すぐに次が来る。

 

今度は鳥だが、首が異常に長い。それが凄まじい勢いで、急降下。急降下しながら、攻撃魔術を乱射してくる。

 

だが、カラさんが、雷撃を直撃させる。魔術に関しては、レントが飛び出すと、気合とともに右に左へなぎ倒す。今レントが手にしている大剣は、レントのパリィの技術をフルに生かす。最高品質のグランツオルゲンとハイチタニウムの合金は、生半可な魔術なんてそのまま切り裂いてしまうのだ。

 

落ちてきた鳥に、クラウディアが矢を連続して叩き込む。

 

まだまだ来る。

 

今度は巨大な百足だ。だが頭部が丸ごと改造されていて、元からいた生物を冒涜した存在なのだと一目で分かる。

 

頭部は、これは犬か何かか。

 

生物を粘土みたいにこねくり回して遊んだ結果できたガーディアンか。

 

怒りでハラワタが煮えくりかえる。

 

次々に魔物が来る。

 

どすんどすん言っていた大きいのが姿を見せた。さっき見えていた岩山みたいな奴だ。恐らくはゴーレムの一種……というか究極型だろう。あのサイズとなると、ちょっとまともに攻撃を受けたくない。

 

それでいながら、構造体を破壊せずにこっちにくる。

 

行儀がいいので、ちょっと苦笑する。

 

あのサイズで、あれだけ行儀がいいものを作れるなら。

 

その技術を悪用しないで、ちゃんと使えば良かったものを。

 

あれは、接近させるとダメだな。

 

あたしは詠唱開始。ゴーレムが、唸りながらこっちに来る。来ながら、その全身から、多数の氷の矢を放ってくる。一つ一つが、巨木みたいなサイズだ。カラさんとクラウディアが応戦しているが、大きすぎて弾くのがやっとである。

 

あたしが詠唱を完了。

 

フルパワーで踏み込みながら、熱槍三万を束ね、投擲する。

 

ゴーレムがシールドを展開。これは、東の地で見たベヒィモス並みか。だが、それでも。

 

今のあたしは、更に装備品を段違いに強化し。

 

魔術を更に練り上げていた。

 

「いいっ、けええええええっ!」

 

裂帛の気迫とともに、ゴーレムのシールドが貫通され。その巨体が、一瞬で融解していく。

 

悲鳴じみた音と共に、ゴーレムが溶けて拡がっていくが。内部には多数の機械が埋め込まれているのが見えた。

 

すぐに補給用の栄養剤を飲む。

 

まだまだだ。

 

フォトンクエーサーの一発程度で息切れしてはいられない。

 

大乱戦の中、背後に迫っていた巨大な蚯蚓っぽいガーディアンを、パティが一刀両断にした。

 

ボオスが連打を浴びせて、手が多数ある鎧みたいなガーディアンと真っ正面からやりあっている。

 

タオが速度を生かして、巨大な牛みたいな顔をしたガーディアンを翻弄。動きを止めたところに、リラさんがその首をへし折っていた。

 

次々にガーディアンが倒れていくが、敵の戦意は旺盛だ。

 

怪我人も増える。薬を使って。あたしは叫びながら、セリさんに迫っていた一体に、渾身の蹴りを叩き込む。

 

形容しがたい白い人型だったそれは、何だか奇妙な動きでうねうねと迫っていたが。それも、剛の極限は受けきれず、あたしの蹴りで文字通り引きちぎれながら吹っ飛んで行った。

 

グランツオルゲンの装甲で身を守られた、一つ目の巨人が来る。人間がベースのガーディアンか。

 

だが普通の人間の十倍は背丈がある。

 

「なんだあれ!」

 

「時々此処を巡回しているのを見る奴だ! 手強いぞ!」

 

「コードネームサイクロプス。 混沌の時代の神話に登場する鍛冶の神の一族の名を持ったガーディアンです。 ただその姿に似せて作られただけですが」

 

「人間を素材にして、あんなものを!」

 

あたしが怒りの声を上げると。

 

サイクロプスは手にしている棍棒を振り上げて、凄まじい雄叫びを上げる。普通の戦士だったら、その声を聞いただけで腰砕けになって、逃げるしか無かっただろう。

 

だが、今は違う。

 

即座に熱槍を叩き込む。

 

棍棒を振るって熱槍を弾きながら、近付いてくるサイクロプス。あの棍棒、ただの鉄塊ではないな。

 

冷気も叩き込んでみるが、効果は薄い。

 

あのグランツオルゲン装甲もあわせて、多分魔術耐性を上げてる。アンペルさんが、荒く肩で息をついているが、ハンドサイン。

 

頷くと、アンペルさんが、奴の一つ目に空間魔術で貫きにいく。しかし、サイクロプスが空間魔術を更に展開。

 

アンペルさんの空間魔術を、途中でかき消していた。

 

跳躍。

 

接近させるとまずい。

 

セリさんが、大量の覇王樹で、サイクロプスを押し返す。凄まじい質量がぶつかるが、それを待っていたのは棘だらけで、内部に大量の水を蓄えている巨大覇王樹だ。つまり、簡単には突破出来ない。

 

五月蠅そうに声を上げると、サイクロプスがさがって、空間魔術で覇王樹をまとめてねじ切った。

 

だが、その瞬間を待っていたのだ。

 

パティとあたしで奴の左右に周り。

 

パティが奴の右足を。

 

あたしが奴の左足を。

 

抜き打ちで斬り伏せ。

 

渾身の蹴りでアキレス腱を砕く。

 

悲鳴を上げながら、サイクロプスがぐらりと後ろに崩れる。だが、その巨体が、無茶な動きで立ち上がった。

 

空間魔術だろう。分かっている。

 

だが、その空間魔術は、超ド級でも基本的には連発出来ない。時間魔術も使ってくる奴がいたが。

 

それも連発はできなかった。

 

つまり、どういうことか。

 

既に奴の頭上に出ていたディアンが、渾身の斧での一撃を、奴の一つ目に叩き込む。それは、自分を無理矢理起き上がらせようとしたサイクロプスにとって。むしろ自分から突っ込んでいくような光景だった。

 

眼球が破裂して、大量の血の雨が降り注ぐ中、サイクロプスが悲鳴を上げて、横殴りに倒れていく。

 

悪いね。

 

今楽にしてあげる。

 

そう呟いて、あたしはグランツァイトを放り。皆に離れるように叫ぶ。

 

一瞬後、氷漬けになったサイクロプスは、そのまま粉々に砕けて果てていた。

 

呼吸を整えているあたしに、複数頭がある大型犬みたいなのが、真後ろから襲いかかってくるが。

 

振り向き様に後ろ回し蹴りで打ち砕く。

 

悲鳴を上げる暇もなく、上半身が消し飛ぶ魔物。

 

悪いが、やられてやるわけにはいかない。

 

そのまま、戦闘を続行。

 

あのゴーレムとサイクロプスが、把握している超ド級のそれぞれだと母は言う。だとすると、後二体か。

 

同胞の戦士達も消耗が激しくなってきた。ガーディアンは雑魚から強い奴まで様々で、こう乱戦になるとやりづらくて仕方がない。これがラプトルの群れだったりすると、対応はむしろ楽なのだが。

 

こっちに迫ってくるのは、馬。いや人間。馬の首の部分から、人間が生えているように見える。

 

これも人間を使って作り出したガーディアンか。それも多数がこっちに馬蹄を響かせ迫ってくる。

 

クラウディアが一斉射を浴びせるが、それでも全ては倒し切れない。

 

大きな弓矢を持っている其奴らが、一斉に走りながら放ってくる。カラさんの植物魔術の壁で防ぐが、しかし高機動力を生かして、走りながら矢を連射してくる。これは、防ぎきれない。

 

巨大な蛇のガーディアンが来る。

 

「一旦撤退しますか?」

 

「いや、ここで片付ける! タオ、パティ! 馬人間はどうにかできる?」

 

「任せて!」

 

「フェデリーカを守ってください!」

 

快足の二人が、戦線を離れて、馬人間の処理に向かう。

 

あたしは詠唱しながら、巨大な蛇……あれは五十歩くらいはある。それに向かって走る。

 

最低でもまだ二体超ド級がいる。

 

側を矢が何本か掠める。

 

どうやらあたしを最優先駆除対象と見なしているらしい。まあどうでもいい。恐ろしい剛弓だが。

 

クラウディアのに比べればまだまだ。

 

詠唱。

 

大蛇は、鎌首をもたげると、口を開ける。口の中に、多数の目があって、ちょっとぎょっとしたが。それだけ。

 

多数の目から、禍々しい色の雷が放たれる。それだけじゃない。全身の鱗を振るわせて、詠唱している。

 

その結果、雷が複雑に動きながら、辺りを蹂躙し爆破する。

 

あたしも詠唱を終える。そして、奴に向けて走る。爆発が連鎖し、至近にも着弾。だが、あたしは気にせず、跳躍。

 

手にしている熱槍、数は四万。

 

ついに四万の大台に乗った。

 

蛇の魔物はそれを見ると、さっと体を丸める。そして、凄まじい強度の防御魔術を展開。

 

あたしが投擲したフォトンクエーサー一点収束型が、とんでもなく分厚い防壁と激突する。

 

激しい熱がまき散らされる中、あたしは着地。

 

これをわざわざ分かりやすく撃ったのは、奴の防壁の隙間を探るため。

 

そして、見つけた。走る。

 

シールドとフォトンクエーサーがぶつかり合った結果、シールドがそれを防ぎ切る。だが、蛇が動き出す寸前に、あたしは奴の至近に接近。

 

そして、奴の頭を、両足で掴んでいた。

 

「フォトン……」

 

蛇の頭が、負荷にミシミシと音を立て。首の骨が砕けるのが分かった。あたしは肉体に、それだけの倍率を掛けている。

 

「パイルブレイク!」

 

そのままねじ切る勢いでねじりつつ、地面に向けて巨大な蛇を投擲する。逃げろ。ガイアさんが叫んで、乱戦中の同胞や、皆が逃げ散る中。

 

あたしの全力フォトンクエーサーを防ぎ切った雄敵が。

 

其処からのコンビネーション攻撃であるフォトンパイルブレイクによって。

 

床に全力でたたきつけられ、一瞬で開きとかしていた。

 

大量の鮮血と肉がぶちまけられる中、あたしは着地。呼吸を整える。体の彼方此方が焦げている。

 

薬をすぐに取りだして使う。

 

痛みも勿論あるが、今は優先するのは戦闘に勝利することだ。すぐに手当てを済ませて、戦線に戻る。

 

馬人間が一体突っ込んでくる。

 

馬の体格を生かしたチャージという技に似ている。小型の魔物には有効なのだが、今ではすっかり廃れた。

 

というのも、馬の突撃なんてものともしない魔物が増えたからだ。

 

体格が巨大だったり、魔術で弾き返したり。

 

あたしも、舐められたものだなと思いながら。

 

地面を思い切り踏みつけて、跳躍。

 

軽く突撃をかわしつつ、空中で熱魔術を連続して展開。それで相手の後ろに立つ。後ろ足で蹴りに来ようとするが。

 

その時には、タオがそいつを膾に斬り倒していた。

 

どうと倒れる馬人間。

 

これで馬人間は打ち止めか。

 

まだ乱戦は続いているが。さっきの巨大蛇の叩き付けにかなり魔物が巻き込まれたようで、戦線に余裕が出てきている。

 

しかし、まだまだ超ド級相当のがいるはずだ。

 

あたしはすぐに負傷者の手当てをしながら、次に備えていた。

 

 

 

どうにか片付いたか。

 

最後に姿を見せた巨大なサメを集中攻撃で仕留めると、ようやく辺りは静かになっていた。

 

リラさんが周囲を確認して、セリさんも野戦陣地を維持してくれている。

 

負傷者を救助して回る。

 

かなり手傷が酷い戦士も多く。特に同胞の一人は体が半分潰れるような瀕死の重傷を受けていたが。

 

手篤く薬を投入して、命を継ぎとめる事に成功。

 

ただ右手右足は、これはどうにもならない。内臓も幾つか駄目になっている。

 

培養槽に運んで生命維持だけしてもらい、後はあたしが内臓も作るしかないだろう。

 

他にも大きな負傷をした同胞の戦士が何人もいたので、皆回復させる。薬を湯水のように使ったが、それでもどうにか足りた。

 

「どうにか排除はできたようですね。 手当てと補給を先に済ませましょう。 ガーディアンの再生産は、此処で使われているエネルギーの様子からして、恐らくできないとみて問題ありません」

 

「それでも先にデータセンタは掌握しよう」

 

タオが提案。

 

あたしはちょっと動けないので、クリフォードさんに出向いて貰う。クリフォードさんは後半、姿を消して狙撃してくる魔物との乱戦で皆の被害を防いでくれた。その分もあって、皆感謝しているようだ。

 

後続で来た同胞の一人と一緒に、二人が行く。

 

その間にあたしは、アインの入っている培養槽の施設に出向く。

 

基本的に他でもみた培養槽だが、無秩序に色々付け足されているのが分かる。一目でテクノロジーを苦労しながら扱って増設したのが分かる程だ。

 

側にいるガイアさんに説明を受けながら、母にも話を聞く。

 

それで理解出来たが。

 

この培養槽、効率が悪すぎる。アインを救うために尽力してきたのは分かるし、それができるのも分かるが。

 

これでは後千年はかかる。

 

「……あたしのアトリエで、これの改良版を作ります。 アインをそこまでどうにか運びましょう」

 

「分かりました。 先までの戦闘を見ていて、貴方にはそれが可能だと判断します。 ただ、今すぐは厳しい。 残り二つの区画の安全を確保して、それからが妥当でしょう」

 

「それは同意です」

 

此処にいる神代のカス共はもう世界に対して無力だとみて良いが。それでも何か悪巧みができる可能性もある。

 

全部制圧して、奴らを全部駆除してから、それからだ。

 

一度培養施設を出る。

 

アインは髪の毛を貰ったので、既にアトリエで調べてある。

 

母が言った通り遺伝性の問題を幾つも抱えている上に、現状では病気なんかにも耐えられないだろう。

 

外なんか出したらあっと言う間にあの世行きだ。

 

アトリエまで安全に運ぶ工夫がいる。

 

ただ、一人の人間として、普通に人生を送らせてあげたい。

 

その母の願いを聞いたとき。あたしは色々と思ったのだ。

 

ただのからくりだとしても。それは世の中に実在する多数の人間の母親より、ずっと立派でまっとうな考えだと。

 

だからあたしは手伝う。

 

今は、ただそれだけ。そのためにも、少しずつ此処を攻略して行かなければならない。

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